第101回(H30) 助産師国家試験 解説【午前36~40】

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36 特定妊婦について正しいのはどれか。2つ選べ。

1.高所得の妊婦は該当しない。
2.児童福祉法に定義されている。
3.児童養護施設が相談窓口となる。
4.妊婦健康診査の未受診者を含む。
5.周産期医療ネットワークに登録される。

解答2・4

解説

特定妊婦とは?

妊娠中から家庭環境におけるハイリスク要因を特定でき、出産前の支援が必要な妊婦のこと。ハイリスク要因には、収入基盤の不安定さ、親が知的・精神的障害者、若年の妊婦、妊婦健康診査未受診、妊娠届の未提出などがある。

(図引用:「妊娠等について悩まれている方のための相談援助事業連携マニュアル」公益社団法人日本産婦人科医会より)

1.× 一概に、高所得の妊婦は「該当しない」とは言いきれない。なぜなら、ハイリスク要因には、収入基盤の不安定さ、親が知的・精神的障害者、若年の妊婦、妊婦健康診査未受診、妊娠届の未提出などがあるため。つまり、たとえ「高所得の妊婦」でも、若年の妊婦、妊婦健康診査未受診、妊娠届の未提出などが該当し、特定妊婦と分類されることが考えられる。
2.〇 正しい。児童福祉法に定義されている。児童福祉法6条3の5項には「この法律で、養育支援訪問事業とは、厚生労働省令で定めるところにより、乳児家庭全戸訪問事業の実施その他により把握した保護者の養育を支援することが特に必要と認められる児童(第八項に規定する要保護児童に該当するものを除く。以下「要支援児童」という。)若しくは保護者に監護させることが不適当であると認められる児童及びその保護者又は出産後の養育について出産前において支援を行うことが特に必要と認められる妊婦(以下「特定妊婦」という。)(以下「要支援児童等」という。)に対し、その養育が適切に行われるよう、当該要支援児童等の居宅において、養育に関する相談、指導、助言その他必要な支援を行う事業をいう」と記載されている(※一部引用:「児童福祉法」e-GOV法令検索様HPより)
3.× 相談窓口となるのは、「児童養護施設」ではなく「産科等医療機関、児童相談所、保健所、市町村保健センター、福祉事務所、女性健康支援センター、婦人相談所等が相談窓口」である(※上図参照:「妊娠等について悩まれている方のための相談援助事業連携マニュアル」公益社団法人日本産婦人科医会より)。ちなみに、児童養護施設とは児童福祉法に定める児童福祉施設の一つで、保護者のいない児童や虐待児、その他環境上養護を要する児童を入所・養護し、あわせて退所した者に対する相談その他の自立のための援助を行うことを目的とする施設である。
4.〇 正しい。妊婦健康診査の未受診者を含む。特定妊婦とは、妊娠中から家庭環境におけるハイリスク要因を特定でき、出産前の支援が必要な妊婦のことである。ハイリスク要因には、収入基盤の不安定さ、親が知的・精神的障害者、若年の妊婦、妊婦健康診査未受診、妊娠届の未提出などがある。
5.× 周産期医療ネットワークに登録されるものではない。特定妊婦は、出産前の支援が必要な妊婦のことである。周産期に限っての支援ではなく、出産前から支援が必要である。ただし、児童福祉法において、支援を要する妊婦が把握された場合は、情報提供することが努力義務として規定されている。

周産期母子医療センターの整備とは?

周産期母子医療センターには、①総合周産期母子医療センターと②地域周産期母子医療センターがある。
①総合周産期母子医療センターとは、母体・胎児集中治療管理室(M-FICU)を含む産科病棟及び新生児集中治療管理室(NICU)を備えた医療機関である。常時、母体・新生児搬送受入体制を有し、母体の救命救急への対応、ハイリスク妊娠に対する医療、高度な新生児医療等を担っている。
②地域周産期母子医療センターとは、産科・小児科(新生児)を備え、周産期に係る比較的高度な医療行為を常時担う医療機関である。

 

 

 

 

 

37 Aちゃん(1か月、男児)。1か月児健康診査のときに、母親がAちゃんの嘔吐と母乳の分泌量不足を心配して相談した。Aちゃんは混合栄養で、哺乳回数は1日10回、直接授乳後に人工乳を1回40mL追加で哺乳している。哺乳後に1日2、3回、嘔吐を認める。体重増加は約45g/日。
 初期対応として適切なのはどれか。2つ選べ。

1.小児科外来の受診を勧める。
2.人工乳を増やすよう指導する。
3.嘔吐物の性状を母親に尋ねる。
4.母乳の1回哺乳量を測定する。
5.授乳後の排気を中止するよう指導する。

解答3・4

解説

本症例のポイント

・Aちゃん(1か月、男児)
・1か月児健康診査:母親「Aちゃんの嘔吐と母乳の分泌量不足」を心配。
・A ちゃん:混合栄養、哺乳回数:1日10回、直接授乳後に人工乳:1回40mL追加哺乳
・哺乳後:1日2~3回嘔吐、体重増加:約45g/日
→Aちゃんは哺乳量が多すぎる可能性が高い。一般的な母乳栄養児の生後6か月頃までの1日の体重増加は、18~30g/日程度である。一方、Aちゃんは、混合栄養で体重増加約45g/日である。これには、直接授乳後に人工乳1回40mL追加していること、哺乳後1日2~3回嘔吐していることからも考えられる。

1.× 小児科外来の受診を勧める優先度は低い。なぜなら、母親の心配事と児の様子から、嘔吐が疾患や異常によるものではない可能性が高いため。また、選択肢3.嘔吐物の性状を母親に尋ねた後、嘔吐が疾患や異常によるものの可能性が高い場合に、小児科外来の受診を勧める。
2.× 人工乳を増やすよう指導する優先度は低い。むしろ減らす方が望ましい。なぜなら、Aちゃんは哺乳量が多すぎる可能性が高いため。一般的な母乳栄養児の生後6か月頃までの1日の体重増加は、18~30g/日程度である。一方、Aちゃんは、混合栄養で体重増加約45g/日である。これには、直接授乳後に人工乳1回40mL追加していること、哺乳後1日2~3回嘔吐していることからも考えられる。
3.〇 正しい。嘔吐物の性状を母親に尋ねる。なぜなら、Aちゃんは哺乳量が多すぎる可能性が高いが、嘔吐が疾患や異常による場合も完全に否定できないため。嘔吐物の性状を母親に尋ねることで、典型的なゲップなどに伴う生理的な嘔吐なのか、病的なものなのか判断することができる。
4.〇 正しい。母乳の1回哺乳量を測定する。Aちゃんは哺乳量が多すぎる可能性が高い。一般的な母乳栄養児の生後6か月頃までの1日の体重増加は、18~30g/日程度である。一方、Aちゃんは、混合栄養で体重増加約45g/日である。母乳の1回哺乳量を測定することで、①直接授乳後に人工乳1回40mL追加していることが妥当なのか?、またそもそも人工乳の必要性も検討することができる。
5.× 授乳後の排気を中止するよう指導する優先度は低い。なぜなら、哺乳後の排気(げっぷ)をすることで、胃の中の空気が飲んだものを押し上げることにより『吐き戻し』を防ぐことができるため。そもそも新生児はミルクと同時に多量の空気も飲み込んでおり、成人の胃に比べ縦型で、食道・胃結合部(噴門部)の括約筋が弱い。したがって、ゲップとして空気が出やすい構造になっている。

 

 

 

 

38 在胎31週、体重1,700gで出生した児。呼吸障害がみられるため、閉鎖式保育器内で腹臥位にポジショニングした。
 肢位の調整方法で正しいのはどれか。2つ選べ。

1.頸部の伸展
2.上肢の屈曲
3.骨盤の後傾
4.肩甲骨の挙上
5.股関節の外旋

解答2・3

解説

本症例のポイント

・出生した児(在胎31週体重1,700g
・呼吸障害あり。
・閉鎖式保育器内:腹臥位にポジショニング。
→本症例は、早産低出生児である。早産児は37週未満(36週6日まで)、低出生体重児は2,500g未満である。ちなみに、1,500g未満であれば極低出生体重児、1,000g未満であれば超低出生体重児という。42週以上であれば過期産児という。低体温、低血糖、貧血、黄疸(高ビリルビン血症)などが起こりやすく、感染への抵抗力も弱いため、外的ストレスをできる限り減らす。ポジショニングは、胎内にいるときに近い姿勢を保つ。子宮内環境に近づける。低出生体重児は、胎内で屈曲姿勢をとる期間が少なく、神経系の発達が未成熟なため、在胎週数に応じた筋緊張が低下を認める。したがって、成熟児に比べて、四肢伸展、外転位の不良姿勢や不良運動パターンを認めやすい。そのため、タオルやクッションなどを使用し姿勢のセッティングが必要になる。ポイントは、①頚部の軽度屈曲位、②肩甲帯の下制・前進、③骨盤後傾、④肩・股関節中間位(内・外転)、⑤上・下肢屈曲位である。

(※図引用:「看護roo!看護師イラスト集」)

1.× 頸部は「伸展位」ではなく屈曲位が望ましい。
2〜3.〇 正しい。上肢の屈曲位/骨盤の後傾位に調整する。本症例は、早産低出生児である。早産児は37週未満(36週6日まで)、低出生体重児は2,500g未満である。ちなみに、1,500g未満であれば極低出生体重児、1,000g未満であれば超低出生体重児という。42週以上であれば過期産児という。低体温、低血糖、貧血、黄疸(高ビリルビン血症)などが起こりやすく、感染への抵抗力も弱いため、外的ストレスをできる限り減らす。ポジショニングは、胎内にいるときに近い姿勢を保つ。子宮内環境に近づける。低出生体重児は、胎内で屈曲姿勢をとる期間が少なく、神経系の発達が未成熟なため、在胎週数に応じた筋緊張が低下を認める。したがって、成熟児に比べて、四肢伸展、外転位の不良姿勢や不良運動パターンを認めやすい。そのため、タオルやクッションなどを使用し姿勢のセッティングが必要になる。ポイントは、①頚部の軽度屈曲位、②肩甲帯の下制・前進、③骨盤後傾、④肩・股関節中間位(内・外転)、⑤上・下肢屈曲位である。
4.× 肩甲骨は「挙上」ではなく下制が望ましい。
5.× 股関節は「外旋」ではなく中間位が望ましい。

 

 

 

 

 

39 在胎30週、体重1,500gで9月1日に出生した児。後遺症はなく、11月15日に体重2,300gで退院することとなった。自宅では保育所に通っている2歳の兄が両親とともに生活している。
 退院前に行う感染予防対策で適切なのはどれか。2つ選べ。

1.抗菌薬の内服
2.肺炎球菌ワクチンの接種
3.インフルエンザワクチンの接種
4.抗HBsヒト免疫グロブリンの投与
5.抗RSウイルスヒト化モノクローナル抗体の投与

解答2・5

解説

本症例のポイント

・9月1日出生(在胎30週体重1,500g
・後遺症なし
・11月15日:体重2,300gで退院
・自宅:2歳の兄(保育園)と両親と生活。
→本症例は、早産低出生児である。早産児は37週未満(36週6日まで)、低出生体重児は2,500g未満である。ちなみに、1,500g未満であれば極低出生体重児、1,000g未満であれば超低出生体重児という。42週以上であれば過期産児という。

(※図引用:「低出生体重児保健指導マニュアル」厚生労働省HPより)

1.× 抗菌薬の内服は必要ない。なぜなら、本症例に細菌性の疾患が疑われないため。抗菌薬とは、細菌を壊したり、増えるのを抑えたりする薬のことである。抗菌薬の不適正使用により、薬剤耐性菌の出現が問題となっている。適正に感染症診断を行なったうえで必要時に内服を行う。
2.〇 正しい。肺炎球菌ワクチンの接種が退院前に行う感染予防対策である。肺炎球菌ワクチンの開始時期は、早産や低出生体重であっても、出生時からの合併症がないことを確認の上、一般乳児と同様に出生後の暦年齢を適用する。それにより接種による副反応の増加の心配はなく、むしろワクチンの対象疾患にかかった時に重症化する可能性の方が懸念される。肺炎球菌ワクチンは、対象が2か月以上5歳に至るまで(定期接種の場合)の間に標準4回(初回免疫3回、追加免疫1回)行なう。初回免疫は、3回目の接種を1歳に至るまでに行なう必要がある。
3.× インフルエンザワクチンの接種は、生後6か月未満の乳児に認められていない。インフルエンザ菌b型(ヒブ)は2か月から予防接種が始まる。
4.× 抗HBsヒト免疫グロブリンの投与は、HBs抗原陽性の妊婦から出生した児が対象となる。B型肝炎の検査結果が陽性の場合、新生児は出生直後にB型肝炎ワクチン(HBワクチン)と抗HBsヒト免疫グロブリン(HBIG)の2つの予防接種を受ける。初回投与は生後12時間以内が望ましくできるだけ早く行う。HBs抗原陽性かつHBe抗原陽性の妊婦から出生した乳児を放置した場合、感染率が100%、キャリア化率が80~90%であるため、B型肝炎ウ イルス母子感染予防処置が行われている。
5.〇 正しい。抗RSウイルスヒト化モノクローナル抗体の投与が退院前に行う感染予防対策である。早産児に特別な注射として、RSウイルスに対するモノクロナール抗体であるパリビズマブ(商品名シナジス)という注
射がある。他の予防接種の対象疾患と同様に、早産児では母親からのRSウイルスに対する抗体の移行が少なくRSウイルス感染症が重篤化しやすいとされている。重篤化を軽減するために抗体であるパリビズマプの注射を月1回、RSウイルスの流行中に行う。この注射をうけるかどうかは、出生体重ではなく、早産かどうかによって決まっている。在胎週数、生まれてからの月数、合併症、その他のリスクの有無などにより注射を受けるかどうかは異なるため、主治医の先生と相談する必要がある。

(※表引用:「予防接種スケジュール」日本小児学会より)

 

 

 

 

40 出生届について正しいのはどれか。2つ選べ。

1.出生後15日以降に届け出る。
2.出生証明書とは別に届け出る。
3.母子保健法に規定されている。
4.24時間いつでも届け出ることができる。
5.嫡出子と非嫡出子との別を記入する欄がある。

解答4・5

解説

出生届とは?

出生届とは、生まれてきたお子さんの氏名等を戸籍に記載するための届出である。戸籍に記載されることで、生まれてきたお子さんの親族関係が公的に証明され、住民票が作成される。なお、外国人のお子さんであっても、日本国内で出生した場合は、出生届をしなければならない。

1.× 出生後「15日以降」ではなく14日以内(国外で出生があったときは3か月以内)に届け出る。戸籍法49条に「出生の届出は、十四日以内(国外で出生があつたときは、三箇月以内)にこれをしなければならない」と記載されている(※一部引用「戸籍法」e-GOV法令検索様HPより)。
2.× 出生証明書とは「別」ではなく一緒に届け出る。戸籍法49条に「医師、助産師又はその他の者が出産に立ち会つた場合には、医師、助産師、その他の者の順序に従つてそのうちの一人が法務省令・厚生労働省令の定めるところによつて作成する出生証明書を届書に添付しなければならない。ただし、やむを得ない事由があるときは、この限りでない」と記載されている(※一部引用「戸籍法」e-GOV法令検索様HPより)。
3.× 出生届は、「母子保健法」ではなく戸籍法に規定されている。母子保健法とは、母性並びに乳児及び幼児の健康の保持及び増進を図るため、母子保健に関する原理を明らかにするとともに、母性並びに乳児及び幼児に対する保健指導、健康診査、医療その他の措置を講じ、もって国民保健の向上に寄与することを目的として制定された法律である。
4.〇 正しい。24時間(365日)いつでも届け出ることができる。夜間休日受付窓口で提出した出生届の審査は翌開庁日に行われる。記載内容に不備があって受理されなかった場合、後日改めて開庁時間内に役所に行く必要がある。なお、夜間休日受付窓口で提出できるのは、戸籍の届出に関する書類のみである。
5.〇 正しい。嫡出子と非嫡出子との別を記入する欄がある。他にも、①出生の年月日時分及び場所、②父母の氏名及び本籍、父又は母が外国人であるときは、その氏名及び国籍、③その他法務省令で定める事項を記入する欄がある。

 

 

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