第101回(H30) 助産師国家試験 解説【午前46~50】

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次の文を読み44〜46の問いに答えよ。
 Aさん(22歳、1回経産婦)。妊娠初期のスクリーニング検査で甲状腺機能の異常を指摘されたため、妊娠12週で大学病院の産科に紹介された。前回の妊娠中はほとんどつわりを感じなかったが、今回は妊娠9週ころからつわり症状が強く、毎日夕方になると数回嘔吐している。水分は何とか摂れているという。既往歴、生活歴および家族歴に特記すべきことはない。身長160 cm、体重50 kg(非妊時体重52 kg)。脈拍90/分、血圧120/70 mmHg。初診時、経腹超音波検査にて児の発育は週数相当で、羊水は中等量、胎児異常を認めない。甲状腺刺激ホルモン<TSH>0.01 μIU/mL(成人女性基準値0.39〜3.98 μIU/mL)、遊離サイロキシン<FT4>3.84 ng/dL(成人女性基準値1.00〜1.70 ng/dL)。抗TSH受容体抗体<TRAb>陽性。尿ケトン体+。

46 妊娠37週1日。Aさんは体重2,550gの女児を経腟分娩した。児は出生直後から啼泣あり、Apgar<アプガー>スコアは1分後7点、5分後9点。臍帯血を用いた検査所見は甲状腺刺激ホルモン<TSH>1.33μIU/mL、遊離サイロキシン<FT4>1.48ng/dLであった。児の出生12時間後のバイタルサインは、呼吸数55/分、心拍数140/分である。
 この児についての判断で適切なのはどれか。

1.頻脈がみられる。
2.呼吸数の異常がある。
3.人工乳による哺育とする必要がある。
4.数日空けて甲状腺機能を再検査する必要がある。

解答

解説

本症例のポイント

・妊娠37週1日(経腟分娩:体重2,550g女児)
・児:出生直後から啼泣あり。
・アプガースコア:1分後7点、5分後9点。
・臍帯血を用いた検査所見:甲状腺刺激ホルモン1.33μIU/mL遊離サイロキシン1.48ng/dL
・児の出生12時間後:呼吸数55/分、心拍数140/分

1.× 頻脈ではない。なぜなら、児の出生12時間後の心拍数は140/分と正常範囲内であるため。ちなみに、新生児の頻脈の基準は180回/分以上である(なかには170回/分以上というものもある)。新生児の正常な脈拍は120~160/分が正常範囲とされている。
2.× 呼吸数の異常はみられない。なぜなら、児の出生12時間後は呼吸数55/分と正常範囲内であるため。多呼吸とは、浅くて速い呼吸のことである。基準値として、新生児は60回/分以上、乳児は50回/分以上、幼児は40回/分以上である。主に肺炎など肺のコンプライアンスが減少するために1回換気量が不足し、呼吸回数で補おうとする。ちなみに、頻呼吸とは呼吸の深さは変わらないが回数が増えた状態で、多呼吸とは深さも数も増加した状態(主に運動時)である。
3.× 人工乳による哺育は必要ではない。人工乳とは、何らかの理由で母乳が与えられない場合、調製粉乳による人工乳が使用されることが多い。現在では母乳の代用品としての調製粉乳の品質も向上し、母乳の場合と比べても大差なく育児ができるようになっている。本症例は「 バセドウ病」の疑いがあり、薬物内服しているが、甲状腺ホルモンをおさえる薬(プロピルチオウラシル)は、「妊婦または妊娠している可能性のある婦人に投与する場合には、定期的に甲状腺機能検査を実施し、甲状腺機能を適切に維持するよう投与量を調節すること」と記載されており、気を付ければ投与可能である(一部抜粋:「妊娠または妊娠している可能性のある婦人に禁忌の主な医薬品リスト」日本医師会HPより)。
4.〇 正しい。数日空けて甲状腺機能を再検査する必要がある。なぜなら、胎盤を通過した抗TSH受容体抗体(TRAb:TSH結合阻害抗体と刺激抗体)が児の甲状腺を刺激することにより、生後3か月ころまで一過性甲状腺機能亢進状態となるため。”抗甲状腺剤使用例では出生後に母体由来抗甲状腺剤供給途絶により新生児一過性甲状腺機能亢進症(新生児バセドウ病)がバセドウ病妊婦1~5%に認められる。母体TRAbが高値であるほど新生児・胎児甲状腺機能亢進症の頻度が高くなるので、妊娠後期のTRAb測定は新生児・胎児甲状腺機能亢進症の発症予測に有用と考えられている。胎児甲状腺機能亢進は胎児頻脈、胎児甲状腺腫、発育不全の原因となる。母体への抗甲状腺剤投与による胎児甲状腺機能抑制の結果、新生児にみられる機能低下症や甲状腺腫は一過性で治療不要のことが多い。抗甲状腺剤で母体が管理されている場合は定期的に胎児心拍数の評価や胎児発育計測を行う”(※一部引用:「産婦人科診療ガイドライン―産科編 2020 P30」公益社団法人 日本産科婦人科学会より)。

(※画像引用:ナース専科様HPより)

 

 

 

 

次の文を読み47〜49の問いに答えよ。
 Aさん(32歳、初産婦)。妊娠35週0日、破水と陣痛発来で来院した。羊水混濁や胎児心拍の異常は認めず、来院後5時間で、経腟分娩となった。児は出生時、筋緊張の低下を認め自発呼吸がなかった。体位を整えて口鼻腔内吸引を行い、身体の羊水を拭き取った後、皮膚刺激を行った。約1分間皮膚刺激を行っても自発呼吸が認められず、心拍数は6秒間に4回であったため、経皮的動脈血酸素飽和度<SpO2>モニターを装着し、生後2分からroom air で人工呼吸を開始した。約30秒間人工呼吸を行ったところ、啼泣を始め、心拍数130/分、経皮的動脈血酸素飽和度<SpO2>80%であった。人工呼吸を中止したところ努力呼吸は認めなかったため、生後10分まで観察を継続した後に蘇生を終了し、病棟で呼吸状態を観察することとした。

47 新生児蘇生法ガイドライン2015に基づいてスタッフ間でデブリーフィング<振り返り>を行った。
 アセスメントとして適切なのはどれか。

1.蘇生方法は適切であった。
2.皮膚刺激をより確実に行うべきであった。
3.人工呼吸をより早く開始すべきであった。
4.人工呼吸中止時に酸素投与を開始すべきであった。
5.人工呼吸と同時に胸骨圧迫を開始すべきであった。

解答

解説

本症例のポイント

・Aさん(32歳、初産婦)
・妊娠35週0日:破水と陣痛発来で来院。
・羊水混濁や胎児心拍の異常:なし
・来院後5時間:経腟分娩
・児の出生時:筋緊張の低下を認め、自発呼吸なし。
・体位を整えて口鼻腔内吸引を行い、身体の羊水を拭き取った後、皮膚刺激を行った。
・約1分間皮膚刺激:自発呼吸なし、心拍数:6秒間に4回、SpO2モニター装着。
生後2分から:room air で人工呼吸開始
・約30秒間人工呼吸:啼泣、心拍数130/分、SpO280%。
・人工呼吸中止:努力呼吸はなし、生後10分まで観察を継続した後に蘇生を終了。
・病棟で呼吸状態を観察することとした。
→デブリーフィング<振り返り>の効果として、参加者に自律的な思考と将来の行動変容を促す。学習の順序として、①ブリーフィング(事前学習)、②シミュレーション、③デブリーフィング(振り返り)となる。デブリーフィングは、シミュレーションを通じた学習内容の固定化とその臨床応用にとり極めて重要な作業と理解され、シミュレーション後のデブリーフィングを通じ、自己の行動を客観視し、その中から「気づき」が導かれる。

JRC蘇生ガイドライン2015オンライン版‐第4章 新生児の蘇生(NCPR)

(※図引用:「JRC蘇生ガイドライン2015オンライン版‐第4章 新生児の蘇生(NCPR)」一般社団法人 日本蘇生協議会より)

1.× 蘇生方法は適切とはいえない。なぜなら、生後2分から、room air で人工呼吸が開始されているため。初期処置を確実に実践するとともに人工呼吸のタ
イミングを遅延させないため「NCPR アルゴリズム」が作成されている。無呼吸・徐脈の児に対し生後60秒以内に確実に有効な人工呼吸を開始することを目標とする。
2.× 皮膚刺激をより確実に行うべきであったとはいえない。むしろ、出生時とその後約1分間、皮膚刺激を行っているため、これ以上の皮膚刺激の優先度は低いと考えられる。
3.〇 正しい。人工呼吸をより早く開始すべきであった。なぜなら、生後2分から、room air で人工呼吸が開始されているため。人工呼吸は、自発呼吸がない、あるいは心拍数100回/分未満の場合、遅くとも出生後60秒以内に行う。また、CPAP や酸素投与でも努力呼吸とチアノーゼがある場合に行う。
4.× 人工呼吸中止時に、酸素投与を開始すべきではない。なぜなら、本症例は人工呼吸中止時には、努力呼吸はなかったため。自発呼吸があり、心拍数100回/分以上あるが、陥没呼吸、呻吟(しんぎん)、多呼吸などの努力呼吸や中心性チアノーゼがある場合は、「持続的気道陽圧(continuous positive airway pressure:CPAP)または酸素投与」に移行する。
5.× 人工呼吸と同時に胸骨圧迫を開始すべきではない。まずは人工呼吸のみを実施し、心拍数が60回/分未満の場合、「人工呼吸と胸骨圧迫」に移行する。ちなみに、心拍数が100回/分以上の場合、「呼吸・心拍を確認」に移行する。

60秒以内を目標に行うこと

・人工呼吸
・SPO2モニター装着
・ECGモニター装着を検討

人工呼吸は、自発呼吸がない、あるいは心拍数100回/分未満の場合、遅くとも出生後60秒以内に行う。また、CPAP や酸素投与でも努力呼吸とチアノーゼがある場合に行う。

 

 

 

 

 

次の文を読み47〜49の問いに答えよ。
 Aさん(32 歳、初産婦)。妊娠35週0日、破水と陣痛発来で来院した。羊水混濁や胎児心拍の異常は認めず、来院後5時間で、経腟分娩となった。児は出生時、筋緊張の低下を認め自発呼吸がなかった。体位を整えて口鼻腔内吸引を行い、身体の羊水を拭き取った後、皮膚刺激を行った。約1分間皮膚刺激を行っても自発呼吸が認められず、心拍数は6秒間に4回であったため、経皮的動脈血酸素飽和度<SpO2>モニターを装着し、生後2分からroom air で人工呼吸を開始した。約30秒間人工呼吸を行ったところ、啼泣を始め、心拍数130/分、経皮的動脈血酸素飽和度<SpO2>80 %であった。人工呼吸を中止したところ努力呼吸は認めなかったため、生後10分まで観察を継続した後に蘇生を終了し、病棟で呼吸状態を観察することとした。

48 児の出生体重は2,350g。病棟で保育器に収容し、room airで呼吸状態を観察していた。出生30分後のバイタルサインは、呼吸数100/分、心拍数150/分、経皮的動脈血酸素飽和度<SpO2>98%で、陥没呼吸および呻吟が認められた。胸部エックス線写真を下図に示す。
 次に行う治療で適切なのはどれか。

1.胸腔穿刺
2.胸骨圧迫
3.経鼻的CPAP療法
4.キサンチン系薬の静脈内注射
5.肺サーファクタント補充療法

解答

解説

本症例のポイント

・児の出生体重:2,350g。
・保育器に収容し、room air で呼吸状態を観察。
・出生30分後:呼吸数100/分、心拍数150/分、SpO298%、陥没呼吸および呻吟あり。
・胸部エックス線写真:全体的に白っぽい(肺胞が虚脱している)。
→本症例は呼吸窮迫症候群が疑われる。呼吸窮迫症候群とは、早産児にみられる呼吸疾患で、サーファクタントという肺胞を覆う物質が産生されないか不足している(肺表面活性物質の欠乏)ために、肺胞が拡張した状態を保てないことで起こる。早産児や妊娠中に母親が糖尿病にかかった新生児は、呼吸窮迫症候群を発症するリスクが高くなる。肺サーファクタントとは、肺胞の空気が入る側へと分泌されている界面活性剤である。なお、肺サーファクタントは単一の成分ではなく、リン脂質を主成分とした混合物である。肺胞内の水分の表面張力を減少させることで、肺胞がつぶれてしまうのを防いでいる。持続性気道陽圧法(Continuous Positive Airway Pressur:CPAP:シーパップ)とは、気道内圧を呼吸相全般にわたって常に一定の陽圧に(大気圧よりも高く)保ち、換気は機械的な換気補助なしに患者の自発呼吸にまかせて行う換気様式のことである。機械で圧力をかけた空気を鼻から気道(空気の通り道)に送り込み、気道を広げて睡眠中の無呼吸を防止できる。

1.× 胸腔穿刺は、胸水に対し行う。胸水は主に悪性腫瘍や肺炎、結核、心不全などさまざまな病態で起こる。ベッドサイドでも比較的安全に実施できる。
2.× 胸骨圧迫は、心停止や呼吸が停止している状態で適応となる。
3.〇 正しい。経鼻的CPAP療法が本症例に行う治療である。本症例は呼吸窮迫症候群が疑われる。呼吸窮迫症候群とは、早産児にみられる呼吸疾患で、サーファクタントという肺胞を覆う物質が産生されないか不足している(肺表面活性物質の欠乏)ために、肺胞が拡張した状態を保てないことで起こる。早産児や妊娠中に母親が糖尿病にかかった新生児は、呼吸窮迫症候群を発症するリスクが高くなる。肺サーファクタントとは、肺胞の空気が入る側へと分泌されている界面活性剤である。なお、肺サーファクタントは単一の成分ではなく、リン脂質を主成分とした混合物である。肺胞内の水分の表面張力を減少させることで、肺胞がつぶれてしまうのを防いでいる。持続性気道陽圧法(Continuous Positive Airway Pressur:CPAP:シーパップ)とは、気道内圧を呼吸相全般にわたって常に一定の陽圧に(大気圧よりも高く)保ち、換気は機械的な換気補助なしに患者の自発呼吸にまかせて行う換気様式のことである。機械で圧力をかけた空気を鼻から気道(空気の通り道)に送り込み、気道を広げて睡眠中の無呼吸を防止できる。
4.× キサンチン系薬の静脈内注射は、「早産・低出生体重児における原発性無呼吸(未熟児無呼吸発作)」に適応となる。未熟児無呼吸発作の定義は,在胎期間37週未満で出生した無呼吸の原因となる基礎疾患がない新生児における,20秒を超える呼吸休止,または20秒未満の呼吸休止で徐脈(80/分未満)か,中枢性チアノーゼ,および/または85%未満の酸素飽和度を伴うものとされる。
5.× 肺サーファクタント補充療法は、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)に適応となる。急性期にガス交換を改善し、肺機能の再生に役立つと考えられる。ちなみに、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)とは、重症肺炎、敗血症や外傷などによって、炎症性細胞が活性化され、肺の組織である肺胞や毛細血管に傷害を与え、その結果、肺に水がたまり、重度の呼吸不全が引き起こされた状態のことを指す。 急性呼吸窮迫症候群(ARDS)は一般的に、原因となる疾患や外傷が発生してから24~48時間以内に発生することが多い。

 

 

 

 

 

次の文を読み47〜49の問いに答えよ。
 Aさん(32 歳、初産婦)。妊娠35週0日、破水と陣痛発来で来院した。羊水混濁や胎児心拍の異常は認めず、来院後5時間で、経腟分娩となった。児は出生時、筋緊張の低下を認め自発呼吸がなかった。体位を整えて口鼻腔内吸引を行い、身体の羊水を拭き取った後、皮膚刺激を行った。約1分間皮膚刺激を行っても自発呼吸が認められず、心拍数は6秒間に4回であったため、経皮的動脈血酸素飽和度<SpO2>モニターを装着し、生後2分からroom air で人工呼吸を開始した。約30秒間人工呼吸を行ったところ、啼泣を始め、心拍数130/分、経皮的動脈血酸素飽和度<SpO2>80 %であった。人工呼吸を中止したところ努力呼吸は認めなかったため、生後10分まで観察を継続した後に蘇生を終了し、病棟で呼吸状態を観察することとした。

49 日齢3。呼吸数50/分、全身状態は良好である。聴診で、胸骨左縁第2肋間を最強点とする連続性の心雑音を聴取した。心エコー検査で主肺動脈内に逆行性の血流を認め、動脈管開存症と診断された。
 今後、児の急性心不全を早期に発見するために注意すべき徴候はどれか。2つ選べ。

1.尿量の減少
2.呼吸数の低下
3.心拍数の低下
4.哺乳量の減少
5.心尖拍動の消失

解答1・4

解説

本症例のポイント

・日齢3(呼吸数50/分、全身状態は良好)
・聴診:胸骨左縁第2肋間を最強点とする連続性の心雑音を聴取。
・心エコー検査:主肺動脈内に逆行性の血流を認め、動脈管開存症と診断。
→動脈管開存症とは、胎児期に開存している大動脈と肺動脈間に存在する動脈管が出生後も自然閉鎖せず開存状態を維持した疾患である。つまり、出生後に動脈管が自然閉鎖しない病気である。大動脈から肺動脈への短絡が生じ、管が大きいと左心系の容量負荷になる。出生後は肺動脈圧が下がるため、胎児期とは逆に大動脈から肺動脈へ血液が流れるようになり、肺の血流が増加する。したがって、典型例では、ピークがⅡ音に一致した漸増・漸減型で、高調・低調両成分に富む荒々しい雑音(machinery murmur)が左第2肋間を中心に聴取される。治療が必要な症状として、動脈管が太く、たくさん血液が肺に流れて肺うっ血による心不全症状哺乳不良、嘔吐、体重増加不良、頻脈、頻呼吸、尿量減少など)を引き起こした場合である。

1.〇 正しい。尿量の減少/哺乳量の減少は、注意すべき徴候である。動脈管開存症とは、胎児期に開存している大動脈と肺動脈間に存在する動脈管が出生後も自然閉鎖せず開存状態を維持した疾患である。つまり、出生後に動脈管が自然閉鎖しない病気である。大動脈から肺動脈への短絡が生じ、管が大きいと左心系の容量負荷になる。出生後は肺動脈圧が下がるため、胎児期とは逆に大動脈から肺動脈へ血液が流れるようになり、肺の血流が増加する。したがって、典型例では、ピークがⅡ音に一致した漸増・漸減型で、高調・低調両成分に富む荒々しい雑音(machinery murmur)が左第2肋間を中心に聴取される。治療が必要な症状として、動脈管が太く、たくさん血液が肺に流れて肺うっ血による心不全症状哺乳不良、嘔吐、体重増加不良、頻脈、頻呼吸、尿量減少など)を引き起こした場合である。

2.× 呼吸数は、「低下」ではなく増加する。
3.× 心拍数は、「低下」ではなく増加する。
5.× 心尖拍動は、「消失」ではなく「躍動」される。左室の容量負荷が心尖躍動として観察される。四肢の脈は反跳脈として触れ、痩せた患者では腋窩や鼠径部で拍動がみえることもある。Ⅰ音とⅡ音は亢進し、心尖部にⅢ音と拡張期ランブルが聴かれる。

心不全とは?

心不全は心臓のポンプ機能低下のため末梢組織の酸素需要に見合った血液量を供給できない状態である。肺循環系にうっ血が著明なものを左心不全、体循環系にうっ血が著明なものを右心不全という。体液の著明やうっ血を生じ、主な症状として呼吸困難、咳嗽、チアノーゼ、血性・泡沫状喀痰(ピンクの痰)などがある。

心拍出量の低下を起こす原因として、
・左心不全:肺循環系にうっ血が著明なもの(呼吸困難、起座呼吸、尿量減少など)
・右心不全:体循環系にうっ血が著明なもの(頸静脈怒張、胸水・腹水、下腿浮腫、肝腫大など)
右室拡張末期圧の上昇(体循環の静脈系のうっ血)により右心不全は引き起こされる。

 

 

 

 

次の文を読み50、51の問いに答えよ。
 Aさん(41歳、初産婦、会社員)。夫(45歳、会社員)と2人暮らし。妊娠39週で体重3,180gの男児を吸引分娩で出産した。会陰切開部の痛みが強いため、産褥3日まで鎮痛薬を内服し日中のみ母児同室をしていた。「母乳で育てたいが、傷が痛くて授乳をするのがつらい」と話す。夫の両親は既に死亡し、Aさんの実母は実父の介護のため多忙で、退院後の育児のサポートは得られない状況である。

50 Aさんが住む市は産後ケア事業を実施しており、出産した病院の助産師は宿泊型の産後ケア事業の利用をAさんに勧めた。
 利用に関する説明で正しいのはどれか。

1.「利用日数は最大5日間です」
2.「申請窓口は都道府県保健所です」
3.「初産婦の方のみが利用できます」
4.「出産した病院の退院後から利用できます」
5.「利用には医師の診断書の提出が必要です」

解答

解説

本症例のポイント

・Aさん(41歳、初産婦、会社員)
・2人暮らし:夫(45歳、会社員)
・妊娠39週:吸引分娩(体重3,180gの男児)
・会陰切開部の痛みが強い。
・産褥3日まで:鎮痛薬を内服し、日中のみ母児同室。
・「母乳で育てたいが、傷が痛くて授乳をするのがつらい」と。
・夫の両親:既に死亡し、Aさんの実母は実父の介護のため多忙。
退院後の育児のサポート:得られない状況
・Aさんが住む市:産後ケア事業を実施している。
・助産師:宿泊型の産後ケア事業の利用をAさんに勧めた。
→産後ケア事業とは、分娩施設退院後から一定の期間、病院・診療所・助産所・対象者の居宅などにおいて、助産師などの看護職が中心となり、母親の身体的回復と心理的な安定を促進するとともに、母親自身がセルフケア能力を育み、母子とその家族が健やかな育児ができるよう支援することを目的としている。市町村が実施主体である。

本症例の場合、宿泊型の産後ケア事業の利用を勧めている。したがって、短期入所(ショートステイ)型の事業内容を主に参考にする。
事業内容として、利用者を短期入所させて産後ケアを行う。利用者は、例えば、産後に家族のサポートが十分受けられない状況にある者、授乳が困難な状況のまま分娩施設を退院した者、不慣れな育児に不安があり専門職のサポートが必要である者等が想定される。なお、分娩施設での延長入院(産褥入院)とは区別する必要がある。
利用期間は、原則として7日以内とし、分割して利用しても差し支えない。市町村が必要と認めた場合は、その期間を延長することができる。実施担当者は、短期入所型の産後ケア事業については、実施場所によらず、1名以上の助産師等の看護職を24時間体制で配置する。市町村の判断により父親、兄姉等の利用者の家族を同伴させることができる。家族の利用の際は他の利用者に十分配慮する必要があり、その旨あらかじめ確認しておく。
【ケアの内容】
① 母親の身体的ケア及び保健指導、栄養指導
② 母親の心理的ケア
③ 適切な授乳が実施できるためのケア(乳房ケアを含む。)
④ 育児の手技についての具体的な指導及び相談
⑤ 生活の相談、支援

(※参考:「産後ケア事業ガイドライン 」厚生労働省HPより)

1.× 利用日数は、「最大5日間」といいた決まりはなく、原則として7日以内とし、分割して利用しても差し支えない。ただし、市町村が実施主体であるため異なる位町村もある。
2.× 申請窓口は、「都道府県保健所」ではなく市区町村である。なお、本事業の趣旨を理解し、適切な実施が期待できる団体等に事業の全部又は一部を委託することができる。
3.× 利用できるのは「初産婦の方のみ」ではなく「妊産婦およびその家族」である。産前・産後サポート事業は、子育て世代包括支援センターの利用者で、身近に
相談できる者がいないなど、支援を受けることが適当と判断された妊産婦等が対象であり、産後ケア事業は、心身の不調又は育児不安がある者、その他、特に支援が必要と認められる者が対象となる(※参考:「産後ケア事業ガイドライン 」厚生労働省HPより)。
4.〇 正しい。「出産した病院の退院後から利用できます」と説明する。妊娠中から出産後の母親及びその家族の身体的安定・心理的安定のための相談、支援、仲間づくりをする事業であることから、妊娠初期(母子健康手帳交付時等)から産後1年頃までの時期が目安となるが、親子の状況、地域におけるニーズや社会的資源等の状況を踏まえ、市町村において対象時期を設定する(※参考:「産後ケア事業ガイドライン 」厚生労働省HPより)。
5.× 利用には「医師の診断書の提出」は不要である。申請時の持ち物として、母子健康手帳や印鑑、市民税課税状況の分かる書類、産後ケア事業申請書兼情報提供同意書などが必要となる。

 

 

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