第104回(H30) 保健師国家試験 解説【午後11~15】

 

11 地域ケアシステムを構築するための会議の開催について最も適切なのはどれか。

1.参加メンバーを固定する。
2.問題が生じたときに開催する。
3.住民の代表をメンバーに加える。
4.あらかじめ議論の方向性を決めておく。

解答

解説

(図引用:「地域包括ケアシステムの構築に向けて都道府県と市町村に求められる役割」厚生労働省HPより)

地域ケアシステムとは?

地域ケアシステムとは、住民が住み慣れた地域で暮らせるようにケアシステムを構築することである。高齢者の尊厳の保持と自立生活の支援の目的のもとで、可能な限り住み慣れた地域で生活を継続することができるよう、包括的な支援・サービス提供体制の構築を目指すものである。この地域包括ケアシステムが効果的に機能するために、「4つの助(自助・互助・共助・公助)」の考え方が連携し、課題解決に向け取り組んでいく必要がある。

第1段階:フォーマルなサービスの充実。
第2段階:関係機関及び地域住民の組織化。
第3段階:地域での支援のネットワーク化。

1.× 参加メンバーを「固定する」のではなく、会議内容で変えた方が良い。なぜなら、会議内容で変えた方がより専門的で確実性の高い地域ケアシステムを構築できるため。
2.× 問題が「生じた」ときではなく、生じる前(定期的)に開催する。なぜなら、将来のあるべき地域ケアシステムの方向性を話し合う必要があるため。地域ケアシステムとは、住民が住み慣れた地域で暮らせるようにケアシステムを構築することである。高齢者の尊厳の保持と自立生活の支援の目的のもとで、可能な限り住み慣れた地域で生活を継続することができるよう、包括的な支援・サービス提供体制の構築を目指すものである。この地域包括ケアシステムが効果的に機能するために、「4つの助(自助・互助・共助・公助)」の考え方が連携し、課題解決に向け取り組んでいく必要がある。
3.〇 正しい。住民の代表をメンバーに加える。なぜなら、地域ケアシステムとは、住民が住み慣れた地域で暮らせるようにケアシステムを構築することであるため。その地域に暮らす住民代表者の参加が不可欠である。
4.× あらかじめ議論の方向性を決めておく必要はない。なぜなら、会議参加メンバーの意見を尊重する必要があるため。様々な意見が出ることが予想されるため、一方的に議論の方向性を決めておく必要はない。

 

 

 

 

 

12  Aちゃん(3歳4か月、男児)。両親と祖母との4人暮らし。市の3歳児健康診査に母親と来所した。階段の昇り降りはできるが、泣いていて言語の理解や精神発達の観察ができなかった。母親は「家では簡単な単語は出ている。仕事が忙しいので、平日はほとんど同居する夫の母にみてもらっている。夫の母は外出を好まず、家でテレビを観て過ごすことが多い」と話した。市では、地区乳幼児相談、3歳児健康診査事後教室および4歳児子育て教室を実施している。
 このときの保健師の対応として最も適切なのはどれか。

1.地区乳幼児相談への参加を促す。
2.3歳児健康診査事後教室への参加を促す。
3.日中の家庭訪問を早期に行うことを伝える。
4.4歳児子育て教室で経過を確認することを伝える。

解答

解説

本症例のポイント

・Aちゃん(3歳4か月、男児)。
・4人暮らし:両親、祖母。
【3歳児健康診査】
・階段昇降可能、泣いていて言語の理解や精神発達の観察ができなかった
・母親「家では簡単な単語は出ている。仕事が忙しいので、平日はほとんど同居する夫の母にみてもらっている。夫の母は外出を好まず、家でテレビを観て過ごすことが多い」と。
→母親「家では簡単な単語は出ている」というものの、Aちゃんの3歳児健康診査では、「泣いていて言語の理解や精神発達の観察ができなかった」。異常がないか確認しておきたいが、どのようにすれば「泣いていない」状態でAちゃんを正確に健康診査できるか考えていく。

家庭訪問の優先順位

① 生命にかかわるような緊急性の高い対象者
例:自傷他害のおそれがある者、感染拡大による社会的影響が大きい感染症、重症疾患の治療中断者・放置者、児童・高齢者虐待 等。

②健康問題の悪化が予測される対象者
例:未治療者、健康診査で発見された要治療者、健康診査・精密検査未受診者 等。

③ 問題解決が困難な対象者
例:家族のなかにキーパーソンとなる人がいない、複数の問題を抱えている 等。

1.× 地区乳幼児相談への参加を促す必要はない。なぜなら、現時点ではAちゃんの言語理解や精神発達を観察できておらず問題があるとは断定できないため。地区乳幼児相談は、子の発育や発達・栄養・母乳・歯みがき等について、保健師、助産師、栄養士、歯科衛生士などの専門職が相談できる場所である。
2.× 3歳児健康診査事後教室への参加を促す必要はない。なぜなら、現時点ではAちゃんの言語理解や精神発達を観察できておらず問題があるとは断定できないため。健康診査事後教室とは、言語発達および精神発達等で経過観察を要すると判断された児または、育児不安や児との関わり方に問題があると判断された母親を対象に、児の発育・発達、育児状況を確認し、必要に応じ早期療育につなげるとともに、健全な成長を促すために個々の児の特性に応じた適切な指導を行うことを目的とする教室のことである。
3.〇 正しい。日中の家庭訪問を早期に行うことを伝える。なぜなら、設問文に「家では簡単な単語は出ている。仕事が忙しいので、平日はほとんど同居する夫の母にみてもらっている。夫の母は外出を好まず、家でテレビを観て過ごすことが多い」との情報もあり、日中の早期に家庭訪問を行うことで、Aちゃんが日中どのように過ごしているのか確認できるため。Aちゃんがリラックスできる環境で、母親の「家では簡単な単語は出ている」という情報の確認も行うことができる。
4.× 4歳児子育て教室で経過を確認することを伝える必要はない。なぜなら、現在Aちゃんの言語理解や精神発達の確認ができていない状況であるため。また、Aちゃん(3歳4か月)が、4歳になるまで半年以上の期間何もしないことになる。

子どもの発達のポイント

【1歳6か月】
・コップで水を飲む。
・スプーンを使って食べようとする。
・積み木を2~3個積むことができる。
・意味のある言葉を2~3語話す(パパ, ママ, ブーブー)。
・簡単な指示に従うことができる(おいで、○○をとって)。
・離乳が完了する。

【3歳】
・自分の名前を言う。
・簡単な文章を話す。
・指示に従う。
・物の大小や長短、色を区別できる。
・箸を持って食べる。
・手を洗う。
・ままごとやごっこ遊びをする。

 

 




 

 

13 精神保健医療福祉施策について正しいのはどれか。

1.精神通院医療は障害者基本法に規定されている。
2.市町村には基幹相談支援センターの設置義務がある。
3.精神障害者の在宅福祉サービスの実施主体は都道府県である。
4.精神疾患は医療計画で重点的に対策を推進する疾病に位置付けられている。

解答

解説

(※一部引用:「第1章 我が国における精神保健医療福祉施策の動向 」厚生労働省HPより)

障害者総合支援法とは?

障害者総合支援法は、2013年に障害者自立支援法から障害者総合支援法へと改正され、障害者と障害児を対象とした障害保健福祉施策についてまとめられた法律である。これにより障害者の範囲が拡大され、身体障害者、精神障害者、知的障害者、障害児の全てが対象とされている。そして、対象となっている者は、認定調査というものを受け「障害支援区分」という障害の重症度分類によって7区分(非該当、区分1~6)に分けられる。それにより受けられるサービス内容が変わってくる。

①障害者も難病患者も自立できる社会をめざす。
②応能負担(所得に応じて自己負担額が変わること)が原則。
③あらゆる障害(身体・知的・精神+難病)についてこの法律で対応する。
④市区町村が事業の母体である。

1.× 精神通院医療は、「障害者基本法」ではなく『障害者総合支援法』に規定されている。障害者基本法とは、障害者施策について基本事項を定め、障害者の自立と参加を総合的かつ計画的に推進することを目的としている法律である。ちなみに、障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(障害者総合支援法)に自立支援医療(更生医療)が規定されており、自立支援医療には、①更生医療、②育成医療、③精神通院医療がある。
2.× 市町村の基幹相談支援センターの設置は、「義務」ではなく任意である。つまり、市町村は、基幹相談支援センターを設置することができる。基幹相談支援センターとは、地域における障害相談の中核的な役割を担う機関である。障がい者のニーズに対応する総合相談や相談支援体制の強化、地域移行・地域定着、権利擁護・虐待防止などあらゆる役割を果たしており、いわゆる地域のコンシェルジュカウンターのような働きをしている。
3.× 精神障害者の在宅福祉サービスの実施主体は、「都道府県」ではなく市町村である。障害者施策を3障害一元化し、制度格差を解消し、精神障害者が対象となった。市町村に実施主体を一元化し、都道府県はこれをバックアップする。そうすることで、自立と共生の社会を実現し、障害者が地域で暮らせる社会を目指す。
4.〇 正しい。精神疾患は、医療計画で重点的に対策を推進する疾病に位置付けられている。精神疾患は、医療計画で「生活習慣病その他の国民の健康の保持を図るために特に広範かつ継続的な医療の提供が必要と認められる疾病」として厚生労働省令で定められている。いわゆる5疾病5事業の5疾病のひとつである。ちなみに、医療計画とは、地域における体系的な医療の提供を実現することを目的として、都道府県が策定する計画である。医療計画は6年ごと(平成29年度までは5年ごと)に見直される。

(※参考:「障害保健福祉施策の改革のポイント」厚生労働省HPより)

医療計画の記載事項

5疾病
①がん、②脳卒中、③心筋梗塞などの心血管疾患、④糖尿病、⑤精神疾患

5事業
①救急医療、②災害医療、③へき地医療、④周産期医療、⑤ 小児医療(小児救急を含む)

記載事項
①5疾病の治療または予防に係る事業、5事業の医療の確保に必要な事業。
②5疾病5事業に関する目標、医療連携体制(施設間の機能分担・業務連携の確保)、情報提供の推進。
③居宅等における医療の確保。
④ 地域医療構想に関する事項。
⑤ 地域医療構想の達成に向けた病床の機能の分化及び連携の推進。
⑥ 病床の機能に関する情報提供の推進。
⑦外来医療の確保。
⑧医師の確保。
⑨医療従事者(医師を除く)の確保
⑩ 医療の安全の確保
⑪ 医療圏の設定(二次、三次医療圏を定める)
⑫医師少数区域等の設定
⑬ 基準病床数(一般病床、療養病床、結核病床、精神病床、感染症病床)
⑭ 地域医療支援病院等の整備目標。
⑮その他医療提供体制の確保に関する必要事項。

(※参考:「医療計画について」厚生労働省HPより)

 

 

 

 

 

14 健康増進法に基づく健康増進事業による肝炎ウイルス検診について正しいのはどれか。

1.実施主体は都道府県である。
2.対象は満40歳以上の者である。
3.60歳から無料で検診が受けられる。
4.特定健康診査の検査項目に定められている。

解答

解説

健康増進法とは?

健康増進法は、国民の健康維持と現代病予防を目的として制定された日本の法律である。都道府県と市町村は、地域の実情に応じた健康づくりの促進のため、都道府県健康増進計画(義務)および市町村健康増進計画(努力義務)を策定する。平成14(2002)年に制定された。

【市町村が行う健康増進事業】
①健康手帳、②健康教育、③健康相談、④訪問指導、⑤総合的な保健推進事業、⑥歯周疾患検診、⑦骨粗鬆症検診、⑧肝炎ウイルス検診、⑨がん検診、⑩健康検査、⑪保健指導などである。

【都道府県の役割】
都道府県は、都道府県健康増進計画において、管内市町村が実施する健康増進事業に対する支援を行うことを明記する。都道府県保健所は、市町村が地域特性等を踏まえて健康増進事業を円滑かつ効果的に実施できるよう、必要な助言、技術的支援、連絡調整及び健康指標その他の保健医療情報の収集及び提供を行い、必要に応じ健康増進事業についての評価を行うことが望ましい。都道府県は、保健・医療・福祉の連携を図るとともに、市町村による健康増進事業と医療保険者による保健事業との効果的な連携を図るために、地域・職域連携推進協議会を活性化していくことが望ましい。

1.× 実施主体は、「都道府県」ではなく市町村である。実施は努力義務である。
2.〇 正しい。対象は、満40歳以上の者である。満40歳以上で一度も肝炎ウイルス検査を受けたことがない者が対象である。
3.× 「60歳から」といった年齢制限はなく、無料で検診が受けられる。
4.× 特定健康診査の検査項目には定められていない。特定健康診査は、生活習慣病に関するものである。

(※参考:「肝炎総合対策に関するQ&A」厚生労働省HPより)

 

 




 

 

15 口腔の疾患とその予防法の組合せで正しいのはどれか。

1.う蝕:フッ化物を塗布する
2.歯周病:塩分摂取を制限する
3.口内炎:ビタミンKを摂取する
4.顎関節症:硬い食品を強く嚙む

解答

解説
1.〇 正しい。う蝕(虫歯)は、フッ化物を塗布することが有効である。「むし歯を作る要因は、歯の質・細菌(むし歯原因菌)・食物(砂糖)の3つにまとめることができます。それぞれの要因に対応する形でむし歯予防法は、フッ化物応用とシーラント・歯みがきの励行・糖分を含む食品の摂取頻度の制限にまとめることができます。これらの予防法が、家庭で・地域で・保健サービスの現場で、バランスよく組み合わされて行われることが必要です。」(※一部引用:「むし歯の予防法(総論)」厚生労働省HPより)
2.× 歯周病の予防策として、「塩分摂取を制限する」のではなく、プラーク(歯垢)の除去である。歯周病とは、歯と歯ぐき(歯肉)のすきま(歯周ポケット)から侵入した細菌が、歯肉に炎症を引き起こし、さらには歯を支える骨(歯槽骨)を溶かしてグラグラにさせてしまう病気である。プラーク(歯垢)を除去するには、毎日の歯みがきが重要である。よく磨いたつもりでも、歯と歯の間は磨き残しが多く、大部分にプラークが残っている。これらのプラーク(歯垢)を除去するためには、ハブラシに加えて、歯間クリーナー(歯間ブラシやデンタルフロス)の使用が効果的と言われている。ちなみに、塩分摂取を制限は、高血圧の予防などに効果がある。
3.× 口内炎の予防策として、「ビタミンKを摂取する」のではなく、ビタミンB1・B2・B6の摂取である。ちなみに、ビタミンKの摂取は、出血傾向の予防などに効果がある。ちなみに、口内炎とは、口内の粘膜に起こる炎症の総称である。
4.× 顎関節症の予防策として、「硬い食品を強く嚙む」ことは直接的な効果は薄い。なぜなら、顎関節症は、咀嚼時の癖やストレスなどによる食いしばり、姿勢の悪さなどの複数の要因が絡んで発生するものであるため。したがって、予防法には、顎に負担がかかる行動や習慣をなるべく避ける必要がある。日常で顎に負担がかかりやすい習慣には、「ほおづえをつく」、「うつ伏せで寝る」などがある。ささいな習慣や癖に注意することで、症状の改善、悪化の防止、または予防にもつながる

 

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