16 Aさん(28歳、男性)。8年前に統合失調症を発症し長期入院をしていたが、6か月前に退院し、自宅で母親と 2人で暮らしている。母親から「退院時から通っていたデイケアに2週間ほど行っていません。食事は私と一緒に食べていて、服薬もできていますが、それ以外はあまり部屋から出てきません。デイケアの職員には少し様子をみるようにと言われましたが、心配で仕方がありません。こういうときはどうすれば良いでしょうか」と地区担当保健師に電話があった。保健師が家庭訪問したところ、Aさんは「デイケアにはそのうち行きます」と言って部屋に戻った。
このときに保健師が母親へ助言する内容で最も適切なのはどれか。
1.「すぐに主治医に相談してください」
2.「別のデイケア施設の見学に行きませんか」
3.「なるべく外に出かけることをAさんに勧めてください」
4.「家族会に参加して他の家族のお話を聞いてみてはいかがですか」
解答4
解説
・Aさん(28歳、男性、統合失調症:6か月前退院)。
・2人暮らし:母親。
・母親「退院時から通っていたデイケアに2週間ほど行っていません。食事は私と一緒に食べていて、服薬もできていますが、それ以外はあまり部屋から出てきません。デイケアの職員には少し様子をみるようにと言われましたが、心配で仕方がありません。こういうときはどうすれば良いでしょうか」と。
・保健師が家庭訪問:Aさん「デイケアにはそのうち行きます」と言って部屋に戻った。
→本症例は、統合失調の維持期である。この時期は、再発の防止、患者がより良い生活を獲得する、体力作り、デイケアの維持を目指していく。母親の心配や焦りの感情も読み取れるため、母親に対しての共感や傾聴などやそのほかの支援していく。
1.× 「すぐに主治医に相談してください」と伝えるのは優先度が低い。なぜなら、Aさんは、服薬ができていること、食事などの生活に大きな乱れもないことから、病状自体は安定していると考えられるため。前兆期には、身体症状(睡眠障害、倦怠感)や非特異的な精神症状(不安)などがみられる。
2.× 「別のデイケア施設の見学に行きませんか」と伝えるのは優先度が低い。なぜなら、安易にデイケアを変えることは、環境の変化による本人への精神的な負荷がかかるため。また、Aさんからは現在のデイケアへの拒否の訴えはなく、デイケアへの通所の意思・約束もできている。
3.× 「なるべく外に出かけることをAさんに勧めてください」と伝えるのは優先度が低い。なぜなら、外出しても「母のデイケアへ行かない不安」の解決にはならないため。設問から、母親は心配や焦りといった感情が大きい状態であることが読み取れ、母親の心配・不安の軽減のほうを支援していく。無理にAさんの外出を勧めることは、母親とAさんの関係が悪化しかねない。
4.〇 正しい。「家族会に参加して他の家族のお話を聞いてみてはいかがですか」と伝えるのは優先度が高い。家族会とは、精神障害者(例えば、アルコール依存症など)を家族にもつ人たちが、お互いに悩みを分かちあい、共有し、連携することでお互いに支えあう会である。 支えあいを通して、地域で安心して生活できるための活動を行っている。設問の相談主訴は、Aさんのデイケア通所が滞っていることよりも、むしろそのことに母親が不安を抱いていることである。したがって、母親に社会への参加を勧め、ほかの家族の体験談などを聞くことで母親の不安軽減する必要がある。
統合失調症とは、幻覚・妄想・まとまりのない発語および行動・感情の平板化・認知障害ならびに職業的および社会的機能障害を特徴とする。原因は不明であるが、遺伝的および環境的要因を示唆する強固なエビデンスがある。好発年齢は、青年期に始まる。治療は薬物療法・認知療法・心理社会的リハビリテーションを行う。早期発見および早期治療が長期的機能の改善につながる。統合失調症患者の約80%は、生涯のある時点で、1回以上うつ病のエピソードを経験する。統合失調症患者の約5~6%が自殺し,約20%で自殺企図がみられる。したがって、うつ症状にも配慮して、工程がはっきりしたものや安全で受け身的で非競争的なものであるリハビリを提供する必要がある。
(※参考:「統合失調症」MSDマニュアル様HPより)
17 高齢者の肺炎球菌感染症の予防接種について正しいのはどれか。
1.施設に入所する高齢者への予防接種の実施は都道府県知事の責務である。
2.平成28年(2016年)4月から定期の予防接種が開始された。
3.予防接種法による健康被害の救済措置の対象となる。
4.予防接種法においてA類疾病に指定されている。
解答3
解説
定期予防接種には、①A類(旧一類)と②B類(旧二類)がある。
①A類(旧一類):小児を対象とする定期予防接種のもの。
②B類(旧二類):高齢者の肺炎球菌感染症のほか、高齢者のインフルエンザなど。
1.× 施設に入所する高齢者への予防接種の実施は、「都道府県知事」ではなく市町村長の責務である。これは5条に規定されており、「第五条 市町村長は、A類疾病及びB類疾病のうち政令で定めるものについて、当該市町村の区域内に居住する者であって政令で定めるものに対し、保健所長(特別区及び地域保健法(昭和二十二年法律第百一号)第五条第一項の規定に基づく政令で定める市(第十条において「保健所を設置する市」という。)にあっては、都道府県知事)の指示を受け期日又は期間を指定して、予防接種を行わなければならない。」と記載されている。(※一部抜粋:「予防接種法」e-GOV法令検索様HPより)
2.× 定期の予防接種(B類定期予防接種)が開始されたのは、「平成28年(2016年)4月から」ではなく平成26年(2014年)10月である。
3.〇 正しい。予防接種法による健康被害の救済措置の対象となる。これは第5章「定期の予防接種等による健康被害の救済措置」に記載されている。(健康被害の救済措置)第十五条 市町村長は、当該市町村の区域内に居住する間に定期の予防接種等を受けた者が、疾病にかかり、障害の状態となり、又は死亡した場合において、当該疾病、障害又は死亡が当該定期の予防接種等を受けたことによるものであると厚生労働大臣が認定したときは、次条及び第十七条に定めるところにより、給付を行う。2 厚生労働大臣は、前項の認定を行うに当たっては、審議会等(国家行政組織法(昭和二十三年法律第百二十号)第八条に規定する機関をいう。)で政令で定めるものの意見を聴かなければならない。(給付の範囲)第十六条 A類疾病に係る定期の予防接種等又はB類疾病に係る臨時の予防接種を受けたことによる疾病、障害又は死亡について行う前条第一項の規定による給付は、次の各号に掲げるとおりとし、それぞれ当該各号に定める者に対して行う。(※一部抜粋:「予防接種法」e-GOV法令検索様HPより)
4.× 高齢者の肺炎球菌感染症の予防接種は、予防接種法において、「A類疾病」ではなくB類疾病に指定されている。ちなみに、「A類疾病」とは、次に掲げる疾病をいう。①ジフテリア、②百日せき、③急性灰白髄炎、④麻しん、⑤風しん、⑥日本脳炎、⑦破傷風、⑧結核、⑨Hib感染症、⑩肺炎球菌感染症(小児がかかるものに限る。)、⑪ヒトパピローマウイルス感染症、⑫前各号に掲げる疾病のほか、人から人に伝染することによるその発生及びまん延を予防するため、又はかかった場合の病状の程度が重篤になり、若しくは重篤になるおそれがあることからその発生及びまん延を予防するため特に予防接種を行う必要があると認められる疾病として政令で定める疾病(※一部抜粋:「予防接種法」e-GOV法令検索様HPより)
18 介護保険制度について正しいのはどれか。
1.利用者は居宅介護サービス計画を作成するための費用の1割を負担する。
2.介護保険認定の申請手続きの代行は被保険者の家族以外はできない。
3.利用者の日常生活能力の自己申告に基づき要介護認定が行われる。
4.利用者の選択によってサービスを決定することが基本である。
解答4
解説
介護保険制度とは、寝たきりや認知症等で常時介護を必要とする状態(要介護状態)になった場合や、家事や身支度等の日常生活に支援が必要であり、特に介護予防サービスが効果的な状態(要支援状態)になった場合に、介護の必要度合いに応じた介護サービスを受けることができる。
【目標】
予防とリハビリテーションの重視
高齢者による選択
在宅ケアの推進
利用者本位のサービスの提供
社会連帯による支え合い
介護基盤の整備
重層的で効率的なシステム
【基本理念】
自己決定の尊重
生活の継続
自己支援(残存能力の活用)
1.× 利用者は、居宅介護サービス計画を作成するための費用の自己負担はない。これは介護保険法46条「市町村は、居宅要介護被保険者が、当該市町村の長又は他の市町村の長が指定する者(以下「指定居宅介護支援事業者」という。)から当該指定に係る居宅介護支援事業を行う事業所により行われる居宅介護支援(以下「指定居宅介護支援」という。)を受けたときは、当該居宅要介護被保険者に対し、当該指定居宅介護支援に要した費用について、居宅介護サービス計画費を支給する」と記載されている。(※一部抜粋:「介護保険法」e-GOV法令検索様HPより)したがって、費用の全額が介護保険から支給され、自己負担はない。
2.× 介護保険認定の申請手続きの代行は、被保険者の家族以外にも代わって行える。これは介護保険法27条「要介護認定を受けようとする被保険者は、厚生労働省令で定めるところにより、申請書に被保険者証を添付して市町村に申請をしなければならない。この場合において、当該被保険者は、厚生労働省令で定めるところにより、第四十六条第一項に規定する指定居宅介護支援事業者、地域密着型介護老人福祉施設若しくは介護保険施設であって厚生労働省令で定めるもの又は第百十五条の四十六第一項に規定する地域包括支援センターに、当該申請に関する手続を代わって行わせることができる」と記載されている。(※一部抜粋:「介護保険法」e-GOV法令検索様HPより)
3.× 要介護認定は、利用者の日常生活能力の自己申告ではない。要介護認定は、市町村職員などの訪問調査による一次判定、医師の意見書等に基づく介護認定審査会による審査・判定(二次判定)の結果をもとに、市町村が認定する。
4.〇 正しい。利用者の選択によってサービスを決定することが基本である。介護保険では、利用者自らの意思によってサービスを選択するのが基本である。介護保険の目標と基本理念として、【目標】①予防とリハビリテーションの重視、②高齢者による選択、③在宅ケアの推進、④利用者本位のサービスの提供、⑤社会連帯による支え合い、⑥介護基盤の整備、⑦重層的で効率的なシステムがあげられる。【基本理念】①自己決定の尊重、②生活の継続、③自己支援(残存能力の活用)があげられる。
(※図引用:「みんなの介護」より)
19 石綿による疾病に関する労災保険給付の支給決定件数で正しいのはどれか。
1.平成18年度(2006年度)がピークである。
2.平成22年度(2010年度)から平成27年度(2015年度)まで連続して増加している。
3.平成27年度(2015年度)では中皮腫より肺がんの方が多い。
4.平成27年度(2015年度)の肺がんに対する支給は1,000 件を超えている。
解答1
解説
石綿(アスベスト)とは、天然にできた鉱物繊維で「せきめん」「いしわた」とも呼ばれている。石綿関連疾患には、石綿肺、肺がん、中皮腫、良性石綿胸水、びまん性胸膜肥厚や、病態として、胸膜プラークなどがある。
石綿曝露作業に従事していたことが原因で中皮腫や肺癌などを発症したと認められた場合は、『労働者災害補償保険法(労災保険法)』に基づく各種の労災保険給付や『石綿による健康被害の救済に関する法律(石綿救済法)』に基づく特別遺族給付金が支給される。
(※図引用:「石綿による疾病に関する労災保険給付の支給決定件数」厚生労働省HPより)
1.〇 正しい。平成18年度(2006年度)がピークである。石綿による疾病に関する労災保険給付の支給決定件数が最も多かったのは平成18年度で、1,858件であった。
2.× 平成22年度(2010年度)から平成27年度(2015年度)までは、「連続して増加している」のではなく、ほぼ横ばいで毎年1,000件程度である。
3.× 逆である。平成27年度(2015年度)では、「肺がん」より「中皮腫」の方が多い。肺癌が387件、中皮腫が540件である。
4.× 平成27年度(2015年度)の肺がんに対する支給は、1,000 件を満たない。平成28年度の肺癌に対する労災保険給付の支給決定件数は387件であった。
(※図引用:「石綿による疾病に関する労災保険給付の支給決定件数」厚生労働省HPより)
20 特定業務従事者の健康診断について、3か月以内ごとの実施が義務付けられている業務はどれか。(不適切問題:採点対象外)
1.鉛業務
2.放射線業務
3.高気圧業務
4.四アルキル鉛業務
解答 なし(採点対象から除外)
理由:設問が不適切で正解が得られないため。
解説
特定業務従事者の健康診断は、『労働安全衛生規則』45条に定められている。
選択肢はいずれも『労働安全衛生規則』に基づく特殊健康診断が義務づけられている業務である。
1~4.× 鉛業務/放射線業務/高気圧業務/四アルキル鉛業務/の選択肢はいずれも『労働安全衛生規則』に基づく特殊健康診断が義務づけられている業務である。特殊健康診断とは、労働安全衛生法第66条第2、3項に定められた健康診断で、じん肺法第3条に定められていた健康診断を含めていう。 労働衛生対策上特に有害であるといわれている業務に従事する労働者等を対象として実施する健康診断である。特殊健康診断実施を義務付けられている業種として、①粉じん作業、②高圧室内業務と潜水業務、③電離放射線業務、④特定化学物質の製造・取り扱い業務、⑤鉛業務、⑥四アルキル鉛等業務、⑦有機溶剤業務、⑧石綿(アスベスト)取り扱い業務があげられる。
1.× 鉛業務の健康診断は、雇入時、配置転換時、就業後6か月以内ごとに。
2.× 放射線業務の健康診断は、雇入時、配置転換時、就業後6か月以内ごとに。
3.× 高気圧業務の健康診断は、雇入時、配置転換時、就業後6か月以内ごとに。
4.× 四アルキル鉛業務の健康診断は、雇入時、配置転換時、就業後3か月後ごとであるが、特定業務従事者の健康診断ではない。
労働安全衛生規則は、労働の安全衛生についての基準を定めた厚生労働省の省令である。 労働安全衛生法及び労働安全衛生法施行令に基づき定められたものである。
「労働安全衛生法」とは、労働者の安全と衛生についての基準を定めた日本の法律である。事業者は安全衛生管理体制を整備することが義務づけられており、それぞれの事業規模に応じた①衛生管理者、②総括安全衛生管理者などを選任しなければならない。
①衛生管理者
職場の衛生にかかわる技術的事項の管理を行う。少なくとも毎週1回作業場の巡視を行い、設備、作業方法または衛生状態に有害のおそれがあるときは、直ちに健康障害防止措置を講じなければならない。
②総括安全衛生管理者
安全管理者、衛生管理者を指揮し、安全・衛生・健康・事故防止などの統括管理を行う。その事業場で統括管理する者(工場長、支店長 等)を充てなければならない。