第104回(H30) 保健師国家試験 解説【午後21~25】

 

21 健康上の問題がある児童生徒に対して、養護教諭を中心に行う個別の保健指導を規定しているのはどれか。

1.文部科学省設置法
2.学校保健安全法
3.学校教育法
4.教育基本法

解答

解説

養護教諭の主な職務

養護教諭とは主に、小・中・高校に配属されている「保健室の先生」のことである。 学校でケガをしたり体調を崩したりしたとき、保健室に行くと対応してくれるのが養護教諭である。養護教諭がいることで、生徒たちが安心して学校に通える環境が整えられている。

①保健管理:救急処置、健康診断(実施計画立案、準備、指導、評価)、感染症予防、経過観察・配慮を必要とする子どもの支援、環境管理。
②保健教育:授業への参画、保健指導(個別の児童・生徒と保護者への指導・助言、集団への指導)
③健康相談:心身の健康問題への対応・支援
④保健室経営:保健室経営計画の作成、備品の管理
⑤保健組織活動学校保健委員会 等
⑥学校保健計画・学校安全計画策定への参画

1.× 文部科学省設置法とは、文部科学省の設置ならびに任務およびこれを達成するため必要となる明確な範囲の所掌事務を定めるとともに、その所掌する行政事務を能率的に遂行するため必要な組織を定めることを目的として制定された法律である。
2.〇 正しい。学校保健安全法は、健康上の問題がある児童生徒に対して、養護教諭を中心に行う個別の保健指導を規定している。学校保健安全法とは、学校における児童生徒等及び職員の健康の保持増進を図るための法律である。学校保健安全法は、主に①学校保健、②学校安全の体制、③健康診断などを定めている。(保健指導)9条には、「養護教諭その他の職員は、相互に連携して、健康相談又は児童生徒等の健康状態の日常的な観察により、児童生徒等の心身の状況を把握し、健康上の問題があると認めるときは、遅滞なく、当該児童生徒等に対して必要な指導を行うとともに、必要に応じ、その保護者(学校教育法第十六条に規定する保護者をいう。第二十四条及び第三十条において同じ。)に対して必要な助言を行うものとする」と規定されている(※一部引用:「学校保健安全法」e-GOV法令検索様HPより)。
3.× 学校教育法は、学校教育制度の基本について定めた法律である。学校における保健学習や安全学習について、学校教育法の教育基準に基づき行われている。
4.× 教育基本法は、①日本の教育の目的及び理念、②義務教育や学校教育といった教育の実施に関する基本、教育行政について定められている。

 

 

 

 

 

22 管内の病院から、保健所に「複数の入院患者が多剤耐性菌に感染している」との報告があった。感染症担当の保健師は、患者の発生状況および病院が実施した対応について確認した後、立ち入り検査を行うこととなった。
 立ち入り検査の根拠となる法律はどれか。

1.医療法
2.地域保健法
3.食品衛生法
4.労働安全衛生法

解答

解説

1.〇 正しい。医療法は、設問の立ち入り検査の根拠となる法律となる。医療法とは、病院、診療所、助産院の開設、管理、整備の方法などを定める日本の法律である。①医療を受けるものの利益と保護、②良好かつ適切な医療を効率的に提供する体制確保を主目的としている。25条には「都道府県知事、保健所を設置する市の市長又は特別区の区長は、必要があると認めるときは、病院、診療所若しくは助産所の開設者若しくは管理者に対し、必要な報告を命じ、又は当該職員に、病院、診療所若しくは助産所に立ち入り、その有する人員若しくは清潔保持の状況、構造設備若しくは診療録、助産録、帳簿書類その他の物件を検査させることができる」と規定されている。(※一部引用:「医療法」e-GOV法令検索様HPより)
2.× 地域保健法とは、①地域保健対策の推進に関する基本指針、②保健所の設置その他地域保健対策の推進に関し基本となる事項を定めることにより、母子保健法その他の地域保健対策に関する法律による対策が地域において総合的に推進されることを確保し、地域住民の健康の保持及び増進に寄与することを目的として制定された法律である。病院を対象としていない。
3.× 食品衛生法とは、日本において飲食によって生ずる危害の発生を防止するための日本の法律である。食品を提供するスーパーマーケットなどの小売店や、食事を提供する飲食店食品に関わる添加物や容器包装を扱う企業など、食品業界の事業者全体が対象とされている。
4.× 労働安全衛生法とは、労働者の安全と衛生についての基準を定めた日本の法律である。事業者は安全衛生管理体制を整備することが義務づけられており、それぞれの事業規模に応じた①衛生管理者、②総括安全衛生管理者などを選任しなければならない。

労働安全衛生法とは?

「労働安全衛生法」とは、労働者の安全と衛生についての基準を定めた日本の法律である。事業者は安全衛生管理体制を整備することが義務づけられており、それぞれの事業規模に応じた①衛生管理者、②総括安全衛生管理者などを選任しなければならない。

①衛生管理者
職場の衛生にかかわる技術的事項の管理を行う。少なくとも毎週1回作業場の巡視を行い、設備、作業方法または衛生状態に有害のおそれがあるときは、直ちに健康障害防止措置を講じなければならない。

②総括安全衛生管理者
安全管理者、衛生管理者を指揮し、安全・衛生・健康・事故防止などの統括管理を行う。その事業場で統括管理する者(工場長、支店長 等)を充てなければならない。

 

 




 

 

23 地域における医療及び介護の総合的な確保を推進するための関係法律の整備等に関する法律(医療介護総合確保推進法)による介護保険法の見直し事項はどれか。

1.地域ケア会議の推進
2.地域密着型サービスの創設
3.介護予防訪問看護の地域支援事業への移行
4.市町村単位での医療機能の分化および連携の推進

解答

解説

(※画像引用:「医療介護総合確保推進法(介護部分) の概要について」厚生労働省HPより)

医療介護総合確保推進法とは?

『医療介護総合確保推進法』とは、平成26(2014)年に成立された地域における効率的かつ効果的な医療提供体制の確保等を目的する法律である。持続可能な社会保障制度の確立を図るための改革の推進に関する法律に基づく措置として、効率的かつ質の高い医療提供体制を構築するとともに、地域包括ケアシステムを構築することを通じ、地域における医療及び介護の総合的な確保を推進するため、医療法、介護保険法等の関係法律について所要の整備等を行う。

(※参考:「地域における医療及び介護の総合的な確保を推進するための関係法律の整備等に関する法律(概要)」厚生労働省HPより)

1.〇 正しい。地域ケア会議の推進は、介護保険法による地域包括ケアシステムの構築に向けた地域支援事業の充実のひとつである。地域包括ケアシステムとは、高齢者の尊厳の保持と自立生活の支援の目的のもとで、可能な限り住み慣れた地域で生活を継続することができるよう、包括的な支援・サービス提供体制の構築を目指すものである。地域包括支援センターの業務内容には、①総合相談支援、②権利擁護、③包括的・継続的マネジメント支援、④介護予防ケアマネジメント、⑤地域ケア会議の充実が挙げられる。
2.× 地域密着型サービスの創設は、平成17年の『介護保険法』の改正においてである。『医療介護総合確保推進法』とは、平成26(2014)年に成立された地域における効率的かつ効果的な医療提供体制の確保等を目的する法律である。ちなみに、地域密着型サービスとは、地域でその特性に応じた柔軟かつ多様なサービスを提供するものである。
3.× 「介護予防訪問看護」ではなく訪問介護と通所介護が市町村の地域支援事業への移行した。
4.× 市町村単位での医療機能の分化および連携の推進は、『医療法』の改正として行なわれている。これは、「第三節 地域における病床の機能の分化及び連携の推進」の第三十条の十三に「病院又は診療所であつて療養病床又は一般病床を有するもの(以下「病床機能報告対象病院等」という。)の管理者は、地域における病床の機能の分化及び連携の推進のため、厚生労働省令で定めるところにより、当該病床機能報告対象病院等の病床の機能に応じ厚生労働省令で定める区分(以下「病床の機能区分」という。)に従い、次に掲げる事項を当該病床機能報告対象病院等の所在地の都道府県知事に報告しなければならない」と規定されている(※一部引用:「医療法」e-GOV法令検索様HPより)。ちなみに、医療法とは、病院、診療所、助産院の開設、管理、整備の方法などを定める日本の法律である。①医療を受けるものの利益と保護、②良好かつ適切な医療を効率的に提供する体制確保を主目的としている。

地域包括ケアシステムとは?

地域包括ケアシステムとは、高齢者の尊厳の保持と自立生活の支援の目的のもとで、可能な限り住み慣れた地域で生活を継続することができるよう、包括的な支援・サービス提供体制の構築を目指すものである。この地域包括ケアシステムが効果的に機能するために、「4つの助(自助・互助・共助・公助)」の考え方が連携し、課題解決に向け取り組んでいく必要がある。

「公助」は税による公の負担。
「共助」は介護保険などリスクを共有する仲間(被保険者)の負担。
「自助」には「自分のことを自分でする」ことに加え、市場サービスの購入も含まれる。
「互助」は相互に支え合い、費用負担が制度的に裏づけられていない自発的なものである。

 

 

 

 

 

24 平成25年(2013年)6月末における精神疾患を有する者の入院者数が最も多い入院形態はどれか。

1.措置入院
2.任意入院
3.医療保護入院
4.緊急措置入院

解答

解説

入院の形態

①任意入院:患者本人の同意:必要。精神保健指定医の診察:必要なし。そのほか:書面による本人意思の確認。備考:本人の申し出があれば退院可能。精神保健指定医が必要と認めれば、72時間以内の退院制限が可能。入院権限:精神科病院管理者。

②医療保護入院:患者本人の同意:必ずしも必要としない。精神保健指定医の診察:1人の診察。そのほか:家族等のうち、いずれかの者の同意。備考:入院後、退院後ともに10日以内に知事に届け出る。入院権限:精神科病院管理者

③応急入院:患者本人の同意:必ずしも必要としない。精神保健指定医の診察:1人の診察。そのほか:医療および保護の依頼があるが、家族等の同意が得られない。備考:入院期間は72時間以内。入院後直ちに知事に届け出る。知事指定の病院に限る。入院権限:精神科病院管理者

④措置入院:患者本人の同意:必ずしも必要としない。精神保健指定医の診察:2人以上の診察そのほか:自傷・他害のおそれがある。備考:国立・都道府県立精神科病院または指定病院に限る。入院権限:都道府県知事

⑤緊急措置入院:患者本人の同意:必ずしも必要としない。精神保健指定医の診察:1人の診察そのほか:自傷・他害のおそれが著しく、急を要する。備考:入院期間は72時間以内。指定医が1人しか確保できず時間的余裕がない場合、暫定的に適用される。入院権限:都道府県知事

(※図引用:「参考資料」厚生労働省HPより)

1.× 措置入院の患者数は1503人(約0.5%)である。
2.〇 正しい。任意入院の患者数は15万5122人(約53%)である。
3.× 医療保護入院の患者数は13万1924人(約45%)である。
4.× 緊急措置入院の患者数は1500人程度(約0.5%)である。

(※各選択肢のデータ引用:平成26年度精神保健福祉資料

 

 




 

 

25 ソーシャル・キャピタルの醸成に最も効果的な地域保健活動はどれか。

1.認知症の専門医による講演会を開催する。
2.地域に出向き生活習慣病予防の健康教育を行う。
3.育児不安が強い母親を対象に相談会を開催する。
4.民生委員・児童委員協議会と協働して乳児家庭全戸訪問事業を行う。
5.自立支援医療(育成医療)の申請があった児に対して家庭訪問を行う。

解答

解説

ソーシャルキャビタルとは?

ソーシャル・キャビタル(社会関係資本)とは、地域の健康課題解決のための資源のことである。人々の協調行動を活発にすることによって社会の効率性を高める信頼、規範、社会的ネットワークといった社会組織の特徴をもつ。ちなみに、醸成とは、ある機運・情勢をつくり出すことをいう。ソーシャルキャピタルが醸成されることで高まる地域の力を考えることが重要である。人々の協調行動が活発化することにより社会の効率性を高めることができるという考え方のもとで、社会の信頼関係、規範、ネットワークといった社会組織の重要性を説く概念である。

1.× 認知症の専門医による講演会を開催するより、最も効果的な地域保健活動がほかの選択肢にある。なぜなら、主な講演会は聞くだけであり、一方向で終わってしまうことが多いため。また、参加者同士が交流する場ではないため優先度は低い。
2.× 地域に出向き生活習慣病予防の健康教育を行うより、最も効果的な地域保健活動がほかの選択肢にある。なぜなら、「地域に出向く」ことは受け身となりやすく、参加者の地域活動の意識は低いと考えられるため。ソーシャル・キャビタル(社会関係資本)とは、地域の健康課題解決のための資源のことである。人々の協調行動を活発にすることによって社会の効率性を高める信頼、規範、社会的ネットワークといった社会組織の特徴をもつ。
3~5.× 育児不安が強い母親を対象に相談会を開催する/自立支援医療(育成医療)の申請があった児に対して家庭訪問を行うより、最も効果的な地域保健活動がほかの選択肢にある。なぜなら、育児不安が強い母親を対象にした相談会/自立支援医療(育成医療)の申請があった児に対して家庭訪問は、個別支援が中心となりやすいため。
4.〇 正しい。民生委員・児童委員協議会と協働して乳児家庭全戸訪問事業を行うことは、ソーシャル・キャピタルの醸成に最も効果的な地域保健活動といえる。民生委員・児童委員協議会は、市町村の一定区域ごとに編成される民生委員の組織である。民生委員は、日本独自の制度化されたボランティアである。地域社会の福祉の増進図っている。任期は3年で都道府県知事の推薦を受けて厚生労働大臣に委嘱されたものである。市町村の各地区に配置され、①住民の生活状況の把握、②関係機関との連携、③援助を要するものヘの相談援助を主な役割とする。根拠法令は「民生委員法」で給与の支給はない。保健師が、児童委員も兼ねている民生委員と協働することで民生委員の活動がさらに活性化され、地域のソーシャルキャピタルが醸成される。

 

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