31 分母として人口データが得られない場合に、疾病の罹患や死亡などの全発生数を分母に用いて、ある疾病や年齢区分での発生が占める割合を示す指標はどれか。
1.相対危険
2.相対頻度
3.累積罹患率
4.人口寄与危険
5.人口寄与危険割合
解答2
解説
・寄与危険度(リスク差)とは、曝露群と非曝露群の疾病発症リスクの差のこと。「曝露因子があるとどれだけ危険度が増すか」を示す。何らかの介入を行った場合にどれだけの人が疾病を予防できるかが予測できるため、健康政策を進めるうえで重要な指標となる。
・相対危険度(リスク比)とは、相対危険度(リスク比)を用いて要因と疾病の関連の強さを表現する。関連の強さが大きいほどこの要因により疾病が起きやすいことを示す。
1.× 相対危険(リスク比)は、相対危険度(リスク比)を用いて要因と疾病の関連の強さを表現する。関連の強さが大きいほどこの要因により疾病が起きやすいことを示す。
2.〇 正しい。相対頻度は、分母として人口データが得られない場合に、疾病の罹患や死亡などの全発生数を分母に用いて、ある疾病や年齢区分での発生が占める割合を示す指標である。全相対頻度とは、いくつかのカテゴリーにおけるそれぞれの度数(データ数)が全体に占める割合の大きさを示すものである。
3.× 累積罹患率は、一定期間内に、観察対象集団のなかで、新たに疾病を有した人の割合をいう。0歳から74歳までに、がんに罹患する確率の近似値である。0~74歳累積罹患率がよく用いられ、0歳から74歳までの年齢階級別罹患率に、その年齢階級に含まれる年数(通常は5歳階級)をかけあわせたもの。通常、人口千人で示される。
4.× 人口寄与危険は、人口集団(曝露群と非曝露群)と非曝露群における疾病の頻度の差を示す指標である。それぞれの疾病の頻度を求めるために、人口データが必要である。
5.× 人口寄与危険割合(集団寄与危険割合)とは、疫学における指標の1つであり、集団全体と非曝露群における疾病の頻度の差である人口寄与危険度が、集団全体における疾病の頻度に占める割合である。人口集団と非曝露群との比較で、人口集団の疾病の発生率のうち、曝露による増加分が占める割合である。人口データが分母となる。
32 日本の死因別死亡率の年次推移を図に示す。
説明として正しいのはどれか。
1.縦軸の死亡率は年齢を調整した値である。
2.死因Aが上昇傾向にある主な理由は野菜摂取量の減少である。
3.死因Bの平成7年の急激な低下は国際生活機能分類(ICF)改訂の影響である。
4.死因C が上昇傾向にある主な理由は生活習慣の欧米化である。
5.死因Dが低下傾向にある主な理由は血圧の管理である。
解答5
解説
(※図引用:「人口動態統計月報年計(概数)の概況」厚生労働省HPより)
1.× 縦軸の死亡率は、「年齢を調整した値」ではなく、人口10万対の死亡率である。
2.× 死因A(悪性腫瘍)が上昇傾向にある主な理由は、「野菜摂取量の減少」とは言い切れない。死因Aは、死因順位第1位の悪性新生物である。野菜摂取量の減少は、悪性新生物が上昇傾向にあることとほとんど関係していない。ちなみに、野菜摂取により心臓病などの循環器系の病気が予防できるといわれている。
3.× 死因B(心疾患)の平成7年の急激な低下は、「国際生活機能分類(ICF)改訂」ではなく、lCD-10の適用に伴って死亡診断書の様式を改訂の影響である。ちなみに、死因Bは、死因順位第2位の心疾患である。国際生活機能分類(ICF)は、人間の生活機能と障害を「心身機能・身体構造」、「活動」、「参加」の3つの次元、および「環境要因」などの影響を及ぼす背景因子の側面から分類したものである。
4.× 死因C(肺炎)が上昇傾向にある主な理由は、生活習慣の欧米化であるとは言い切れない。生活習慣の欧米化により、生活習慣病、アトピー、不定愁訴、食生活の乱れなど挙げられている。生活習慣病は、「食習慣、運動習慣、休養の取り方、喫煙、飲酒などの生活習慣が、その発症・伸展に関与する疾患群」と定義されている。生活習慣病の背景因子として、①遺伝性因子、②環境因子、③生活習慣因子が考えらえているが、「生活習慣因子」は生活習慣病の積極的予防に最も重要な要素とされている。
5.〇 正しい。死因D(脳血管疾患)が低下傾向にある主な理由は、血圧の管理である。脳血管疾患とは、脳の血管のトラブルによって、脳細胞が破壊される病気の総称である。おもな脳血管疾患には「出血性脳血管疾患」と「虚血性脳血管疾患」の2つのタイプがあり、これらは「脳卒中」とも呼ばれている。脳血管疾患の予防には、減塩などの食事、運動、禁煙、禁酒、生活習慣、健康管理があげられる。
33 健康日本21(第二次)における健康寿命について正しいのはどれか。
1.患者調査の結果を計算に用いる。
2.年齢別死亡率は計算に不要である。
3.日常生活に制限のない者の平均年齢である。
4.健康寿命の増加分を上回る平均寿命の増加を目標とする。
5.平成25年(2013年)の健康寿命と平均寿命の差は男性より女性が大きい。
解答5
解説
日本における健康対策の現状や第三次国民健康づくり対策(健康日
(※参考:「健康日本21(第二次)」厚生労働省HPより)
1.× 計算を用いるのは、「患者調査の結果」ではなく人口動態統計・国民生活基礎調査のデータなどが用いられる。ちなみに、国民生活基礎調査とは、国民生活の基礎的事項(保健・医療・福祉・年金・所得など)を調査し、厚生労働行政の企画及び運営に必要な基礎資料を得るとともに、各種調査の調査客体を抽出するための親標本を設定することを目的とし、厚生労働省が行う基幹統計調査である。
2.× 年齢別死亡率は計算に「不要」ではなく必要である。特に、健康寿命の算定には、性・年齢階級別の死亡率と不健康割合が必要である。健康日本21(第二次)の大きな目標は、健康寿命の延伸・健康格差の縮小である。ちなみに、平成25年の健康寿命は、男性71.19年、女性74.21年である。
3.× 健康寿命は、「日常生活に制限のない者の平均年齢」ではなく、日常生活に制限のない期間の平均と定義されている。健康寿命とは日常的に介護を必要としないで、自立した生活ができる期間を指す。「日常生活に制限のない者の平均年齢」と定義してしまうと、一度日常生活に介護を必要として、リハビリを頑張り日常生活に戻った際の患者さんも、一度日常生活に介護を必要とした時点での年齢を健康寿命に反映してしまう。
4.× 逆である。「平均寿命」の増加分を上回る「健康寿命」の増加を目標とする。平均寿命とは、生まれたばかりの子どもが平均して何年生きるかを示したものであり、0歳の平均余命のことである。平成29(2017)年の日本における女性の平均寿命は87.26年である。男性の平均寿命は、81.09年である。
5.〇 正しい。平成25年(2013年)の健康寿命と平均寿命の差は男性より女性が大きい。平成25年の健康寿命と平均寿命の差は、男性9.02年、女性12.40年となっており、男性より女性のほうが大きい。
目的:病院・診療所を利用する患者について、傷病状況の実態を明らかに
調査頻度:3年に1回、医療施設静態調査と同時
調査対象:標本調査(全国の病院、一般診療所、歯科診療所から層化無作為に
調査項目:患者の性別、出生年月日、住所、入院・外来の種別、受療の状況等。
調査方法:医療施設の管理者が記入。
(参考:「患者調査(基幹統計)」厚生労働省HPより)
34 日本における再興感染症はどれか。2つ選べ。
1.麻疹
2.デング熱
3.エボラ出血熱
4.ウエストナイル熱
5.重症急性呼吸器症候群(SARS)
解答1・2
解説
新興感染症:かつて存在しなかった感染症が新たに脅威として現れたものである。
再興感染症:かつて大きな脅威であったものが一度沈静化したものの再び問題となってきたものである。抗生物質などの発達により一時期は制圧できたものの、何らかの原因で再度公衆衛生上問題となった疾患を指す。現在、再興感染症に挙げられるものとして、結核、マラリア、デング熱、狂犬病、黄色ブドウ球菌感染症などがある。
1.〇 正しい。麻疹は、再興感染症である。麻疹とは、麻疹ウイルスの感染後、10~12日間の潜伏期ののち発熱や咳などの症状で発症する病気のこと。38℃前後の発熱が2~4日間続き、倦怠感(小児では不機嫌)があり、上気道炎症状(咳、鼻みず、くしゃみなど)と結膜炎症状(結膜充血、目やに、光をまぶしく感じるなど)が現れて次第に強くなる。
2.〇 正しい。デング熱は、再興感染症である。デング熱とは、蚊に刺されることによって感染する疾患である。 症状として、急激な発熱で発症し、発疹、頭痛、骨関節痛、嘔気・嘔吐などがみられる。通常、発症後2~7日で解熱し、発疹は解熱時期に出現する。
3.× エボラ出血熱は、新興感染症である。エボラウイルスによる感染症であり、エボラウイルスに感染すると、2~21日(通常は7~10日)の潜伏期の後、突然の発熱、頭痛、倦怠感、筋肉痛、咽頭痛等の症状を呈す。その後、嘔吐、下痢、胸部痛、出血(吐血、下血)等の症状が現れます。
4.× ウエストナイル熱は、新興感染症である。症状は軽度で、発熱、頭痛、筋肉痛や、時に発疹、リンパ節の腫れがみられる。ウエストナイル脳炎になり重症化すると、激しい頭痛、意識障害、痙攣、筋力低下、麻痺などに発展する。
5.× 重症急性呼吸器症候群(SARS)は、新興感染症である。重症急性呼吸器症候群(SARS)は、SARSコロナウイルスにより引き起こされる新興感染症である。潜伏期は2〜10日、平均5日であるが、より長い潜伏期の報告もまれにはある。SARSの自然経過としては、発病第1週に発熱、悪寒戦慄、筋肉痛など、突然のインフルエンザ様の前駆症状で発症する。
風疹とは、発熱、発疹、リンパ節腫脹を特徴とするウイルス性発疹症である。難聴・白内障・心奇形である。妊婦が妊娠初期に風疹に感染すると、不顕性であっても経胎盤的に胎児に影響を与え、先天性風疹症候群と呼ばれる先天異常を引き起こすことがある。
麻疹とは、麻疹ウイルスの感染後、10~12日間の潜伏期ののち発熱や咳などの症状で発症する病気のこと。38℃前後の発熱が2~4日間続き、倦怠感(小児では不機嫌)があり、上気道炎症状(咳、鼻みず、くしゃみなど)と結膜炎症状(結膜充血、目やに、光をまぶしく感じるなど)が現れて次第に強くなる。
予防接種法に規定されている風疹・麻疹の予防接種は、MRワクチン(生ワクチン)であり、通常2回接種する。1期(1回):生後1~2歳まで。2期(2回):5~7歳未満で、小学校就学前の1年間である。
35 Aさん(20歳、男性)。1人暮らし。下肢に障害があり車椅子を利用しており、障害支援区分3である。
障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(障害者総合支援法)に基づき、Aさんが利用できる障害福祉サービスはどれか。2つ選べ。
1.行動援護
2.同行援護
3.居宅介護
4.生活介護
5.療養介護
解答3・4
解説
・Aさん(20歳、男性、1人暮らし)
・障害支援区分3:下肢に障害があり車椅子を利用。
→「※参考:「障害福祉サービスについて」厚生労働省HPより」に、障害者福祉サービスの種類と概要、対象者が書かれている。参考にしてほしい。
1.× 行動援護とは、知的障害又は精神障害により行動上著しい困難を有する障害者等であって常時介護を要するものにつき、当該障害者等が行動する際に生じ得る危険を回避するために必要な援護、外出時における移動中の介護、排せつ及び食事等の介護その他の当該障害者等が行動する際の必要な援助を行う。【対象者】障害支援区分が区分3以上であって、障害支援区分の認定調査項目のうち行動関連項目等(12項目)の合計点数が10点以上(障害児にあってはこれに相当する支援の度合)である者とされている。
2.× 同行援護とは、視覚障害により、移動に著しい困難を有する障害者等につき、外出時において、当該障害者等に同行し、移動に必要な情報を提供するとともに、移動の援護その他の当該障害者等が外出する際の必要な援助を行う。【対象者】視覚障害により、移動に著しい困難を有する障害者等であって、同行援護アセスメント調査票による、調査項目中「視力障害」、「視野障害」及び「夜盲」のいずれかが1点以上であり、かつ、「移動障害」の点数が1点以上の者とされている。
3.〇 正しい。居宅介護は、Aさんが利用できる障害福祉サービスである。居宅介護(ホームヘルプ)とは、居宅において、入浴、排せつ及び食事等の介護、調理、洗濯及び掃除等の家事並びに生活等に関する相談及び助言その他の生活全般にわたる援助を行う。【対象者】障害支援区分が区分1以上(障害児にあってはこれに相当する支援の度合)である者とされている。
4.〇 正しい。生活介護は、Aさんが利用できる障害福祉サービスである。生活介護とは、障害者支援施設その他の以下に掲げる便宜を適切に供与することができる施設において、入浴、排せつ及び食事等の介護、創作的活動又は生産活動の機会の提供その他必要な援助を要する障害者であって、常時介護を要するものにつき、主として昼間において、入浴、排せつ及び食事等の介護、調理、洗濯及び掃除等の家事並びに生活等に関する相談及び助言その他の必要な日常生活上の支援、創作的活動又は生産活動の機会の提供その他の身体機能又は生活能力の向上のために必要な支援を行う。【対象者】地域や入所施設において、安定した生活を営むため、常時介護等の支援が必要な者として次に掲げる者とされている。
5.× 療養介護は、病院において機能訓練、療養上の管理、看護、医学的管理の下における介護、日常生活上の世話その他必要な医療を要する障害者であって常時介護を要するものにつき、主として昼間において、病院において行われる機能訓練、療養上の管理、看護、医学的管理の下における介護及び日常生活上の世話を行う。また、療養介護のうち医療に係るものを療養介護医療として提供する。【対象者】病院等への長期の入院による医療的ケアに加え、常時の介護を必要とする障害者として次に掲げる者(障害支援区分5~6)とされてる。
(※一部引用:「障害福祉サービスについて」厚生労働省HPより)
障害者総合支援法は、2013年に障害者自立支援法から障害者総合支援法へと改正され、障害者と障害児を対象とした障害保健福祉施策についてまとめられた法律である。これにより障害者の範囲が拡大され、身体障害者、精神障害者、知的障害者、障害児の全てが対象とされている。そして、対象となっている者は、認定調査というものを受け「障害支援区分」という障害の重症度分類によって7区分(非該当、区分1~6)に分けられる。それにより受けられるサービス内容が変わってくる。
①障害者も難病患者も自立できる社会をめざす。
②応能負担(所得に応じて自己負担額が変わること)が原則。
③あらゆる障害(身体・知的・精神+難病)についてこの法律で対応する。
④市区町村が事業の母体である。