第104回(H30) 保健師国家試験 解説【午前36~40】

 

36 感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(感染症法)における1類感染症はどれか。2つ選べ。

1.コレラ
2.痘そう
3.ペスト
4.マラリア
5.急性灰白髄炎

解答2・3

解説

感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律とは?

感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(感染症予防法、感染症法、感染症新法)は、感染症の予防および感染症患者に対する医療に関する措置について定めた日本の法律である。平成10年(1998年)に制定された。主な内容は、①1~5類感染症の分類と定義、②情報の収集・公表、③感染症(結核を含む)への対応や処置。

【「感染症法」の対象となる感染症】
①1類感染症(7疾患:エボラ出血熱 ・クリミア・コンゴ出血熱・痘そう(天然痘) ・南米出血熱・ペスト・マールブルグ病・ラッサ熱)
対応:原則入院・消毒等の対物措置(例外的に建物への措置,通行制限の措置も適用対象とする)

②2類感染症(6疾患:・急性灰白髄炎(ポリオ)・結核 ・ジフテリア ・重症急性呼吸器症候群(SARS)・特定鳥インフルエンザ(H5N1, H7N9) ・中東呼吸器症候群(MERS))
対応:状況に応じて入院・消毒等の対物措置

③3類感染症(5疾患:・コレラ・細菌性赤痢・品管出血性大腸菌感染症(0157等)・腸チフス ・パラチフス)
対応:・特定職種への就業制限・消毒等の対物措置

④4類感染症(44疾患:※一部抜粋。・E型肝炎・A型肝炎 ・黄熱・Q熱・狂犬病・チクングニア熱・鳥インフルエンザ(特定鳥インフルエンザを除く)・炭疽 ・ボツリヌス症 ・マラリア ・野兎病・重症熱性血小板減少症候群(SFTS)・デング熱・ジカウイルス感染症・日本脳炎・その他感染症(政令で指定))
対応:・感染症発生状況の情報収集、分析とその結果の公開,提供・媒介動物の輸入規制・消毒等の対物措置

⑤5類感染症(46疾患:※一部抜粋。・インフルエンザ(鳥インフルエンザ・新型インフルエンザ等感染症を除く)・ウイルス性肝炎(E型・A型を除く)・クリプトスポリジウム症・後天性免疫不全症候群(AIDS)・性器クラミジア感染症 ・梅毒・麻疹・百日咳・メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)感染症・その他感染症(省令で指定))
対応:・感染症発生状況の情報収集、分析とその結果の公開情報提供

1.× コレラは、3類感染症である。コレラは世界に広く分布する細菌性の感染症であり、数多くのコレラ菌のうち、コレラ毒素を産生するO1血清型とO139血清型のコレラ菌が、ヒトに感染することが知られている。O1血清型はさらに古典型とエルトール型に分類され、エルトール型に感染した場合、多くは無症状か、あるいは軽微な症状で治癒する。
2.〇 正しい。痘そう(天然痘)は、1類感染症である。天然痘は、オルソポックスウイルス属の一種である天然痘ウイルスによって引き起こされる非常に感染力の強い疾患である。死亡率は30%にも及ぶ。自然感染は根絶されている。
3.〇 正しい。ペストは、1類感染症である。ノミに咬まれた局所のリンパ節腫大と痛み、突然の高熱、頭痛、悪寒、筋肉痛などをきたす腺ペスト、全身に菌が広がり急激なショック症状や四肢の壊死や紫斑をきたす敗血症型ペスト、腺ペスト末期や敗血症型ペストで肺炎をきたし痰やエアロゾルを介し容易にヒト-ヒト感染をきたす肺ペストの病態がある。
4.× マラリアは、4類感染症である。マラリア原虫をもった蚊(ハマダラカ属)に刺されることで感染する病気である。発熱に伴い、倦怠感、頭痛、筋肉痛、関節痛などがみられる。
5.× 急性灰白髄炎(ポリオ)は、2類感染症である。ポストポリオ症候群は、ポリオの後遺症として60歳前後で筋力低下や手足のしびれ、疼痛などの症状が現れる障害である。ポリオウイルスによる急性灰白髄炎によって小児麻痺を生じた患者が、罹患後、数十年を経て新たに生じる疲労性疾患の総称であり、急性灰白髄炎後の症状には、筋力低下、筋萎縮、関節痛、呼吸機能障害、嚥下障害などの症状を呈する。筋力低下は急性期の小児麻痺で障害をみられなかった肢にも比較的高頻度で生じる。診断基準は、①ポリオの確実な既往があること、②機能的・神経学的にほぼ完全に回復し、15年以上も安定した期間を過ごせていたにも関わらずその後に疲労や関節痛、筋力低下などの症状が発現した場合である。Halstead(ハルステッド)の診断基準を使用されることもある。

 

 

 

 

 

37 疾病の罹患群や非罹患群のスクリーニングの要件で正しいのはどれか。2つ選べ。

1.検査方法が対象者よりも測定者にとって受け入れやすい。
2.確定診断の手法が確立していない疾病も対象となる。
3.治療法が確立していない疾病も対象となる。
4.疾病予防対策の効率の向上が期待される。
5.測定者による結果の変動が少ない。

解答4・5

解説

スクリーニングについて

スクリーニングとは、無症状の集団を対象に検査を行い、目標とする疾病の罹患者や発症が予測される患者をふるい分けるものである。診断のために追加の精密検査を受けた方が良いかが分かり、早期治療や、根拠に基づく意思決定を行うための判断材料を提供することができる。

【スクリーニングの条件】
①罹患率が高い。または、発見・治療が遅れると重篤化する疾病であること。
②疾患の自然史が判明していること(疾患の経過が判明していること)。
③最初の徴候が現れてから顕在化するまでの期間がある程度長いこと。
④スクリーニング陽性者に対して、精密検査で確定診断できる疾患であること。
⑤簡便で低侵襲で信頼性の高い。比較的安価な検査方法が存在すること。
⑥敏感度・特異度が高いこと。
⑦被検者に肉体的・精神的負担を与えないこと。
⑧疾患に対する治療法が確立されていること。

1.× 逆である。検査方法が「測定者」よりも「対象者」にとって受け入れやすい。スクリーニングの条件として、⑦被検者に肉体的・精神的負担を与えないことがあげられる。
2.× 確定診断の手法が「確立している疾病」が対象となる。スクリーニングの条件として、④スクリーニング陽性者に対して、精密検査で確定診断できる疾患であることがあげられる。
3.× 治療法が「確立されている疾病」が対象となる。スクリーニングの条件として、⑧疾患に対する治療法が確立されていることがあげられる。
4.〇 正しい。疾病予防対策の効率の向上が期待される。スクリーニングの条件として、①罹患率が高い。または、発見・治療が遅れると重篤化する疾病であることがあげられる。
5.〇 正しい。測定者による結果の変動が少ない。スクリーニングの条件として、⑥敏感度・特異度が高いことがあげられる。

 

 




 

 

38 ある集団の特定健康診査で得られたBMIと血圧との関連を表すのに適した指標はどれか。2つ選べ。

1.散布度
2.四分位数
3.相関係数
4.変動係数
5.回帰係数

解答3・5

解説

1.× 散布度とは、分布のばらつき具合を示す値であり、分散や標準偏差などが該当する。2変数の関連を表す場合、散布度をもとに相関係数を求める必要がある。ちなみに、標準偏差とは、分散の正の平方根のことである。平均値を中心に周囲に測定値がどの程度ばらついているかを示す。
2.× 四分位数とは、1つの変数を最小値から最大値まで並べたとき、それらを4分の1ずつに分ける位置を指す。
3.〇 正しい。相関係数は、ある集団の特定健康診査で得られたBMIと血圧との関連を表すのに適した指標である。相関係数とは、2つの変数の相関の度合いを数値化して、2つの変数の関連性(線形関係の程度)を示す尺度である。相関係数は、絶対値が1に近いほど強い相関を示す。
4.× 変動係数とは、標準偏差を平均値で割った値である。異なるデータ同士のばらつきの大きさを比較するときに用いる。
5.〇 正しい。回帰係数は、ある集団の特定健康診査で得られたBMIと血圧との関連を表すのに適した指標である。回帰係数は、回帰式の傾きをいう。回帰式とは、一方の値から他方の値を予測する式のことをいう。一方の値が1上がると他方の値がいくつ上がるか(もしくに下がるか)を示しており、2変数の関連を表す指標として適切である。回帰分析とは、標本の分布を最もよく表す直線(回帰式)を求め、それを使って従属変数が説明変数によってどれくらい説明できるかを分析するこという。観察された関連が統計学的に有意であるかは検定によって検証する。

 

 

 

 

 

39 生活保護制度について正しいのはどれか。2つ選べ。

1.扶助の種類は7種類である。
2.保護施設に更生施設がある。
3.日本国憲法第14条の理念に基づいている。
4.保護は世帯を単位とすることを原則とする。
5.介護扶助によって介護保険料が現金給付される。

解答2・4

解説

生活保護法に基づく保護施設

①救護施設:身体上又は精神上著しい障害があるために日常生活を営むことが困難な要保護者を入所させて、生活扶助を行うことを目的とする施設。
②更生施設:身体上又は精神上の理由により養護及び生活指導を必要とする要保護者を入所させて、生活扶助を行うことを目的とする施設。
③医療保護施設:医療を必要とする要保護者に対して、医療の給付を行うことを目的とする施設。
④授産施設:身体上若しくは精神上の理由又は世帯の事情により就業能力の限られている要保護者に対して、就労又は技能の修得のために必要な機会及び便宜を与えて、その自立を助長することを目的とする施設。
⑤宿所提供施設:住居のない要保護者の世帯に対して、住居扶助を行うことを目的とする施設。

1.× 扶助の種類は、「7種類」ではなく8種類(生活扶助、教育扶助、住宅扶助、医療扶助、介護扶助、出産扶助、生業扶助、葬祭扶助)である。
2.〇 正しい。保護施設に更生施設がある。保護施設にはほかに、救護施設、医療保護施設、授産施設、宿所提供施設がある。(上記補足を参照)
3.× 日本国憲法「第14条」ではなく、25条の理念(生存権)に基づいている。ちなみに、第14条は国民の権利及び義務「すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない」と記載されている。(※一部引用:「日本国憲法」e-GOV法令検索様HPより)
4.〇 正しい。保護は世帯を単位とすることを原則とする。これを世帯単位の原則といい、4原則のひとつである。他に、①申請保護の原則、② 基準及び程度の原則、③必要即応の原則である。(下記補足を参照)
5.× 介護扶助によって、介護保険料が現金給付されることはない。介護扶助とは、介護サービスの費用のことを指す。8つの扶助(生活扶助、住宅扶助、教育扶助、医療扶助、介護扶助、出産扶助、生業扶助、葬祭扶助)があり、原則現金給付であるが、医療扶助と介護扶助は現物給付である。介護保険の第1号被保険者の保険料は、生活扶助の各種加算によりまかなわれる。なお、要介護状態となり介護保険から給付を受ける際は、自己負担分が介護扶助からまかなわれる。

生活保護制度とは?

生活保護制度は、『日本国憲法』25条の理念に基づき、生活困窮者を対象に、国の責任において、健康で文化的な最低限度の生活を保障し、その自立を助長することを目的としている。8つの扶助(生活扶助、住宅扶助、教育扶助、医療扶助、介護扶助、出産扶助、生業扶助、葬祭扶助)があり、原則現金給付であるが、医療扶助と介護扶助は現物給付である。被保護人員は約216.4万人(平成27年度,1か月平均)で過去最高となっている。

生活扶助:日常生活に必要な費用
住宅扶助:アパート等の家賃
教育扶助:義務教育を受けるために必要な学用品費
医療扶助:医療サービスの費用
介護扶助:介護サービスの費用
出産扶助:出産費用
生業扶助:就労に必要な技能の修得等にかかる費用
葬祭扶助:葬祭費用

【生活保護法の4つの基本原理】
①国家責任の原理:法の目的を定めた最も根本的原理で、憲法第25条の生存権を実現する為、国がその責任を持って生活に困窮する国民の保護を行う。
②無差別平等の原理:全ての国民は、この法に定める要件を満たす限り、生活困窮に陥った理由や社会的身分等に関わらず無差別平等に保護を受給できる。また、現時点の経済的状態に着目して保護が実施される。
③最低生活の原理:法で保障する最低生活水準について、健康で文化的な最低限度の生活を維持できるものを保障する。
④保護の補足性の原理:保護を受ける側、つまり国民に要請される原理で、各自が持てる能力や資産、他法や他施策といったあらゆるものを活用し、最善の努力をしても最低生活が維持できない場合に初めて生活保護制度を活用できる。

【4つの原則】
①申請保護の原則:保護を受けるためには必ず申請手続きを要し、本人や扶養義務者、親族等による申請に基づいて保護が開始。
②基準及び程度の原則:保護は最低限度の生活基準を超えない枠で行われ、厚生労働大臣の定める保護基準により測定した要保護者の需要を基とし、その不足分を補う程度の保護が行われる。
③必要即応の原則:要保護者の年齢や性別、健康状態等その個人又は世帯の実際の必要の相違を考慮して、有効且つ適切に行われる。
④世帯単位の原則:世帯を単位として保護の要否及び程度が定められる。また、特別な事情がある場合は世帯分離を行い個人を世帯の単位として定めることもできる。

(※参考:「生活保護制度」厚生労働省HPより)
(※参考:「生活保護法の基本原理と基本原則」室蘭市HPより)

 

 




 

 

40 40歳以上の男性を対象とした疫学研究で、虚血性心疾患死亡率(10万人年対)を観察した。虚血性心疾患死亡率は、喫煙群では40.0、非喫煙群では24.0 であった。
このときの寄与危険割合を百分率で求めよ。
 ただし、小数点以下の数値が得られた場合には、小数点以下第1位を四捨五入すること。
 解答: ① ② %
 ①:0~9
 ②:0~9

解答40

解説

ポイント

・対象:40歳以上の男性
・方法:疫学研究、虚血性心疾患死亡率(10万人年対)を観察した。
・虚血性心疾患死亡率:喫煙群40.0、非喫煙群24.0。
寄与危険割合とは、曝露因子があるとどれだけリスクが増すかを意味する指標である。
曝露群と非曝露群のリスクの差を『寄与危険』という。
寄与危険を曝露群のリスクで除したものが『寄与危険割合』である。

よって、寄与危険割合は、

{(喫煙群のリスク - 非喫煙群のリスク)÷ 喫煙群のリスク} × 100

= {(40.0 - 24.0 ÷ 40.0)× 100

= 40(%)

人口寄与危険割合とは?

人口寄与危険割合(集団寄与危険割合)とは、疫学における指標の1つであり、集団全体と非曝露群における疾病の頻度の差である人口寄与危険度が、集団全体における疾病の頻度に占める割合である。寄与危険度(リスク差)とは、曝露群と非曝露群の疾病発症リスクの差のこと。「曝露因子があるとどれだけ危険度が増すか」を示す。何らかの介入を行った場合にどれだけの人が疾病を予防できるかが予測できるため、健康政策を進めるうえで重要な指標となる。

したがって、人口(集団)寄与危険割合は、人口集団(曝露群+非曝露群)の疾病の発生率から非曝露群の発生率を引くことで曝露による増加分が占める割合を示す。

【人口(集団)寄与危険割合 =(人口集団の発生率一非曝露群の発生率)÷ 人口集団の発生率 × 100(%)】で表される。

 

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