第104回(H30) 保健師国家試験 解説【午前41~45】

 

次の文を読み41〜43の問いに答えよ。
 Aさん(26歳、女性)。会社員の夫と長女のBちゃん(1歳8か月)との3人暮らし。B ちゃんは1歳児健康診査を受診しており、異常はなかった。1歳6か月児健康診査が未受診だったため、地区担当の保健師が電話で次回の1歳6か月児健康診査の日程を連絡した。Aさんが電話に出たが、対応の声は小さく「B は元気です。心配なことはありません」と言い、保健師の受診の勧めに応じなかった。保健師は「健康診査の会場でお渡しする予防接種の書類がありますので、受診できないようならお持ちしますね」と伝えて電話を切り、家庭訪問を行うこととした。

41 家庭訪問時、夫は会社に出勤しており不在であった。Bちゃんは一人歩きが可能で、意味のある言葉を発している。Aさんはマスクをしており、左眼の下から顎にかけて紫色に変色した内出血がある。玄関から見える室内は、ふすまが破れているなど荒んだ様子がみられる。
 保健師が追加で確認するBちゃんの状態で優先度が高いのはどれか。

1.偏食
2.う蝕
3.身体の外傷
4.オムツかぶれ

解答

解説

本症例のポイント

・Aさん(26歳、女性)
・3人暮らし:夫(会社員)、長女のBちゃん(1歳8か月)。
・B ちゃん:1歳児健康診査異常なし、1歳6か月児健康診査未受診。
・地区担当の保健師が電話で次回の1歳6か月児健康診査の日程を連絡した。
・Aさん「Bは元気です。心配なことはありません」と。
・保健師:家庭訪問を行うこととした。

【家庭訪問時】
・夫:会社に出勤して不在。
・Bちゃん:一人歩きが可能、意味のある言葉を発している。
・Aさん:マスクをしており、左眼の下から顎にかけて紫色に変色した内出血がある。
・自宅環境:荒んだ様子(玄関から見える室内は、ふすまが破れているなど)。
左眼の下から顎にかけて紫色に変色した内出血があることからAさんは身体的虐待を受けている可能性がある。また、室内が荒れている状況から、Bちゃんがネグレクト(育児放棄、育児怠慢、監護放棄)や身体的虐待を受けている可能性がある。

1~2,4.× 偏食/う蝕/オムツかぶれは優先度が低い。左眼の下から顎にかけて紫色に変色した内出血があることからAさんは身体的虐待を受けている可能性がある。さらに室内が荒れている状況から、Bちゃんがネグレクト(育児放棄、育児怠慢、監護放棄)や身体的虐待を受けている可能性がある。Bちゃんがネグレクト(育児放棄、育児怠慢、監護放棄)の可能性が高い場合、生命に関わる可能性が高い身体的虐待の有無を確認するほうが緊急性は高い。ちなみに、う蝕とは虫歯のことで、歯の実質欠損のなかで、生物的要因(口腔内の細菌が糖質から作った酸による歯質が脱灰など)が原因であるものをいう。
3.〇 正しい。身体の外傷を確認する優先度は高い。左眼の下から顎にかけて紫色に変色した内出血があることからAさんは身体的虐待を受けている可能性がある。さらに室内が荒れている状況から、Bちゃんがネグレクト(育児放棄、育児怠慢、監護放棄)や身体的虐待を受けている可能性がある。

子どもの発達のポイント

【1歳6か月】
・コップで水を飲む。
・スプーンを使って食べようとする。
・積み木を2~3個積むことができる。
・意味のある言葉を2~3語話す(パパ, ママ, ブーブー)。
・簡単な指示に従うことができる(おいで、○○をとって)。
・離乳が完了する。

【3歳】
・自分の名前を言う。
・簡単な文章を話す。
・指示に従う。
・物の大小や長短、色を区別できる。
・箸を持って食べる。
・手を洗う。
・ままごとやごっこ遊びをする。

 

 

 

 

 

次の文を読み41〜43の問いに答えよ。
 Aさん(26歳、女性)。会社員の夫と長女のB ちゃん(1歳8か月)との3人暮らし。Bちゃんは1歳児健康診査を受診しており、異常はなかった。1歳6か月児健康診査が未受診だったため、地区担当の保健師が電話で次回の1歳6か月児健康診査の日程を連絡した。Aさんが電話に出たが、対応の声は小さく「B は元気です。心配なことはありません」と言い、保健師の受診の勧めに応じなかった。保健師は「健康診査の会場でお渡しする予防接種の書類がありますので、受診できないようならお持ちしますね」と伝えて電話を切り、家庭訪問を行うこととした。

42 家庭訪問の間、Bちゃんは機嫌よく過ごしている。保健師が予防接種の書類の説明を行っている間、Aさんは顔を伏せたままであった。ドメスティック・バイオレンス(DV)のスクリーニングとして、保健師は「家庭訪問をした方にお聞きしている質問がありますのでお尋ねしますね」とAさんに説明してから質問を行った。
 ドメスティック・バイオレンス(DV)のスクリーニングとして保健師が行う質問で最も適切なのはどれか。

1.「今一番困っていることは何ですか」
2.「何もできないと落ち込むことがありますか」
3.「嫌なことがあってもすぐに忘れることができますか」
4.「パートナーといるときに怖いと感じることがありますか」

解答

解説

本症例のポイント

【家庭訪問】
・Bちゃんは機嫌よく過ごしている。
・保健師が予防接種の書類の説明を行っている間、Aさんは顔を伏せたままであった。
・ドメスティック・バイオレンス(DV)のスクリーニングとした。
→虐待についての質問は、家族のことや周りの評判にもつながりかねないことから扱いに細心の注意を要する(センシティブ)な内容となるため、答えにくい質問である。したがって、closed-ended question(閉じられた質問)が有効である。closed-ended question(閉じられた質問)は、5W1Hでいう(When(いつ)、Where(どこで)、 Who(誰が)、What(何を)や、はい/いいえで答えられる限定された質問である。

1.× 「今一番困っていることは何ですか」と質問するのは優先度が低い。なぜなら、ドメスティック・バイオレンス(DV)の内容に絞り切れないため。家族間のストレス、住居や経済的な問題、親子の孤立など、さまざまなことが虐待の引き金になるが、closed-ended question(閉じられた質問)で聞きたい情報を絞る必要がある。
2.× 「何もできないと落ち込むことがありますか」と質問するのは優先度が低い。なぜなら、「落ち込みの有無」は、精神的なうつ症状に関する質問であるため。また、基本的に「何もできないと落ち込む」ことは誰にでもある。
3.× 「嫌なことがあってもすぐに忘れることができますか」と質問するのは優先度が低い。なぜなら、ドメスティック・バイオレンス(DV)の内容に絞り切れないため。また、「嫌なことがあってもすぐに忘れることができますか」→「NO」の場合、Aさんは顔を伏せたまま落ち込んでいるように見えるのは、「Aさん自身のせいだ」と間接的に伝えているように感じられる。
4.〇 正しい。「パートナーといるときに怖いと感じることがありますか」と質問するのは優先度が高い。虐待についての質問は、家族のことや周りの評判にもつながりかねないことから扱いに細心の注意を要する(センシティブ)な内容となるため、答えにくい質問である。したがって、closed-ended question(閉じられた質問)が有効である。closed-ended question(閉じられた質問)は、5W1Hでいう(When(いつ)、Where(どこで)、 Who(誰が)、What(何を)や、はい/いいえで答えられる限定された質問である。

 

 

 

 

 

次の文を読み41〜43の問いに答えよ。
 Aさん(26歳、女性)。会社員の夫と長女のB ちゃん(1歳8か月)との3人暮らし。Bちゃんは1歳児健康診査を受診しており、異常はなかった。1歳6か月児健康診査が未受診だったため、地区担当の保健師が電話で次回の1歳6か月児健康診査の日程を連絡した。Aさんが電話に出たが、対応の声は小さく「B は元気です。心配なことはありません」と言い、保健師の受診の勧めに応じなかった。保健師は「健康診査の会場でお渡しする予防接種の書類がありますので、受診できないようならお持ちしますね」と伝えて電話を切り、家庭訪問を行うこととした。

43 Aさんは「実は昨夜、夫に殴られました。半年くらい前から夫に殴られることが時々あります。今まで誰にも言えませんでした」と言う。Aさんには腹部にも大きなあざがあった。
 このときの保健師の対応で優先度が高いのはどれか。(※解2つ)

1.Aさんの夫との面接を行う。
2.Aさんの医療機関への受診を勧める。
3.AさんとBちゃんの婦人保護施設への避難を勧める。
4.配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律(DV防止法)について説明する。

解答2・3(複数の選択肢が正解)

解説

本症例のポイント

・昨夜、夫に殴られた。
半年前頃:時々夫に殴られる。
・今まで誰にも言えなかった。
・腹部にも大きなあざがあり。
→児童虐待には4つの種類がある。①身体的虐待、②性的虐待、③保護の怠慢・拒否(ネグレクト)、④心理的虐待である。どの種類に当てはまるかということよりも、子どもに対する養育者の不適切な対応は虐待ととらえ早期に対応することが必要である。まずは、子ども(被害者を含む)の状況を速やかに把握し、安全の確保が最優先となる。

1.× Aさんの夫との面接を行う優先度が低い。なぜなら、Aさんの夫を刺激することにつながり、さらに虐待が過熱しかねないため。Aさんが情報源であることを夫に知られ、被害者の安全が脅かされることもある。
2.〇 正しい。Aさんの医療機関への受診を勧める優先度が高い。なぜなら、Aさんの腹部に大きなあざが見られたため。夫の暴力と断定できなくても、今後重篤な障害となりえる可能性がある。
3.〇 正しい。AさんとBちゃんの婦人保護施設への避難を勧める優先度が高い。なぜなら、被害者の安全の確保を考えるため。婦人保護施設とは、売春防止法第36条および配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律第5条により、都道府県により設置される要保護女子および同伴児童を収容保護するための施設である。要は、配偶者からの暴力の被害者の保護を行うことができる施設である。
4.× 配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律(DV防止法)について説明する優先度が低い。なぜなら、Aさんに必要なことは、DVの理解ではなく安全の確保がであるため。Aさんは昨夜、夫に殴られ、腹部にも大きなあざがあることから、何かしらの行動は起こす必要がある。

配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律(DV防止法)とは?

配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律(DV防止法)とは、今まで家庭内に潜在してきた女性への暴力について、女性の人権擁護と男女平等の実現を図るため、夫やパートナーからの暴力の防止、及び被害者の保護・支援を目的として作られた法律である。

【主な内容】
①配偶者からの暴力の定義
②国及び地方公共団体の責務
③配偶者暴力相談支援センター
④一時保護
⑤情報提供・通報
⑥警察官による被害の防止・警察本部長等の援助
⑦福祉事務所による自立支援
⑧各関係機関連携
⑨保護命令

(※参考:「DV防止法とは?」千葉県HPより)

リスク要因とは?

【保護者側のリスク要因】保護者側のリスク要因には、妊娠、出産、育児を通して発生するものと、保護者自身の性格や精神疾患等の身体的・精神的に不健康な状態から起因するものがある。リスク要因と考えられているものを挙げると、まず望まぬ妊娠や10代の妊娠であり、妊娠そのものを受容することが困難な場合である。また、望んだ妊娠であったとしても、妊娠中に早産等何らかの問題が発生したことで胎児の受容に影響が出たり、妊娠中又は出産後に長期入院により子どもへの愛着形成が十分行われない場合がある。また、保護者が妊娠、出産を通してマタニティブルーズや産後うつ病等精神的に不安定な状況に陥ったり、元来性格が攻撃的・衝動的であったり、医療につながっていない精神障害、知的障害、慢性疾患、アルコール依存、薬物依存等がある場合や保護者自身が虐待を受けたことがある場合が考えられる。特に、保護者が未熟である場合は、育児に対する不安やストレスが蓄積しやすい。
【子ども側のリスク要因】子ども側のリスクとして考えられることは、乳児期の子ども、未熟児、障害児、何らかの育てにくさを持っている子ども等である。
【養育環境のリスク要因】リスキーな家庭環境として考えられるものは、未婚を含む単身家庭、内縁者や同居人がいる家庭、子ども連れの再婚家庭、夫婦を始め人間関係に問題を抱える家庭、転居を繰り返す家庭、親族や地域社会から孤立した家庭、生計者の失業や転職の繰り返し等で経済不安のある家庭、夫婦の不和、配偶者からの暴力等不安定な状況にある家庭である。また、リスキーな養育環境として考えられるものは、妊娠中であれば定期的な妊婦健康診査を受診しない等胎児及び自分自身の健康の保持・増進に努力しないことが考えられる。出産後であれば、定期的な乳幼児健康診査を受診しない等が考えられる。

(※引用:「 子ども虐待対応の手引き > 第2章 発生予防」厚生労働省様HPより)

 

 




 

 

次の文を読み44〜46の問いに答えよ。
 Aさん(65歳、女性)。夫、長女および長女の子どもとの4人暮らし。長女の夫は単身赴任中である。Aさんは2か月前から軽い咳があったが、1週前から咳が激しくなり、倦怠感が出現したため自宅近くのかかりつけ医を受診した。胸部エックス線写真で異常陰影が認められ、病院を紹介された。喀痰塗抹検査陽性および結核菌PCR陽性のため肺結核と診断され、入院した。診断した医師から保健所に発生届が提出された。既往歴に特記すべきことはない。

44 Aさんの治療や検査について正しいのはどれか。

1.抗結核薬3剤で治療する。
2.薬剤感受性検査を実施する。
3.喀痰培養検査は不要である。
4.インターフェロンγ 遊離試験(IGRA)を実施する。

解答

解説

本症例のポイント

・Aさん(65歳、女性)。
・4人暮らし:夫、長女、長女の子ども。
・長女の夫:単身赴任中。
・Aさん:2か月前から軽い咳、1週前から咳が激しくなり、倦怠感が出現した。
・胸部エックス線異常陰影あり、喀痰塗抹検査陽性、結核菌PCR陽性。
肺結核と診断、入院した。
・診断した医師から保健所に発生届が提出された。
・既往歴に特記すべきことはない。
→本症例は、肺結核と診断されている。肺結核とは、結核菌による感染症で、体の色々な臓器に起こることがあるが多くは肺のことである。結核菌は、喀痰の中に菌が出ている肺結核の患者と密閉空間で長時間(一般的には数週間以上)接触することにより空気感染でうつる。リンパ節結核や脊椎カリエス(骨の結核)など、肺に病気のない結核患者からはうつらない。また肺結核でも、治療がうまくいって喀痰の中に菌が出ていない患者さんからはうつることはない。また、たとえ感染しても、発病するのはそのうち1割ぐらいといわれており、残りの9割の人は生涯何ごともなく終わる。感染してからすぐに発病することもあるが、時には感染した後に体の免疫が働いていったん治癒し、その後数ヶ月から数十年を経て、免疫が弱ったときに再び結核菌が増えて発病することもある。結核の症状には、咳、痰、血痰、熱、息苦しさ、体のだるさなどがある。

1.× 抗結核薬は、「3剤」ではなく4錠(INH:イソニアジド、RFP:リファンピシン、PZA:ピラジナミド、EB:エタンブトール塩酸塩)で治療する。喀痰の中に結核菌が存在すると、他の人に結核が感染する可能性が高いと考えられる。したがって、まずは結核病棟に入院を勧める。結核の治療には抗結核薬という結核菌に対する薬剤を使用する。代表的な抗結核薬には、イソニアジド、リファンピシン、ピラジナミド、エタンブトールなどがある。半年以上にわたって薬を服用するため、副作用が出ることがある。副作用として、肝障害、アレルギーによる皮疹、エサンブトールという薬による視力障害、注射の薬による聴力障害などが主で、重篤なものはまれである。薬の副作用が出た場合には、中止して他の薬剤に変更したり、ほんの少しの量から再開して徐々に増量して慣らしていったりして、治療を継続する。
2.〇 正しい。薬剤感受性検査を実施する。結核菌培養検査が陽性の場合には、必ず薬剤感受性検査を行う。薬剤感受性検査とは、検出された病原菌に対する抗菌薬の効能を定量的に調べる検査である。 具体的には、抗菌薬を培養液で希釈系列を作り、そこに細菌を添加して培養し、菌の発育状況を観察して、一定濃度以下で効果があれば「感受性」、なければ非感受性(耐性)と判別する。
3.× 喀痰培養検査は必要である。治療開始時には、結核菌検査(結核菌培養検査を含む。以下同じ。)を行い、対象とする病変が結核菌によるものであることを確認するとともに、単純エックス線検査及び必要に応じてCT検査を行う。また、結核菌培養検査が陽性の場合には、必ず薬剤感受性検査を行う。ちなみに、喀痰培養検査とは、痰の一部を培地(ばいち)というところにおいて、痰の中の菌を育てて行う検査である。培地とは、微生物や生物組織の培養において、培養対象に生育環境を提供するものである。 
4.× インターフェロンγ 遊離試験(IGRA)を実施する必要はない。なぜなら、今回の症例の場合、結核菌PCRも陽性であるため。潜在性結核感染症の診断に当たっては、ツベルクリン反応検査又はリンパ球の菌特異抗原刺激による放出インターフェロンγ試験を実施するとともに、臨床症状の確認やエックス線検査等によって、活動性結核ではないことを確認する。ちなみに、インターフェロンγ 遊離試験(IGRA)は、結核の感染の有無を評価する検査である。

肺結核の治療

喀痰の中に結核菌が存在すると、他の人に結核が感染する可能性が高いと考えられる。したがって、まずは結核病棟に入院を勧める。結核の治療には抗結核薬という結核菌に対する薬剤を使用する。代表的な抗結核薬には、イソニアジド、リファンピシン、ピラジナミド、エタンブトールなどがある。半年以上にわたって薬を服用するため、副作用が出ることがある。副作用として、肝障害、アレルギーによる皮疹、エサンブトールという薬による視力障害、注射の薬による聴力障害などが主で、重篤なものはまれである。薬の副作用が出た場合には、中止して他の薬剤に変更したり、ほんの少しの量から再開して徐々に増量して慣らしていったりして、治療を継続する。

「結核医療の基準」

1 検査:結核医療を行うに当たり、適正な診断と治療のために行う検査は、次に掲げるとおりとする。
①治療開始時には、結核菌検査(結核菌培養検査を含む。以下同じ。)を行い、対象とする病変が結核菌によるものであることを確認するとともに、単純エックス線検査及び必要に応じてCT検査を行う。また、結核菌培養検査が陽性の場合には、必ず薬剤感受性検査を行う。
②潜在性結核感染症の診断に当たっては、ツベルクリン反応検査又はリンパ球の菌特異抗原刺激による放出インターフェロンγ試験を実施するとともに、臨床症状の確認やエックス線検査等によって、活動性結核ではないことを確認する。
③治療中は、結核菌検査及びエックス線検査を行い、病状の改善の有無を確認するとともに、副作用の早期発見のために必要な検査を行う。ただし、潜在性結核感染症の治療中は、エックス線検査を行い、発病の有無を確認するとともに、副作用の早期発見のために必要な検査を行う。

2 治療:結核の治療は、化学療法によることを原則とし、化学療法のみによっては治療の目的を十分に達することができない場合には、外科的療法又は装具療法の実施を検討する。 

3 患者への説明:結核医療を行うに当たっては、患者の社会的状況を十分考慮するとともに、確実な服薬を含めた療養方法及び他者への感染防止の重要性について理解を得るよう患者に対して十分な説明を行う。 

 

 

 

 

 

次の文を読み44〜46の問いに答えよ。
 Aさん(65歳、女性)。夫、長女および長女の子どもとの4人暮らし。長女の夫は単身赴任中である。Aさんは2か月前から軽い咳があったが、1週前から咳が激しくなり、倦怠感が出現したため自宅近くのかかりつけ医を受診した。胸部エックス線写真で異常陰影が認められ、病院を紹介された。喀痰塗抹検査陽性および結核菌PCR陽性のため肺結核と診断され、入院した。診断した医師から保健所に発生届が提出された。既往歴に特記すべきことはない。

45 保健師が病院を訪問し、Aさんに確認した接触者の情報を表に示す。接触者健康診断におけるハイリスク接触者はどれか。

1.夫
2.長女
3.長女の夫
4.長女の子ども
5.友人

解答

解説

ハイリスク接触者とは?

【ハイリスク接触者(high-risk contact)】感染した場合に発病リスクが高い、または重症型結核が発症しやすい接触者のこと。
乳幼児(特に,BCG接種歴のない場合)BCG接種とは、結核による重い病気を予防する生ワクチンである。ワクチンの液を左腕に1滴たらし、はんこ型の注射を2回押して接種する。生後1歳になる前までに1回接種する。BCG接種は『予防接種法施行令』により生後1歳未満に1回接種を行うことが規定されている。BCG接種後の経過:通常、BCG接種後10日から2週間が経過したのちに発赤が出現し、接種1~2か月後に化膿巣ができ、瘢痕化する。一方で、結核に感染している乳児にBCG接種をした場合、10日以内に針痕部位に、発赤・化膿・腫れなどの反応が現れる。これをコッホ現象という。
②免疫不全疾患(HIV 感染など),治療管理不良の糖尿病患者,免疫抑制剤(抗 TNFα製剤を含む)や副腎皮質ホルモン等の結核発病のリスクを高める薬剤治療を受けている者,臓器移植例,透析患者など

(一部引用:「感染症法に基づく結核の接触者健康診断の手引き」)

1~2.× 夫/長女は、選択肢の中で最もハイリスク接触者とはいいがたい。なぜなら、同居ではあるが、年齢から健康状態を推測してみても、感染した場合の重症化リスクが最も高いとは言い切れないため。
3.× 長女の夫は、選択肢の中で最もハイリスク接触者とはいいがたい。なぜなら、単身赴任ということで接触頻度も低いため。
4.〇 正しい。長女の子どもは、選択肢の中で最もハイリスク接触者である。なぜなら、ハイリスク接触者に、乳幼児が該当するため。乳幼児とは、小学校入学前の子どもの総称である。しかも、Aさんと同居であり、長女の子供を抱っこしたり、おんぶしたりなど接触回数も多いことが予想される。
5.× 友人は、選択肢の中で最もハイリスク接触者とはいいがたい。なぜなら、接触頻度も低いため。

(※図引用:「感染症法に基づく結核の接触者健康診断の手引き」)

 

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