第104回(H30) 保健師国家試験 解説【午後46~50】

 

次の文を読み45〜47の問いに答えよ。
 人口3万人のA市。市の面積の70%を山間部が占めており、主要産業は農業と畜産業などで、一次産業従事者が多い。人口の分布は市街地のB地区に集中しており、市役所、公共施設、医療施設および商業施設が集中している。高齢化率は38%、国民健康保険加入者は1万人である。平成20 年度から導入された特定健康診査の受診実績は、事業開始時から現在まで20%台を推移しており県内最下位である。

46 A市の特定健康診査の受診率を5つの小学校区で比較すると、市街地のB地区が最下位である状況が続いている。A市では、従来は集団健診のみであった特定健康診査を、がん検診と組み合わせた健康診査、人間ドック、医療機関への委託による個別健康診査など様々な方式で行うことにした。また、B 地区を受診勧奨の重点地区に設定し、個別訪問による受診勧奨を行うことにした。その上で、保健師はA市で実施している特定健康診査の評価をすることにした。
 ストラクチャー評価に用いる指標で適切なのはどれか。

1.地区別受診率
2.協力医療施設の数
3.特定健康診査の実施回数
4.受診勧奨のための個別訪問件数

解答

解説

ポイント

A市の特定健康診査の受診率を5つの小学校区で比較すると、市街地のB地区が最下位である状況が続いている。A市では、従来は集団健診のみであった特定健康診査を、がん検診と組み合わせた健康診査、人間ドック、医療機関への委託による個別健康診査など様々な方式で行うことにした。また、B 地区を受診勧奨の重点地区に設定し、個別訪問による受診勧奨を行うことにした。その上で、保健師はA市で実施している特定健康診査の評価をすることにした。

→ストラクチャー(構造)評価は、保健事業を実施するための仕組みや体制を評価するものである。 具体的な評価指標としては、保健指導に従事する職員の体制 (職種・職員数・職員の資質等)、保健指導の実施に係る予算、施設・設備の状況、 他機関との連携体制、社会資源の活用状況などがある。

1.3~4.× 地区別受診率/特定健康診査の実施回数/受診勧奨のための個別訪問件数は、アウトプッ卜(事業実施量)評価である。アウトプット評価は、事業実施過程と参加状況などから直接生じた結果(数や量)を評価するものである。例として、健康診査受診率、保健指導実施率、保健指導の継続率、健康診査や保健指導の実施回数、受診勧奨や保健指導の訪問件数などがある。
2.〇 正しい。協力医療施設の数は、ストラクチャー(構造)評価である。ストラクチャー(構造)評価は、事業を実施するための仕組みや体制を評価するものである。例えば、マンパワー、予算、会場の状況、関係機関との連携体制などであり、評価指標としては、保健指導に従事する職員の体制(職種・職員数・職員の資質など)、保健指導の実施に係る予算、施設・設備の状況、他機関との連携体制、社会資源の活用状況などがある。協力医療施設数が増えることは、施設や連携体制の充実につながる。

事業評価

①ストラクチャー評価(企画評価):事業を実施するための仕組みや体制を評価するもの。
例:マンパワー、予算、会場の状況、関係機関との連携体制 等。

②プロセス評価(実施評価):事業の手順や実施過程、活動状況の妥当性を評価するもの。
例:事業参加者の募集方法、健康診査の従事者数・受診者数,事業の実施内容等。

③アウトプット評価:事業実施過程と参加状況などから直接生じた結果(数や量)を評価するもの。

④アウトカム評価(成果評価):事業の目的を達成したかどうかの最終的な成果を判断するもの。
例:参加者の6か月後のBMI値、糖尿病の治療継続者の割合、腹囲の減少率、参加者の運動回数 等。

評価指標

①企画評価:教育プログラムの企画は、適切であったか。
②過程評価:教育プログラムは、企画通りに実施できているか。
③影響評価:教育プログラムによって、対象者にどのような良い影響を与えたか。
④結果評価:教育プログラムの目標は、どの程度達成されたか。
⑤経済評価:教育プログラムに要した費用と、その効果はどうだったか。
⑥総合評価:すべての評価を含めて総合的な評価する。

 

 

 

 

 

次の文を読み45〜47の問いに答えよ。
 人口3万人のA市。市の面積の70%を山間部が占めており、主要産業は農業と畜産業などで、一次産業従事者が多い。人口の分布は市街地のB地区に集中しており、市役所、公共施設、医療施設および商業施設が集中している。高齢化率は38%、国民健康保険加入者は1万人である。平成20 年度から導入された特定健康診査の受診実績は、事業開始時から現在まで20%台を推移しており県内最下位である。

47 特定健康診査の実施方式の拡大などに取り組んだ結果、B地区の受診率は前年よりも向上したが他地区に比べて低く、特に男性の受診率は低いままである。受診率向上を目的とした家庭訪問の際に「病院にはいつでも行ける」、「病気とは無縁だ」、「病気が発見されるのが怖い」という声が多く聞かれた。保健師はB地区の住民に広く健康管理について啓発活動を行うことが必要と考え、健康診査の結果説明会を兼ねた「健康づくりの集い」を公民館で開催することにした。
 B地区の健康づくりを活性化するために、企画をともに検討する者で最も適切なのはどれか。

1.B地区小学校PTAの役員
2.自治会役員
3.健康推進員
4.民生委員

解答

解説

ポイント

・特定健康診査の実施方式の拡大などに取り組んだ。
・結果:B地区の受診率は前年よりも向上したが他地区に比べて低く、特に男性の受診率は低いまま。
・「病院にはいつでも行ける」、「病気とは無縁だ」、「病気が発見されるのが怖い」。
・方法:B地区の住民に広く健康管理について啓発活動「健康づくりの集い」を公民館で開催することにした。
→課題:B地区の健康づくりを活性化する(特に男性の受診率改善)。

1.× B地区小学校PTAの役員は優先度が低い。PTA【P=Parents(保護者)、T=Teacher(先生)、A=Association(組織)】とは、各学校で組織された保護者と教職員による社会教育関係団体のことである。児童生徒の健全な発達に寄与するための活動をしている。
2.× 自治会役員は優先度が低い。自治会とは、同一地域の居住者たちによって共通利益の実現と生活の向上を目的としてつくられた組織であり、地域に住んでいる人々が快適に過ごせるよう地域の清掃活動や消防訓練、祭りなどの企画・運営を担っている。
3.〇 正しい。健康推進員は優先度が最も高い。なぜなら、健康推進員とは、地域の健康づくり(母子保健や高齢者保健、生活習慣病予防活動なども含む)を推進するボランティアである。健康に関する活動を展開している住民組織活動のひとつであり、行政によって養成、支援されていることが多い。各行政区のリーダーとして地域に根ざした活動を行うことで、住民相互の健康づくり活動が実現し、地域に波及でき、健康管理の啓発、健康診査の結果説明会への協力などが期待できる。
4.× 民生委員は優先度が低い。民生委員とは、日本独自の制度化されたボランティアである。地域社会の福祉の増進図っている。任期は3年で都道府県知事の推薦を受けて厚生労働大臣に委嘱されたものである。市町村の各地区に配置され、①住民の生活状況の把握、②関係機関との連携、③援助を要するものヘの相談援助を主な役割とする。根拠法令は「民生委員法」で給与の支給はない。

民生委員とは?

民生委員は、日本独自の制度化されたボランティアである。地域社会の福祉の増進図っている。任期は3年で都道府県知事の推薦を受けて厚生労働大臣に委嘱されたものである。市町村の各地区に配置され、①住民の生活状況の把握、②関係機関との連携、③援助を要するものヘの相談援助を主な役割とする。根拠法令は「民生委員法」で給与の支給はない。

 

 

 

 

次の文を読み48、49の問いに答えよ。
 A市は人口5万人の地方都市。地場産業である繊維工業などの小規模の事業所の就業者が、A市の産業別就業者の大部分を占める。郊外には大手自動車会社のB工場(従業員500人)があり、A市の住民200人が勤務している。A市では男性の健康寿命が短いことが問題視されており、男性の平均寿命は80.0歳(全国平均80.5歳)、健康寿命は67.0歳(同70.0歳)である。女性の平均寿命は87.0歳(同86.8歳)、健康寿命は74.0歳(同74.0歳)である。保健師は人口動態統計から主要死因別の標準化死亡比(SMR)を調べた。その結果を表に示す。

48 A市の健康寿命に影響する要因を明らかにするために、次に入手すべき情報はどれか。

1.特定健康診査受診率
2.疾患別の1人当たりの医療費
3.特定健康診査受診者の生活習慣
4.要介護認定者が罹患している疾患

解答

解説

ポイント

・課題:A市では男性の健康寿命が短い。
・男性:平均寿命80.0歳(平均:80.5歳)、健康寿命67.0歳(平均:70.0歳)
・女性:平均寿命87.0歳(平均:86.8歳)、健康寿命74.0歳(平均:74.0歳)
→健康寿命とは日常的に介護を必要としないで、自立した生活ができる期間を指す。

健康寿命とは、日常的に介護を必要としないで、自立した生活ができる期間を指す。A市の要介護認定者が罹患している疾患の情報をもとに、日常的に介護が必要となった理由を調べることで、A市の健康寿命へ影響を与えた要因を検討できる。したがって、選択肢4.要介護認定者が罹患している疾患が、A市の健康寿命に影響する要因を明らかにするために、次に入手すべき情報である。

1~3.× 特定健康診査受診率/疾患別の1人当たりの医療費/特定健康診査受診者の生活習慣/を入手してもA市の健康寿命に影響する要因を明らかにすることはむずかしい。なぜなら、健康寿命とは、日常的に介護を必要としないで、自立した生活ができる期間を指すため。介護になった原因を調べることが最優先事項といえる。

標準化死亡比(SMR)とは?

標準化死亡比(SMR)とは、期待死亡数と実際の死亡数の比をいう。年齢(階級)別死亡率が基礎集団(通常は全国)と同じであると仮定したときに期待(予測)される死亡数であり、実際の死亡数をこれで除したものが標準化死亡比(SMR)である。

(※図引用:「図表1-2-1 平均寿命の推移」厚生労働省HPより)

 

 

 

 

 

次の文を読み48、49の問いに答えよ。
 A市は人口5万人の地方都市。地場産業である繊維工業などの小規模の事業所の就業者が、A市の産業別就業者の大部分を占める。郊外には大手自動車会社のB工場(従業員500人)があり、A市の住民200人が勤務している。A市では男性の健康寿命が短いことが問題視されており、男性の平均寿命は80.0歳(全国平均80.5歳)、健康寿命は67.0歳(同70.0歳)である。女性の平均寿命は87.0歳(同86.8歳)、健康寿命は74.0歳(同74.0歳)である。保健師は人口動態統計から主要死因別の標準化死亡比(SMR)を調べた。その結果を表に示す。

49  A市では住民に対して健康意識調査を行った。男女ともに「塩辛い食べ物が好き」、「どこへ行くにも車で移動する」という意見が多く、就業者では「仕事が優先で健康のことは後回しになる」という意見が多かった。保健師がB工場の衛生管理者に問い合わせたところ、B工場の特定保健指導対象者の割合は全国平均よりも低いことが分かった。A市では、今後、医療保険医療費データを分析して成人期の生活習慣病対策を進めることにした。
 分析に必要な情報を得るために連携する組織で優先されるのはどれか。

1.後期高齢者医療広域連合
2.全国健康保険協会
3.保険者協議会
4.健康保険組合

解答

解説

ポイント

・健康意識調査を行った。
・男女とも「塩辛い食べ物が好き」、「どこへ行くにも車で移動する」と。
・就業者「仕事が優先で健康のことは後回しになる」と。
・B工場の特定保健指導対象者の割合は全国平均よりも低い。
・今後:医療保険医療費データを分析して成人期の生活習慣病対策を進める。
→生活習慣病とは、「食習慣、運動習慣、休養の取り方、喫煙、飲酒などの生活習慣が、その発症・伸展に関与する疾患群」と定義されている。生活習慣病の背景因子として、①遺伝性因子、②環境因子、③生活習慣因子が考えらえているが、「生活習慣因子」は生活習慣病の積極的予防に最も重要な要素とされている。

1.× 後期高齢者医療広域連合は優先度が低い。ちなみに、後期高齢者医療広域連合とは、高齢者の医療の確保に関する法律第48条の規定に基づいて後期高齢者医療制度を取り扱う自治体によって運営されている連合のことである。前期高齢者とは、65歳から74歳まで、後期高齢者とは、満75歳以上の高齢者をそれぞれ指す。
2.〇 正しい。全国健康保険協会(協会けんぽ)は優先度が最も高い。なぜなら、全国健康保険協会(協会けんぽ)は、中小企業の従業員を対象に健康保険に関する事業を行っており、健康診査・医療データをもっているため全国健康保険協会とは、被用者保険者のひとつで、健康保険法等に基づき2008年10月1日に設立された、厚生労働省所管の特別の法律により設立される法人である。保険者として健康保険事業及び船員保険事業を行い、加入者の皆様の健康増進を図るとともに、良質かつ効率的な医療が享受できるようにし、もって加入者及び事業主の皆様の利益の実現を図る。
3.× 保険者協議会は優先度が低い。なぜなら、今回はA市のデータ分析であるため。保険者協議会は、保険者と後期高齢者医療広域連合が都道府県ごとに共同で設置し、医療費情報などの調査・分析も行う。高齢者医療確保法では、保険者と後期高齢者広域連合が都道府県ごとに共同で「保険者協議会」を組織し、①特定健診・保健指導の実施等に関する保険者間の連絡調整、②保険者に対する必要な助言又は援助、③医療費などに関する情報の調査及び分析の業務を行うことが規定されている。
4.× 健康保険組合は優先度が低い。なぜなら、A市の従事者は200名で保健指導対象者も少ないため。健康保険は、常時700人以上の従業員がいる事業所、または同種・同業の事業所が集まって3,000人以上の従業員がいる場合は、事業主の申請により厚生労働大臣の認可を受けて、健康保険組合を設立し、事業所の実態に合った健康保険の仕事を運営することができる。健康保険組合とは、健康保険法に基づき国が行う被用者医療保険事業を代行する公法人である。

(※図引用:「保険者協議会の役割」厚生労働省HPより)

 

 

 

 

次の文を読み50、51の問いに答えよ。
 Aさん(65歳、男性、無職)。妻との2人暮らし。定年退職後、年金の給付を受けて生活している。2年前から足の震えが出現したため病院を受診し、Parkinson(パーキンソン)病と診断された。定期的に病院を受診していたが、Hoehn-Yahr(ホーエン・ヤール)の重症度分類でステージⅢとなり、主治医から医療費助成の申請を勧められた。Aさんの妻が申請のため保健所に来所した。

50 難病の医療費助成制度についての妻への説明で正しいのはどれか。

1.「どの医療機関でも医療費助成が受けられます」
2.「負担上限月額は所得に応じて決まります」
3.「更新手続きには診断書は必要ありません」
4.「更新手続きは2年に1回必要です」
5.「医療費の自己負担は1割です」

解答

解説

本症例のポイント

・Aさん(65歳、男性、無職、2年前からパーキンソン病
・2人暮らし(妻)
・定年退職後、年金の給付を受けて生活。
・ホーエン・ヤールの重症度分類でステージⅢ(歩行障害、姿勢保持反射障害が出現し、ADLの一部に介助が必要
・主治医から「医療費助成の申請」を勧められた。
・Aさんの妻が申請のため保健所に来所した。
→パーキンソン病とは、黒質のドパミン神経細胞の変性を主体とする進行性変成疾患である。4大症状として①安静時振戦、②筋強剛(筋固縮)、③無動・寡動、④姿勢反射障害を特徴とする。また、自律神経障害による便秘や起立性低血圧、排尿障害、レム睡眠行動障害などが起こる。レム睡眠行動障害とは、レム睡眠の時期に体が動き出してしまう睡眠障害の1つである。 睡眠時随伴症に分類される。パーキンソン病は指定難病のひとつであり、疾病ごとに定められた重症度分類によって一定以上の状態にあることが認められた場合には、医療費助成を受けることができる。

(※図引用:「指定難病患者への医療費助成制度のご案内」難病情報センターHPより)

1.× どの医療機関でも医療費助成が受けられるわけではない。指定難病の医療費の給付を受けることができるのは、原則として指定医療機関で行われた医療に限られる。指定医療機関とは、①都道府県から指定を受けた病院・診療所、②薬局、③訪問看護ステーションを指す。
2.〇 正しい。負担上限月額は、所得に応じて決まる。医療費の自己負担上限月額は、医療保険における世帯の所得に応じて決まる、
3.× 更新手続きに、診断書が必要である。更新手続きには、難病指定医または協力難病指定医が作成する診断書(指定難病ごとに定められた臨床調査個人票)の提出が必要である。令和元年6月から、インターネットからの申請受付(電子申請)を開始している。
4.× 更新手続きは、2年に1回ではなく1年に1回必要である。指定難病の医療費助成を証明する特定医療費受給者証の有効期限は1年以内であり、更新手続きは1年に1回必要である。支給認定の有効期間は、原則1年以内で、病状の程度・治療の状況から医療を受けることが必要と考えられる期間である。ただし、特別な事情があるときは、1年3か月を超えない範囲で定めることができる。有効期間を過ぎて治療継続が必要な場合は更新の申請を行える。有効期間内に、一定の申請内容や負担上限月額算定のために必要な事項の変更があった場合は届出が必要である。また、支給認定された①指定医療機関、②負担上限月額、③指定難病の名称を変更する必要がある場合には、変更の申請をすることができる。
5.× 医療費の自己負担は、1割ではなく2割である。医療費助成の対象として認定された場合、指定医療機関では、受診のつど自己負担上限月額の範囲内で医療費の2割を自己負担として支払う。

(※図引用:「指定難病患者への医療費助成制度のご案内」難病情報センターHPより)

Hoehn&Yahr の重症度分類ステージ

ステージⅠ:片側のみの症状がみられる。軽症で機能障害はない。
ステージⅡ:両側の症状がみられるが、バランス障害はない。また日常生活・通院にほとんど介助を要さない。
ステージⅢ:歩行障害、姿勢保持反射障害が出現し、ADLの一部に介助が必要になる。
ステージⅣ:日常生活・通院に介助を必要とする。立位・歩行はどうにか可能。
ステージⅤ:寝たきりあるいは車いすで、全面的に介助を要する。歩行・起立は不能。

 

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