次の文を読み50、51の問いに答えよ。
Aさん(65歳、男性、無職)。妻との2人暮らし。定年退職後、年金の給付を受けて生活している。2年前から足の震えが出現したため病院を受診し、Parkinson(パーキンソン)病と診断された。定期的に病院を受診していたが、Hoehn-Yahr(ホーエン・ヤール)の重症度分類でステージⅢとなり、主治医から医療費助成の申請を勧められた。Aさんの妻が申請のため保健所に来所した。
51 保健所保健師は、医療費助成の手続きの際に決めた日時に家庭訪問をした。Aさんは「入浴や通院のときに不安を感じることがあるが、何とか自分のことは1人でできている」と話した。
初回訪問時に情報収集することで最も優先されるのはどれか。
1.経済状況
2.家族関係
3.住宅内の環境
4.近隣との付き合い
解答3
解説
・Aさん「入浴や通院のときに不安を感じることがあるが、何とか自分のことは1人でできている」と。
・初回訪問時に情報収集することで最も優先されるのはどれか。
(※図引用:「指定難病患者への医療費助成制度のご案内」難病情報センターHPより)
1.× 経済状況は優先度が低い。なぜなら、医療費助成の申請時に、「課税状況を確認できる書類」つまり、自己負担上限月額の決定時に世帯の所得を確認できる書類を提出するため。したがって、経済状況は申請時の面接で把握する。また、初回訪問から、経済状況を聞くと、患者・家族との関係の構築に支障をきたしやすいため慎重に行うべきである。
2.× 家族関係は優先度が低い。なぜなら、設問からも「妻との2人暮らし」と記載されているため。また、本症例はゆくゆくは家族の介護が必要になる可能性が高いが、現在は「入浴や通院のときに不安を感じることがあるが、何とか自分のことは1人でできている」と証言している。ちなみに、医療費助成の申請時に、住民票を提出するため、その際に、家族構成も確認できる。
3.〇 正しい。住宅内の環境は優先度が最も高い。なぜなら、本症例は2年前からパーキンソン病を患っており、ホーエン・ヤールの重症度分類でステージⅢ(歩行障害、姿勢保持反射障害が出現し、ADLの一部に介助が必要)であるため。また、現在は「入浴のときに不安を感じる」とも証言している。住宅内の環境を家庭訪問のときに把握することで、安全に生活できる環境をAさんと一緒に考えることでAさんとの信頼関係を築けることにつながる。
4.× 近隣との付き合いは優先度が低い。なぜなら、「入浴や通院のときに不安を感じること」に対しての不安への根本的解決となっていないため。パーキンソン病とは、黒質のドパミン神経細胞の変性を主体とする進行性変成疾患である。4大症状として①安静時振戦、②筋強剛(筋固縮)、③無動・寡動、④姿勢反射障害を特徴とする。また、自律神経障害による便秘や起立性低血圧、排尿障害、レム睡眠行動障害などが起こる。レム睡眠行動障害とは、レム睡眠の時期に体が動き出してしまう睡眠障害の1つである。 睡眠時随伴症に分類される。
ステージⅠ:片側のみの症状がみられる。軽症で機能障害はない。
ステージⅡ:両側の症状がみられるが、バランス障害はない。また日常生活・通院にほとんど介助を要さない。
ステージⅢ:歩行障害、姿勢保持反射障害が出現し、ADLの一部に介助が必要になる。
ステージⅣ:日常生活・通院に介助を必要とする。立位・歩行はどうにか可能。
ステージⅤ:寝たきりあるいは車いすで、全面的に介助を要する。歩行・起立は不能。
次の文を読み52、53の問いに答えよ。
人口1万人のA市。5月23日に大規模な地震が発生し、家屋の倒壊などのため、住民の多くが避難所に避難した。地震発生から7日後、市の保健師は、避難所の巡回相談の際、被災者が夜間眠れずにいることが分かったが、それが主訴として現れないことから、大規模災害後の心の変化や対処方法を示したポスターを掲示した。また、他県から応援に来ている心のケアチームの精神科医に依頼し、災害後のストレス反応についての健康講座を行った。
52 ポスターの掲示や健康講座の開催によって、不眠や食欲不振を自覚して保健師に訴える被災者が増えた。
このときの保健師の対応で適切なのはどれか。
1.栄養補助食品を配布する。
2.睡眠時間の記録をつけるよう促す。
3.心のケアチームと巡回相談の実施を調整する。
4.災害時の出来事について保健師に話すよう促す。
解答3
解説
・人口1万人のA市。
・5月23日:大規模な地震が発生(避難所に避難)
・7日後:避難所の被災者が「夜間眠れずにいる」ことが分かった。
・大規模災害後の心の変化や対処方法を示したポスターを掲示した。
・他県から応援に来ている心のケアチームの精神科医に依頼し、災害後のストレス反応についての健康講座を行った。
・ポスターの掲示や健康講座の開催:「不眠や食欲不振を自覚」して保健師に訴える被災者が増えた。
→災害後にみられる主な精神症状は、①再体験(フラッシュバック):心的外傷の原因となった出来事を繰り返して思い出したり、悪夢をみたりする症状、②回避:心的外傷の原因となった出来事を連想させることや関連することを避けようとする、③過覚醒:神経が高ぶった状態が続き、不安や不眠が強く現れ、集中することが困難となることが見られやすくなる。
1.× 栄養補助食品を配布することは優先度が低い。なぜなら、避難所の被災者が「不眠や食欲不振」という悩みへの根本的解決とはならないため。「不眠や食欲不振」の原因として、大規模な地震が発生したことの影響が大きい。ちなみに、栄養補助食品とは、1日に必要な栄養素を食事だけでは補うことが難しい場合に、その栄養素を補助することを目的とした食品である。不足しがちなビタミンやミネラル、タンパク質などを、栄養補助食品を摂取することで補う。
2.× 睡眠時間の記録をつけるよう促すことは優先度が低い。なぜなら、避難所の被災者が「不眠や食欲不振」という悩みへの根本的解決とはならないため。睡眠時間の記録をつけることは、自分の睡眠の状況を客観的に振り返ることができ、良い眠りの習慣をとるように行動変容を起こす効果がある。 特に、不眠症および睡眠リズム障害を適切に診断し、治療の方向性を決定するときに役立つ。
3.〇 正しい。心のケアチームと巡回相談の実施を調整することは優先度が最も高い。なぜなら、心のケアチームと巡回相談を実施することは、精神的に落ち着かせ、安心や安全を実感できるような支援につながるため。「心のケアチーム」とは、精神科医を中心としたメンバーで構成される精神医療チームである。平成23年の東日本大震災の際には、被災地に多くの医療チームが派遣され、救護・支援活動を行った。
4.× 災害時の出来事について保健師に話すよう促すことは優先度が低い。なぜなら、災害後にみられる主な精神症状がさらに助長される可能性が高いため。災害後にみられる主な精神症状は、①再体験(フラッシュバック):心的外傷の原因となった出来事を繰り返して思い出したり、悪夢をみたりする症状、②回避:心的外傷の原因となった出来事を連想させることや関連することを避けようとする、③過覚醒:神経が高ぶった状態が続き、不安や不眠が強く現れ、集中することが困難となることが見られやすくなる。
【超急性期:~24時間と急性期:~2,3日】
①災害状況:野外への避難、通信・交通・ライフラインの途絶、避難所生活開始。
②保健活動:救急対応(救護所の開設、必要な医療物品の準備)、地域の被害状況、ライフライン、衛生状態の把握、住民の安否確認と身元確認、避難行動要支援者の安否確認と移動、健康危機管理、避難所準備と周知、救護所や避難所の巡回健康相談と衛生管理および環境整備、職員の健康管理(急性期)。
【亜急性期:~2,3週間】
①災害状況:避難所生活の継続、水や食料の不足、衛生環境の悪化。
②保健活動:巡回健康相談、食中毒や感染症等の二次的な健康障害の予防活動、生活用品の確保、エコノミークラス症候群(深部静脈血栓症・肺塞栓症)の合併症対策、こころのケア対策の実施、派遣保健師配置やボランティアの活用、職員の健康管理、通常業務の調整。
次の文を読み52、53の問いに答えよ。
人口1万人のA市。5月23日に大規模な地震が発生し、家屋の倒壊などのため、住民の多くが避難所に避難した。地震発生から7日後、市の保健師は、避難所の巡回相談の際、被災者が夜間眠れずにいることが分かったが、それが主訴として現れないことから、大規模災害後の心の変化や対処方法を示したポスターを掲示した。また、他県から応援に来ている心のケアチームの精神科医に依頼し、災害後のストレス反応についての健康講座を行った。
53 発災から2か月後、避難者は自宅や親戚宅、仮設住宅へ入居し、避難所は閉鎖された。その1か月後、保健師は仮設住宅の入居者への健康調査を実施することとした。
保健師の行う健康調査について最も適切なのはどれか。
1.地区ごとに調査内容を変える。
2.仮設住宅の入居者の全戸訪問をする。
3.希望者にストレスチェックを実施する。
4.仮設住宅の集会所で聞き取り調査を実施する。
解答2
解説
・発災から2か月後:避難者は自宅や親戚宅、仮設住宅へ入居し、避難所は閉鎖された。
・その1か月後:保健師は仮設住宅の入居者への健康調査を実施した。
→発災から2か月後は、「災害復旧・復興期~災害前の状態」と判断できる。「災害復旧・復興期~災害前の状態」の①災害状況:慢性疾患の増悪、疲労による体調不良、仮設住宅等への転居、新しい環境での孤立。②保健活動:巡回健康相談、廃用症候群・閉じこもり・孤立死の予防・対策、心的外傷後ストレス障害(PTSD)への対応、新たなコミュニティづくりの支援、職員の健康管理、通常業務の再開。
1.× 地区ごとに調査内容を変える必要はない。むしろ調査内容を変えないほうが良い。なぜなら、地区ごとに調査内容を変えると、健康調査のデータを地区ごとに比較できなくなってしまうため。健康調査の内容は同一のもので実施する。
2.〇 正しい。仮設住宅の入居者の全戸訪問をする。なぜなら、仮設住宅の入居者の全戸訪問をすることにより、入居者の健康問題や家族の状況、生活状況などをアセスメントすることができるため。また、全戸訪問によりプライバシー保護にもつながり、相談できやすい環境となる。また、玄関前だけでも生活空間の状況を確認できる。
3.× 「希望者」だけでなく、全員にストレスチェックを実施する。なぜなら、仮設住宅の入居者の全体像を把握するため。また、もし重症者が気を使って希望しなかったら、より重大な問題へと発展してしまう恐れがある。
4.× 仮設住宅の集会所で聞き取り調査を実施する必要はない。なぜなら、集会所での聞き取りでは、プライバシー保護への配慮が難しく、仮設住宅のすべての入居者が参加するとは限らないため。
次の文を読み54、55の問いに答えよ。
Aさん(14歳、女子、中学2年生)は、両親と弟(2歳)との4人暮らし。中学校入学直後からクラスになじめず、無気力な様子がみられ、1年生の3学期から不登校になっている。学級担任と養護教諭は定期的に家庭訪問を行い、Aさんと母親の気持ちを聞き状況把握に努めた。Aさんは教室には入りづらいが、学校に行くことにはそれほど抵抗はないようだった。2年生の2学期になって「保健室なら行けそう」という言葉が聞かれるようになった。そこで、中学校の校内委員会でAさんの保健室登校について話し合うこととなった。
54 保健室登校を開始するにあたり、養護教諭が他の職員とともに確認する事項で適切でないのはどれか。
1.Aさんの保健室登校に対応できる職員の支援体制が整っていること
2.Aさんの保護者から保健室登校に対する協力が得られていること
3.全教職員の保健室登校に対する共通理解が得られていること
4.保健室登校を終了する期日が設定されていること
解答4
解説
・Aさん(14歳、女子、中学2年生)
・4人暮らし:両親、弟(2歳)
・中学校入学直後:クラスになじめず、無気力な様子。
・1年生の3学期から不登校。
・Aさんは教室には入りづらいが、学校に行くことにはそれほど抵抗はないよう。
・2年生の2学期:「保健室なら行けそう」と。
・中学校の校内委員会でAさんの保健室登校について話し合うことに。
→保健室登校とは、児童・生徒が学校には登校するものの、教室でなく代わりに保健室や図書室で過ごすことをいう。保健室通いとも称される。ちなみに、養護教諭とは主に、小・中・高校に配属されている「保健室の先生」のことである。 学校でケガをしたり体調を崩したりしたとき、保健室に行くと対応してくれるのが養護教諭である。養護教諭がいることで、生徒たちが安心して学校に通える環境が整えられている。
1.〇 Aさんの保健室登校に対応できる職員の支援体制が整っていることは大切である。なぜなら、Aさんの体調に合わせた柔軟な対応が必要になるため。Aさんは教室には入りづらいが、学校に行くことにはそれほど抵抗はないようで、2年生の2学期から「保健室なら行けそう」と言っている。
2.〇 Aさんの保護者から保健室登校に対する協力が得られていることは大切である。保健室登校とは、児童・生徒が学校には登校するものの、教室でなく代わりに保健室や図書室で過ごすことをいう。中には、周りと違う登校様式であったり、連絡不足が原因で、否定する親がいる。養護教諭は必要に応じて保護者へ連絡、助言を行い、Aさんの保健室登校に対する協力を得ておく。
3.〇 全教職員の保健室登校に対する共通理解が得られていることは大切である。なぜなら、職員間でAさんの支援方針の共有や連携が円滑に行われ、学校全体で支援することが可能となるため。
4.× 保健室登校を終了する期日が設定されていることは必要ない。なぜなら、Aさんの体調に合わせた柔軟な対応が必要になるため。保健室登校を終了する期日を設定してしまうことは、Aさんのペースに合わせた支援計画が立てられないばかりか、職員がAさんの教室登校を焦らせてしまう一因にもなりかねない。
次の文を読み54、55の問いに答えよ。
Aさん(14歳、女子、中学2年生)は、両親と弟(2歳)との4人暮らし。中学校入学直後からクラスになじめず、無気力な様子がみられ、1年生の3学期から不登校になっている。学級担任と養護教諭は定期的に家庭訪問を行い、Aさんと母親の気持ちを聞き状況把握に努めた。Aさんは教室には入りづらいが、学校に行くことにはそれほど抵抗はないようだった。2年生の2学期になって「保健室なら行けそう」という言葉が聞かれるようになった。そこで、中学校の校内委員会でAさんの保健室登校について話し合うこととなった。
55 Aさんは不定期な保健室登校ができる段階を経て、2年生の3学期からは毎日、保健室登校ができている。スクールカウンセラーとも数回の面接を行い「欠席のきっかけは友人関係だった」などと自分自身を振り返ることもでき、情緒的に安定してきた。最近では時々、学級担任に会いに教室に行けるようになった。保健室へ来室する数人の同級生と会話する様子もみられてきたことから、養護教諭は学級担任や他の職員と相談して、この機会に、Aさんが教室に登校できるように働きかけることにした。
養護教諭が行う支援で最も適切なのはどれか。
1.1週間当たりの教室に行く回数を決める。
2.保健室をAさんの居場所として定着させる。
3.Aさんが興味のある科目から参加するよう勧める。
4.同級生に毎日保健室に迎えに来てもらうように依頼する。
解答3
解説
・2年生3学期から:毎日保健室登校可能。
・Aさん「欠席のきっかけは友人関係だった」と。
・自分自身を振り返ることもでき、情緒的も安定。
・最近:時々、学級担任に会いに教室に行ける。
・保健室へ来室する数人の同級生と会話する様子も。
・Aさんが教室に登校できるように働きかけることにした。
→なるべくAさんの心理的負担を軽減した状態で教室に登校できる環境設定が必要になる。
1.× 1週間当たりの教室に行く回数を決める優先度は低い。なぜなら、教室に行く回数を決めることはAさんの心理的な負担につながりかねないため。Aさんの体調に合わせた柔軟な対応が必要となる。
2.× 保健室をAさんの居場所として定着させる優先度は低い。なぜなら、教室で過ごすという目標を達成するため。あくまでも一時的な居場所であると伝える必要がある。
3.〇 正しい。Aさんが興味のある科目から参加するよう勧める。なぜなら、Aさんが興味のある科目の参加を促すことは、よりAさんの心理的負担の軽減につながるため。
4.× 同級生に毎日保健室に迎えに来てもらうように依頼する優先度は低い。なぜなら、同級生が迎えに来ることは、同級生にとってもAさんにとっても心理的な負担につながりかねないため。
※注意:解説はすべてオリジナルのものとなっています。私的利用の個人研究・自己研鑽のため作成いたしました。間違いや分からない点があることをご了承ください。またコメントにて解き方等教えてくださると幸いです。