6 変化ステージ理論について正しいのはどれか。
1.対象者の行動変容の段階に合った保健指導に有用である。
2.糖尿病に対する行動変化の研究から見出された。
3.解凍、変化、再凍結の段階がある。
4.ステージは後戻りしない。
解答1
解説
1.〇 正しい。対象者の行動変容の段階に合った保健指導に有用である。変化ステージ理論(行動変容ステージモデル)とは、人の健康行動の変容や維持について示された理論である。1980年代前半に禁煙の研究から導かれたモデルであり、いろいろな健康(食事や運動、筋炎)に関する行動について幅広く研究と実践が進められた。行動変容ステージモデルでは、人が行動(生活習慣)を変える場合は、「無関心期」→「関心期」→「準備期」→「実行期」→「維持期」の5つのステージを通ると考えられている。現在の段階に合った保健指導を行うことができる。
2.× 「糖尿病」単一ではなく、「いろいろな健康(食事や運動、禁煙)」に対する行動変化の研究から見出された理論である。
3.× 解凍、変化、再凍結の段階があるのは、「変化ステージ理論」ではなく、社会心理学者のレヴィン(Lewin,K)によって提唱された変化の3段階理論である。変革には従来のやり方や価値観を壊し(解凍)、それらを変化させ(変革)、新たな方法や価値観を構築する(再凍結)という3段階のプロセスが必要だとする変革のモデルを提唱した。
4.× ステージは後戻りもする。変化ステージの5段階は、必ずしも一方向に進むわけではなく、ときには後戻りもする。そのため、継続的な保健指導が必要である。
変化ステージ理論(行動変容ステージモデル)とは、人の健康行動の変容や維持について示された理論である。1980年代前半に禁煙の研究から導かれたモデルであり、いろいろな健康(食事や運動、禁煙)に関する行動について幅広く研究と実践が進められた。行動変容ステージモデルでは、人が行動(生活習慣)を変える場合は、「無関心期」→「関心期」→「準備期」→「実行期」→「維持期」の5つのステージを通ると考えられている。
無関心期:行動変容を考えていない時期である。
関心期:行動変容を考えているが実行していない時期である。
準備期:すぐ始める意思がある時期もしくは独自の方法でも何かしら行っている時期である。
実行期:望ましい行動を起こした時期である。
維持期:6か月以上行動を継続している時期である。
7 ヘルスリテラシーについて誤っているのはどれか。
1.健康管理を行うために活用するスキルである。
2.ヘルスプロモーションの活動に関わる能力である。
3.情報提供の方法が適切か検討することが含まれる。
4.健康日本21(第二次)の目標にヘルスリテラシーの向上が挙げられている。
解答4
解説
ヘルスリテラシーとは、WHOによると「健康の増進や維持に役立つ情報にアクセスし、理解し、利用する個人の意欲や能力となる認知的で社会的なスキル」とされる。
1.〇 健康管理を行うために活用するスキルである。ヘルスリテラシーは、健康の自己管理能力につながる。
2.〇 ヘルスプロモーションの活動に関わる能力である。ヘルスプロモーションとは「人々が自らの健康をコントロールし、改善できるようにするプロセスである」と定義されている。ヘルスリテラシーは、ヘルスプロモーションにおいて、住民の主体的な参加を促進する要因となる。
3.〇 情報提供の方法が適切か検討することが含まれる。情報を提供する側は、受け手側のヘルスリテラシーの状態に応じた情報提供の方法を工夫することが大切である。
4.× 誤っている。健康日本21(第二次)の目標には、ヘルスリテラシーの向上が挙げられていない。健康日本21(第二次)とは、日本における健康対策の現状や第三次国民健康づくり対策(健康日
ヘルスプロモーション(健康教育)は、「人々が自らの健康とその決定要因をコントロールし、改善することができるようにするプロセス」と定義される。①健康な公共政策づくり、②健康を支援する環境づくり、③地域活動の強化、④個人技術の開発、⑤ヘルスサービスの方向転換などが挙げられる。保健部門だけの責任にとどまらず、人々のライフスタイルや生活の質(QOL)にかかわるものであり、個人の能力だけでなく環境の整備も含まれる。オタワ憲章(1986年)で提唱され、日本では、健康日本21(2000年)で基本理念に取り入れられている。
①健康的な公共政策づくり:健康は、人々の暮らしを支えている公共政策(道や諸施設、衛生上欠かせない上下水道の整備など)によって保証されるため、公共政策そのものを健康的なものにする必要がある。
②健康を支援する環境づくり:環境(ハード・ソフト面)を整備することで、住民一人ひとり健康づくりを支援する。
③地域活動の強化:住民組織を活性化することで健康づくりを地域での住民活動を強化するような働きかけを行う。
④個人技術の開発:住民一人ひとり、そして専門家が、健康づくりに取り組むために必要な技術を身につけられるような働きかけや取り組みを行う。
⑤ヘルスサービスの方向転換:これまで疾病対策として実施されてきた事業(ヘルスサービス)を、より積極的に健康づくりの場としてとらえ見直しを行う。
8 Aさん(60歳、女性)は、隣に住むBさん(48歳、男性)についての相談のため、初めて保健所に来所した。「Bさんは以前から酒好きで、仕事が休みの日には朝から酒を飲んでいることがよくあった。ここ1か月ほどは仕事にも行かず、泥酔して大声で騒ぎ、家の中で暴れているようだ」と言う。
初回相談の際のAさんへの地区担当保健師の対応で最も適切なのはどれか。
1.Bさんの勤務の状況を聴取する。
2.飲酒が身体に及ぼす影響を説明する。
3.Aさんが今回相談に来所した目的を確認する。
4.Bさんを医療機関に受診させるための協力を依頼する。
解答3
解説
・保健所への相談
・Aさん(60歳、女性)から、隣に住むBさん(48歳、男性)について。
・Aさん「Bさんは以前から酒好きで、仕事が休みの日には朝から酒を飲んでいることがよくあった」。
・Aさん「ここ1か月ほどは仕事にも行かず、泥酔して大声で騒ぎ、家の中で暴れているようだ」。
→Bさんは、アルコール依存症が疑われる。アルコール依存症とは、少量の飲酒でも、自分の意志では止めることができず、連続飲酒状態のことである。常にアルコールに酔った状態でないとすまなくなり、飲み始めると自分の意志で止めることができない状態である。まずは、Aさん宅やまわりの家に問題が起こっていないか、またAさんの相談目的に応じて、保健師は今後の対応方針を検討するとともに、Aさんに必要な情報や助言内容を支援していく。
1.× Bさんの勤務の状況を聴取するのは優先度が低い。なぜなら、Aさん「ここ1か月ほどは仕事にも行かず、泥酔して大声で騒ぎ、家の中で暴れているようだ」と正確性に欠けているため。Aさん主体の情報収集のほうが適切である。
2.× 飲酒が身体に及ぼす影響を説明するのは優先度が低い。Aさんに対して説明するのではなく、アルコール依存症と疑われるBさんにすべきである。ただし、アルコール依存症であった場合、アルコール依存症とは少量の飲酒でも、自分の意志では止めることができず、連続飲酒状態のことである。したがって、Bさんに飲酒が身体に及ぼす影響を説明しても効果は薄い。
3.〇 正しい。Aさんが今回相談に来所した目的を確認するのは優先度が高い。まずは、Aさん宅やまわりの家に問題が起こっていないか、またAさんの相談目的に応じて、保健師は今後の対応方針を検討するとともに、Aさんに必要な情報や助言内容を支援していく。
4.× Bさんを医療機関に受診させるための協力を依頼するのは優先度が低い。なぜなら、Aさんはまったくの他人で個人情報保護の観点からも適切ではないため。
9 A市では特定健康診査の結果から、定年退職後の60歳代の男性は同年代の女性と比較して、退職後数年でHbA1c が基準値を超える者の割合が高いことが分かった。また、問診票から、日中は1人で過ごし昼食も1人で摂ることが多く、食事は全体的に外食や市販の惣菜に偏っていることが把握された。
定年退職後の男性を対象とし、地域への波及効果も目的とした糖尿病予防事業として最も適切なのはどれか。
1.食事の記録をつけてもらい栄養士が評価する。
2.高血糖を予防する食事のパンフレットを郵送する。
3.特定健康診査で高血糖を予防するための個別相談を行う。
4.高血糖を予防する食事づくりの調理実習をグループで行う。
解答4
解説
・特定健康診査の結果:定年退職後の60歳代の男性は同年代の女性と比較して、退職後数年でHbA1c が基準値を超える者の割合が高い。
・問診票:日中は1人で過ごし昼食も1人で摂ることが多く、食事は全体的に外食や市販の惣菜に偏っている。
・【対象】定年退職後の男性
・【目的】地域への波及効果のある糖尿病予防事業
1~3.× 食事の記録をつけてもらい栄養士が評価する/高血糖を予防する食事のパンフレットを郵送する/特定健康診査で高血糖を予防するための個別相談を行う優先度は低い。なぜなら、食事の記録・パンフレットの郵送・個別相談は、地域への波及効果が見込めないため。ちなみに、特定健康診査とは、40~74歳までの医療保険加入者を対象に実施されるものである。特定健診で行う検査は、主に①身体計測(身長・体重・BMI・腹囲)、②血中脂質検査(中性脂肪・HDLコレステロール・LDLコレステロール)、③肝機能検査(GOT・GPT・γ-GTP)、④血糖検査(空腹時血糖・HbA1c)、⑤尿検査(尿糖・尿蛋白)などである。設問の糖尿病予防事業は、地域の定年退職後の男性全員を対象として検討している。
4.〇 正しい。高血糖を予防する食事づくりの調理実習をグループで行う優先度は高い。なぜなら、設問の糖尿病予防事業の対象・目的にも合致するため。糖尿病予防事業の地域全体への波及効果を目的としていることから、集団を対象とする手法が効果的である。また、日中は1人で過ごし昼食も1人で摂ることが多く、食事は全体的に外食や市販の惣菜に偏っている状況から、高血糖の有無にかかわらず、誰でも気軽に参加できる事業が望ましい。
10 Aさん(24歳、専業主婦)は、夫と生後6か月の乳児(出生体重2,900g)との3人暮らし。乳児健康診査が未受診で、電話にて受診勧奨を行ったが来所しないため、地区担当保健師が家庭訪問をした。訪問時、児の体重は7,500g。定頸しており、寝返りはできるがお座りはできない。「離乳食を開始したばかりで、進め方が分からない」と言うので、保健指導を行った。乳児健康診査については「風邪気味だったので連れて行けなかった。人付き合いが苦手で育児の相談相手もいないので、戸惑うことが多い」と話した。
今後の保健師の対応として最も適切なのはどれか。
1.市の育児相談の利用を勧める。
2.定期的な家庭訪問を継続する。
3.地域の子育てサークルの立ち上げを促す。
4.児の発達について小児科医に相談することを勧める。
解答1
解説
・Aさん(24歳、専業主婦)
・3人暮らし:夫、生後6か月の乳児(出生体重2,900g)。
・乳児健康診査:未受診(電話にて受診勧奨を行ったが来所しない)
・地区担当保健師が家庭訪問をした。
・訪問時:児の体重は7,500g。
・定頸、寝返りはできるがお座りはできない。
・Aさん「離乳食を開始したばかりで、進め方が分からない」と。
・乳児健康診査については「風邪気味だったので連れて行けなかった。人付き合いが苦手で育児の相談相手もいないので、戸惑うことが多い」と話した。
→乳幼児健康診査とは、母子保健法第12条及び第13条の規定により市町村が乳幼児に対して行う健康診査である。乳幼児健診は、身長、体重、胸囲、頭囲を測定し、成長曲線と照らし合わせながら、成長度合いを確認する。身体的な健診に限らず、粗大運動・微細運動・精神面を含めた発達、疾患の有無に関しても確認する。
1.〇 正しい。市の育児相談の利用を勧める。市の育児相談は、保健師や管理栄養士など専門職に相談できる機会であるとともに、保健師が見守るなか、Aさんと同じような悩みや不安を抱える親同士が交流できる場でもある。Aさんの場合、離乳食や育児の相談を動機づけとして、育児相談の利用を勧められること、保健師が見守る環境で、人付き合いが苦手なAさんが安心して交流を広げられるよう支援できる。
2.× 定期的な家庭訪問を継続する優先度は低い。なぜなら、今後のAさんを考えるとほかの人と交流する場に出ていくことが大切であるため。また、Aさんは専業主婦であり、相談相手もいないということから、今後、さらに地域で孤立した状態になる可能性が考えられる。また貧困や社会的孤立は、児童虐待につながる原因ともされている。
3.× 地域の子育てサークルの立ち上げを促す優先度は低い。なぜなら、人付き合いが苦手であると話す母親に、その役割を促すのは難易度が高いため。地域の子育てサークルを立ち上げるには、同じようなニーズをもつ母親や支援者と相談しながら進める必要がある。子育てサークル(育児サークル)は、親同士が子育てに関する情報交換や相互協力を、また子どもにとっては友達作りなどを行うサークルのことである。他児の保護者と気持ちを共有したり情報交換できる場であるが、専門的な情報は得られにくい。
4.× 児の発達について小児科医に相談することを勧める優先度は低い。なぜなら、まだお座りはできないが、6か月児の乳児の発育発達は順調であるため。
・0~3か月:25~30g
・3~6か月:20~25g
・6~9か月:15~20g
・9~12か月:7~10g