6 保健師の家庭訪問の対象で最も優先度が高いのはどれか。
1.要介護2の独居高齢者
2.特定健康診査の未受診者
3.A群β溶血性レンサ球菌感染症の罹患が疑われる幼児
4.治療中断していると病院から連絡があった統合失調症患者
解答4
解説
優先順位対象者の抱える問題や緊急性などから訪問の優先順位をつける。
【家庭訪問の優先度の高い事例】
・生命に危険のある事例(児童虐待等)
・依頼者や相談者の不安が強い事例
・医療的ケアの必要な事例
・地域の健康課題に応じて実施する事例(調査・研究等)
(抜粋:「家庭訪問における地域保健活動技術マニュアル」長崎県福祉保健課より)
1.× 要介護2の独居高齢者の優先度は低い。なぜなら、要介護2とはいえ「生命に危険のある事例」とは言いにくいため。また、独居であることからも「医療的ケアの必要な事例」に該当しにくい。
2.× 特定健康診査の未受診者の優先度は低い。なぜなら、「医療的ケアの必要な事例」に該当しにくいため。特定健康診査とは、40~74歳までの医療保険加入者を対象に実施されるものである。特定健診で行う検査は、主に①身体計測(身長・体重・BMI・腹囲)、②血中脂質検査(中性脂肪・HDLコレステロール・LDLコレステロール)、③肝機能検査(GOT・GPT・γ-GTP)、④血糖検査(空腹時血糖・HbA1c)、⑤尿検査(尿糖・尿蛋白)などである。
3.× A群β溶血性レンサ球菌感染症の罹患が疑われる幼児の優先度は低い。なぜなら、「医療的ケアの必要な事例」に該当しにくいため。A群β溶血性レンサ球菌感染症とは、『感染症法』の5類感染症(定点把握疾患)で、急性咽頭炎や膿痂疹(のうかしん)、蜂窩織炎を引き起こす。潜伏期は一般に2~4日で、突然の発熱・のどの痛みで始まり、のどは赤く腫れ、扁桃腺は膿を持っているように見える。
4.〇 正しい。治療中断していると病院から連絡があった統合失調症患者の優先度は高い。なぜなら、「医療的ケアの必要な事例」に該当するため。統合失調症の治療中断例は、今後再発・増悪する可能性がきわめて高く、病状が悪化した際の本人や家族、近隣住民に及ぼす影響も大きい。
統合失調症とは、幻覚・妄想・まとまりのない発語および行動・感情の平板化・認知障害ならびに職業的および社会的機能障害を特徴とする。原因は不明であるが、遺伝的および環境的要因を示唆する強固なエビデンスがある。好発年齢は、青年期に始まる。治療は薬物療法・認知療法・心理社会的リハビリテーションを行う。早期発見および早期治療が長期的機能の改善につながる。統合失調症患者の約80%は、生涯のある時点で、1回以上うつ病のエピソードを経験する。統合失調症患者の約5~6%が自殺し,約20%で自殺企図がみられる。したがって、うつ症状にも配慮して、工程がはっきりしたものや安全で受け身的で非競争的なものであるリハビリを提供する必要がある。
(※参考:「統合失調症」MSDマニュアル様HPより)
7 A町では、がん検診の受診率向上対策に取り組んだ結果、受診率が向上した。しかし、毎年、がん検診の精密検査の対象者の中に精密検査を受診していない者がいる。
精密検査の未受診者への受診勧奨として最も効果が高いのはどれか。
1.町の広報誌に精密検査の日時を掲載する。
2.保健師が精密検査の未受診者に家庭訪問を行う。
3.コミュニティ放送で精密検査の受診を呼びかける。
4.がん検診における集団指導で精密検査の必要性を伝える。
解答2
解説
・A町:がん検診の受診率向上対策に取り組んだ結果、受診率が向上した。
・課題:がん検診の精密検査の対象者の中に精密検査を受診していない者がいる。
・精密検査の未受診者への受診勧奨をしたい。
→がん検診後の精密検査未受診者に、早急で確実な受診勧奨をする方法としては、ハイリスクアプローチが適している。ハイリスクアプローチとは、リスクの高いものに対象を絞り込んで働きかける方法である。2次予防とされる。
1.3.× 町の広報誌に精密検査の日時を掲載する/コミュニティ放送で精密検査の受診を呼びかける優先度は低い。なぜなら、対象者が必ずしも広報誌やコミュニティ放送を見たり聞いたりするとは限らないため。ポピュラーアプローチ(ポピュレーションストラテジー)である。対象を限定せず地域や職場など、集団全体に働きかけてリスクを下げる方法である。
2.〇 正しい。保健師が精密検査の未受診者に家庭訪問を行う。がん検診後の精密検査未受診者に、早急で確実な受診勧奨をする方法としては、ハイリスクアプローチが適している。ハイリスクアプローチとは、リスクの高いものに対象を絞り込んで働きかける方法である。2次予防とされる。
4.× がん検診における集団指導で精密検査の必要性を伝える優先度は低い。なぜなら、具体的に「精密検査を受診していない者」にアプローチしたいため。がん検診における集団指導で精密検査の必要性を伝えることは、ポピュレーションアプローチである。
・ポピュラーアプローチ(ポピュレーションストラテジー):対象を限定せず地域や職場など、集団全体に働きかけてリスクを下げる方法である。一次予防とされる。
・ハイリスクアプローチ(ハイリスクストラテジー):リスクの高いものに対象を絞り込んで働きかける方法である。2次予防とされる。
8 人口8,000人のA町では妊婦とそのパートナーを対象として、妊娠、出産および子育ての知識の習得を目的に両親学級を実施していたが、1回当たりの参加者が年々減少している。そこで、次年度は家族同士の交流を促進するプログラムを導入することにした。
A町の保健師が次年度の両親学級の具体的な内容を検討するにあたり分析する項目で優先度が高いのはどれか。
1.両親学級の講師からの意見
2.A町の合計特殊出生率の推移
3.近隣市町村の両親学級の実施状況
4.妊娠届出時の面接での聞き取り内容
解答4
解説
・A町:人口8,000人
・対象:妊婦とそのパートナー
・目的:妊娠、出産および子育ての知識の習得
・方法:両親学級
・課題:1回当たりの参加者が年々減少。
・解決策:家族同士の交流を促進するプログラムを導入する。
→「参加者の年々減少」がみられているが、その原因は不明である。年々減少している理由は、①参加者の知識が習得できたからなのか?、②純粋に分かりにくいからなのか?、③参加者の欲しい情報が得られていないのか?様々である。まずは、参加者たちにどんな情報が欲しいか聞いてみると良いだろう。ちなみに、両親学級とは、妊婦さんとパートナーが一緒に妊娠・出産・育児について学んだり、赤ちゃんのお世話を体験したりする場で、自治体、病院や産院、民間企業などが主催している。 医師、助産師、看護師、保健師、管理栄養士といった専門家から直接アドバイスを受けることができ、不安なことがあれば相談することもできる。
1.× 両親学級の講師からの意見の優先度は低い。なぜなら、両親学級の講師からの意見が、的を得ていた場合、両親学級の参加者が年々減少しなかったと考えられるため。つまり、両親学級の講師は、参加者が年々減少した原因は分からないといえる。
2.× A町の合計特殊出生率の推移の優先度は低い。合計特殊出生率とは、15~49歳の女性の年齢別出生率を合計したものである。1人の女性が一生の間に生む平均子ども数を表したものである。両親学級の参加者数の減少に伴い、A市の合計特殊出生率が低下している可能性も考えられるが、次年度の両親学級の具体的な内容を検討するにあたり分析する項目としては具体的対策にかける内容となってしまいかねない。
3.× 近隣市町村の両親学級の実施状況の優先度は低い。なぜなら、近隣市町村の両親学級の実施状況がA市と同じ課題で、同じ状況であるとは言えないため。A町の次年度の両親学級の具体的な内容を検討する。
4.〇 正しい。妊娠届出時の面接での聞き取り内容の優先度は高い。参加者の年々減少」がみられているが、その原因は不明である。年々減少している理由は、①参加者の知識が習得できたからなのか?、②純粋に分かりにくいからなのか?、③参加者の欲しい情報が得られていないのか?様々である。まずは、参加者たちにどんな情報が欲しいか聞いてみると良いだろう。
9 母子保健活動の見直しのために地域診断を行うことになった。
地区担当保健師が最初に行うことで最も適切なのはどれか。
1.地区内の子どもがいる世帯にアンケート調査を実施する。
2.乳幼児健康診査の問診票から相談内容の集計を行う。
3.子育て広場に来ている母親に聞き取り調査を行う。
4.地区にある保育所の保育士と連絡会議を行う。
解答2
解説
地域診断とは、 「公衆衛生を担う専門家が、 地区活動を通して地域課題を明らかにし、 地区活動を通して個人のケアに留まらず、集団あるいは地域を対象にケアを行い、地域課題を軽減・解消していく一連のプロセスである。地域全体を対象とし、その地域の観察や住民との話し合い、既存の資料・実態調査から情報収集を行い、地域住民の健康や生活を把握・アセスメントすることで、健康とQOLの向上を目指す活動である。主な「目的」として、①地域の健康問題の把握、②地域住民の潜在ニーズの顕在化、③保健対策の樹立、④保険事業の効果測定である。
1.3.× 地区内の子どもがいる世帯にアンケート調査を実施する/子育て広場に来ている母親に聞き取り調査を行う優先度は低い。なぜなら、地域診断の方法としてアンケート調査・聞き取り調査は有効であるが、地区担当保健師が最初に行うこととしては、アンケート調査・聞き取り調査は限定的かつ時間を要するため。母子保健活動の見直しのために行う地域診断の資料として限界がある。
2.〇 正しい。乳幼児健康診査の問診票から相談内容の集計を行う優先度は高い。なぜなら、乳幼児健康診査は、対象となるほとんどの親子が受診しており、問診票の相談内容は子どもや育児上の問題を含んでいるため。また、既存の資料としてすぐに活用が可能で、集計結果は母集団に近いデータとなる。
4.× 地区にある保育所の保育士と連絡会議を行う優先度は低い。なぜなら、保育所との連絡会議という限られた範囲での情報であるため。またこれを地域診断の活動に入れてよいか疑問が残り、地区担当保健師が最初に行うこととしては難易度が高い。地域診断とは、 「公衆衛生を担う専門家が、 地区活動を通して地域課題を明らかにし、 地区活動を通して個人のケアに留まらず、集団あるいは地域を対象にケアを行い、地域課題を軽減・解消していく一連のプロセスである。地域全体を対象とし、その地域の観察や住民との話し合い、既存の資料・実態調査から情報収集を行い、地域住民の健康や生活を把握・アセスメントすることで、健康とQOLの向上を目指す活動である。主な「目的」として、①地域の健康問題の把握、②地域住民の潜在ニーズの顕在化、③保健対策の樹立、④保険事業の効果測定である。
10 市の各地域で認知症サポーター養成講座を実施した。
地域におけるコミュニティ・エンパワメントが最も引き起こされた状態はどれか。
1.講座を受講した住民の数が増えた。
2.認知症サポーター同士の交流が深まった。
3.家庭内で認知症の話をすることが増えた。
4.認知症を有する住民を見守るボランティアグループができた。
解答4
解説
認知症サポーターとは、地域や職域において認知症の人と家族を支える認知症サポーターを養成することを目的とする。認知症を正しく理解し、認知症の人や、その人を取り巻く家族の良き理解者となり、地域の高齢者や認知症(予備群を含む)の人々を見守るボランティア活動である。
①キャラバン・メイト養成研修事業:認知症サポーター養成講座の講師で、講座の企画・立案および実施を行うキャラバン・メイトを養成することを目的とする。
②認知症サポーター養成講座:地域や職域において認知症の人と家族を支える認知症サポーターを養成することを目的とする。
③ステップアップ講座の実施:認知症サポーター養成講座修了者の認知症に関する基礎知識・理解を深めるための講義等を通じて、チームオレンジの活動に参画するなど,より実際の支援活動に繋げることを目的とする。
(引用:「認知症サポーター等養成事業実施要網」厚生労働省HPより)
1.× 講座を受講した住民の数が増えたことは、コミュニティ・エンパワメントが最も引き起こされた状態とはいえない。なぜなら、講座受講者が増えたことは、「個人」の領域でのエンパワメントであるため。
2.× 認知症サポーター同士の交流が深まったことは、コミュニティ・エンパワメントが最も引き起こされた状態とはいえない。なぜなら、認知症サポーター同士の交流が深まるのは、「グループ」の領域でのエンパワメントであるため。
3.× 家庭内で認知症の話をすることが増えたことは、コミュニティ・エンパワメントが最も引き起こされた状態とはいえない。なぜなら、家庭内で認知症の話をすることが増えるのは、「家族」の領域でのエンパワメントであるため。
4.〇 正しい。認知症を有する住民を見守るボランティアグループができたことは、コミュニティ・エンパワメントが最も引き起こされた状態とはいえる。なぜなら、認知症を有する住民を見守るボランティアグループができたことは、認知症を有する住民が地域で安心して暮らせるようになるもので、「地域」の領域でのエンパワメントであるため。コミュニティ・エンパワメントは、当事者一人ひとりの思いを活かしながら、まさに「共感に基づく自己実現」を育む仲間と場所、すなわちコミュニティを作り上げる技法である。つまり、到達点は、誰もが安心して暮らせる地域である。
エンパワメントとは、対象者が主体的に自身の状態を変えていく方法や自信を獲得できるよう、対象者が本来持っている力を引き出し、その自己決定能力を強化することである。対象は、個人、組織、コミユニテイの3段階がある。過程には、傾聴→対話→行動アプローチがある。
コミュニティ・エンパワメントは、当事者一人ひとりの思いを活かしながら、まさに「共感に基づく自己実現」を育む仲間と場所、すなわちコミュニティを作り上げる技法である。
【コミュニティ・エンパワメントの成果】
①コミュニティ・メンバーは自身の問題解決に向かう意欲と自信がつ
②コミュニティ・メンバーのコミュニティに対する関心が高まる。
③コミュニティでの相互支援が高まる。
④コミュニティでリーダーが育成される。
⑤コミュニティは政策改善の方向性を見いだす。