第104回(R3) 助産師国家試験 解説【午前6~10】

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6 妊娠による性器の変化で正しいのはどれか。

1.初期に卵巣は腫大する。
2.腟内の乳酸の産生が減少する。
3.子宮頸部は体部より早期に軟化する。
4.子宮壁の厚さは妊娠末期に最大となる。

解答

解説

1.〇 正しい。初期に卵巣は腫大する。なぜなら、妊娠初期には絨毛性ゴナドトロピン(HCG)が過剰産生され卵巣が刺激されるため。卵巣の血管の肥大や間質細胞の増殖などが起こる。ちなみに、絨毛性ゴナドトロピン(HCG)は、排卵後に卵巣に形成された黄体を刺激して黄体の受精卵を発育させる機能を維持する。機能的な卵巣嚢腫(ルテイン嚢胞)であり、妊娠初期の胎盤が形成される15〜16週ごろまでにほとんどの場合に治まる。
2.× 腟内の乳酸の産生は、「減少」ではなく増加する。これは膣上皮のグリコーゲン含有量が増加するためといわれており、腟分泌物の増加、帯下は白色乳汁状となる。乳酸桿菌であるデーデルライン桿菌は腟内を酸性に保つ働きがあり、異常細菌の増殖を防ぐ腟の自浄作用を行う。妊娠中は乳酸桿菌が増加し強酸性となる。
3.× 子宮頸部は体部より、「早期」ではなく遅れて軟化する。12〜16週ごろに子宮体部の軟化のために、子宮峡部が双合診で内診指と外診指が直接触れるように感じるヘガール徴候がみられる。ヘガール徴候とは、双合診による子宮所見として、子宮頚部は硬く、子宮体部は柔軟という特徴がみられることをさす。
4.× 子宮壁の厚さは妊娠末期に、「最大」ではなく「薄く」なる。妊娠が進むと薄くなる。なぜなら、妊娠中は胎児の成長とともに子宮が大きくなるため子宮壁も伸びるため。ただし、子宮頸部は平滑筋が少なく結合組織の割合が多いため妊娠時には進展しない。

 

 

 

 

 

 

7 胎盤通過性で正しいのはどれか。

1.グルコースは通過しない。
2.免疫グロブリンIgGは通過する。
3.水溶性が高い物質ほど通過しやすい。
4.分子量が大きい物質ほど通過しやすい。

解答

解説

1.× グルコースは「通過しない」のではなく通過する。グルコースには、胎盤通過性があり、胎盤を通じて胎児へグルコース(ブドウ糖)を輸送している。胎児のエネルギー源となっている。
2.〇 正しい。免疫グロブリンIgGは通過する。IgGは、分子量が最も小さい抗体であるため、唯一、胎盤を通過する免疫グロブリンである。IgGは、血中で最も多く存在する抗体である。母親から移行したIgGは生後1週間まで新生児を守る。血中に最も多い抗体であり、血中や組織中に広く分布して生体防御を担う。
3.× 水溶性が高い物質ほど「通過しやすい」のではなく通過しにくい。したがって、胎盤は、水溶性が高い物質よりも脂溶性が高い物質が通過しやすい。これは胎盤の細胞膜が脂質であるため。
4.× 分子量が大きい物質ほど「通過しやすい」のではなく通過しにくい。分子量とは、分子の相対的な質量のことをいう。水素原子(H)なら「1」、水素分子(H2)なら「2」である。

 

 

 

 

8 骨盤峡部の前後径を表しているのはどれか。

1.恥骨結合後面中央と第2、3仙椎癒合部の中央との距離
2.岬角の中央から恥骨結合上縁中央までの距離
3.恥骨結合下縁から仙骨下端中央までの距離
4.左右寛骨臼内面中心間の距離

解答

解説

骨盤形態の特徴

正常骨盤の最大径は、入口部(にゅうこうぶ)では横径、濶部(かつぶ)では斜径、出口部では前後径である。分娩時、胎児は児頭の最大径である前後径がこの骨盤各平面の長径に一致するように回旋しながら下降する。また、各骨盤各面の前後径の中点を結んだ線を骨盤軸という。骨盤軸は骨盤誘導線ともよばれる(図1)。

図1 骨盤腔の断面

骨盤腔の断面

(一部文章・図引用:「骨盤形態の特徴」看護roo!様より)

1.× 恥骨結合後面中央と第2、3仙椎癒合部の中央との距離は、「産科学的真結合線」である。平均値は10.7cmで、10.5cm~12.5cmとされている。
2.× 岬角の中央から恥骨結合上縁中央までの距離は、「解剖学的真結合線」である。平均値は11cmである。
3.〇 正しい。恥骨結合下縁から仙骨下端中央までの距離は、「骨盤峡部の前後径」である。骨盤峡部は広い骨盤濶部の下にある狭い場所である。峡部の上面は濶部の下面と一致する。下面は仙骨先端と恥骨結合下縁を結ぶ線によって作られる。峡部の 縦径の平均値は11.5cm、横径の平均値は10.5cmである。
4.× 左右寛骨臼内面中心間の距離は、特に名前が決められているわけではない。寛骨は側方と前方の大骨盤を構成する骨である。骨盤峡部は小骨盤の4区分の1つであり、骨産道である骨盤腔の中にある。大骨盤を構成する寛骨には腸骨、坐骨、恥骨の融合体が含まれる。寛骨臼は骨盤の外側にある寛骨の中央部のカップ状の陥凹部である。

 

 

 

 

 

 

9 産褥4日の初産婦。産後の経過に異常はなく、母乳育児をしている。明日退院予定である。2年後に2人目の子どもが欲しいと話した。
 産後の避妊法の説明として適切なのはどれか。

1.コンドームは産後8週まで使用できない。
2.ペッサリーは妊娠前と同じサイズのものでよい。
3.低用量経口避妊薬は産後1か月から使用できる。
4.子宮内避妊器具<IUD>は子宮の復古が確認されたら挿入できる。

解答

解説

本症例のポイント

・産褥4日の初産婦。
・産後の経過に異常はなく、母乳育児をしている。
・明日退院予定である。
・2年後「2人目の子どもが欲しい」と話した。
→1年目の避妊方法を指導するとよい。それぞれの避妊方法を具体的に説明できるように覚えておこう。

1.× コンドーム(バリア法)は、「産後8週まで使用できない」のではなく産後1か月検診後の最初の性交渉から使用できる。生殖器の復古が確認(頸管の閉鎖など)、つまり産後1か月検診後の最初の性交渉から使用できる。
2.× ペッサリーは妊娠前と同じサイズのもの「でよい」のではなく「サイズを合わせ直す必要がある」。ペッサリーとは、ドーム形をしたゴム製のカップで、腟から挿入して子宮頸部にかぶせて使用し、骨盤臓器脱の保存的治療に用いられることが多い。また、避妊用として使われるが、産後6週間以降使用できる。ペッサリーは①体重の増減が4.5キログラム以上あった場合、②1年以上使用している場合、③出産や中絶をした場合には、腟の大きさや形が変化することがあるためサイズを合わせ直す必要がある。
3.× 低用量経口避妊薬は「産後1か月から」ではなく産後6か月以降使用できる。低用量経口避妊薬はホルモン剤で乳汁分泌に影響をあたえるため、母乳育児を希望する場合は避ける。授乳していなければ産後3週から使用できる。授乳中に低用量ピルを服用すると、母乳の量や質の低下や、母乳へ低用量ピルの成分が含まれ、赤ちゃんに影響が出る場合があり、また、産後すぐの時期は血栓症のリスクも高い時期である。
4.〇 正しい。子宮内避妊器具<IUD>は子宮の復古が確認されたら挿入できる。産後6週間を過ぎれば授乳中でも使用でき、医療機関を受診し、月経ご妊娠していないことを確認して、医師が行う。

子宮内黄体ホルモン放出システムとは?

子宮内黄体ホルモン放出システム(Intrauterine System)とは、子宮内避妊器具の一つで、黄体ホルモンが付加されていることが特徴である。子宮の中に入った子宮内黄体ホルモン放出システムから徐々に黄体ホルモンが放出され、①低用量ピルと同等の高い避妊効果と②子宮内避妊器具の長期にわたる避妊が行える。また、子宮の病気(子宮腺筋症、子宮筋腫、子宮内膜症)などにより月経の量が多い場合や生理痛が強い場合にも効果がある。

【特徴】
①子宮内膜の成長を抑えられ、月経量の減少や月経痛が軽くなる。
②子宮内にのみ作用し、全身作用がほとんどない。つまり、低用量ピルが持つような副作用はほとんどないと考えられている。低用量ピルの使用を勧められない方(例えば高血圧の方や喫煙者など)でも使用が可能である。
③5年間黄体ホルモンが放出される。その間は低用量ピルと同等の高い避妊効果がある。

【デメリット】
①子宮内黄体ホルモン放出システムを子宮内に挿入した後、軽度の出血が続くことがある。これは放出される黄体ホルモンの影響でおこるもので、時間の経過と共に出血日数や量は減っていく。
②医師による装着、除去が必要。その際に出血や痛みがある。

 

 

 

 

10 A病院では希望がある場合に助産師による家庭訪問を行っている。5月、正常分娩して退院した初産婦の産褥10日に家庭訪問を行うことになった。
 家庭環境について把握する項目で最も重要なのはどれか。

1.ベビーバスの有無
2.児の冬服の準備状況
3.温度および湿度調整の可否
4.独立した育児用の部屋の有無

解答

解説

本症例のポイント

・A病院:希望がある場合に助産師による家庭訪問を行っている。
5月:正常分娩して退院した初産婦の産褥10日に家庭訪問を行うことになった。

1.× ベビーバスの有無より優先度が高いものが他にある。なぜなら、ベビーバスは家庭によっては大きめの桶やシンクでも代用可能であるため。産褥10日は、皮脂の分泌が盛んとなり、皮膚の湿疹が目立ちやすい時期となるため、ベビーバスの有無(器具の有無)よりは、児の皮膚の清潔状況や清拭の方法を確認する。
2.× 児の冬服の準備状況より優先度が高いものが他にある。なぜなら、現在5月であるため。梅雨の季節から夏にかけての時期となるため、児の冬服の準備状況は時期尚早といえる。
3.〇 正しい。温度および湿度調整の可否は、家庭環境について把握する項目で最も重要である。なぜなら、新生児の体温調整機能は未熟で、室温や湿度の影響を受けやすいため。
4.× 独立した育児用の部屋の有無より優先度が高いものが他にある。なぜなら、独立した育児用の部屋はなくても安全に育児可能であるため。むしろ、独立した育児用の部屋のほうが、目が行き届かなくなる可能性もあるため注意が必要である。

 

 

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