第105回(H31) 保健師国家試験 解説【午前1~5】

 

問題引用:第105回保健師国家試験、第102回助産師国家試験、第108回看護師国家試験の問題および正答について

※注意:解説はすべてオリジナルのものとなっています。私的利用の個人研究・自己研鑽のため作成いたしました。間違いや分からない点があることをご了承ください。またコメントにて解き方等教えてくださると幸いです。

 

1 市町村に勤務する保健師が、業務上知り得た人の秘密を、他に漏らしてはならないことを規定しているのはどれか。

1.医療法
2.地域保健法
3.地方公務員法
4.地域保健対策の推進に関する基本的な指針

解答

解説
1.× 医療法とは、病院、診療所、助産院の開設、管理、整備の方法などを定める日本の法律である。①医療を受けるものの利益と保護、②良好かつ適切な医療を効率的に提供する体制確保を主目的としている。
2.× 地域保健法とは、地域保健対策の推進に関する基本指針、保健所の設置その他地域保健対策の推進に関し基本となる事項を定めることにより、母子保健法その他の地域保健対策に関する法律による対策が地域において総合的に推進されることを確保し、地域住民の健康の保持及び増進に寄与することを目的として制定された法律である。
3.〇 正しい。地方公務員法は、市町村に勤務する保健師が、業務上知り得た人の秘密を、他に漏らしてはならないことを規定している。地方公務員法とは、地方公務員の職、任免、服務、労働関係など、地方公務員の身分取扱に関する基本的な事項を定めた法律である。職員は、職務上知り得た秘密を漏らしてはならないとされている。市町村保健師は、地方公務員である。
4.× 地域保健対策の推進に関する基本的な指針は、地域保健対策の円滑な実施および総合的な推進を図る指針である。地域における保健師の保健活動は、『地域保健法』および「地域保健対策の推進に関する基本的な指針」に基づいて実施される。「地域における保健師の保健活動に関する指針」は、保健師に求められる役割が変化、拡大していることを受け、平成25(2013)年4月に厚生労働省が定め、通知したものである。

地域における保健師の保健活動に関する指針

地域における保健師の保健活動に関する指針
①地域診断に基づくPDCAサイクルの実施
②個別課題から地域課題への視点及び活動の展開
③予防的介入の重視
④地区活動に立脚した活動の強化
⑤地区担当制の推進
⑥地域特性に応じた健康なまちづくりの推進
⑦部署横断的な保健活動の連携及び協働
⑧地域のケアシステムの構築
⑨各種保健医療福祉計画の策定及び実施
⑩人材育成

【活動領域に応じた保健活動の推進】
~都道府県保健所等~
都道府県保健所等に所属する保健師は、所属内の他職種と協働し、管内市町村及び医療機関等の協力を得て広域的に健康課題を把握し、その解決に取り組むこと。また、生活習慣病対策、精神保健福祉対策、自殺予防対策、難病対策、結核・感染症対策、エイズ対策、肝炎対策、母子保健対策、虐待防止対策等において広域的、専門的な保健サービス等を提供するほか、災害を含めた健康危機への迅速かつ的確な対応が可能になるような体制づくりを行い、新たな健康課題に対して、先駆的な保健活動を実施し、その事業化及び普及を図ること。加えて、生活衛生及び食品衛生対策についても、関連する健康課題の解決を図り、医療施設等に対する指導等を行うこと。さらに、地域の健康情報の収集、分析及び提供を行うとともに調査研究を実施して、各種保健医療福祉計画の策定に参画し、広域的に関係機関との調整を図りながら、管内市町村と重層的な連携体制を構築しつつ、保健、医療、福祉、介護等の包括的なシステムの構築に努め、ソーシャルキャピタルを活用した健康づくりの推進を図ること。市町村に対しては、広域的及び専門的な立場から、技術的な助言、支援及び連絡調整を積極的に行うよう努めること。

~市町村~
市町村に所属する保健師は、市町村が住民の健康の保持増進を目的とする基礎的な役割を果たす地方公共団体と位置づけられ、住民の身近な健康問題に取り組むこととされていることから、健康増進、高齢者医療福祉、母子保健、児童福祉、精神保健福祉、障害福祉、女性保護等の各分野に係る保健サービス等を関係者と協働して企画及び立案し、提供するとともに、その評価を行うこと。その際、管内をいくつかの地区に分けて担当し、担当地区に責任を持って活動する地区担当制の推進に努めること。また、市町村が保険者として行う特定健康診査、特定保健指導、介護保険事業等に取り組むこと。併せて、住民の参画及び関係機関等との連携の下に、地域特性を反映した各種保健医療福祉計画を策定し、当該計画に基づいた保健事業等を実施すること。さらに、各種保健医療福祉計画の策定にとどまらず、防災計画、障害者プラン及びまちづくり計画等の策定に参画し、施策に結びつく活動を行うとともに、保健、医療、福祉、介護等と連携及び調整し、地域のケアシステムの構築を図ること。

(一部抜粋:「地域における保健師の保健活動に関する指針」厚生労働省HPより)」

 

 

 

 

 

2 日本で、いわゆる公害病が公衆衛生上の問題として認識され始めた時期はどれか。

1.1940年から1950年代
2.1960年から1970年代
3.1980年から1990年代
4.2000年以降

解答

解説

公害病とは?

公害病(こうがいびょう)とは、人間の産業活動により排出される有害物質により引き起こされる健康被害である。人体に有害な物質が、水(地下水や河川水)、空気中の浮遊物、ガス、食物などを通じ摂取されることによって、引き起こされる。狭義には、環境基本法に定義される公害が原因となる。大気汚染が原因のぜんそく、水質汚濁が原因の有機水銀中毒やカドミウム中毒、大気や川のヒ素汚染による慢性ヒ素中毒などがあげられる。近年は広義で、シックハウスが原因の揮発性有機化合物等の吸引によるアトピーやアレルギーや、原子力発電所からの放射能汚染による人的被害も、公害病と呼ばれることがある。日本の高度経済成長期(1950年代後半から1970年代)に、公害により住民へ大きな被害が発生した。このうち被害の大きいものを「四大公害病」という。これを受け公害対策として、1967年に『公害対策基本法』、1973年に『公害健康被害補償法』などが制定された。したがって、選択肢2.1960年から1970年代が、公衆衛生上の問題として認識され始めた時期である。

①四日市喘息(三重県):主に亜硫酸ガスによる大気汚染を原因。
②新潟水俣病:有機水銀(メチル水銀)による水質汚染や底質汚染を原因。
③イタイイタイ病(富山県):カドミウムによる水質汚染を原因
④熊本水俣病:有機水銀(メチル水銀)による水質汚染や底質汚染を原因

 

 

 

 

3 保健師が生後14日の乳児のいる家庭に家庭訪問した。児の体重増加量は1日当たり30gであった。母親は母乳を1日平均10 回、2〜3時間間隔で授乳しており、母乳育児を続けたいと希望していた。
 児が1か月児健康診査を受診するまでの母親への指導で適切なのはどれか。

1.「赤ちゃんが泣いた時に授乳しましょう」
2.「食事以外にも水分を十分に摂りましょう」
3.「1回の授乳時間は30分以上にしましょう」
4.「乳房が張るまで待ってから飲ませましょう」

解答

解説

ポイント

・家庭訪問:生後14日の乳児。
・児の体重増加量:1日当たり30g
・母親:母乳1日平均10 回、2〜3時間間隔で授乳している。
・母親の希望:「母乳育児を続けたい」
→特段、本症例の母乳育児に問題はない。母親の希望でもある母乳育児を続けられるよう「正しい知識を」「間違いなく」伝えていく必要がある。

1.× 授乳のタイミングは、児が「泣いた時」ではなく「泣く前(自律授乳)」が基本となる。自律授乳とは、児が欲しがるときに欲しがるだけ飲ませる授乳方法のことである。児に吸われる刺激によって母乳分泌が促されて母乳育児がスムーズになることから、とくに生後1~2か月ぐらいまでの間は自律授乳が推奨されている。自律授乳の場合、新生児期の授乳回数は1日10回以上になることもあるが、たくさん吸うことで飲むことに慣れ、上手に飲めるようになっていく。赤ちゃんの口の動きなどからほしがるサインに早期に気づき、授乳できるよう指導する。
2.〇 正しい。「食事以外にも水分を十分に摂りましょう」と指導する。なぜなら、母乳成分の約90%は水分であるため。つまり、児が1日に1000mℓの母乳を飲んだ場合、母親の体から約900mlの水分が消費されたことになる。水分不足は母乳の量にも影響するとされている。水分補給必要量の目安は、「尿の量+児が飲む母乳の量」である。できれば1日に2,000~2,500mℓの良質な水分(カフェインは控える)を心がける。
3.× 1回の授乳時間は「30分以上」ではなく「片側10分程度」である。なぜなら、はじめの10分間で全量の約90%を哺乳するため。また、片方からばかり授乳していると乳首が痛くなったり母乳の分泌が悪くなったりする可能性があるため、均等に入れ替えることが大事である。授乳時間が長くなる場合は母乳不足を疑う。生後1か月までの赤ちゃんは母乳やミルクを吸う力が弱く、少し飲むとすぐに疲れて眠ってしまう。生後2~3か月になると、赤ちゃんもうまく母乳やミルクを飲めるようになり、消化器官も発達するため、「片側15分程度」与えることも可能となる。
4.× 乳房が張るまで待ってから飲ませる必要はない。なぜなら、自律授乳が基本となるため。また、乳房が張るまで乳房内に母乳を充満させると、母乳を作らないように作用する乳汁産生抑制因子の働きなどによって、逆に母乳の分泌が抑制されてしまう可能性も考えられる。

正常乳児の一日体重増加量の目安

・0~3か月:25~30g
・3~6か月:20~25g
・6~9か月:15~20g
・9~12か月:7~10g

 

 

 

 

 

4 Aちゃん(生後5か月、男児)。定期予防接種であるBCG接種を受けた。接種7日後に、母親が保健センターに来所し、地区担当保健師に「接種したところが腫れているが大丈夫か」と相談があった。接種部位の写真を下に示す。
 母親に対する地区担当保健師の対応で正しいのはどれか。

1.「入浴は控えましょう」
2.「免疫がついた証拠です」
3.「すぐに小児科を受診してください」
4.「接種後3か月程度で自然に治ります」

解答

解説

本症例のポイント

・Aちゃん(生後5か月、男児)。
・BCG接種:接種7日後に「接種部位が腫れた」
→BCG接種とは、結核による重い病気を予防する生ワクチンである。ワクチンの液を左腕に1滴たらし、はんこ型の注射を2回押して接種する。生後1歳になる前までに1回接種する。BCG接種は『予防接種法施行令』により生後1歳未満に1回接種を行うことが規定されている。BCG接種後の経過:通常、BCG接種後10日から2週間が経過したのちに発赤が出現し、接種1~2か月後に化膿巣ができ、瘢痕化する。一方で、結核に感染している乳児にBCG接種をした場合、10日以内に針痕部位に、発赤・化膿・腫れなどの反応が現れる。これをコッホ現象という。

コッホ現象
コッホ現象とは、結核に感染している乳児にBCG接種をした場合、10日以内に針痕部位に、発赤・化膿・腫れなどの反応が現れる現象のこと。

本問のAちゃんは、BCG接種後通常より早い7日で、画像にある発赤や痛疲形成などの反応を示している。したがって、コッホ現象の可能性がある。コッホ現象が疑われる場合には、小児科受診を勧め、精密検査を受ける必要がある。なお、コッホ現象が出現した場合でも、接種部位を清潔に保つ以外に日常生活上の特別の処置は不要である。したがって、選択肢3.「すぐに小児科を受診してください」が母親に対する地区担当保健師の対応で正しい。

1.× 入浴を控える必要はない。なぜなら、コッホ現象が出現した場合でも、接種部位を清潔に保つ以外に日常生活上の特別の処置は不要であるため。
2.× 免疫がついた証拠ではなく、コッホ現象の可能性がある。現時点で結核に感染している可能性がある。
4.× 接種後3か月程度で自然に治る場合は、通常の反応である。本症例は、コッホ現象の可能性があるため、通常の反応であると判断できない。

予防接種法とは?

予防接種法とは、公衆衛生の観点から伝染のおそれがある疾病の発生・まん延を予防するためにワクチンの予防接種を行うとともに、予防接種による健康被害の迅速な救済を図ることを目的として制定された日本の法律である。予防接種法に基づく予防接種には、①定期予防接種と②臨時予防接種があり、定期予防接種の対象疾患には、①A類疾病と②B類疾病がある。さらに同法に基づかない任意接種もある。

A類疾病:主に集団予防、重篤な疾患の予防に重点を置き、国の積極的な勧奨があり、本人(保護者)に努力義務がある。
疾患:結核、ジフテリア、破傷風、百日咳、ポリオ、麻疹、風疹、日本脳炎、ヒブ(インフルエンザ菌b型)感染症、小児の肺炎球菌感染症、水痘、ヒトパピローマウイルス感染症、B型肝炎

B類疾病:主に個人予防に重点を置き、国の積極的な勧奨なく、本人(保護者)に努力義務はない。
疾患:季節性インフルエンザと高齢者の肺炎球菌感染症

(参考:「予防接種とは?」東京都医師会HPより)

 

 

 

 

5 双子の育児をしている母親が、1歳6か月児健康診査の受診時に「双子の子育ては大変です。子どもたちが言うことを聞かないと、つい叩いてしまいそうになります。私は、幼少のころ母親から殴られて育ちました。このままでは虐待をしてしまうのではないかと不安です」と保健師に訴えた。
 母親に対する保健師の対応で最も適切なのはどれか。

1.双子の親の会を紹介する。
2.保育所の利用を提案する。
3.家庭訪問をして話を聞くことを約束する。
4.よくあることだから気にすることはないと言う。

解答

解説

本症例のポイント

・双子の育児をしている母親
・1歳6か月児健康診査の受診時「①双子の子育てが大変。②言うことを聞かないとつい叩いてしまいそうになる。③幼少のころ母親から殴られて育った。④虐待しそうで不安」
→本症例の相談内容から、母親の育児困難感が疑われ、過去の経験から虐待をしてしまう不安が読み取れる。まずは、母親の訴えを傾聴し個別支援が必要である。

1.× 双子の「親の会」を紹介することよりも最優先事項がほかの選択肢にある。なぜなら、育児困難を訴え、虐待に対しての不安がある母親に対しては個別支援が最優先となるため。双子の親の会とは、双子の子どもを持つ親たちが普段悩んでいる双子ならではの悩みを話して、他のお母さんがアドバイスしたり共感したりする、いわゆる座談会のようなものである。
2.× 「保育所」の利用を提案することよりも最優先事項がほかの選択肢にある。なぜなら、本問題を読んだ限りでは、保育所の利用が必要かどうかは不明であるため。まずは、個別支援で育児や家庭状況を把握することが必要である。ちなみに、保育所とは、保護者が働いているなどの何らかの理由によって保育を必要とする乳幼児を預かり、保育することを目的とする通所の施設のことである。
3.〇 正しい。家庭訪問をして話を聞くことを約束する。なぜなら、家庭訪問を行うことで、家の雰囲気、家族の雰囲気、家族の考え方、子どもの環境・様子など個別支援に必要な評価が行えるため。支援方法を検討できる。本問の母親は、「言うことを聞かないとつい叩いてしまいそうになる」と訴えている。子供が言うことが聞けない原因を探ることもできる。したがって、別の日に家庭訪問を行い、安心してゆっくり話ができる機会をつくっていく。
4.× 「よくあることだから気にすることはない」と言うには情報が少ない。むしろ、この発言は不安を訴えている母親に対し、拒否的・否定的な印象を与えてしまう。本問の母親の背景として、母親自身が虐待を受けていた。自分自身が虐待の加害者になるのではないかと不安を訴えているため、母親の訴えを十分に傾聴しながら、ケースに応じた個別支援を行う必要がある。

 

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