※注意:解説はすべてオリジナルのものとなっています。私的利用の個人研究・自己研鑽のため作成いたしました。間違いや分からない点があることをご了承ください。またコメントにて解き方等教えてくださると幸いです。
問題引用:第105回保健師国家試験、第102回助産師国家試験、第108回看護師国家試験の問題および正答について
1 家族の発達段階と発達課題の組合せで正しいのはどれか。
1.新婚期:生きがいや心身の自立
2.教育期:保育としつけ
3.排出期:夫婦関係・生活の調整
4.向老期:夫婦関係の形成
解答3
解説
1.× 新婚期の発達課題は、「生きがいや心身の自立」ではなく①夫婦関係の形成、②新家族の誕生である。ちなみに、生きがいや心身の自立は、向老期である。
2.× 教育期(子どもが学校生活を送る時期)の発達課題は、「保育としつけ」ではなく、①子どもの成長や、②子どもの成長に伴う夫婦生活・夫婦関係の見直しである。ちなみに、保育としつけは、養育期である。
3.〇 正しい。排出期(子どもの巣立ちの時期)の発達課題は、夫婦関係・生活の調整である。親子関係中心から夫婦関係中心への移行期になる。ほかの課題として、①子供の孤立、②老親の介護があげられる。
4.× 向老期の発達課題は、「夫婦関係の形成」ではなく、①独居・子供との同居など生活設計の見直し、②生きがいや心身の自立である。ちなみに、夫婦関係の形成は、新婚期である。
①新婚期:新家族の誕生、夫婦関係の形成。
②養育期:子供の出生、保育としつけ。
③教育期:夫婦生活・関係の見直し、子供の成長。
④排出期:子供の孤立、夫婦関係・生活の再調整、老親の介護。
⑤向老期:独居・子供との同居など生活設計の見直し、生きがいや心身の自立。
2 世界保健機関(WHO)の行う活動で正しいのはどれか。
1.開発途上国の保健医療従事者の研修員の受け入れ
2.戦争や内戦で被害を受けている子どもの支援
3.難民に関する国際的な諸規定の監督
4.予防接種拡大計画の推進
解答4
解説
世界保健機関とは、「全ての人々が可能な最高の健康水準に到達すること」を目的として設立された国連の専門機関である。
設置年:昭和23(1948)年
本部:ジュネーブ(スイス)
協力形態:多国間交流
事業内容:発展途上国への国際保健協力、感染症およびその他の疾病(エイズ・結核・マラリア等)の撲滅
備考:①WHOの構成組織である地域的機関は、6つ(アフリカ、アメリ
(※参考:「日本とWHO」厚生労働省HPより)
1.× 開発途上国の保健医療従事者の研修員の受け入れは、主に日本では、国際協力機構(JICA)が担っており、各国の二国間協力として行われている。事業内容として、①技術協力(専門家の派遣、研究員の受け入れ)、②有償・無償資金協力、③ボランティア派遣(青年海外協力隊など)、④国際緊急援助が行われている。
2.× 戦争や内戦で被害を受けている子どもの支援は、主に国連児童基金(UNICEF)が担っている。他にも、開発途上国の子どもへの支援を行っている。保健、栄養、水・衛生、教育、HIV/エイズ、保護、緊急支援、アドボカシー(政策提言)などの活動を実施している。
3.× 難民に関する国際的な諸規定の監督は、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)が担っている。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)とは、難民問題解決のため、国際的な諸規定の監督(法的保護活動)を行っている機関である。1950年に設立された国連機関の一つである。
4.〇 正しい。予防接種拡大計画の推進は、世界保健機関(WHO)の行う活動で正しい。感染症対策事業である。予防接種拡大計画(EPI:Expanded Program on Immunization)とは、世界中すべての乳児に麻疹・ジフテリア・百日咳・破傷風・ポリオ・結核の6疾患の予防接種を行う事業である。世界保健機関(WHO)と国連児童基金(UNICEF)の共同事業として実施されている。また、WHOは、予防接種拡大計画でポリオの予防接種を推進するとともに、2013年にはポリオ根絶・最終戦略計画を策定し、ポリオの世界根絶を目指している。日本を含む西太平洋地域では平成12年10月にポリオの根絶が確認されている。
国際協力機構とは、開発途上地域に対する技術協力の実施、無償資金協力の実施の促進、開発途上地域の住民を対象とする国民等の協力活動の促進に必要な業務等を行い、これらの地域等の経済及び社会の発展または復興に寄与し、国際協力の促進に資することを目的とする。
設置年:昭和49(1974)年
協力形態:二国間協力
事業内容:①技術協力(専門家の派遣、研究員の受け入れ)、②有償・無償資金協力、③ボランティア派遣(青年海外協力隊など)、④国際緊急援助
備考:国際緊急援助では、大規模災害時、被災国政府等の要請に応じ、国際緊急援助隊が派遣されている。
青年海外協力隊とは、日本国政府が行う政府開発援助 の一環として、外務省所管の独立行政法人国際協力機構 が実施する海外ボランティア派遣制度である。
(※参考:「(1)独立行政法人 国際協力機構(JICA)」外務省HPより)
国連児童基金とは、第二次世界大戦によって荒廃した国々の子どもたちに緊急の食料を与え、健康管理を行う目的で1946年に設立された。 ユニセフは開発途上国の子どもや母親に長期の人道援助や開発援助を行う。 ユニセフは緊急援助基金から開発機関へと発展した。
設置年:昭和21(1946)年
本部:ニューヨーク
協力形態:多国間協力
事業内容:①開発途上国や紛争中の国の子供の支援、②児童の権利に関する条約(子供権利条約)の普及
備考:保健、栄養、水・衛生、教育、HIV/エイズ、保護、緊急支援、アドボカシー(政策提言)などの活動を実施している。
(※「UNICEFについて」UNICEF東京事務所様HPより)
3 A市の保健師活動において、地域住民が支え助け合える関係づくりを最も促進する活動はどれか。
1.A 市の健康増進計画を策定する。
2.地域の自治会長の意見を聞く場を設ける。
3.住民組織のネットワーク会議を開催する。
4.高齢者虐待防止のキャンペーンを実施する。
解答3
解説
「地域住民が支え助け合える関係づくり」は、「4つの助(自助・互助・共助・公助)」の考え方で、「互助」に相当する。「互助」は相互に支え合い、費用負担が制度的に裏づけられていない自発的なものである。
「自助」には「自分のことを自分でする」ことに加え、市場サービスの購入も含まれる。
「共助」は介護保険などリスクを共有する仲間(被保険者)の負担。
「公助」は税による公の負担。
1.× A 市の健康増進計画を策定する活動は、地域住民が支え助け合える関係づくりを最も促進するとはいえない。なぜなら、健康増進計画の目的は、すべての国民が健やかで心豊かに生活できる活力ある社会とするため、壮年期死亡の減少、健康寿命の延伸及び生活の質の向上を実現することである。A市の健康増進計画を作成する過程で、住民の意見を取り入れる作業をする際に、住民同士の交流が促されることも考えられるが、関係づくりの効果は薄いと考えられる。
2.× 地域の自治会長の意見を聞く場を設ける活動は、地域住民が支え助け合える関係づくりを最も促進するとはいえない。なぜなら、「互助」は相互に支え合い、費用負担が制度的に裏づけられていない自発的なものである。地域の自治会長の意見を聞いて住民同士が行動してもこれは自発的とはいえないため。
3.〇 正しい。住民組織のネットワーク会議を開催する活動は、地域住民が支え助け合える関係づくりを最も促進する。なぜなら、住民組織のネットワーク会議を開催することで、住民同士の交流により互助を促すことができるため。ネットワーク会議とは、地域住民や関係機関が集まり、現状の把握と共有および問題解決のための共通認識が図られる会議のことである。会議の開催により、既存のフォーマル、インフォーマルなサービスを含めたさまざまなサービスがネットワーク化され、地域ケアシステムの構築が推進される。
4.× 高齢者虐待防止のキャンペーンを実施する活動は、地域住民が支え助け合える関係づくりを最も促進するとはいえない。キャンペーンは、目的をもって一定の多数に働きかけることである。キャンペーン目的である高齢者虐待防止には効果があるかもしれないが、地域住民が支え助け合える関係づくりを促進することを目的にキャンペーン活動を行うことはない。
(図引用:「地域包括ケアシステムの構築に向けて都道府県と市町村に求められる役割」厚生労働省HPより)
地域ケアシステムとは、住民が住み慣れた地域で暮らせるようにケアシステムを構築することである。高齢者の尊厳の保持と自立生活の支援の目的のもとで、可能な限り住み慣れた地域で生活を継続することができるよう、包括的な支援・サービス提供体制の構築を目指すものである。この地域包括ケアシステムが効果的に機能するために、「4つの助(自助・互助・共助・公助)」の考え方が連携し、課題解決に向け取り組んでいく必要がある。
第1段階:フォーマルなサービスの充実。
第2段階:関係機関及び地域住民の組織化。
第3段階:地域での支援のネットワーク化。
4 平成12年(2000年)の地方分権の推進を図るための関係法律の整備等に関する法律の改正内容や施行後の行政の変化で正しいのはどれか。
1.地域の特性に合わせた施策の展開を行いやすくなった。
2.生活保護は機関委任事務制度によって行われるようになった。
3.国民健康保険の給付は法定受託事務によって行われるようになった。
4.平成の市町村合併後の平成22 年(2010年)には市町村数が2/3になった。
解答1
解説
(※参考:「地方分権改革の動き」埼玉県HPより)
平成12年に施行された『地方分権の推進を図るための関係法律の整備等に関する法律(地方分権一括法)』とは、従来の中央省庁主導の中央集権型の全国画一的な行政から、地方分権型の行政に転換し、地方自治体の自主的な行政運営を可能にする法律である。この法律により、それまで国の指導・監督のもとで行われていた機関委任事務は廃止され、国が関与する①法定受託事務と、地方自治体が自主的に処理する②自治事務に再編された。【①法定受託事務】は生活保護や旅券の交付などがあり、【②自治事務】は介護保険サービス、国民健康保険の給付などがある。
1.〇 正しい。地域の特性に合わせた施策の展開を行いやすくなった。『地方分権一括法』により、地方自治体は自らの判断と責任のもと、地域の実情に合わせた施策の展開を行いやすくなった。一方で、デメリットもあり、①貧富の地域間格差、②自治体の権力が強くなり過ぎることがあげられる。
2.× 生活保護は、「機関委任事務制度」ではなく法定受託事務によって行われるようになった。機関委任事務とは、国などの事務を地方自治体(都道府県、市町村)の機関(知事、市町村長)に行わせることをいう。それまで国の指導・監督のもとで行われていた機関委任事務は廃止され、国が関与する①法定受託事務と、地方自治体が自主的に処理する②自治事務に再編された。【①法定受託事務】は生活保護や旅券の交付などがあり、【②自治事務】は介護保険サービス、国民健康保険の給付などがある。
3.× 国民健康保険の給付は、「法定受託事務」ではなく自治事務によって行われるようになった。自治事務とは、法定受託事務以外の事務を指し、地方自治体が自主的に処理する事務である。それまで国の指導・監督のもとで行われていた機関委任事務は廃止され、国が関与する①法定受託事務と、地方自治体が自主的に処理する②自治事務に再編された。【①法定受託事務】は生活保護や旅券の交付などがあり、【②自治事務】は介護保険サービス、国民健康保険の給付などがある。
4.× 平成の市町村合併後の平成22 年(2010 年)には、市町村数が「2/3」ではなく約1/2になった。平成の市町村合併によって、合併前に約3200あった市町村が、平成26年には約1700まで減少している。
(※一部引用:「市町村数の推移(全国)」秋田県HPより)
生活保護制度は、『日本国憲法』25条の理念に基づき、生活困窮者
生活扶助:日常生活に必要な費用
住宅扶助:アパート等の家賃
教育扶助:義務教育を受けるために必要な学用品費
医療扶助:医療サービスの費用
介護扶助:介護サービスの費用
出産扶助:出産費用
生業扶助:就労に必要な技能の修得等にかかる費用
葬祭扶助:葬祭費用
【生活保護法の4つの基本原理】
①国家責任の原理:法の目的を定めた最も根本的原理で、憲法第25条の生存権を実現する為、国がその責任を持って生活に困窮する国民の保護を行う。
②無差別平等の原理:全ての国民は、この法に定める要件を満たす限り、生活困窮に陥った理由や社会的身分等に関わらず無差別平等に保護を受給できる。また、現時点の経済的状態に着目して保護が実施される。
③最低生活の原理:法で保障する最低生活水準について、健康で文化的な最低限度の生活を維持できるものを保障する。
④保護の補足性の原理:保護を受ける側、つまり国民に要請される原理で、各自が持てる能力や資産、他法や他施策といったあらゆるものを活用し、最善の努力をしても最低生活が維持できない場合に初めて生活保護制度を活用できる。
【4つの原則】
①申請保護の原則:保護を受けるためには必ず申請手続きを要し、本人や扶養義務者、親族等による申請に基づいて保護が開始。
②基準及び程度の原則:保護は最低限度の生活基準を超えない枠で行われ、厚生労働大臣の定める保護基準により測定した要保護者の需要を基とし、その不足分を補う程度の保護が行われる。
③必要即応の原則:要保護者の年齢や性別、健康状態等その個人又は世帯の実際の必要の相違を考慮して、有効且つ適切に行われる。
④世帯単位の原則:世帯を単位として保護の要否及び程度が定められる。また、特別な事情がある場合は世帯分離を行い個人を世帯の単位として定めることもできる。
(※参考:「生活保護制度」厚生労働省HPより)
(※参考:「生活保護法の基本原理と基本原則」室蘭市HPより)
5 Aさん(80歳、女性)。認知症。1人暮らしで身寄りはない。認知症高齢者の日常生活自立度判定基準Ⅱa、要介護1。最近、銀行の現金自動預け払い機(ATM)で頻回にお金を引き出すAさんを見かけて心配した銀行員から、地域包括支援センターに連絡があった。保健師が家庭訪問すると、家の中に最近購入したと思われる高価な商品が複数置かれていた。
保健師の対応で最も適切なのはどれか。
1.特別養護老人ホームへの入所を勧める。
2.成年後見制度利用支援事業を紹介する。
3.民生委員に訪問してもらう。
4.訪問看護の利用を勧める。
解答2
解説
(※図:認知症高齢者の日常生活自立度判定基準のランク)
・Aさん(80歳、女性、認知症、要介護1)
・1人暮らし、身寄りなし。
・認知症高齢者の日常生活自立度判定基準Ⅱa(家庭外で日常生活に支障をきたすような症状・行動や意思疎通の困難さが多少みられているが、誰かが注意していれば自立できる。たびたび道に迷うとか、買い物や事務、金銭管理などそれまでできたことにミスが目立つなど)
・最近:銀行の現金自動預け払い機(ATM)で頻回にお金を引き出す。
・家庭訪問:家の中に最近購入したと思われる高価な商品が複数置かれていた。
→本症例は、認知症で身寄りがいない。また、金銭管理が困難な様子もみられている。金銭管理を含め支援する必要がある。認知症でも住み慣れた地域で生活を継続できるよう新オレンジプランが推進されている。
1.× 特別養護老人ホームへの入所を勧める必要はない。なぜなら、Aさんは特別養護老人ホームへの入所の希望があるかどうかわからないため。ちなみに、特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設)とは、常時介護を必要とし、在宅での生活が困難な高齢者に対して、生活全般の介護を提供する施設である。入浴、排泄、食事などの介護、その他の日常生活の世話、機能訓練、健康管理及び療養上の世話を行う。原則として要介護3以上の認定を受けた高齢者が対象である。ただし、要介護1・2の特例的な入所が認められる要件があり、「認知症で日常生活に支障を来すような症状・行動や意思疎通の困難さが頻繁に見られ、在宅生活が困難な状態にあること」である。とはいえ、いずれにしても本症例は、要介護1で、在宅生活が困難状態とは言いにくい。
2.〇 正しい。成年後見制度利用支援事業を紹介する。なぜなら、設問よりAさんは、金銭管理が困難になっていると推測されるため。成年後見制度を用いて金銭管理を後見人に任せることで、金銭管理に関するトラブルを回避できるため。ちなみに、成年後見制度とは、判断能力がないまたは不十分な者に対して、保護者を付すことにより契約などの法律行為を補助するものである。①法定後見制度と②任意後見制度とがある。①法定後見制度:認知症・知的障害・精神障害などによって判断能力が不十分な方に対して、本人の権利を法律的に支援、保護するための制度である。本人の判断能力の程度に応じて、後見・保佐・補助の3類型がある。②任意後見制度:まだしっかりと自分で判断ができるうちに、自分の判断能力が衰えてきた時に備えて、あらかじめ支援者(任意後見人)を誰にするか、将来の財産管理や身の回りのことについてその人に何を支援してもらうか、自分で決めておくことができる仕組みである。
3.× 民生委員に訪問してもらう必要はない。なぜなら、金銭管理は民生委員の職務の範囲を超えているため。民生委員は、都道府県知事の推薦により厚生労働大臣が委嘱した者で、高齢者の見守りなどを行う。民生委員は、日本独自の制度化されたボランティアである。地域社会の福祉の増進図っている。任期は3年で都道府県知事の推薦を受けて厚生労働大臣に委嘱されたものである。市町村の各地区に配置され、①住民の生活状況の把握、②関係機関との連携、③援助を要するものヘの相談援助を主な役割とする。根拠法令は「民生委員法」で給与の支給はない。
4.× 訪問看護の利用を勧める必要はない。なぜなら、Aさんは訪問看護の利用の希望があるかどうかわからないため。訪問看護とは、看護を必要とする患者が在宅でも療養生活を送れるよう、かかりつけの医師の指示のもとに看護師や保健師などが訪問して看護を行うことである。訪問看護師の役割として、主治医が作成する訪問看護指示書に基づき、健康状態のチェックや療養指導、医療処置、身体介護などを行う。
新オレンジプランにおける7つの柱は、
①認知症への理解を深めるための普及・啓発の推進
②認知症の容態に応じた適時・適切な医療・介護等の提供
③若年性認知症施策の強化
④認知症の人の介護者への支援
⑤認知症の人を含む高齢者にやさしい地域づくりの推進
⑥認知症の予防法・診断法・治療法・リハビリテーションモデル、介護モデル等の研究開発及びその成果の普及の推進
⑦認知症の人やその家族の視点の重視である。