第105回(H31) 保健師国家試験 解説【午後16~20】

 

16 社会福祉制度において権利擁護を目的として行われているのはどれか。

1.障害者に対する公費負担医療制度
2.ニーズに応じた就労支援
3.福祉サービスの利用援助
4.生活資金の貸し付け

解答

解説

権利擁護とは?

権利擁護(アドボカシー)とは、自己の権利を十分に表明することができない者の人権を尊重し、当事者の権利を代弁者として擁護し、当事者の自己決定を支え、その人らしく生活すること(自己実現)を支援することである。アドボカシーは、「擁護」、「支持」、「唱道」などの意味をもつ言葉で、保鍵師の役割において、「代弁者」として用いられることが多い。患者や家族が自身の権利や利益を守るための自己決定ができるように、看護師は、患者や家族を保護し、情報を伝え、支えることでエンパワーメント(患者・家族を強引に説得したりするのではなく、自己決定できるように働きかけること)すること、さらに医療従事者との仲裁を行い、医療者間の調整をすることであると定義づけられている。

(図引用:「福祉サービス利用援助事業について」厚生労働省HPより)

1.4.× 障害者に対する公費負担医療制度/生活資金の貸し付けは、経済的負担の軽減が目的である。ちなみに、生活福祉資金貸付制度は、低所得者世帯・障害者世帯・高齢者世帯を対象に一定の資金を貸し付けるものである(生活福祉資金貸付制度要綱)。都道府県社会福祉協議会が実施している。
2.× ニーズに応じた就労支援は、自立の促進が目的である。
3.〇 正しい。福祉サービスの利用援助は、社会福祉制度において権利擁護を目的として行われている。権利擁護(アドボカシー)とは、自己の権利を十分に表明することができない者の人権を尊重し、当事者の権利を代弁者として擁護し、当事者の自己決定を支え、その人らしく生活すること(自己実現)を支援することである。アドボカシーは、「擁護」、「支持」、「唱道」などの意味をもつ言葉で、保鍵師の役割において、「代弁者」として用いられることが多い。患者や家族が自身の権利や利益を守るための自己決定ができるように、看護師は、患者や家族を保護し、情報を伝え、支えることでエンパワーメント(患者・家族を強引に説得したりするのではなく、自己決定できるように働きかけること)すること、さらに医療従事者との仲裁を行い、医療者間の調整をすることであると定義づけられている。

社会福祉制度とは?

社会福祉制度とは、児童、母子、心身障害者、高齢者など、社会生活を送る上でハンディキャップを負った人々に対して、公的な支援を行う制度のことである。 支援を必要とする社会的弱者が心身ともに健やかに育成され、能力に応じて自立した日常生活を営むことができるように支援するとともに、社会福祉は救貧・防貧の機能も果たしている。

 

 

 

 

 

17 平成28年(2016年)の歯科疾患実態調査において80歳で20本以上の自分の歯を有する者の割合に最も近いのはどれか。

1.20 %
2.30 %
3.40 %
4.50 %

解答

解説

(図引用:平成28年歯科疾患実態調査|厚生労働省HPより)

国民の歯の健康づくりを推進する一環として、80歳で20本以上の歯を保つことを目標にした8020運動が推進されている。80歳で20本以上の自分の歯が残っている人の割合(8020達成者)は、51.2%である。したがって、選択肢4.50 %が正しい。

歯科疾患実態調査とは?

目的:歯科保健状況を把握し、歯科口腔保健の推進に関する基本的事項及び健康日本21(第二次)において設定した目標の評価等、今後の歯科保健医療対策を推進するための基礎資料を得ること。

【主な調査事項】
①性別
②生年月日
③歯や口の状態
④歯をみがく頻度
⑤歯や口の清掃状況
⑥フッ化物応用の経験の有無
⑦顎関節の異常
⑧歯の状況
⑨補綴の状況
⑩歯肉の状況
⑪歯列・咬合の状況

(※参考:「歯科疾患実態調査」厚生労働省HPより)

 

 




 

 

18 A事業所の保健師は禁煙を希望する職員に対し、グループ活動を通して支援を行うことにした。
 初回のグループワークにおける保健師の支援で最も適切なのはどれか。

1.グループの支援計画を作成する。
2.グループメンバー同士の助け合いを推奨していく。
3.グループ支援において生じる問題や障害を予測する。
4.グループ活動に関連する関係者とネットワークをつくる。
5.グループワークの目標についてグループメンバー間で合意を得る。

解答

解説

ポイント

禁煙を希望する職員に対し、グループ活動を通して支援を行う。
初回のグループワークとなるため、グループの発達過程としては「開始期」に該当する。開始期とは、メンバーが集まってグループとして動き出すまでの段階である。支援役割として、①メンバーは緊張しているため、ワーカー自身が受容的な雰囲気を作っていく。②グループワークを実施する目的・意義・理由・背景等の説明する。③基本的なルールや民主的な態度でグループ運営を行っていく。

1.3.× グループの支援計画を作成する/グループ支援において生じる問題や障害を予測する優先度は低い。なぜなら、グループの支援計画を作成する/グループ支援において生じる問題や障害を予測するのは、主に「準備期」に行うため。準備期とは、初めて顔を合わせる前に準備する段階である。支援役割として、①ニーズを探り援助対象を決定する。②組織のバックアップを受けて、メンバーは固定グループか開放グループか検討し、援助期間や頻度も決めておく(グループ支援計画)。③メンバーの情報を集め理解をしておく。④記録用紙の様式も検討しておく。
2.× グループメンバー同士の助け合いを推奨していく優先度は低い。なぜなら、グループメンバー同士の助け合いを推奨していくのは、主に「作業期」に行うため。作業期とは、メンバーとグループ全体が、自分たちの課題に取り組み、目的達成のために成果が出るよう進めていく段階である。支援役割として、①メンバー個別に信頼関係を得ていく。②メンバーのプログラム参加の動機づけを高めるよう意見を反映する。③プログラム活動の目的を共有し、仲間意識を高める。④孤立するメンバーやサブグループが現われたら適切に対応する。⑤相互援助システムを形成する。
4.× グループ活動に関連する関係者とネットワークをつくる優先度は低い。なぜなら、グループ活動に関連する関係者とネットワークをつくるのは、主に「終結期」に行うため。終結期とは、グループ援助を終わりにする段階である。支援役割として、①今まで共有した時間を振り返り、共に経験した感情を分かち合い、グループワークの成果を今後どのように生かしていくか考える。②必要に応じてメンバー個別に援助を行っていく。③各メンバーのグループ経験を評価する。
5.〇 正しい。グループワークの目標についてグループメンバー間で合意を得ることは、初回のグループワークにおける保健師の支援である。開始期とは、メンバーが集まってグループとして動き出すまでの段階である。支援役割として、①メンバーは緊張しているため、ワーカー自身が受容的な雰囲気を作っていく。②グループワークを実施する目的・意義・理由・背景等の説明する。③基本的なルールや民主的な態度でグループ運営を行っていく。

グループの発展過程

①準備期:初めて顔を合わせる前に準備する段階である。
【支援役割】①ニーズを探り援助対象を決定する。②組織のバックアップを受けて、メンバーは固定グループか開放グループか検討し、援助期間や頻度も決めておく。③メンバーの情報を集め理解をしておく。④記録用紙の様式も検討しておく。

②開始期:メンバーが集まってグループとして動き出すまでの段階である。
【支援役割】①メンバーは緊張しているため、ワーカー自身が受容的な雰囲気を作っていく。②グループワークを実施する目的・意義・理由・背景等の説明する。③基本的なルールや民主的な態度でグループ運営を行っていく。

③作業期:メンバーとグループ全体が、自分たちの課題に取り組み、目的達成のために成果が出るよう進めていく段階である。【支援役割】①メンバー個別に信頼関係を得ていく。②メンバーのプログラム参加の動機づけを高めるよう意見を反映する。③プログラム活動の目的を共有し、仲間意識を高める。④孤立するメンバーやサブグループが現われたら適切に対応する。⑤相互援助システムを形成する。

④終結期:グループ援助を終わりにする段階である。
【支援役割】①今まで共有した時間を振り返り、共に経験した感情を分かち合い、グループワークの成果を今後どのように生かしていくか考える。②必要に応じてメンバー個別に援助を行っていく。③各メンバーのグループ経験を評価する。

(※参考「ループの発達段階@本八幡」就労移行支援事業所リバーサル本八幡様HPより)

 

 

 

 

 

19 市では、希望者による生活習慣病予防の運動教室を実施している。事業担当の保健師は、運動教室の終了後に自主的に活動するグループづくりを目指している。
グループづくりのため、運動教室開催中に保健師が取り組む内容で優先度が高いのはどれか。

1.問題意識の共有
2.メンバーの社会化
3.ロールモデルの設定
4.情緒的サポートを受ける機会
5.権利擁護(アドボカシー)の自覚

解答

解説

MEMO

・市:希望者による生活習慣病予防の運動教室を実施中。
・保健師:自主的に活動するグループづくりを目指している。
→自主グループづくりには、メンバー同士で問題意識を共有し、グループの連帯感を高める必要がある。したがって、選択肢1.問題意識の共有は、最も優先度が高い。保健師は、運動教室開催中から問題意識を共有できるようメンバーを支援する必要がある。

2.× メンバーの社会化は、優先度は低い。なぜなら、メンバーの社会化が直接的に自主性を生じさせるとは考えにくいため。社会化とは、様々な意味を持つが主に、人間が他者との関係の中で既成の社会に適応同化してゆくことがあげられる。ほかにも、①人間の相互作用、相互影響によって集団や社会が形成される過程、②私的・個別的な存在を公的・集団的な存在にすることといった意味を持つ。
3.× ロールモデルの設定は、優先度は低い。なぜなら、ロールモデルの設定を行うのは、「保健師」ではなくメンバーであるため。ロールモデルとは、一般的に考え方や行動の規範になる人物を意味する。メンバーが自主的に活動を進めるイメージをつかむために、ロールモデルを設定することは有用である。
4.× 情緒的サポートを受ける機会は、優先度は低い。なぜなら、メンバー間での対立や摩擦が表面化した場合に行う支援であり、問題文にこのような情報はないため。情緒的サポートとは、勇気づけたり、同情したり、あるいは、ただそばにいてあげるというような情緒面への働きかけのことである。
5.× 権利擁護(アドボカシー)の自覚は、優先度は低い。なぜなら、グループが発展していくなかで施策への提言が必要となる場合に行われるものであり、問題文にこのような情報はないため。権利擁護(アドボカシー)とは、自己の権利を十分に表明することができない者の人権を尊重し、当事者の権利を代弁者として擁護し、当事者の自己決定を支え、その人らしく生活すること(自己実現)を支援することである。アドボカシーは、「擁護」、「支持」、「唱道」などの意味をもつ言葉で、保鍵師の役割において、「代弁者」として用いられることが多い。患者や家族が自身の権利や利益を守るための自己決定ができるように、看護師は、患者や家族を保護し、情報を伝え、支えることでエンパワーメント(患者・家族を強引に説得したりするのではなく、自己決定できるように働きかけること)すること、さらに医療従事者との仲裁を行い、医療者間の調整をすることであると定義づけられている。

 

 




 

 

20 系統誤差の原因はどれか。

1.マッチング
2.高い追跡率
3.低い抽出率
4.無作為化(割付)
5.検者間の測定差

解答

解説

誤差の種類

バイアス(系統誤差)とは、「曝露とアウトカムの関係を誤って評価してしまう研究デザインの不備」である。曝露とは、アウトカム発症の以前に存在する状態のことである。例えば、喫煙習慣や運動習慣、年齢、性別がこれにあたる。つまり、測りたい真の値(真値)と実際の測定値との差を誤差(エラー)をいう。誤差は2種類に大別される。

①偶然誤差:理想的な状況でも偶然におこるもの。
②系統誤差:データの収集方法が適切でないため系統的におこる一定の方向性をもつもの。

妥当性が高い測定は系統誤差が小さく、より真値に近い結果が得られる。妥当性とは、測定結果が全体として真値に比べてどの程度偏っているかの尺度である。信頼性とは、ある対象を測定するごとに、測定値が偶妹どの程度ばらつくかの尺度である。

1.× マッチングは交絡因子の影響を小さくする方法である。症例群に対して対照群を選定する際に、対照群の交絡因子を症例群と一致させることを指す。交絡とは、ある危険因子の曝露と転帰結果の関連を考える際に、その危険因子に付随し表には現れていないその他の危険因子が直接転帰に関連し、観察している因子は直接的には関連していない場合があることをいう(例:喫煙と癌の関係を調べる時、実際には付随する他の因子が直接に癌の発生と関係あるような場合)。曝露と転帰に係わる因子を交絡因子という。曝露と転帰の因果関係の過程で生じるものではないこと、対象の選択や判定上で問題となるバイアスとも異なることに注意が必要である。観察的研究ではこの交絡が起こる可能性が常に存在するため、①研究デザインにおける交絡のコントロール、②データ分析における交絡のコントロールが必要になる。
2.× 高い追跡率は偶然誤差を小さくする要因となり信頼性を高める。なぜなら、追跡することで転出や死亡などで追跡不可能となる対象者が少なく、研究ではじめに設定した標本数を確保することにつながるため。ちなみに、偶然誤差とは、理想的な状況でも偶然におこるものをさす。
3.× 低い抽出率は、「系統誤差」ではなく偶然誤差の原因である。抽出率とは、標本として選び出す抽出単位の数の、母集団における抽出単位の総数に対する比率のことである。低い抽出率では母集団を説明するための適切な標本数が確保できず、偶然誤差が大きくなる。
4.× 無作為化(割付)は交絡因子の影響を小さくする方法である。まったく交絡因子が不明の時に対象者を介入群、非介入群にランダムに割り付ける方法である。無作為化の目的は、比較する群の性別、年齢、重症度などの既知の交絡因子の分布を均等にするばかりでなく、未知の交絡因子の影響を低減させること。介入研究で偏りを避けるため行う。
5.〇 正しい。検者間の測定差は、系統誤差の原因となる。系統誤差とは、データの収集方法が適切でないため系統的におこる一定の方向性をもつもので、特定の要因が影響してある方向へ偏って生じる誤差を指す。①選択バイアスや②情報バイアスがある。検者間の測定差は、「情報バイアス」にあたり、系統誤差の原因となる。検者間で測定に差が生じないように、測定方法や手順を定めておくことが重要である。

交絡とは?

交絡とは、ある危険因子の曝露と転帰結果の関連を考える際に、その危険因子に付随し表には現れていないその他の危険因子が直接転帰に関連し、観察している因子は直接的には関連していない場合があることをいう(例:喫煙と癌の関係を調べる時、実際には付随する他の因子が直接に癌の発生と関係あるような場合)。曝露と転帰に係わる因子を交絡因子という。曝露と転帰の因果関係の過程で生じるものではないこと、対象の選択や判定上で問題となるバイアスとも異なることに注意が必要である。観察的研究ではこの交絡が起こる可能性が常に存在するため、①研究デザインにおける交絡のコントロール、②データ分析における交絡のコントロールが必要になる。

①研究デザインにおける交絡のコントロール
限定:対象集団を制限すること。
マッチング:症例と対照の間で交絡因子となりそうな要因を一致させること。
無作為化:まったく交絡因子が不明の時に対象者を介入群、非介入群にランダムに割り付ける方法である。無作為化の目的は、比較する群の性別、年齢、重症度などの既知の交絡因子の分布を均等にするばかりでなく、未知の交絡因子の影響を低減させること。

②データ分析における交絡のコントロール
層化:対象者をひとまとめにして分析せずに、そのサブグループごとに分けて分析すること。
多変量解析:統計学的モデルを用いて交絡因子も変数として含めることで、それぞれの変数の影響を見ていく方法である。

 

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