21 現行の自殺対策基本法で正しいのはどれか。
1.自殺者の親族等に対する支援が目的に含まれる。
2.事業主の責務に長時間労働の禁止を規定している。
3.保健所に自殺総合対策会議の実施を義務付けている。
4.市町村に自殺予防総合相談窓口の設置を義務付けている。
解答1
解説
自殺対策基本法は、①自殺の防止と②自殺者の親族などの支援の充実を図り、国民が健康で生きがいをもって暮らすことのできる社会の実現を目的としている。年間の日本における自殺者数が3万人を超えていた日本の状況に対処するため制定された法律である。2006年6月21日に公布、同年10月28日に施行された。主として厚生労働省が所管し、同省に特別の機関として設置される自殺総合対策会議が、「自殺対策の大綱」を定める。
1.〇 正しい。自殺者の親族等に対する支援が目的に含まれる。ちなみに、自殺者の親族などに対する支援は、国および地方自治体の義務として定められている。
2.× 事業主の責務に長時間労働の禁止を規定しているのは、『労働基準法』である。『自殺対策基本法』は、事業主の責務として、国や地方自治体の自殺対策への協力や労働者のこころの健康の保持を図るために必要な措置を講ずるよう努めることが規定されている。一方で、労働基準法とは、労働者の生存権の保障を目的として、①労働契約や賃金、②労働時間、③休日および年次有給休暇、④災害補償、⑤就業規則といった労働者の労働条件についての最低基準を定めた法律である。
3.× 自殺総合対策会議の実施を義務付けているのは、保健所ではなく『厚生労働省』である。ちなみに、自殺総合対策会議は、自殺総合対策大綱の案の作成などを行う。
4.× 市町村に自殺予防総合相談窓口の設置の義務などといった具体的な相談窓口の設置は規定されていない。『自殺対策基本法』では、自殺の防止のため、国および地方自治体が相談体制の整備をすることが定められている。
22 平成26年(2014年)に実施された患者調査のうち高齢者の調査結果で正しいのはどれか。
1.入院患者では65歳以上が約7割を占めている。
2.外来患者では65歳以上が約8割を占めている。
3.年齢階級別外来受療率(人口10万対)では90歳以上が最も高い。
4.年齢階級別入院受療率(人口10万対)では75〜79歳が最も高い。
解答1
解説
目的:病院・診療所を利用する患者について、傷病状況の実態を明らかに
調査頻度:3年に1回、医療施設静態調査と同時
調査対象:標本調査(全国の病院、一般診療所、歯科診療所から層化無作為に
調査項目:患者の性別、出生年月日、住所、入院・外来の種別、受療の状況等。
調査方法:医療施設の管理者が記入。
(参考:「患者調査(基幹統計)」厚生労働省HPより)
1.〇 正しい。入院患者では、65歳以上が約7割(71.1%)を占めている。
2.× 外来患者では、65歳以上が約8割ではなく、48.5%を占めている。
3.× 年齢階級別外来受療率(人口10万対)では、90歳以上が最も高いのではなく、男性では80~84歳、女性では75~79歳が最も高くなっている。
4.× 年齢階級別入院受療率(人口10万対)では、75〜79歳が最も高いのではなく、男女とも90歳以上が最も高くなっている。
(※引用先:厚生労働省HP「平成26年(2014)患者調査の概況」)
23 公衆衛生看護活動で用いるハイリスクアプローチはどれか。
1.母子健康手帳交付時に喫煙防止のリーフレットを渡す。
2.肥満予防のリーフレットを健診結果通知に同封する。
3.小学校と連携して赤ちゃん抱っこ体験学習を行う。
4.自治会と連携して健康セミナーを開催する。
5.血圧が高めの人に減塩方法を指導する。
解答5
解説
ポピュラーアプローチ(ポピュレーションストラテジー):対象を限定せず地域や職場など、集団全体に働きかけてリスクを下げる方法である。1次予防とされる。
ハイリスクアプローチ(ハイリスクストラテジー):リスクの高いものに対象を絞り込んで働きかける方法である。2次予防とされる。個人への効果が高い。
1~4.× 母子健康手帳交付時に喫煙防止のリーフレットを渡す。/肥満予防のリーフレットを健診結果通知に同封する。/小学校と連携して赤ちゃん抱っこ体験学習を行う。/自治会と連携して健康セミナーを開催する。それぞれの選択肢は、ポピュレーションアプローチである。特徴として、集団全体を対象に一次予防として介入することである。
5.〇 正しい。血圧が高めの人に減塩方法を指導することは、ハイリスクアプローチである。なぜなら、血圧が高めな人への指導は、疾病などのリスクが高い対象者に絞った支援に該当するため。
24 いわゆる成人病の対策に生活習慣の改善による発症予防の考えを導入した国の施策で、生活習慣病の呼称を最初に用いたのはどれか。
1.第1次国民健康づくり対策
2.第2次国民健康づくり対策
3.健康づくりのための運動指針
4.健康日本21
5.健康づくりのための睡眠指針
解答4
解説
生活習慣病は、「食習慣、運動習慣、休養の取り方、喫煙、飲酒などの生活習慣が、その発症・伸展に関与する疾患群」と定義されている。生活習慣病の背景因子として、①遺伝性因子、②環境因子、③生活習慣因子が考えらえているが、「生活習慣因子」は生活習慣病の積極的予防に最も重要な要素とされている。
1.× 第1次国民健康づくり対策は、生活習慣病の呼称を最初に用いたものではない。第1次国民健康づくり対策(別名:国民健康づくり対策)は、昭和53(1978)年に開始された。基本方針として、①生涯を通しての健康づくりの推進、②健康づくりのための基盤整備(健康づくりの3要素:栄養、運動、休養)、③健康づくりの啓発普及である。
2.× 第2次国民健康づくり対策は、生活習慣病の呼称を最初に用いたものではない。第2次国民健康づくり対策(別名:アクティブ80ヘルスプラン)は、昭和63(1988)年に開始された。基本方針は、栄養、運動、休養のバランスのとれたライフスタイルの確立である。健康づくりの3要素の健康増進事業(特に遅れていた運動習慣の普及に重点)が推進された。
3.× 健康づくりのための運動指針は、生活習慣病の呼称を最初に用いたものではない。平成5年に策定された「健康づくりのための運動指針」は、健康づくりのための運動基準・運動指針の改定を経て、平成25年に健康づくりのための身体活動基準2013、健康づくりのための身体活動指針(アクティブガイド)が新たに策定されている.
4.〇 正しい。健康日本21は、生活習慣病の呼称を最初に用いたものである。生活習慣病が定義されたのは、平成8年の公衆衛生審議会意見具申「生活習慣に着目した疾病対策の基本的な方向性について」であり、その後、平成12年開始の健康日本21(21世紀における国民健康づくり運動)において、施策で初めて生活習慣病の呼称が用いられた。基本方針は、壮年期死亡の減少、健康寿命の延伸、QOLの向上である。内容として、一次予防の重視、健康づくり支援のための環境整備、健康づくり運動の具体的な目標設定・取り組みの方法性を明示した。
5.× 健康づくりのための睡眠指針は、生活習慣病の呼称を最初に用いたものではない。平成15年に策定された「健康づくりのための睡眠指針」は、平成26年に健康づくりのための睡眠指針2014が新たに策定されている。睡眠について正しい知識を身につけ、定期的に自らの睡眠を見直して、適切な量の睡眠の確保、睡眠の質の改善、睡眠障害への早期からの対応によって、事故の防止とともに、からだとこころの健康づくりを目指している。(※参考:「健康づくりのための睡眠指針 2014」厚生労働省HPより)
日本における健康対策の現状や第三次国民健康づくり対策(健康日
(※参考:「健康日本21(第二次)」厚生労働省HPより)
25 市の乳児健康診査において股関節開排制限の有無について確認を行い、片側に異常を認めた児の状況を図に示す。
この時に確認できた児の状況で正しいのはどれか。
1.左側の足の長さが右側より長い。
2.右側の鼠径部の皮膚溝が左側より深い。
3.右側の大腿部のしわの数が左側より多い。
4.左側の股関節の開排が正中より70度以下である。
5.右側の股関節の開排が正中より120度以上である。
解答4
解説
乳幼児健康診査とは、母子保健法第12条及び第13条の規定により市町村が乳幼児に対して行う健康診査である。乳幼児健診は、身長、体重、胸囲、頭囲を測定し、成長曲線と照らし合わせながら、成長度合いを確認する。身体的な健診に限らず、粗大運動・微細運動・精神面を含めた発達、疾患の有無に関しても確認する。また、発育性股関節形成不全(先天性股関節脱臼)の有無を診るため、股関節開排制限や大腿皮膚溝、鼠径皮膚溝の非対称を確認する。発育性股関節形成不全とは、生下時の女児(0~1歳)におこる股関節の脱臼などの状態である。現在では、先天性股関節脱臼のことを発育性股関節形成不全と呼ぶ傾向にある。変形性股関節症の原因となることが多い。片側に発症することが多く、リーメンビューゲル装具(アブミ式吊りバンド)で開排(屈曲・外転)肢位にして治療する。リーメンビューゲル装具で改善しない場合、牽引療法を、さらに治療が困難な場合は、観血的整復術や補正手術を検討する。
→本症例は、左側の開排制限が認められるため、発育性股関節形成不全(先天性股関節脱臼)が疑われる。
1~3,5.× 左側の足の長さが右側より長い。/右側の鼠径部の皮膚溝が左側より深い。/右側の大腿部のしわの数が左側より多い。/右側の股関節の開排が正中より120度以上である。といった状態は観察できない。
4.〇 正しい。左側の股関節の開排が正中より70度以下である。図を見ると、左右の股関節の開きに差がある。左側の開きが不十分であることが観察される。左側は正中を0度とし70度以下と判断できる。