第105回(H31) 保健師国家試験 解説【午後21~25】

 

21 国際疾病分類(ICD)に基づいた統計が含まれるのはどれか。

1.国勢調査
2.人口動態調査
3.医療施設動態調査
4.国民生活基礎調査
5.国民健康・栄養調査

解答

解説

国際疾病分類(ICD)とは?

国際疾病分類(lCD)は、世界保健機関(WHO)が国際的に用いることを目的として開発した、疾病・傷害および死因の統計分類の体系である。死因や疾病の統計などに関する情報の国際的な比較や、医療機関における診療記録の管理などに活用されて、日本では、人口動態統計・患者調査などに利用されている。

1.× 国勢調査は、国際疾病分類(ICD)に基づいた統計が含まれない。なぜなら、国勢調査は疾病に関する調査項目は含まれていないため。国勢調査は、国内の人口・世帯の実態(人口静態統計)を把握する調査である。日本の人口静態統計は、5年ごとに行われる国勢調査によって得られる。
2.〇 正しい。人口動態調査は、国際疾病分類(ICD)に基づいた統計が含まれる。なぜなら、人口動態調査は、出生・死亡・死産・婚姻・離婚の5つの事象を調べる調査であり、死亡や死産の調査に国際疾病分類が用いられているため。人口動態調査は、出生、死亡、婚姻、離婚および死産の全数を対象とした悉皆調査(しっかいちょうさ)、全数調査である。それらの事象(人口動態事象)を把握する調査である。悉皆調査(全数調査)とは、対象となるものを全て調べる調査のことで、誤差なく正確な結果が得られる反面、膨大な費用や手間がかかるという欠点もある。
3.× 医療施設動態調査は、国際疾病分類(ICD)に基づいた統計が含まれない。なぜなら、医療施設動態調査は疾病に関する調査項目は含まれていないため。医療施設動態調査は、全国の病院・診療所の分布および整備の実態を調べる調査である。
4.× 国民生活基礎調査は、国際疾病分類(ICD)に基づいた統計が含まれない。国民生活基礎調査は、保健・医療・福祉・年金・所得などの国民生活の基礎的事項を把握する調査である。国民の有病状況を調べてはいるが、医療機関などで診断された病名を調べているわけではない
5.× 国民健康・栄養調査は、国際疾病分類(ICD)に基づいた統計が含まれない。なぜなら、国民健康・栄養調査は、疾病に関する調査項目は含まれていないため。国民健康・栄養調査は、国民の身体状況、栄養摂取量および生活習慣の状況を調べる調査である。毎年、食生活状況、各種身体・血液検査や飲酒、喫煙、運動習慣などを調べており、国における健康増進対策や生活習慣病対策に不可欠な調査となっている。国民健康・栄養調査は、『健康増進法』に基づき、国民の身体の状況、栄養素等摂取状況および生活習慣の状況についての調査で、標本調査により実施される。

世界保健機関(WHO:World Health Organization)とは?

世界保健機関とは、「全ての人々が可能な最高の健康水準に到達すること」を目的として設立された国連の専門機関である。

設置年:昭和23(1948)年
本部:ジュネーブ(スイス)
協力形態:多国間交流
事業内容:発展途上国への国際保健協力、感染症およびその他の疾病(エイズ・結核・マラリア等)の撲滅事業、国際疾病分類(ICD)の作成
備考:①WHOの構成組織である地域的機関は、6つ(アフリカ、アメリカ、東南アジア、ヨーロッパ、東地中海、西太平洋)あり、日本は西太平洋に所属している。②194か国加盟 (2018年4月時点)、③たばこ規制枠組み条約:たばこの消費等が健康に及ぼす悪影響から現在および将来の世代を保護することを目的とし、たばこに関する広告、包装上の表示等の規制及びたばこの規制に関する国際協力について規定。

(※参考:「日本とWHO」厚生労働省HPより)

 

 

 

 

 

 

22 職場の健康診断で肥満傾向であった者から、体重を減らしたいと産業保健師に相談があった。
 保健師がコーチングの手法を用いて支援しているのはどれか。2つ選べ。

1.必要な1日の食事量を伝える。
2.運動のプログラムを作成し提示する。
3.本人が実施すると決めたことを認める。
4.ウォーキング教室へ参加するよう勧める。
5.体重を減少させるために本人に何ができるか聞く。

解答3・5

解説

コーチングとは?

コーチングとは、単に患者に教えるのではなく、①的確な問いかけを行う、②選択肢を示すこと、により患者が自ら考え、決定し、行動を起こすように支援する技術である。つまり、対象者の本来もっている能力・強み・個性を引き出し、目標実現や問題解決するために自発的行動を促す方法である。

3/5.〇 正しい。本人が実施すると決めたことを認める/体重を減少させるために本人に何ができるか聞くことは、コーチングの手法を用いて支援にあたる。対象者の考えや気持ちを承認することや、対象者が自ら考え行動(自発行動の促し)を支援することは、コーチングに当てはまる。
1~2.4.× 必要な1日の食事量を伝える/運動のプログラムを作成し提示する/ウォーキング教室へ参加するよう勧めることは、知識伝達型の支援技術にあたる。

 

 

 




 

 

23 市町村保健師が行う地区活動の展開で正しいのはどれか。2つ選べ。

1.実践とモニタリングは別に行う。
2.住民との契約に基づいて実施する。
3.日頃の活動の中で実態把握をする。
4.関係機関との連携は実践の1つである。
5.地区活動の対象に産業保健は含まれない。

解答3・4

解説

1.× 実践とモニタリングは、「別」ではなく同時に行う。健康危機管理にあたり、危機発生を予測し、住民と協働する健康危機管理の体制づくり全般を行う。ちなみに、モニタリングとは、監視、観察、観測を意味し、対象の状態を継続または定期的に観察・記録することを指す。
2.× 住民との契約に基づいて実施する必要はない。保健師の地区活動は、住民だけではなくその地区のニーズの課題にも対応するため住民全員に契約することは難しい。これを地区管理といい、地域のニーズや課題から地域診断を行い、住民と協働した施策化を行う。また、潜在的なニーズを抱えている対象者に対して、本人から要請がない場合でも支援を行う。
3.〇 正しい。日頃の活動の中で実態把握をする。保健師は、個別支援などの日ごろの活動から得た情報をもとに、地区の状況を推察し、さらなるデータを収集しながら検証していくことで地域の実態を把握する。事例管理は、個々の事例のケアから始まり、それを地域の問題としてとらえ、ダイナミックな活動を展開する。
4.〇 正しい。関係機関との連携は、実践の1つである。多様化・複雑化するニーズに対応するためには、関係機関との連携による支援が必須である。情報管理は、地域の実態を把握するための情報収集・分析や正確な情報伝達のための体制整備、マスコミ対応、個人情報への配慮を行う。
5.× 地区活動の対象に産業保健も含まれる。担当地域には就労している人も多く居住しており、産業保健も地区活動の対象である。

保健師に求められる看護管理機能

保健師が担う管理機能には、キャリア発達の段階に沿って、新任期1年目から担うものと、中堅や管理者になってから担うものに分けられる。保健師が行う地域看護管理の機能として、①初任期にも事例管理、事業管理、地区管理等管理的な機能を果たす。②、①の延長線上に管理者の組織運営管理や人材育成管理そして地域管理等の機能がある。③管理的な機能は初任期から発揮されていることから、保健師の専門性の中核を成すものといえる。④地区管理も行うため、所属組織内の管理にとどまるものではない。

①事例管理:個々の事例のケアから始まり、それを地域の問題としてとらえ、ダイナミックな活動を展開する。
②地区管理:地域のニーズや課題から地域診断を行い、住民と協働した施策化を行う。
③事業・業務管理:地方自治体の上位計画や組織目標に基づく、事業計画策定や進行管理を行い、評価結果を次年度の計画等へ反映させる。
④組織運営管理:組織理念・目標や地域の課題を共有して組織としての方針を決定し、業務の効率化を高めながら組織体制を機能させる。
⑤予算編成:予算の仕組みを把握し、事業企画に伴う予算編成を行う。
⑥予算管理:新たな政策や人材確保等のための予算獲得および適切な執行と評価を行い、予算面から公衆衛生看護活動を担保する。
⑦人材育成:保健師の育成過程に応じて、中・長期的な研修計画および生涯学習企画と実施を行い、実践報告を評価する。
⑧人事管理:組織の目標を達成するため、組織に必要な保健師人員数を確保し、職員を計画的に適材適所へ配置するとともに、人事評価を行う。
⑨情報管理:地域の実態を把握するための情報収集・分析や正確な情報伝達のための体制整備、マスコミ対応、個人情報への配慮を行う。
⑩健康危機管理:危機発生を予測し,住民と協働する健康危機管理の体制づくり全般を行う。

(参考:「保健師に求められる看護管理のあり方」社団法人日本看護協会より)

 

 

 

 

 

24 「公助」に該当するのはどれか。2つ選べ。

1.地域包括支援センターにおける高齢者虐待対策
2.婦人会による高齢者を対象とした食事会
3.生活保護制度における医療扶助
4.自治会が主催する育児サークル
5.雇用保険による失業等給付

解答1・3

解説

4つの助

地域包括ケアシステムとは、高齢者の尊厳の保持と自立生活の支援の目的のもとで、可能な限り住み慣れた地域で生活を継続することができるよう、包括的な支援・サービス提供体制の構築を目指すものである。この地域包括ケアシステムが効果的に機能するために、「4つの助(自助・互助・共助・公助)」の考え方が連携し、課題解決に向け取り組んでいく必要がある。

公助:生活保障制度や社会福祉制度による支援である。
自助:自分自身で自分を助けるということである。
共助:被保険者が保険料を支払い、相互の負担で成立する制度である。
互助:個人的な関係性をもっている人間同士が助け合うことである。費用負担が制度的に裏付けられていない。あくまで自発的な支えのこと。

1.〇 正しい。地域包括支援センターにおける高齢者虐待対策は、「公助」に該当する。なぜなら、公費(税による負担)で行われるため。ちなみに、『介護保険』自体は、互いに保険料を出し合う「共助」に該当する。しかし、地域包括支援センターが行う権利擁護や虐待対策は、保険給付の対象ではなく、税により行われている活動のため「公助」となる。
2.4.× 婦人会による高齢者を対象とした食事会/自治会が主催する育児サークルは、「互助」に該当する。なぜなら、婦人会というインフォーマルな地域組織による活動であるため。インフォーマルサービスとは、法律や制度に基づいて自治体や医療機関、介護事業所が提供するサービス(フォーマルサービス)ではなく、家族や友人、地域住民、NPO、ボランティアなどによって有償・無償を問わず提供されるサービスを指す。
3.〇 正しい。生活保護制度における医療扶助は、「公助」に該当する。なぜなら、生活保護制度における8つの扶助は公費により行われるため。
5.× 雇用保険による失業等給付は、「共助」に該当する。なぜなら、雇用保険などの社会保険は、被保険者が保険料を支払い、相互の負担で成立する制度であるため。

生活保護制度とは?

生活保護制度は、『日本国憲法』25条の理念に基づき、生活困窮者を対象に、国の責任において、健康で文化的な最低限度の生活を保障し、その自立を助長することを目的としている。8つの扶助(生活扶助、住宅扶助、教育扶助、医療扶助、介護扶助、出産扶助、生業扶助、葬祭扶助)があり、原則現金給付であるが、医療扶助と介護扶助は現物給付である。被保護人員は約216.4万人(平成27年度,1か月平均)で過去最高となっている。

生活扶助:日常生活に必要な費用
住宅扶助:アパート等の家賃
教育扶助:義務教育を受けるために必要な学用品費
医療扶助:医療サービスの費用
介護扶助:介護サービスの費用
出産扶助:出産費用
生業扶助:就労に必要な技能の修得等にかかる費用
葬祭扶助:葬祭費用

【生活保護法の4つの基本原理】
①国家責任の原理:法の目的を定めた最も根本的原理で、憲法第25条の生存権を実現する為、国がその責任を持って生活に困窮する国民の保護を行う。
②無差別平等の原理:全ての国民は、この法に定める要件を満たす限り、生活困窮に陥った理由や社会的身分等に関わらず無差別平等に保護を受給できる。また、現時点の経済的状態に着目して保護が実施される。
③最低生活の原理:法で保障する最低生活水準について、健康で文化的な最低限度の生活を維持できるものを保障する。
④保護の補足性の原理:保護を受ける側、つまり国民に要請される原理で、各自が持てる能力や資産、他法や他施策といったあらゆるものを活用し、最善の努力をしても最低生活が維持できない場合に初めて生活保護制度を活用できる。

【4つの原則】
①申請保護の原則:保護を受けるためには必ず申請手続きを要し、本人や扶養義務者、親族等による申請に基づいて保護が開始。
②基準及び程度の原則:保護は最低限度の生活基準を超えない枠で行われ、厚生労働大臣の定める保護基準により測定した要保護者の需要を基とし、その不足分を補う程度の保護が行われる。
③必要即応の原則:要保護者の年齢や性別、健康状態等その個人又は世帯の実際の必要の相違を考慮して、有効且つ適切に行われる。
④世帯単位の原則:世帯を単位として保護の要否及び程度が定められる。また、特別な事情がある場合は世帯分離を行い個人を世帯の単位として定めることもできる。

(※参考:「生活保護制度」厚生労働省HPより)
(※参考:「生活保護法の基本原理と基本原則」室蘭市HPより)

 

 




 

 

25 母子健康手帳に記載されている「保護者の記録【1歳6か月の頃】」で、正しいのはどれか。2つ選べ。

1.おしっこをひとりでしますか。
2.友だちと、ごっこ遊びをしますか。
3.自分でコップを持って水を飲めますか。
4.手を使わずにひとりで階段をのぼれますか。
5.うしろから名前を呼んだとき、振り向きますか。

解答3・5

解説

母子健康手帳とは?

母子健康手帳とは、母子保健法に定められた市町村が交付する、妊娠、出産、育児の一貫した母子の健康状態を記録する手帳のことである。母子健康手帳の制度化は、母子保健法:昭和41年(1966年)である。

1~2.× おしっこをひとりでしますか/友だちと、ごっこ遊びをしますか。4歳児に掲載されている。
3.5.〇 正しい。自分でコップを持って水を飲めますか/うしろから名前を呼んだとき、振り向きますか。1歳6か月児に掲載されている。
4.× 手を使わずにひとりで階段をのぼれますか。3歳児に掲載されている。

子どもの発達のポイント

【1歳6か月】
・コップで水を飲む。
・スプーンを使って食べようとする。
・積み木を2~3個積むことができる。
・意味のある言葉を2~3語話す(パパ, ママ, ブーブー)。
・簡単な指示に従うことができる(おいで、○○をとって)。
・離乳が完了する。

【3歳】
・自分の名前を言う。
・簡単な文章を話す。
・指示に従う。
・物の大小や長短、色を区別できる。
・箸を持って食べる。
・手を洗う。
・ままごとやごっこ遊びをする。

 

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