26 健康日本21(第二次)の目標で正しいのはどれか。
1.喫煙が及ぼす健康影響についての十分な知識の普及
2.週労働時間60時間以上の雇用者の割合の減少
3.メタボリックシンドロームの認知度の向上
4.アルコール依存症の患者数の減少
5.糖尿病治療者数の減少
解答2
解説
日本における健康対策の現状や第三次国民健康づくり対策(健康日
(※参考:「健康日本21(第二次)」厚生労働省HPより)
1.× 喫煙が及ぼす健康影響についての十分な知識の普及は、健康日本21(第一次)の目標である。健康日本21(第一次)の基本方針は、壮年期死亡の減少、健康寿命の延伸、QOLの向上である。内容として、一次予防の重視、健康づくり支援のための環境整備、健康づくり運動の具体的な目標設定・取り組みの方法性を明示した。ちなみに、健康日本21(第二次)では、受動喫煙の機会を有する者の割合の減少などが目標として掲げられている。
2.〇 正しい。週労働時間60時間以上の雇用者の割合の減少は、健康日本21(第二次)の目標である。健康日本21(第二次)の「休養」の目標としており、ほかにも睡眠による休養を十分とれていない者の減少もあげている。
3.× メタボリックシンドロームの認知度の向上は、健康日本21(第一次)の中間評価で追加された目標である。ちなみに、健康日本21(第二次)では、メタボリックシンドロームの該当者および予備軍の減少が目標として掲げられている。
4.× アルコール依存症の患者数の減少の記載はない。ちなみに、健康日本21(第二次)では、生活習慣病のリスクを高める量を飲酒している者の割合の減少などが目標として掲げられている。
5.× 糖尿病治療者数の減少の記載はない。ちなみに、健康日本21(第二次)では、糖尿病に関して「合併症の減少、治療継続者の割合の増加、血糖コントロール指標におけるコントロール不良者の割合の減少、糖尿病有病者の増加の抑制」などが目標として掲げられている。健康日本21の目標・目標値の一覧を参考にしてほしい。(※「健康日本21目標値一覧」厚生労働省HPより)
27 危険因子に曝露した群の罹患リスクの、曝露していない群の罹患リスクに対する比はどれか。
1.罹患率
2.有病率
3.致命率
4.寄与危険
5.相対危険
解答5
解説
1.× 罹患率とは、ある一定の観察期間に新規発生した患者数を、危険曝露人口一人ひとりの観察期間の総和(観察人年)で除したものである。疾病や死亡が生じることを事象の発生という。事象の発生は、ある一定期間を設定し、その期間内で新規に発生した頻度により把握できる。また、発生頻度の表現は、率(rate)の形で示される。
2.× 有病率とは、ある一時点において、観察集団のなかで疾病を有している人の割合である。生涯有病率とは、一生のうちに一度はその病気にかかる人の割合をいう。
3.× 致命率とは、一定の観察期間において、ある疾病に罹患した者のなかで、その疾病が原因で死亡した者の割合である。主として急性疾患の重症度を示す。
4.× 寄与危険とは、危険因子に曝露した群の罹患リスクの、曝露していない群の罹患リスクに対する比である。「曝露因子があるとどれだけ危険度が増すか」を示す。
5.〇 正しい。相対危険は、危険因子に曝露した群の罹患リスクの、曝露していない群の罹患リスクに対する比である。暴露群と非暴露群における疾病の頻度を比で表現したものでそのまま比率として表すが、百分率で表す場合もある。つまり、「曝露因子があると何倍危険か」を示す。
28 コホート研究と比較した症例対照研究の特徴で正しいのはどれか。
1.研究期間が長い。
2.相対危険が直接計算できる。
3.まれな疾病の研究に適している。
4.事象の発生順序が明らかである。
5.情報の偏り(バイアス)が少ない。
解答3
解説
コホート研究とは、時間軸:前向き研究で、観察期間は長期間行う。信頼性は高いが費用・労力が大きい。
症例対照研究とは、時間軸:後ろ向き研究で、観察期間はない。信頼性は低いが費用・労力が小さい。
研究の種類には、研究者が調査対象集団に対して何らかの働きかけ(介入)を行うか否かで、介入を行う「介入研究」と、介入を行わない「観察研究」とに大きく分類される。介入研究には、「臨床試験・地域研究」などがある。一方、観察研究には、大きく「①記述疫学・②分析疫学」に大別され、①記述疫学には、横断研究・時系列研究などがある。②分析疫学には、生態学的研究・横断研究・症例対照研究・コホート研究などがある。
1.× 研究期間が長いのは、コホート研究である。なぜなら、コホート研究は、長期的な観察で疾病発生の動向をみるため。罹患などの結果が得られるまで時間を要し、研究期間が長くなる特徴を持つ。一方で、症例対照研究は、すでに対象者の擢患の結果は明らかであるため、前向きコホート研究に比べると調査期間は短くなる。
2.× 相対危険が直接計算できるのは、コホート研究である。一方、症例対照研究は、相対危険の近似値であるオッズ比を算出する。相対危険度(リスク比)とは、曝露群と非曝露群の疾病発症のリスクの比のことで、「陽露因子があると何倍危険か」を示す。因果関係を追及する際の重要な指標である。リスク比が大きいほど、因果関係が存在する可能性が高い。
3.〇 正しい。まれな疾病の研究に適しているのは、症例対照研究である。なぜなら、症例対照研究は、すでに発症した症例を集めることができるため。一方、前向きであるコホート研究は、まれな疾病の研究に十分な発症数を得るために、膨大な規模の観察集団を設定することになる。
4.× 事象の発生順序が明らかであるのは、コホート研究である。なぜなら、コホート研究は、時間軸:前向き研究で、観察期間は長期間行い、追跡調査を行っているため。
5.× 情報の偏り(バイアス)が少ないのは、コホート研究である。なぜなら、コホート研究は経過を観察しているため。一方で、症例対照研究は、過去の出来事を調べるため、「思い出しバイアス(情報バイアス)」などが生じる可能性がある。ちなみに、情報の偏り(バイアス)とは、情報収集時に情報が正しく把握されないために生じる誤差を指す。主に、①選択バイアスや②情報バイアスがある。検者間の測定差は、「情報バイアス」にあたり、系統誤差の原因となる。検者間で測定に差が生じないように、測定方法や手順を定めておくことが重要である。
オッズ:ある事象が起こる確率を起こらない確率で割ったもの。
オッズ比:集団Aのオッズと集団Bのオッズを比較したもの。オッズ比は、症例対照研究の結果から求められ、疾病発生の相対的危険度の数値となる。オッズ比が1のとき、両集団には差がないということになり、1から離れると何らかの差異が存在することになる。
29 症例対照研究における交絡因子の制御方法はどれか。
1.無作為化
2.マッチング
3.単変量解析
4.ブラインド法
5.対象者数の増加
解答2
解説
交絡とは、ある危険因子の曝露と転帰結果の関連を考える際に、その危険因子に付随し表には現れていないその他の危険因子が直接転帰に関連し、観察している因子は直接的には関連していない場合があることをいう(例:喫煙と癌の関係を調べる時、実際には付随する他の因子が直接に癌の発生と関係あるような場合)。曝露と転帰に係わる因子を交絡因子という。曝露と転帰の因果関係の過程で生じるものではないこと、対象の選択や判定上で問題となるバイアスとも異なることに注意が必要である。観察的研究ではこの交絡が起こる可能性が常に存在するため、①研究デザインにおける交絡のコントロール、②データ分析における交絡のコントロールが必要になる。
①研究デザインにおける交絡のコントロール
限定:対象集団を制限すること。
マッチング:症例と対照の間で交絡因子となりそうな要因を一致させること。
無作為化:まったく交絡因子が不明の時に対象者を介入群、非介入群にランダムに割り付ける方法である。無作為化の目的は、比較する群の性別、年齢、重症度などの既知の交絡因子の分布を均等にするばかりでなく、未知の交絡因子の影響を低減させること。
②データ分析における交絡のコントロール
層化:対象者をひとまとめにして分析せずに、そのサブグループごとに分けて分析すること。
多変量解析:統計学的モデルを用いて交絡因子も変数として含めることで、それぞれの変数の影響を見ていく方法である。
1.× 無作為化(ランダム化、ランダム割付)とは、研究参加者をランダムに介入群と非介入群(対照群)に振り分けるものである。研究計画段階で行うものである。対象者の選定と割付を行う際の交絡因子の制御として用いられる。
2.〇 正しい。マッチングは、症例対照研究における交絡因子の制御方法である。マッチングとは、曝露群(介入群または症例群)と非曝露群(対照群)における性別や年齢などの交絡因子の分布が同じになるよう研究参加者を選ぶものである。症例と対照の間で交絡因子となりそうな要因を一致させる。
3.× 単変量解析とは、ひとつの対象にデータが1つしかないデータを扱う解析手法のひとつである。交絡因子の制御方法として利用できるものは、複数の変数を利用する多変量解析である。なぜなら、交絡因子となりうる変数を調整することができるため。
4.× ブラインド法(盲検法)は、バイアスを取り除くものである。ブラインド法(盲検法)とは、参加者の誰が曝露群(介入群)で、誰が非曝露群(対照群)かを参加者にはわからないように割り付ける方法である。情報の偏り(バイアス)とは、情報収集時に情報が正しく把握されないために生じる誤差を指す。主に、①選択バイアスや②情報バイアスがある。検者間の測定差は、「情報バイアス」にあたり、系統誤差の原因となる。検者間で測定に差が生じないように、測定方法や手順を定めておくことが重要である。
5.× 対象者数が増加するだけでは、症例対象研究の交絡因子の制御にはつながらない。なぜなら、交絡因子とは、曝露因子と疾病の双方に関係があるために、両者に見かけ上の因果関係をもたらす要因のことであるため。研究デザインにおける交絡のコントロールのひとつに「限定」があげられ、対象集団を制限することで交絡因子の制御につながる。
30 散布度に含まれるのはどれか。
1.中央値
2.最頻値
3.相関係数
4.標準偏差
5.平均(算術平均)
解答4
解説
1.× 中央値は、代表値のひとつであり、ある一組の測定値を大きさの順に並べたときに、ちょうど真ん中になる値を指す。
2.× 最頻値は、代表値のひとつであり、ある一組の測定値のなかで現れる最も頻度の高い値のことを指す。
3.× 相関係数は、2つの変数の相関の度合いを数値化して、2つの変数の関連性(線形関係の程度)を示す尺度である。相関係数は無次元量で、−1以上1以下の実数に値をとる。
4.〇 正しい。標準偏差は、散布度に含まれる。標準偏差とは、分散の正の平方根のことである。平均値を中心に周囲に測定値がどの程度ばらついているかを示す。
5.× 平均(算術平均)は、代表値のひとつであり、ある集団の個々の測定値をすべて加えた測定値の合計を、その集団の数で割ることによって求められる。