第105回(H31) 保健師国家試験 解説【午後31~35】

 

31 平成26年度(2014年度)学校保健統計調査における主な疾病・異常等で正しいのはどれか。2つ選べ。

1.肥満傾向児の出現率は、平成23 年度(2011年度)以降男女ともに増加している。
2.小学校における疾病・異常の被患率は、裸眼視力1.0 未満の者が最も高い。
3.むし歯(う歯)の者の割合は、全ての学校段階で前年度より減少している。
4.ぜん息の者の年齢別の割合は、小学校で高い傾向がみられる。
5.心電図異常の割合は、高等学校より小学校の方が多い。

解答3・4

解説

学校保健統計調査とは?

「学校保健統計調査」は、学校(幼稚園、小学校、中学校、高等学校および中等教育学校)における幼児、児童、および生徒の発育、および健康の状態を明らかにすることを目的とした調査である。

(※図引用「肥満傾向児の出現率の推移 (平成 22 年度~平成 26 年度)」厚生労働省HPより)

1.× 肥満傾向児の出現率は、平成23 年度(2011年度)以降男女ともに増加しているとはいえない。「肥満傾向児の出現率の推移 (平成 22 年度~平成 26 年度)」によれば、男子はおおむね減少傾向であるが、女子の11歳、14歳は緩やかに増加傾向ともいえる。
2.× 小学校における疾病・異常の被患率が最も高いのは、むし歯(う歯)であり、次いで裸眼視力1.0未満が高い。これは幼稚園も同様の結果となった。一方、中学校から高等学校に至っては、裸眼視力1.0未満が最も高い。
3.〇 正しい。むし歯(う歯)の者の割合は、全ての学校段階で前年度より減少している。むし歯(う歯)の者の割合(処置完了者を含む)は、すべての学校段階で前年度より低下しており、中学校および高等学校においては、過去と比較して最も低値であった。
4.〇 正しい。ぜん息の者の年齢別の割合は、小学校で高い傾向がみられる。ぜん息の者の割合は、幼稚園が1.8%、小学校が3.9%、中学校が2.7%、高等学校が1.9%となっている。したがって、小学校で高い。
5.× 心電図異常の割合は、高等学校より小学校の方が低い。心電図異常の割合は、高等学校が3.3%であるのに対し、小学校は2.4%である。したがって、小学校より高等学校のほうが高い。

(図引用:「小学校における疾病・異常」文部科学省HPより)

(※「令和元年度学校保健統計(学校保健統計調査報告書)の公表について」文部科学省HPより)

 

 

 

 

 

32 人口動態統計の情報を用いて算出を行う指標はどれか。2つ選べ。

1.受療率
2.婚姻率
3.生活影響率
4.年少人口指数
5.合計特殊出生率

解答2・5

解説

人口動態調査とは?

人口動態調査は、出生、死亡、婚姻、離婚および死産の全数を対象とした悉皆調査(しっかいちょうさ)、全数調査である。それらの事象(人口動態事象)を把握する調査である。

1.× 受療率は、患者調査の情報によって算出される。受療率は、調査日に医療施設で受療した推計患者数を、人口10万人に対する割合で表したものである。
2.〇 正しい。婚姻率は、人口動態統計の情報が用いられる。婚姻率は、人口千人に対する婚姻件数の割合を示したものである。
3.× 生活影響率は、国民生活基礎調査の情報によって算出される。生活影響率は、人口千人に対する健康上の問題で日常生活への影響がある者の割合である。ちなみに、国民生活基礎調査とは、国民生活の基礎的事項(保健・医療・福祉・年金・所得など)を把握するために行われる調査である。
4.× 年少人口指数は、国勢調査の情報によって算出される。年少人口指数は、年少人口(0~14歳)の生産年齢人口(15~64歳)に対する比率である。国勢調査とは、男女の別、出生の年月、就業状態、従業地または通学地、世帯員の数、住居の種類、住宅の建て方などを調べる調査である。
5.〇 正しい。合計特殊出生率は、人口動態統計の情報が用いられる。合計特殊出生率は、15歳~49歳までの女性の年齢別出生率を合計したものである。

患者調査とは?

目的:病院・診療所を利用する患者について、傷病状況の実態を明らかにする。
調査頻度:3年に1回、医療施設静態調査と同時期に実施している。
調査対象:標本調査(全国の病院、一般診療所、歯科診療所から層化無作為により抽出した医療施設の患者)
調査項目:患者の性別、出生年月日、住所、入院・外来の種別、受療の状況等。
調査方法:医療施設の管理者が記入。

(参考:「患者調査(基幹統計)」厚生労働省HPより)

 

 

 

 

33 保健行政で正しいのはどれか。2つ選べ。

1.保健行政の都道府県レベルの組織機構は一様である。
2.産業保健行政の根拠法令の1つに労働基準法がある。
3.地域保健行政は地域住民の健康の保持・増進を図る。
4.地域保健、産業保健、学校保健の3分野からなる。
5.学校保健行政の所管は厚生労働省である。

解答2・3

解説

保健行政とは?

保健行政とは、国民の健康維持・健康増進を目的とする行政上の業務のこと、および、そうした業務を執り行う行政機関ないしは公的機関のことである。日本国憲法の25条に基づいている。厚生労働省を筆頭に環境省あるいは文部科学省が管轄する機関が該当し得る。 いわゆる保健所や保健センターなどの機関が保健行政の名で言及されやすい。

 

1.× 保健行政の都道府県レベルの組織機構は、「一様」ではなく地方自治体によって異なっている。地方自治体の条例により定められている。ちなみに、一様とは「皆同じようにそろっているさま」のことをさす。
2.〇 正しい。産業保健行政の根拠法令の1つに労働基準法がある。『労働基準法』の他にも、産業保健行政の根拠法令には、『労働安全衛生法』などがある。産業保健とは、産業医学を基礎とし、働く人々の生き甲斐と労働の生産性の向上に寄与することを目的とした活動である。 職場においては産業医、保健師、衛生管理者、衛生推進者等のスタッフが活動し、職場外から労働衛生コンサルタント、作業環境測定士、健康保持増進(THP)のスタッフ等の専門家が支援する。また、労働基準法とは、労働者の生存権の保障を目的として、①労働契約や賃金、②労働時間、③休日および年次有給休暇、④災害補償、⑤就業規則といった労働者の労働条件についての最低基準を定めた法律である。
3.〇 正しい。地域保健行政は、地域住民の健康の保持・増進を図る。地域保健行政の中心となる根拠法令は『地域保健法』であり、保健所の設置や地域保健対策の推進などにより、地域住民の健康の保持と増進に寄与することを目的としている。地域保健行政とは、個々の住民の健康問題の把握にとどまらず、地域特性を踏まえて、集団に共通する地域の健康課題や地域保健関連施策を総合的に捉える視点を持った活動の実施することである。健康課題の解決に向けて住民や組織同士をつなぎ、住民の主体的な行動を促進し、住民主体の取組が持続するよう支援する。
4.× 地域保健、産業保健、学校保健、「環境保健」の「4分野」からなる。保健行政(公衆衛生行政)は、①地域保健行政(ー般衛生行政)、②産業保健行政(労働衛生行政)、③学校保健行政、④環境保健行政の4分野からなる。厚生労働省が①地域保健行政(ー般衛生行政)、②産業保健行政(労働衛生行政)を担当し、文部科学省が③学校保健行政を、環境省が④環境保健行政を担当している。①地域保健行政(ー般衛生行政)は、家庭や地域社会、母子・高齢者などが対象である。②産業保健行政(労働衛生行政)は、職場の生活や雇用労働者などが対象である。③学校保健行政はその名の通り学校生活が対象である。④環境保健行政は、公害対策、環境保全が対象である。
5.× 学校保健行政の所管は、「厚生労働省」ではなく文部科学省ある。文部科学省が③学校保健行政を担当し、その名の通り学校生活を担当する。

保健行政の役割と仕組み

【厚生労働省】
①地域保健行政(ー般衛生行政):家庭や地域社会、母子・高齢者など
②産業保健行政(労働衛生行政):職場の生活や雇用労働者など

【文部科学省】
③学校保健行政:学校生活

【環境省】
④環境保健行政:公害対策、環境保全など

 

 

 

 

 

34 医療法において医療計画に定めるものとされているのはどれか。2つ選べ。

1.緩和医療
2.救急医療
3.歯科医療
4.先進医療
5.災害時における医療

解答2・5

解説

医療法とは?

医療法とは、病院、診療所、助産院の開設、管理、整備の方法などを定める日本の法律である。①医療を受けるものの利益と保護、②良好かつ適切な医療を効率的に提供する体制確保を主目的としている。

医療計画は、地域の実情に応じて医療提供体制の確保を図るために、都道府県が策定するものである。医療計画は6年ごと(平成29年度までは5年ごと)に見直される。医療の確保に必要な①救急医療、②災害時における医療(災害医療)、③へき地医療、④周産期医療、⑤小児医療(小児救急を含む)の事業に関する事項を医療計画に定める。これは医療法30条に規定されている。

したがって、選択肢2.5 救急医療/災害時における医療が、医療法において医療計画に定めるものである。

医療法30条の4第2項5号
第二節 医療計画
第三十条の四 都道府県は、基本方針に即して、かつ、地域の実情に応じて、当該都道府県における医療提供体制の確保を図るための計画(以下「医療計画」という。)を定めるものとする。
2 医療計画においては、次に掲げる事項を定めるものとする。
一 都道府県において達成すべき第四号及び第五号の事業並びに居宅等における医療の確保の目標に関する事項
二 第四号及び第五号の事業並びに居宅等における医療の確保に係る医療連携体制(医療提供施設相互間の機能の分担及び業務の連携を確保するための体制をいう。以下同じ。)に関する事項
三 医療連携体制における医療提供施設の機能に関する情報の提供の推進に関する事項
四 生活習慣病その他の国民の健康の保持を図るために特に広範かつ継続的な医療の提供が必要と認められる疾病として厚生労働省令で定めるものの治療又は予防に係る事業に関する事項
五 次に掲げる医療の確保に必要な事業(以下「救急医療等確保事業」という。)に関する事項(ハに掲げる医療については、その確保が必要な場合に限る。)
イ 救急医療
ロ 災害時における医療
ハ へき地の医療
ニ 周産期医療
ホ 小児医療(小児救急医療を含む。)
ヘ イからホまでに掲げるもののほか、都道府県知事が当該都道府県における疾病の発生の状況等に照らして特に必要と認める医療
 
(※一部引用:「医療法」e-GOV法令検索様HPより)

 

 

 

 

35 発達障害で正しいのはどれか。2つ選べ。

1.発達障害者は障害者総合支援法のサービスを利用することができる。
2.発達障害者は精神障害者保健福祉手帳を申請することはできない。
3.発達障害の定義は発達障害者支援法に規定されている。
4.発達障害者に二次障害が出現することはない。
5.発達障害者支援センターは市町村が設置する。

解答1・3

解説

広汎性発達障害とは?

 広汎性発達障害とは、相互的な社会関係とコミュニケーションのパターンにおける質的障害、および限局した常同的で反復的な関心と活動の幅によって特徴づけられる一群をいう。現在の分類では「自閉スペクトラム症/自閉スペクトラム障害」に含まれている。

広汎性発達障害、およびその下位分類である自閉症、アスペルガー症候群、高機能自閉症は、「自閉スペクトラム症」とまとめられた。
【診断基準の要点】
①「社会及び感情の相互性の障害」「社会的相互作用で用いられる非言語的コミュニケーションの障害」「発達レベル相応の関係を築き維持することの障害」の3つがすべて込められること。
②行動、興味活動の、限局的で反復的な様式が認められること。

1.〇 正しい。発達障害者は、障害者総合支援法のサービスを利用することができる。『障害者総合支援法』において、精神障害者に発達障害者が含まれており、発達障害者は同法のサービスを利用することができる。障害者総合支援法は、2013年に障害者自立支援法から障害者総合支援法へと改正され、障害者と障害児を対象とした障害保健福祉施策についてまとめられた法律である。これにより障害者の範囲が拡大され、身体障害者、精神障害者、知的障害者、障害児の全てが対象とされている。そして、対象となっている者は、認定調査というものを受け「障害支援区分」という障害の重症度分類によって7区分(非該当、区分1~6)に分けられる。それにより受けられるサービス内容が変わってくる。
2.× 発達障害者は、精神障害者保健福祉手帳を申請することができる。精神障害者保健福祉手帳は、何らかの精神疾患(てんかん、発達障害含む)により、長期にわたり日常生活または社会生活に制約のある者を対象としている。精神障害者保健福祉手帳とは、精神障害者の自立と社会参加の促進を図ることを目的としてつくられたものである。障害者手帳は、身体障害者手帳、療育手帳、精神障害者保健福祉手帳の3種の手帳を総称した一般的な呼称であり、 制度の根拠となる法律等はそれぞれ異なる。
3.〇 正しい。発達障害の定義は、発達障害者支援法に規定されている。『発達障害者支援法』では、発達障害を「自閉症、アスペルガー症候群とその他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する障害であって、その症状が通常低年齢において発現するもの」と定義している。これは2条に規定されている。(※引用:「発達障害者支援法」e-GOV法令検索様HPより)
4.× 発達障害者に、二次障害が出現するもある。二次障害とは、発達障害などの一次障害を原因として、周囲からの理解を得づらい環境で、繰り返し注意されたり、不安な経験をしたりすることで自己肯定感が下がり、うつ病、不安障害、ひきこもり等の症状が発生している状態である。したがって、発達障害者には、障害特性による失敗や挫折を繰り返すことで、二次障害として身体症状、精神症状などが生じ、暴言・暴力、不登校、ひきこもりなどに発展することがある。
5.× 発達障害者支援センターは、市町村ではなく都道府県・指定都市が設置する。発達障害者支援センターは、発達障害者とその家族からの相談に応じ、医療・保健・福祉・教育・労働などについて総合的な支援を行う専門機関である。「発達障害者支援法」に規定されており、これは自閉症、アスペルガー症候群などの発達障害者に対する支援を規定したもので、①発達障害の早期発見、②発達支援を行うことについて、国・地方公共団体の責務等を定めている。

精神障害者保健福祉手帳とは、精神障害者の自立と社会参加の促進を図ることを目的としてつくられたものである。障害者手帳は、身体障害者手帳、療育手帳、精神障害者保健福祉手帳の3種の手帳を総称した一般的な呼称であり、 制度の根拠となる法律等はそれぞれ異なる。対象は、何らかの精神障害(てんかん、発達障害などを含む)により、長期にわたり日常生活又は社会生活への制約があるものである。ちなみに、精神障害者保健福祉手帳を取得することで、①生活の助けとなるサービス(自治体ごとに公共料金などの割引、税金の免除・減免など)や、②働くことへのサービス(障害者求人へ応募できることや就労に関する支援の対象となるなど)を受けることができる。

障害者総合支援法とは?

障害者総合支援法は、2013年に障害者自立支援法から障害者総合支援法へと改正され、障害者と障害児を対象とした障害保健福祉施策についてまとめられた法律である。これにより障害者の範囲が拡大され、身体障害者、精神障害者、知的障害者、障害児の全てが対象とされている。そして、対象となっている者は、認定調査というものを受け「障害支援区分」という障害の重症度分類によって7区分(非該当、区分1~6)に分けられる。それにより受けられるサービス内容が変わってくる。

①障害者も難病患者も自立できる社会をめざす。
②応能負担(所得に応じて自己負担額が変わること)が原則。
③あらゆる障害(身体・知的・精神+難病)についてこの法律で対応する。
④市区町村が事業の母体である。

 

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