次の文を読み41、42の問いに答えよ。
Aさん(50歳、男性)。父親(75歳)と2人暮らし。Aさんは22 歳頃から統合失調症を発症し、精神科病院に入院した。30歳代で退院した後は精神障害者手帳2級を取得し、月1回通院を継続しながら生活できていた。
ある日、父親から保健センターに電話があり「妻が1か月前に急死した。ようやく家は落ち着いてきたが、Aがこの頃落ち着かない様子である。今までは妻がAの世話をしていたので、これからどうすればよいか困っている」との相談があった。
41 相談の翌朝、保健センターの地区担当保健師が家庭訪問した。Aさんは血色がよく体型は標準的であったが、入浴をしていないような強い臭気がした。また終始イライラした様子で笑顔は少なく、落ち着きなく部屋を歩き回っていた。父親は「Aの薬は妻が管理していた。妻が亡くなってからAの状態は悪くなっていると思う」と話した。Aさんの薬袋を保健師が確認すると、予定残数以上の内服薬が出てきた。
保健師がAさんの状況を確認する内容で、最も優先度が高いのはどれか。
1.服薬
2.清潔
3.睡眠
4.食事
解答1
解説
・Aさん(50歳、男性、22歳頃から統合失調症)。
・2人暮らし:父親(75歳)。
・30歳代で退院した後:精神障害者手帳2級(仕事を含めた日常生活に著しく大きな制限)、月1回通院を継続。
・父親から「妻が1か月前に急死。Aがこの頃落ち着かない様子である。今までは妻がAの世話をしていたので、これからどうすればよいか困っている」。
・相談の翌朝:家庭訪問。
・Aさん:血色がよく体型は標準的であったが、入浴をしていないような強い臭気。
・終始イライラした様子で笑顔は少なく、落ち着きなく部屋を歩き回っていた。
・父親は「Aの薬は妻が管理。妻が亡くなってからAの状態は悪くなっていると思う」。
・Aさんの薬袋は、予定残数以上の内服薬が出てきた。
→本症例は、母が亡くなり内服管理ができず、統合失調症の前兆期(再燃)がみられている。この時期は、強い異臭がしても入浴を促すのではなく、無理をしないことが重要になる。統合失調症の再燃の原因は、内服薬の可能性が高いため、評価項目としては優先度が高い。
1.〇 正しい。服薬は、最も優先度が高い。なぜなら、Aさんの薬袋から予定残数以上の内服薬が出てきたため。これが原因で統合失調症の悪化が疑われる。これまで服薬管理は、Aさんの母が行っており、予定残数以上の内服薬があったという情報から、確実に内服できていないことが病状悪化に影響している。
2~4.× 清潔/睡眠/食事より優先度が高い選択肢がほかにある。本症例は、母が亡くなり内服管理ができず、統合失調症の前兆期(再燃)がみられている。この時期は、強い異臭がしても入浴を促すのではなく、無理をしないことが重要になる。生活な簡単な周辺処理の活動を促すのは、急性期~消耗期に該当する。また、食事に関しては、血色がよく標準的な体形とっており、脱水や栄養不良の状態にあるとは考えにくい。
統合失調症とは、幻覚・妄想・まとまりのない発語および行動・感情の平板化・認知障害ならびに職業的および社会的機能障害を特徴とする。原因は不明であるが、遺伝的および環境的要因を示唆する強固なエビデンスがある。好発年齢は、青年期に始まる。治療は薬物療法・認知療法・心理社会的リハビリテーションを行う。早期発見および早期治療が長期的機能の改善につながる。統合失調症患者の約80%は、生涯のある時点で、1回以上うつ病のエピソードを経験する。統合失調症患者の約5~6%が自殺し,約20%で自殺企図がみられる。したがって、うつ症状にも配慮して、工程がはっきりしたものや安全で受け身的で非競争的なものであるリハビリを提供する必要がある。
(※参考:「統合失調症」MSDマニュアル様HPより)
次の文を読み41、42の問いに答えよ。
Aさん(50歳、男性)。父親(75歳)と2人暮らし。Aさんは22 歳頃から統合失調症を発症し、精神科病院に入院した。30歳代で退院した後は精神障害者手帳2級を取得し、月1回通院を継続しながら生活できていた。
ある日、父親から保健センターに電話があり「妻が1か月前に急死した。ようやく家は落ち着いてきたが、Aがこの頃落ち着かない様子である。今までは妻がAの世話をしていたので、これからどうすればよいか困っている」との相談があった。
42 3日後、Aさんと父親の様子を見るために保健師は再度家庭訪問を行った。家庭訪問時、父親がAさんに対して「なんでできないんだ」と叱責している場面がみられた。父親は「Aの病気についてはよく知らない。自分もイライラするし、どうしたらよいのかわからない」と困った様子で保健師に話した。
地区担当保健師がこの時に行う支援で最も適切なのはどれか。
1.父親に息抜きの時間を持つことを勧める。
2.Aさんの地域生活支援事業の利用を勧める。
3.父親に精神障害者の家族会への参加を勧める。
4.Aさんの受診に父親と保健師が同行することを提案する。
解答4
解説
・3日後:再度家庭訪問。
・家庭訪問時:父親がAさんに「なんでできないんだ」と叱責している。
・父親「Aの病気についてはよく知らない。自分もイライラするし、どうしたらよいのかわからない」と困っていた。
→父親は、「Aさんの病気の知識がない」から、「叱責やイライラしている」ことがわかる。父親自身でもどうしたらよいかわからないとのため、どこに行けば病気の知識を得られるか?どのように対応すればよいか?専門的に教えてくれる施設を提案する。
1.× 父親に息抜きの時間を持つことを勧める必要はない。なぜなら、息抜きをしても根本的な問題解決にはならないため。父親の主訴は、「Aさんの病気の知識がない」から、「叱責やイライラしている」ことである。息抜きをしても「イライラ」は解決するかもしれないが、病気の知識は得られない。
2.× Aさんの地域生活支援事業の利用を勧める必要はない。なぜなら、地域生活支援事業を利用しても根本的な問題解決にはならないため。地域生活支援事業は、精神障害者本人が自立した日常生活または社会生活を営むことができるように支援するものである。
3.× 父親に精神障害者の家族会への参加を勧める必要はない。なぜなら、家族会へ参加しても根本的な問題解決にはならないため。家族会とは、精神障害者(例えば、アルコール依存症など)を家族にもつ人たちが、お互いに悩みを分かちあい、共有し、連携することでお互いに支えあう会である。 支えあいを通して、地域で安心して生活できるための活動を行っている。一方的に講談するのではなく、それぞれが相互的に話し合う会である。精神障害には様々な種類があるため、家族会へ参加すれば必ずしも「統合失調症」の知識を得られるとは言い切れない。また、本症例は、3日前の訪問時点で確実な内服ができておらず、病状は不安定である。より専門的に教えてくれる施設のほうが優先度は高い。
4.〇 正しい。Aさんの受診に父親と保健師が同行することを提案する。なぜなら、保健師が同伴することで、父親が主治医から、Aさんの病気に対する正しい知識や対応方法について説明を受けられるため。また、主治医側にも、家庭の状況を的確に伝えることができる。
次の文を読み43、44の問いに答えよ。
A町は人口7,000人、高齢化率45%、高齢者のうち独居者の割合35%である。町には急な坂が多く、公共交通機関はバスのみで運行本数は少ない。このため、A町に住む高齢者は食品や日用品など日々の買い物に不便を感じている。
43 A町の保健師は、独居高齢者の状況について情報収集を行うことにした。
収集する情報で優先度が高いのはどれか。
1.特定健康診査の結果
2.A町国民健康保険の医療給付内容
3.要介護認定者の介護サービスの利用状況
4.基本チェックリストによる生活機能の確認の結果
解答4
解説
・A町:人口7,000人、高齢化率45%、独居者割合35%。
・急な坂が多く、公共交通機関はバスのみで運行本数は少ない。
・食品や日用品など日々の買い物に不便。
・独居高齢者の状況について情報収集を行うことにした。
→買い物に不便を感じている原因として、①急な坂が多く、②公共交通機関はバスのみで運行本数は少ないことがあげられる。したがって、買い物(外出)などの手段的日常生活動作(IADL)に関する評価が必要である。
1.× 特定健康診査の結果は優先度が低い。特定健康診査とは、40~74歳までの医療保険加入者を対象に実施されるものである。特定健診で行う検査は、主に①身体計測(身長・体重・BMI・腹囲)、②血中脂質検査(中性脂肪・HDLコレステロール・LDLコレステロール)、③肝機能検査(GOT・GPT・γ-GTP)、④血糖検査(空腹時血糖・HbA1c)、⑤尿検査(尿糖・尿蛋白)などである。メタボリックシンドロームに着目した健康診査である。
2.× A町国民健康保険の医療給付内容は優先度が低い。国民健康保険の医療給付内容は、医療機関の受診の状況が把握できる。ちなみに、国民健康保険とは、病気やケガで医療機関や薬局を受診する場合に、「国民健康保険証」を窓口に提示することで医療費の一定の割合を国民健康保険が負担できる。国民健康保険の加入者は、職場の健康保険(協会けんぽ、健康保険組合、共済組合)の加入者、75歳以上等で後期高齢者医療制度の加入者および生活保護を受けている人以外の方となる。
3.× 要介護認定者の介護サービスの利用状況は優先度が低い。要介護認定者の介護サービスの利用状況を調べても、「現在、介護サービスを利用している人の情報」が把握できるのみである。要介護認定を受けていない独居高齢者の情報は把握できないため不適切である。
4.〇 正しい。基本チェックリストによる生活機能の確認の結果は優先度が高い。基本チェックリストは、日常的な買い物や公共交通機関の利用など、A町の高齢者のIADLに関する情報が収集できる。A町の高齢者は買い物に不便さを感じており、まずは買い物など外出に関する情報を収集する必要がある。
次の文を読み43、44の問いに答えよ。
A町は人口7,000人、高齢化率45%、高齢者のうち独居者の割合35%である。町には急な坂が多く、公共交通機関はバスのみで運行本数は少ない。このため、A 町に住む高齢者は食品や日用品など日々の買い物に不便を感じている。
44 保健師が高齢者を対象に日常生活の不便さと生活に関するアンケートを実施した結果、食事回数が1日2回と回答した割合が、独居高齢者では50%、同居者がいる高齢者では30% であった。
独居高齢者の食事回数が1日2回であることに対する寄与危険はどれか。
1.0.2
2.0.6
3.1.67
4.2.33
解答1
解説
・食事回数が1日2回と回答した割合:独居高齢者50%、同居者がいる高齢者30%。
→寄与危険とは、曝露群と非曝露群の疾病発症リスクの差のことである。「曝露因子があるとどれだけ危険度が増すか」を示す。何らかの介入を行った場合にどれだけの人が疾病を予防できるかが予測できるため、健康政策を進めるうえで重要な指標となる。
独居を曝露因子と考えると独居群(曝露群)の食事回数が1日2回になっている率は0.5(50%)、独居でない群(非曝露群)の食事が1日2回になっている率は0.3(30%)であるから、寄与危険は、0.5-0.3=0.2となる。したがって、選択肢1.0.2が正しい。
曝露群と非曝露群の疾病発症リスクの差のこと。「曝露因子があるとどれだけ危険度が増すか」を示す。何らかの介入を行った場合にどれだけの人が疾病を予防できるかが予測できるため、健康政策を進めるうえで重要な指標となる。
次の文を読み45、46の問いに答えよ。
Aちゃん(5歳、男児、第1子)。1歳6か月児健康診査で言葉の遅れ及びこだわりを指摘され、2歳6か月の時に、専門外来にて自閉症スペクトラム障害(ASD)と診断された。現在、療育手帳を取得し、保育所へ通いながら児童発達支援センターの療育に週2日通っている。地区担当保健師は1歳6か月児健康診査後から関わっており、母親からの相談に対応している。
45 母親が保健センターを訪れ、地区担当保健師に「Aの就学先について悩んでいます。児童発達支援センターの先生には特別支援学校を勧められていますが、できれば地域の公立小学校に通わせたいと思っています。どちらがAのために良いのでしょうか」と相談があった。
このときの母親への対応で最も適切なのはどれか。
1.児童発達支援センターの先生と再度話し合うことを勧める。
2.母親が地域の公立小学校に通わせたい理由を確認する。
3.保健師から主治医の意見を確認すると説明する。
4.児童相談所へ相談することを提案する。
解答2
解説
・Aちゃん(5歳、男児、第1子)。
・1歳6か月:言葉の遅れ及びこだわりを指摘され、
・2歳6か月:自閉症スペクトラム障害(ASD)と診断。
・現在:療育手帳を取得し、保育所へ通いながら児童発達支援センターの療育に週2日通っている。
・母親「Aの就学先について悩んでいます。児童発達支援センターの先生には特別支援学校を勧められていますが、できれば地域の公立小学校に通わせたいと思っています。どちらがAのために良いのでしょうか」と相談があった。
→母親は、就学先を悩んでいる。「できれば地域の公立小学校に通わせたい」という気持ちはなぜだろうか?共感や傾聴しながら、母親のメンタルケアを踏まえて支援していく。ちなみに、自閉症スペクトラム障害とは、正常な社会的関係を構築することができず、言葉の使い方に異常がみられるか、まったく言葉を使おうとせず、強迫的な行動や儀式的な行動がみられる病気である。 自閉スペクトラム症の患者は、他者とコミュニケーションをとったり関係をもったりすることが苦手である特徴を持つ。
1.× 児童発達支援センターの先生と再度話し合うことを勧める必要はない。なぜなら、児童発達支援センターにはすでに相談し、特別支援学校を勧められているため。ちなみに、児童発達支援センターの役割は、「児童発達支援を行うほか、施設の有する専門性を活かし、地域の障害児やその家族への相談、障害児を預かる家族への援助・助言を合わせて行う地域の中核的な療育支援施設」とされ、第二期障害児福祉計画の基本指針においても、① 「障害の重度化・重複化や多様化に対応する専門的機能の強化」を図った上で、② 「地域における中核的な支援施設」として、一般の「事業所と密接な連携」を図るものとされている。(※参考:「児童発達支援センターの位置づけについて」厚生労働省HPより)
2.〇 正しい。母親が地域の公立小学校に通わせたい理由を確認する。設問からは、母親は、就学先を悩んでいることが読み取れる。「できれば地域の公立小学校に通わせたい」と希望しているが、「なぜか?」その理由が不明である。まずはその理由を確認し、保健師が母親の思いを把握することが重要である。
3.× 保健師から主治医の意見を確認すると説明する必要はない。なぜなら、母親から「主治医の意見」を聞くことの希望は聞かれていないため。「どちらがAのために良いのでしょうか」と保健師に聴いている。まずは、母親の思いを傾聴することが優先する。しかし、優先度は高くないが、意見の一つとして主治医に聴くことも就学先を決める判断材料の一つである。
4.× 児童相談所へ相談することを提案する必要はない。児童相談所とは、18歳未満の子どもに関する相談や障害の判定などを行うところである。以下、下にまとめたので参考にしてほしい。
児童相談所は、「児童福祉法」に基づいて設置される行政機関であり、都道府県、指定都市で必置となっている。原則18歳未満の子供に関する相談や通告について、子供本人・家族・学校の先生・地域の方々など、どなたからも受け付けている。児童相談所は、すべての子供が心身ともに健やかに育ち、その持てる力を最大限に発揮できるように家族等を援助し、ともに考え、問題を解決していく専門の相談機関である。
職員:児童福祉司、児童心理司、医師または保健師、弁護士 等。所長は、医師で一定の者、大学等で心理学を専修する学科を卒業した者、社会福祉士、児童福祉司で一定の者 等。
【業務内容】
①助言指導
②児童の一時保護
③児童福祉施設等への入所措置
④児童の安全確保
⑤里親に関する業務
⑥養子縁組に関する相談・支援
(参考:「児童相談所とは」東京都児童相談センター・児童相談所様HPより)