第105回(H31) 保健師国家試験 解説【午前46~50】

 

次の文を読み44〜46の問いに答えよ。
 人口10万人のA市では、脳血管疾患の死亡割合が全国と比較して大きいことが明らかになった。そこで、脳血管疾患の予防対策の一環として血圧に注目し、一部の市民を対象とした塩分摂取量の把握のための聞き取りによる食事調査を行うこととした。

46 調査の結果、全国と比較して塩分摂取量が多く、さらに塩分摂取量が多い対象者の血圧は、塩分摂取量が少ない対象者と比較して高いことが分かった。調査結果を表に示す。

高血圧に関して「塩分摂取量が多い」の「塩分摂取量が少ない」に対するオッズ比を求めよ。
ただし、小数点以下第2位を四捨五入すること。
解答: ① .②
 ①:0~9
 ②:0~9

解答17

解説

オッズ比とは?

オッズ比とは、症例群と対照群の事象の起こりやすさ(オッズ)の比をとったものである。つまり、「ある事象が起こる確率を起こらない確率で割ったもの」である。オッズが大きいほどその事象は起こりやすく、小さいほどその事象が起こりにくい。「1より大きいどうか」が目安となる。

したがって、本問題の場合では、高血圧ありの人(症例群)と高血圧なしの人(対照群)のオッズ比を計算する。

①症例群:高血圧ありの人で、塩分摂取量が多い/少ないのオッズ

= 80/20

②対照群:高血圧なしの人で、塩分摂取量が多い/少ない人のオッズ

= 70/30

 

オッズ比 = ①【高血圧ありの人で、塩分摂取量が多い/少ないのオッズ】÷ ②【高血圧なしの人で、塩分摂取量が多い/少ないのオッズ】

= 【80/20】÷【70/30】

=4 ÷ 2.33…

1.71…

 

 

 

 

 

次の文を読み47〜49の問いに答えよ。
 平成26年(2014年)の医療法改正に伴い、A 県は平成28年度(2016年度)の第6次医療計画に地域医療構想を追記した。A 県および構想区域B、Cについて、厚生労働省の示す地域医療構想策定ガイドラインにより推計された2025年の必要病床数推計値を表に示す。

47 A県および構想区域B、C の2025年の必要病床数推計値の説明で正しいのはどれか。

1.A県全体での急性期の必要病床数推計値の割合は全国の値より低い。
2.構想区域Cの回復期の必要病床数推計値の割合はA県全体より低い。
3.構想区域B及びCの慢性期の必要病床数推計値の割合は同じである。
4.構想区域Bの高度急性期の必要病床数推計値はA県の5割を占めている。

解答

解説

ポイント

・A 県:第6次医療計画に地域医療構想を追記した。
→地域医療構想とは、構想区域ごとに平成37(2025)年の医療需要病床の必要量を推計し、目指すべき医療提供体制を実現するための具体的な施策を定めるものである。本設問に関しては、表から、正確な数値を読み取ることができれば正解となる。

1.× A県全体での急性期の必要病床数推計値の割合は、全国の値より「低い」のではなく高い。県全体の急性期の必要病床数推計値の割合は、「35.9%」である。全国の割合は、「33.7%」である。
2.× 構想区域Cの回復期の必要病床数推計値の割合は、A県全体より「低い」のではなく高い。構想区域Cの回復期の必要病床数推計値の割合は、「31.8%」である。A県全体の割合は、「29.7%」である。
3.× 構想区域B及びCの慢性期の必要病床数推計値の割合は、同じではない。構想区域Bの慢性期の必要病床数推計値の割合は、「20.6%」である。構想区域Cの割合は、「27.3%」である。
4.〇 正しい。構想区域Bの高度急性期の必要病床数推計値は、A県の5割を占めている。構想区域Bの高度急性期の必要病床数推計値は、「650床」である。A県全体では「1210床」であるため、ほぼ5割を占める。

 

 




 

 

次の文を読み47〜49の問いに答えよ。
 平成26年(2014年)の医療法改正に伴い、A 県は平成28年度(2016年度)の第6次医療計画に地域医療構想を追記した。A 県および構想区域B、Cについて、厚生労働省の示す地域医療構想策定ガイドラインにより推計された2025年の必要病床数推計値を表に示す。

48 構想区域Cを所管する保健所では、必要病床数推計値に地域の実情を反映するために、管内の市町村と協働して18歳から64歳までの住民を無作為抽出し、独自に調査票送付によるアンケートを行うことにした。
 アンケートの質問項目で優先度が高いのはどれか。

1.よく利用する医療機関の所在地
2.利用したい介護保険事業所のサービス
3.地域に不足していると感じる医療機能
4.緊急時に受診したい医療機関の所在地

解答

解説

MEMO

構想区域Cを所管する保健所
・【目的】必要病床数推計値に地域の実情を反映する。
・【方法】管内の市町村と協働して18歳から64歳までの住民を無作為抽出し、独自に調査票送付によるアンケートを行う。
→必要病床数推計値に地域の実情を反映する質問 = 選択肢3「地域に不足していると感じる医療機能」と結び付けられるかがポイントである。地域の実情を反映するうえで、住民が不足していると感じる医療機能を把握することが望ましい。したがって、選択肢3.地域に不足していると感じる医療機能は、アンケートの質問項目で優先度が高い

1.4.× よく利用する医療機関の所在地/緊急時に受診したい医療機関の所在地は、アンケートの質問項目で優先度が低い。なぜなら、所在地はインターネットや資料を調べられるためあえて所在地を記載する必要はない。ちなみに、所在地とは、人・物・建物などがある場所のことであり、特に不動産や事業所などが存在する場所を意味する表現である。よく利用する医療機関と所在地の関係は、医療機関や選択肢3「地域に不足していると感じる医療機能」を聞いた後に調べる。
2.× 利用したい介護保険事業所のサービスは、アンケートの質問項目で優先度が低い。なぜなら、今回のアンケートの目的は、必要病床数推計値に地域の実情を反映するためである。つまり、医療機関に関する地域の実情を把握するための調査である。利用したい介護保険事業所のサービスを聞いても、調査の目的に沿った情報は得られない。ちなみに、介護保険事業所のサービスは、介護保険にて利用できるサービスであり、要支援1~2、要介護1~5の介護認定を受けた方が利用できるサービスである。

地域医療構想とは?

地域医療構想は、構想区域ごとに平成37(2025)年の医療需要病床の必要量を推計し、目指すべき医療提供体制を実現するための具体的な施策を定めるものである。

 

 

 

 

 

次の文を読み47〜49の問いに答えよ。
 平成26年(2014年)の医療法改正に伴い、A 県は平成28年度(2016年度)の第6次医療計画に地域医療構想を追記した。A 県および構想区域B、Cについて、厚生労働省の示す地域医療構想策定ガイドラインにより推計された2025年の必要病床数推計値を表に示す。

49 構想区域Cを所管する保健所の保健師は、地域医療構想に基づく切れ目のない在宅医療と介護の提供体制の構築を、実際にどのように行っていくかについて、市町村の保健師と話し合いを行うことにした。
 初回に検討する内容で優先度が高いのはどれか。

1.A県の第6次医療計画
2.市町村ごとの入院患者の状況
3.2025年の医療機能別の必要病床数推計値(全国ベース)
4.市町村ごとの介護給付における居宅サービスの利用状況

解答

解説

ポイント

・構想区域Cを所管する保健所の保健師:「地域医療構想に基づく切れ目のない在宅医療と介護の提供体制の構築
・市町村の保健師と話し合い:「実際にどのように行っていくか?」
→地域医療構想における平成37(2025)年の構想区域Cの必要病床数推計はすでに提示されており、これらを実現するため、具体的にどのように提供体制を構築していくかを話し合う初回の会議である。

1.× A県の第6次医療計画は、初回に検討する内容としては優先度が低い。なぜなら、設問文には、「平成26年(2014年)の医療法改正に伴い、A 県は平成28年度(2016年度)の第6次医療計画に地域医療構想を追記した」となっているため。医療計画とは、各都道府県が、地域の実情に応じて、当該都道府県における医療提供体制の確保を図るために策定のことである。「地域医療構想に基づく切れ目のない在宅医療と介護の提供体制の構築」の基礎資料として活用はできるが、「実際にどのように行っていくか?」という話し合いには不適である。
2.〇 正しい。市町村ごとの入院患者の状況は、初回に検討する内容として優先度が高い。なぜなら、「地域医療構想に基づく切れ目のない在宅医療と介護の提供体制の構築」には、まず市町村ごとの入院患者の状況を確認することで、現在の課題が検討でき、今後の方向性の目安となる。市町村ごとの入院患者の状況は、特定健診等情報データベースのレセプトデータなどをもとに調べることが可能である。なぜ退院できないのか?在宅での医療もしくは介護の環境がないのか?など調べる必要がある。
3.× 2025年の医療機能別の必要病床数推計値(全国ベース)は、初回に検討する内容としては優先度が低い。なぜなら、設問は構想区域Cの体制を構築するための話し合いであるため。全国ベースの必要病床数推計値と比較したとしても、構想区域Cには構想区域Cの個別な問題も見られるため「地域医療構想に基づく切れ目のない在宅医療と介護の提供体制の構築」の具体策までの話には至りにくい。
4.× 市町村ごとの介護給付における居宅サービスの利用状況は、初回に検討する内容としては優先度が低い。なぜなら、市町村ごとの介護状況は、「構想区域C」に結びつきにくいため。居宅サービスの利用状況は、「地域医療構想に基づく切れ目のない在宅医療と介護の提供体制の構築」を目的として、初回に検討する内容で優先度が高いが、市町村ごとではなく区域ごとの介護給付における居宅サービスの利用状況を初回に検討する。ちなみに、居宅サービスとは、自宅で生活する人を対象とした介護保険の介護サービス全般のことをいう。利用者は要介護2以下が7割を占めているというデータもあり、その割合は年々増加傾向となっている。

市区町村の違い

区:人口80万人以上
政令指定都市:人口50万人以上
中核市:人口20万人以上
市:人口5万人以上
町:人口8千人以上
村:人口8千人未満

 

 




 

 

次の文を読み50、51の問いに答えよ。
 Aちゃん(3歳1か月、男児)。身長49cm、体重3,100g で出生した。市の3歳児健康診査に母親と来所した。自記式の問診票では、目・耳に関する特記事項はなく、相談したいことの欄には「昼間のおむつは取れたが、時々おしっこは失敗することがある」と記入されていた。生後11か月時に、鼠径ヘルニアによる手術の既往がある。今回の計測の結果は、身長90cm、体重11kgであった。過去の健康診査結果では、4か月児健康診査、1歳6か月児健康診査とも特記すべき事項はなかった。

50 問診時、Aちゃんに対するアセスメント項目で最も優先度が高いのはどれか。

1.体重
2.排泄
3.聴力
4.外科的疾患の既往

解答

解説

本症例のポイント

・Aちゃん(3歳1か月、男児)
・出生:身長49cm、体重3,100g
【3歳児健康診査】
・自記式の問診票:目・耳に関する特記事項はなく、相談したいことの欄には「昼間のおむつは取れたが、時々おしっこは失敗することがある」
・生後11か月時:鼠径ヘルニア手術後。
・計測の結果:身長90cm、体重11kg
・4か月/1歳6か月児健康診査とも特記すべき事項なし。
→本症例の体重は「11㎏」と平均より少ない

1.〇 正しい。体重は、最も優先度が高い。3歳1か月(乳幼児期)の体型や栄養状態を判定するための指数として「カウプ指数」がある。身長49cm、体重11kgのAちゃんのカウプ指数を計算すると「13.6」である。13~15未満は、「やせぎみ」であり、出生時の体重が3100gで正常出生体重児であることを考えても、アセスメント項目として優先度が高い。
2.× 排泄の優先度は低い。なぜなら、3歳1か月において「昼間のおむつはとれたが、時々おしっこは失敗する」のは、この年齢の子どもに、通常起こり得ることであるため。
3.× 聴力の優先度は低い。なぜなら、4か月児、1歳6か月児健康診査ともに特記事項なく、自記式の問診票でも耳に関する特記事項はないため。
4.× 外科的疾患の既往の優先度は低い。なぜなら、生後11か月時に鼠径ヘルニアによる手術の既往はあるが、1歳6か月児健康診査時に特記事項はなく、母親から関連する訴えもないため。

カウプ指数とは?

カウプ指数とは、生後3か月から5歳までの乳幼児に対して、肥満や、やせなど発育の程度を表す指数である。 成人で使用されるBMIと同じ計算法であるが判定基準が異なる。 カウプ指数の正常値はおおよそ15~19とされており、それ以上を肥満、以下をやせと判定する。

体重(g)÷【身長(cm)の二乗】× 10

15≦標準値<19

 

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