次の文を読み50、51の問いに答えよ。
Aちゃん(3歳1か月、男児)。身長49cm、体重3,100g で出生した。市の3歳児健康診査に母親と来所した。自記式の問診票では、目・耳に関する特記事項はなく、相談したいことの欄には「昼間のおむつは取れたが、時々おしっこは失敗することがある」と記入されていた。生後11か月時に、鼠径ヘルニアによる手術の既往がある。今回の計測の結果は、身長90cm、体重11kgであった。過去の健康診査結果では、4か月児健康診査、1歳6か月児健康診査とも特記すべき事項はなかった。
51 問診の場面で、母親は「Aは友達と活発に遊び、食欲も旺盛でとても元気です」と話した。Aちゃんは机の上に置いてある紙や鉛筆に興味を示し、保健師と母親を交互に見ていた。
Aちゃんの発達を評価するために、保健師がAちゃんに直接行う質問として適切なのはどれか。2つ選べ。
1.「お口はどこですか」
2.「お名前はなんですか」
3.「この絵の中で犬はどれですか」
4.「昨日は何をして遊びましたか」
5.「2つの丸のうち大きいのはどちらですか」
解答2・5
解説
・問診の場面:母親は「Aは友達と活発に遊び、食欲も旺盛でとても元気です」。
・Aちゃん:机の上に置いてある紙や鉛筆に興味を示し、保健師と母親を交互に見ていた。
→Aちゃんの発達を評価するための質問は、Aちゃんの3歳1か月を考慮し3歳ごろに獲得できる質問を選択するのが良い。3歳ごろは、①自分の名前を言う。②簡単な文章を話す。③指示に従う。④物の大小や長短、色を区別できる。⑤箸を持って食べる。⑥手を洗う。⑦ままごとやごっこ遊びをする特徴を持つ。
1.3.× 「お口はどこですか」、「この絵の中で犬はどれですか」は、不適切である。なぜなら、これら獲得可能年齢は1歳6か月頃であるため。3歳児の発達を評価する質問としては適切ではない。
2.〇 正しい。「お名前はなんですか」は、適切である。なぜなら、自分の名前が言えるようになるのは3歳頃であるため。3歳児健康診査の発達を評価する。
4.× 「昨日は何をして遊びましたか」は、不適切である。なぜなら、昨日などの時間の概念を理解できるのは5歳頃であるため。3歳児の発達を評価する質問としては適切ではない。
5.〇 正しい。「2つの丸のうち大きいのはどちらですか」は、適切である。なぜなら、大小の区別がつくようになるのは3歳頃であるため。3歳児健康診査の発達を評価する。
【1歳6か月】
・コップで水を飲む。
・スプーンを使って食べようとする。
・積み木を2~3個積むことができる。
・意味のある言葉を2~3語話す(パパ, ママ, ブーブー)。
・簡単な指示に従うことができる(おいで、○○をとって)。
・離乳が完了する。
【3歳】
・自分の名前を言う。
・簡単な文章を話す。
・指示に従う。
・物の大小や長短、色を区別できる。
・箸を持って食べる。
・手を洗う。
・ままごとやごっこ遊びをする。
次の文を読み52、53の問いに答えよ。
人口8万人のA市。定年が近い世代が多く居住しており、高齢化率は25%、要介護認定率17%、夜間人口が昼間人口に比べて高い。平成28年(2016年)の特定健康診査の実施率は45%、特定保健指導の対象者割合は20%であり、対象者には中性脂肪高値、次いで空腹時血糖高値を示す人が多い。特定保健指導対象者は増加傾向であるが、終了者はむしろ減少している。そこで、次年度から生活習慣病の重症化予防を目標に掲げ、重点的に取り組む計画である。
52 A市の状況から、生活習慣病の重症化予防対策を行う集団で最も優先度が高いのはどれか。
1.特定健康診査の受診者
2.特定健康診査の未受診者
3.特定健康診査の有所見者
4.特定保健指導の対象者
5.特定保健指導の未終了者
解答5
解説
・A市:高齢化率25%、要介護認定率17%、夜間人口が昼間人口に比べて高い。
・平成28年(2016年)の特定健康診査の実施率45%、特定保健指導の対象者割合20%。
・対象者:中性脂肪高値、次いで空腹時血糖高値を示す人が多い。
・特定保健指導対象者は増加傾向であるが、終了者はむしろ減少している。
・次年度から目標:生活習慣病の重症化予防
→受診者、未受診者、有所見者、対象者、未終了者の用語の違いをしっかり把握する必要がある。ちなみに、特定保健指導とは予備群や軽症でまだお薬を必要としない人に対してもしっかり働きかけ、生活習慣病にならないようなしくみである。
1.× 特定健康診査の受診者は、優先度は低い。なぜなら、特定健康診査の受診者は、特定健康診査を受けたもの全員を指すため。したがって、特定健康診査の受診者は、重症化に移行しやすいハイリスク者とそうでない者が混在している集団である。
2.× 特定健康診査の未受診者は、優先度は低い。特定健康診査の未受診者とは、その名の通り特定健康診査を受けていない者を指す。したがって、特定健康診査の受診者は、重症化に移行しやすいハイリスク者とそうでない者(幼児や児童)が混在している集団である。特定保健指導とは、予備群や軽症でまだお薬を必要としない人に対してもしっかり働きかけ、生活習慣病にならないようなしくみである。
3.× 特定健康診査の有所見者は、優先度は低い。特定健康診査の有所見とは、健康診断を受診した労働者のうち異常の所見のあるものを指す。ただし、有所見者すべてが重症化に移行しやすいハイリスク者ではないため、選択肢5と比較すると優先度は低い。
4.× 特定保健指導の対象者は、優先度は低い。対象者とは、ある物事において、対象になる人を指す表現であり、調査対象となり調査を受ける側の人のことである。特定保健指導を受ければ受診者であり、受ける必要がないもしくは受けなければ未受診者である。特定保健指導を受ける前の対象となる人を対象者と呼ぶ。
5.〇 正しい。特定保健指導の未終了者は、優先度は高い。なぜなら、特定保健指導の未終了者は、生活習慣改善や治療を途中で放棄した可能性などハイリスク者が高いため。ちなみに、未終了とは、ある物事をまだ完全に終えていないこと、またその状態を意味する語である。
次の文を読み52、53の問いに答えよ。
人口8万人のA市。定年が近い世代が多く居住しており、高齢化率は25%、要介護認定率17%、夜間人口が昼間人口に比べて高い。平成28年(2016年)の特定健康診査の実施率は45%、特定保健指導の対象者割合は20%であり、対象者には中性脂肪高値、次いで空腹時血糖高値を示す人が多い。特定保健指導対象者は増加傾向であるが、終了者はむしろ減少している。そこで、次年度から生活習慣病の重症化予防を目標に掲げ、重点的に取り組む計画である。
53 A市では年々医療費が増大傾向にある。そのことを踏まえて、次年度から5か年の目標を設定し、生活習慣病の重症化予防のための事業計画を立案することになった。
目標として設定する指標で最も優先されるのはどれか。
1.人工透析の新規導入者数
2.定期的に運動する人の数
3.特定健康診査受診者数
4.がんによる死亡者数
5.要介護認定者数
解答1
解説
・A市:年々医療費が増大傾向。
・次年度から5か年の目標:「生活習慣病の重症化予防のための事業計画」を立案
→A市の問題でもある「年々医療費が増大傾向」にあることと5か年の目標「生活習慣病の重症化予防」を有効に改善できることが重要である。
1.〇 正しい。人工透析の新規導入者数を目標として設定する指標で最も優先される。なぜなら、人工透析の1ヶ月の透析治療の医療費は、患者一人につき外来血液透析では約40万円、腹膜透析(CAPD)では30~50万円程度が必要といわれていますため。このように透析治療の医療費は高額であるが、医療費の公的助成制度が確立されている。つまり言い換えると人工透析は、医療費の増大に大きな影響を与えている。人工透析の新規導入者数を設定することで、A市の問題でもある「年々医療費が増大傾向」にあることと5か年の目標「生活習慣病の重症化予防」を有効に改善できる。また、健康日本21(第二次)においても、医療費増大に最も影響がある人工透析の新規導入患者数の減少が目標に設定され、糖尿病性腎症重症化予防プログラムなどが推進されている。
2~5.× 定期的に運動する人の数/特定健康診査受診者数/がんによる死亡者数/要介護認定者数は、医療費が増大傾向に対する目標として設定する指標での優先度は低い。ちなみに、健康日本21(第二次)において、「75歳未満の」がんによる死亡者数の減少の記載がある。【※厚生労働省HPより:国民の健康の増進の総合的な推進を図るための基本的な方針】
日本における健康対策の現状や第三次国民健康づくり対策(健康日
(※参考:「健康日本21(第二次)」厚生労働省HPより)
次の文を読み54、55の問いに答えよ。
Aさん(62歳、女性)。夫(67歳)と次男夫婦(ともに30代、会社員)の4人暮らしである。起立時にふらつきが見られたため、専門病院を受診したところ、脊髄小脳変性症と診断された。難病の医療費助成の申請書が保健所に届き、保健師は家庭訪問を実施した。Aさんは起立時にふらつくことはあるが、日常生活動作(ADL)は自立、専門病院に月1回、一人で受診している。既往歴に特記すべきことはない。脊髄小脳変性症については医師より病名の告知、説明は受けている。Aさんは料理が好きで、食事の準備はAさんが行っている。
54 現時点で、保健師が行うAさんの支援で適切なのはどれか。
1.嚥下訓練の導入を計画する。
2.コミュニケーション手段を確立する。
3.料理が継続できるよう環境を整える。
4.訪問看護を導入し、ケア体制を整える。
解答3
解説
・Aさん(62歳、女性、脊髄小脳変性症)
・4人暮らし:夫(67歳)、次男夫婦(ともに30代、会社員)
・難病の医療費助成の申請書が保健所に届き、保健師は家庭訪問を実施。
・起立時:ふらつくことはある。
・日常生活動作(ADL):自立、
・通院:専門病院に月1回、一人で受診可能。
・医師より病名の告知、説明は受けている。
・趣味:料理、食事の準備も行える。
→本症例の日常生活動作(ADL)は自立、趣味の料理、食事の準備も行えている。したがって、なるべく現在の生活の維持に努めていただきながら、そのつど何かあれば支援していく。脊髄小脳変性症とは、運動失調を主症状とし、原因が、感染症、中毒、腫瘍、栄養素の欠乏、奇形、血管障害、自己免疫性疾患等によらない疾患の総称である。遺伝性と孤発性に大別され、①純粋小脳型(小脳症状のみが目立つ)と、②多系統障害型(小脳以外の症状が目立つ)に大別される。脊髄小脳変性症の割合として、孤発性(67.2%)、常染色体優性遺伝性(27%)、が常染色体劣性遺伝性(1.8%)であった。孤発性のものの大多数は多系統萎縮症である。(※参考:「18 脊髄小脳変性症(多系統萎縮症を除く。)」厚生労働省様HPより)
1~2.× 嚥下訓練の導入を計画する/コミュニケーション手段を確立するのは、現時点では時期尚早である。なぜなら、本症例の日常生活動作(ADL)は自立、趣味の料理、食事の準備も行えているため。今後、病気が進行するにつれ、小脳症状に伴う舌のもつれや飲み込みのタイミングのずれなどの嚥下障害/コミュニケーション障害の出現が予測され、今後、嚥下訓練/コミュニケーション手段の導入を検討する必要はあるが、現時点のAさんは、「起立時にふらつくことはあるが、日常生活動作(ADL)は自立、専門病院に月1回、一人で受診している」ため優先度は低い。
3.〇 正しい。料理が継続できるよう環境を整えるのは、現時点で優先度は高い。上肢の運動失調症状の特徴として、手を動かすことはできても、今後は今までと同じように動かすことは難しくなると予測される。好きなこと、できることを安全に行えるよう工夫しながらQOLを維持していく支援が、現時点のAさんに対する支援で最も適切である。
4.× 訪問看護を導入し、ケア体制を整えるのは、現時点では時期尚早である。なぜなら、本症例の日常生活動作(ADL)は自立、趣味の料理、食事の準備も行えているため。また、Aさんは専門病院に月1回ひとりで受診できている。ちなみに、訪問看護とは、看護を必要とする患者が在宅でも療養生活を送れるよう、かかりつけの医師の指示のもとに看護師や保健師などが訪問して看護を行うことである。
次の文を読み54、55の問いに答えよ。
Aさん(62歳、女性)。夫(67歳)と次男夫婦(ともに30代、会社員)の4人暮らしである。起立時にふらつきが見られたため、専門病院を受診したところ、脊髄小脳変性症と診断された。難病の医療費助成の申請書が保健所に届き、保健師は家庭訪問を実施した。Aさんは起立時にふらつくことはあるが、日常生活動作(ADL)は自立、専門病院に月1回、一人で受診している。既往歴に特記すべきことはない。脊髄小脳変性症については医師より病名の告知、説明は受けている。Aさんは料理が好きで、食事の準備はA さんが行っている。
55 保健師が描いたAさん宅1階の見取り図を示す。Aさんと夫は1階で生活をし、日中はリビングで過ごし、夜は和室で布団に寝ている。2階は次男家族が使用している。台所とリビング、浴室は1階のみにあり、大きな段差は廊下から玄関に降りるところのみである。
Aさんの生活環境を改善するために現時点で優先度が高いのはどれか。
1.夜間のポータブルトイレの使用
2.夫婦の寝室を2階に移動
3.玄関にスロープを設置
4.ベッドの使用
解答4
解説
・【Aさん宅1階の見取り図】
・Aさんと夫は1階で生活
・日中:リビングで過ごす。
・夜:和室で布団に寝ている。
・2階:次男家族が使用している。
・台所とリビング、浴室は1階のみ
・大きな段差:廊下から玄関に降りるところのみ。
→Aさんは、起立時にふらつくことはあるが、日常生活動作(ADL):自立である。病気が進行するにつれ、起立時のふらつきは強くなり危険な可能性が高い。また、料理が継続できるよう環境を整えることも重要である。
1.× 夜間のポータブルトイレの使用は、現時点で優先度が低い。なぜなら、Aさんは、起立時にふらつくことはあるが、日常生活動作(ADL)自立であるため。
見取り図から、寝室の向いにトイレがあり、導線には段差がなく、トイレまでの安全な移動は現時点で可能と考えられるため。Aさんは女性であり羞恥心も考えられる。また、記載はないが一緒に寝ているかもしれない夫にも「においの配慮」という面で、ポータブルトイレの導入は慎重に検討しなければならない。
2.× 夫婦の寝室を2階に移動する必要はない。なぜなら、Aさんは起立時にふらつきがあり、日常的な階段の使用は転倒の危険を伴うため。
3.× 玄関にスロープを設置は、現時点で優先度が低い。なぜなら、Aさんは「起立時にふらつくことはあるが、日常生活動作(ADL)は自立、専門病院に月1回、一人で受診している」程度の身体機能を現時点では維持しているため。玄関にスロープを設置するのは主に車椅子介助になったときに使用することが多い。
4.〇 正しい。ベッドの使用は、現時点で優先度が高い。なぜなら、Aさんは起立時のふらつきがあるため。布団とベッドからの立ち上がりを比較したとき、重心移動や下肢筋力は布団からの立ち上がりのほうがより必要となる。つまり、ベッドから立ち上がるほうが、ふらつきにくく安全である。
脊髄小脳変性症とは、運動失調を主症状とし、原因が、感染症、中毒、腫瘍、栄養素の欠乏、奇形、血管障害、自己免疫性疾患等によらない疾患の総称である。遺伝性と孤発性に大別され、①純粋小脳型(小脳症状のみが目立つ)と、②多系統障害型(小脳以外の症状が目立つ)に大別される。脊髄小脳変性症の割合として、孤発性(67.2%)、常染色体優性遺伝性(27%)、が常染色体劣性遺伝性(1.8%)であった。孤発性のものの大多数は多系統萎縮症である。(※参考:「18 脊髄小脳変性症(多系統萎縮症を除く。)」厚生労働省様HPより)
多系統萎縮症とは、成年期(多くは40歳以降)に発症し、進行性の細胞変性脱落をきたす疾患である。①オリーブ橋小脳萎縮症(初発から病初期の症候が小脳性運動失調)、②線条体黒質変性症(初発から病初期の症候がパーキンソニズム)、シャイ・ドレーカー症候群(初発から病初期の症候が自律神経障害であるもの)と称されてきた。いずれも進行するとこれら三大症候は重複してくること、画像診断でも脳幹と小脳の萎縮や線条体の異常等の所見が認められ、かつ組織病理も共通していることから多系統萎縮症と総称されるようになった。(※参考:「17 多系統萎縮症」厚生労働省様HPより)
※注意:解説はすべてオリジナルのものとなっています。私的利用の個人研究・自己研鑽のため作成いたしました。間違いや分からない点があることをご了承ください。またコメントにて解き方等教えてくださると幸いです。