次の文を読み51、52の問いに答えよ。
人口約30万人の市。午後1時、震度6強の地震が発生し、市は避難所を設置した。家屋の倒壊や火災が確認され、大規模な被害が予測された。県と市に災害対策本部が設置された。
51 発災直後の緊急対策期における市の保健師の対応で優先度が高いのはどれか。
1.医療救護活動
2.福祉避難所の準備
3.健康調査票の作成
4.家庭訪問による個別健康相談
解答1
解説
・午後1時:震度6強の地震が発生、市は避難所を設置。
・家屋の倒壊や火災が確認された。
・大規模な被害が予測された。
・県と市に災害対策本部が設置された。
→現在、「発災直後の緊急対策期」である。一般的な災害状況は、野外への避難、通信・交通・ライフラインの途絶、避難所生活開始である。保健活動として、救急対応(救護所の開設、必要な医療物品の準備)、地域の被害状況、ライフライン、衛生状態の把握、住民の安否確認と身元確認、避難行動要支援者の安否確認と移動、健康危機管理、避難所準備と周知、救護所や避難所の巡回健康相談と衛生管理および環境整備、職員の健康管理(急性期)である。
1.〇 正しい。医療救護活動は優先度が高い。医療救護活動とは、トリアージや遺体取扱、心肺蘇生等を行って、 災害時に重症者は病院へ、自分で歩いて病院へ行ける等のかたは最寄りの医療救護所へ搬送するなど役割を分担し、負傷者が病院に殺到することを防ぐことである。
2.× 福祉避難所の準備は優先度が低い。なぜなら、福祉避難所の開設する場合は、市町村からの要請があるため。福祉避難所とは、避難所生活において何らかの特別な配慮を必要とする要配慮者のための施設であり、状況に応じて必要時、開設される市町村が、福祉避難所の施設管理者に対して開設を要請するものである。
3.× 健康調査票の作成は優先度が低い。なぜなら、健康調査票は平常時に作成し、避難所開設以降に健康調査が行われるため。他にも平常時の保健活動として、災害時地域応急体制の樹立、避難行動要支援者のリスト化、災害対策マニュアル作成、生活用品・防災用品の備蓄、避難場所、災害時の連絡方法の確認、住民の自助・共助の支援、近隣ボランティアの育成、防災訓練、災害時対応のための研修、関係機関との定期的な連絡会議があげられる。
4.× 家庭訪問による個別健康相談は優先度が低い。なぜなら、現在、家屋の倒壊や火災が確認され、大規模な被害が予測されている状態であるため。超急性期に家庭訪問をする目的は、「個別健康相談」ではなく、住民の安否確認と身元確認である。
次の文を読み51、52の問いに答えよ。
人口約30万人の市。午後1時、震度6強の地震が発生し、市は避難所を設置した。家屋の倒壊や火災が確認され、大規模な被害が予測された。県と市に災害対策本部が設置された。
52 発災後10日。保健師は、避難所への巡回訪問中に4歳児の母親から「子どもが自分から全く離れなくなり、寝ている間に急に大声をあげて泣き出すようになった。心配だ」と相談を受けた。保健師は子どもの反応の意味を説明し、いつでも相談に乗ることを伝えた。
この時の保健師の母親への助言で適切なのはどれか。
1.子どもが一人で行動できることを経験させるよう勧める。
2.できるだけスキンシップを図るよう伝える。
3.別の避難所に移動するように勧める。
4.特に何もしなくてよいと伝える。
解答2
解説
・発災後10日(亜急性期:2~3週間)。
・4歳児の母親から「子どもが自分から全く離れなくなり、寝ている間に急に大声をあげて泣き出すようになった。心配だ」と。
・保健師は子どもの反応の意味を説明し、いつでも相談に乗ることを伝えた。
→子どもの様子「子どもが自分から全く離れなくなり、寝ている間に急に大声をあげて泣き出すようになる」は、異常な事態に対する正常な反応であるため、保健師は子どもの反応の意味を説明し、いつでも相談に乗ることを伝えている。ちなみに、亜急性期:2~3週間の一般的な災害状況として、避難所生活の継続、水や食料の不足、衛生環境の悪化である。また、保健活動として、巡回健康相談、食中毒や感染症等の二次的な健康障害の予防活動、生活用品の確保、エコノミークラス症候群(深部静脈血栓症・肺塞栓症)の合併症対策、こころのケア対策の実施、派遣保健師配置やボランティアの活用、職員の健康管理、通常業務の調整があげられる。極めて強烈なストレスを受けた後、数週間から数ヵ月を経て(6ヵ月以上潜伏期間があることはまれ)、再体験、回避、認知や気分の異常、過覚醒の各症状が4週間以上持続し、著しい苦痛や社会的障害を生じている状態があれば、PTSD<外傷後ストレス障害>が疑われる。
問題文にあるような子どもの様子「子どもが自分から全く離れなくなり、寝ている間に急に大声をあげて泣き出すようになる」は、異常な事態に対する正常な反応である。子どもが安心感を得られるように、スキンシップを図るよう伝える。したがって、選択肢2.できるだけスキンシップを図るよう伝えるが正しい。
1/3.× 子どもが一人で行動できることを経験させるよう勧める/別の避難所に移動するように勧めるのは、逆に子供の不安を増強させてしまうため不適切である。
4.× 特に何もしなくてよいと伝えるのは、現状困っている母親や子供の根本的解決にはならない。時間が解決してくれる問題ではない。
次の文を読み53、54の問いに答えよ。
A市(人口10万人)では高齢化が進み、医療福祉分野の課題が増えている。地域包括支援センターでは、介護支援専門員から「複数の病院で処方された多種類、多量の薬を服用している高齢者が多い。副作用などの問題があるのではないか」との相談を受けることが増えた。そこで今年度から4か所の地域包括支援センターが合同で2か月ごとに、「高齢者の服薬」をテーマに事例検討による地域ケア会議を開催することにした。A市からは介護保険担当課の保健師が参加する予定である。
A市の概況を表に示す。
53 保健師が会議の前に確認する情報で優先するのはどれか。
1.薬剤師会名簿
2.訪問介護の利用状況
3.要介護認定者数の推移
4.国民健康保険加入者の調剤医療費
解答4
解説
・A市(人口10万人):高齢化が進み、医療福祉分野の課題が増えている。
・地域包括支援センターの介護支援専門員から「複数の病院で処方された多種類、多量の薬を服用している高齢者が多い。副作用などの問題があるのではないか」との相談を受けることが増えた。
・2か月ごと「高齢者の服薬」をテーマに事例検討による地域ケア会議を開催。
・A 市から:介護保険担当課の保健師が参加する予定。
→「複数の病院で処方された多種類、多量の薬を服用している高齢者が多い。副作用などの問題があるのではないか」との相談から、「高齢者の服薬」をテーマに事例検討による地域ケア会議を開催することになった。これにあたり、「実際に副作用が出ているのか?」「出ている原因は何か?」「ただ不安なだけか?」をデータをもとに考える必要がある。ちなみに、ケア会議とは、具体的な治療・援助対象ケースについて、その支援にかかわる多職種の専門職が一堂に会し、今後の在り方について専門的見地から意見交換をすることである。ケア会議を行うことで他職種との連携・協力が深まり、情報の共有と今後の方向性について明確な相互理解が得られ関係者間での情報および目標の共有、理解を深めることができる。
1.× 薬剤師会名簿は優先度が低い。薬剤師会名簿とは、その名の通り薬剤師会の名簿のことであり、そこには会長や副会長、常務などの名が記載されている。(参考:「公益社団法人日本薬剤師会役員名簿」日本薬剤師会HPより)薬剤師会の名簿を見ても、「高齢者の服薬」をテーマに事例検討について直接関連しない。
2.× 訪問介護の利用状況は優先度が低い。なぜなら、訪問介護の利用状況は、高齢者の服薬について直接的に関連するものではないため。ちなみに、介護員が利用者の自宅を訪問して行う身体介護や生活の援助である。
3.× 要介護認定者数の推移は優先度が低い。なぜなら、要介護認定者数の推移は、高齢者の服薬について直接的に関連するものではないため。要介護者等について、介護が必要になった主な原因について見ると、「認知症」が18.7%と最も多く、次いで、「脳血管疾患(脳卒中)」15.1%、「高齢による衰弱」13.8%、「骨折・転倒」12.5%となっている。(データ引用:「第1章 高齢化の状況(第2節 2)」内閣府HPより)
4.〇 正しい。国民健康保険加入者の調剤医療費は優先度が高い。なぜなら、国民健康保険データベース(KDB)などで、国民健康保険加入者の調剤医療費を確認することで、重複服薬や多剤投与など、現在の高齢者の服薬の問題点を把握できるため。他にも集計事項は、年齢、薬効分類、都道府県別調剤医療費(点数)、薬剤の使用状況等があげられる。(※参考:「医科・調剤医療費の動向調査:統計の概要」厚生労働省HPより)
次の文を読み53、54の問いに答えよ。
A市(人口10万人)では高齢化が進み、医療福祉分野の課題が増えている。地域包括支援センターでは、介護支援専門員から「複数の病院で処方された多種類、多量の薬を服用している高齢者が多い。副作用などの問題があるのではないか」との相談を受けることが増えた。そこで今年度から4か所の地域包括支援センターが合同で2か月ごとに、「高齢者の服薬」をテーマに事例検討による地域ケア会議を開催することにした。A 市からは介護保険担当課の保健師が参加する予定である。
A市の概況を表に示す。
54 A市では、4つの地域包括支援センター合同の地域ケア会議を1年間継続した。A市の訪問介護サービスを利用する高齢者の問題として、多種類、多量の薬剤の不適切な併用による健康障害と、介護支援専門員と主治医との連携の困難さの2つが明らかになった。A市では医療と介護の連携の強化の具体策の検討を目的に「在宅医療推進会議」を立ち上げることになった。この会議に介護支援専門員、医師、歯科医師、薬剤師の代表者が参加することは決まっている。
他に参加を呼びかけるメンバーで最も優先されるのはどれか。
1.民生委員の代表
2.訪問看護師の代表
3.理学療法士の代表
4.医療経済学の学識経験者
解答2
解説
【A市の訪問介護サービスを利用する高齢者の問題】
①多種類、多量の薬剤の不適切な併用による健康障害。
②介護支援専門員と主治医との連携の困難さ。
・A市:具体策「在宅医療推進会議」を立ち上げる。
・この会議に介護支援専門員、医師、歯科医師、薬剤師の代表者が参加することは決まっている。
→会議のテーマは、訪問看護サービスを利用する高齢者の問題「適切な服薬や医療・介護の連携」である。この会議に大きくかかわる職種を選択する。
1.× 民生委員の代表の優先度は低い。なぜなら、民生委員は「適切な服薬や医療・介護の連携」への関与は薄いため。民生委員とは、日本独自の制度化されたボランティアである。地域社会の福祉の増進図っている。任期は3年で都道府県知事の推薦を受けて厚生労働大臣に委嘱されたものである。市町村の各地区に配置され、①住民の生活状況の把握、②関係機関との連携、③援助を要するものヘの相談援助を主な役割とする。根拠法令は「民生委員法」で給与の支給はない。
2.〇 正しい。訪問看護師の代表の優先度は高い。なぜなら、訪問看護師は「適切な服薬や医療・介護の連携」へ大きく関与するため。訪問看護師の役割は、病気や障害あるいは、人生の最期を迎えようとしている患者さんが、住み慣れた在宅で「その人らしい生活」を行うためにサポートをすることである。在宅では点滴や内服管理、褥瘡の管理など治療に関わることだけではなく、ご家族への支援や他職種との連携を担う役割なども求められる。
3.× 理学療法士の代表の優先度は低い。なぜなら、理学療法士は「適切な服薬」への関与は薄いため。理学療法士とは、医師の指示のもとに治療体操や運動・マッサージ・電気刺激・温熱などの物理的手段を用いて、運動機能の回復を目的とした治療法・物理療法(理学療法)を行う専門職である。つまり、関節可動域や筋力の向上などが役割である。
4.× 医療経済学の学識経験者の優先度は低い。なぜなら、経済効果などについて話し合う場ではないため。会議のテーマは、訪問看護サービスを利用する高齢者の問題「適切な服薬や医療・介護の連携」である。この会議に大きくかかわる職種を選択する。
次の文を読み55の問いに答えよ。
食品加工業のA社には、60歳の定年後に継続雇用制度があり、65歳まで働くことができる。今後、製造現場の定年退職者と継続雇用労働者が増加することが見込まれている。安全衛生委員会で55歳以上の高年齢労働者の安全な就労に向け過去の労働災害状況を分析したところ、労働災害の発生率は年齢が高くなるほど上昇し、作業場での転倒が多かった。作業場の清掃は1日3回定期的に行い、照明は300ルクスの全体照明である。
55 A社の製造現場での高年齢労働者に対する労働災害防止対策への取組みで、優先度が高いのはどれか。
1.作業場の照度を高くする。
2.健康づくり用具を作業場に置く。
3.高年齢労働者向けの作業を用意する。
4.転倒が発生しやすい場所に注意喚起の掲示を行う。
解答4
解説
・今後:定年退職者と継続雇用労働者が増加する。
・労働災害の発生率は年齢が高くなるほど上昇し、作業場での転倒が多かった。
・作業場の清掃は1日3回定期的に行い、照明は300ルクスの全体照明である。
→作業場での転倒が多い原因を考える。加齢による身体機能の低下が原因であれば、作業場に限らず転倒が起こりやすい。具体的に作業場のどういった部分(段差やコンセントコードなど)で転倒に至っているか評価する必要がある。ちなみに、高齢者の転倒の主な原因は、①加齢による身体機能の低下、②病気や薬の影響、③運動不足である。加齢に伴い身体機能が徐々に低下し、筋力、バランス能力、瞬発力、持久力、柔軟性が衰え、とっさの反射的防御動作が、すばやく力強く行えなくなるため転倒に至ることが多い。(※参考:「たった一度の転倒で寝たきりになることも。転倒事故の起こりやすい箇所は?」政府広報オンラインHPより)
1.× 作業場の照度を高くする必要はない。なぜなら、作業場の照度は300ルクスと基準は満たしているため。『労働安全衛生規則』では、作業場(精密な作業)は300ルクス以上の全体照明にすると基準が設けられている。ちなみに、労働安全衛生規則は、労働の安全衛生についての基準を定めた厚生労働省の省令である。 労働安全衛生法及び労働安全衛生法施行令に基づき定められたものである。
2.× 健康づくり用具を作業場に置く優先度は低い。なぜなら、ただでさえ作業場での転倒が多い状態であるのに、健康づくりを置くことで、作業スペースを圧迫し、移動する導線の確保や作業効率の低下に影響を及ぼしかねないため。ただし、高齢者の転倒の主な原因は、①加齢による身体機能の低下、②病気や薬の影響、③運動不足である。身体機能の低下を防ぐため他の手段を考えるとよい。
3.× 高年齢労働者向けの作業を用意する優先度は低い。なぜなら、高年齢労働者向けの作業を用意した場合、会社の生産性が低下し、会社の経営自体が傾いてしまう恐れがあるため。高年齢労働者の筋力や生理機能などの低下に合わせて作業方法を見直す必要はあるが、高年齢労働者向けの作業を特別に用意する必要はない。
4.〇 正しい。転倒が発生しやすい場所に注意喚起の掲示を行う優先度は高い。作業場での転倒が多い原因を考える。加齢による身体機能の低下が原因であれば、作業場に限らず転倒が起こりやすい。具体的に作業場のどういった部分(段差やコンセントコードなど)で転倒に至っているか評価する必要がある。注意喚起の掲示によって、高年齢労働者の視覚機能の低下に対応できる。
VDT作業とは、ディスプレイを持つ画面表示装置(VDT:Visual Display Terminals) を用いた作業のこと。コンピュータや監視カメラを用いた作業を指す。 VDT作業はVDT症候群のように、心身の負担を感じさせることにつながるため、厚生労働省においても「VDT作業における労働衛生環境管理のためのガイドライン」を定めている。
【作業環境管理】
(1)照明及び採光
①室内は、できるだけ明暗の対照が著しくなく、かつ、まぶしさを生じさせないようにすること。
②ディスプレイを用いる場合のディスプレイ画面上における照度は500ルクス以下、書類上及びキーボード上における照度は300ルクス以上とすること。また、ディスプレイ画面の明るさ、書類及びキーボード面における明るさと周辺の明るさの差はなるべく小さくすること。
③ディスプレイ画面に直接又は間接的に太陽光等が入射する場合は、必要に応じて窓にブラインド又はカーテン等を設け、適切な明るさとなるようにすること。
(2)一連続作業時間及び作業休止時間
一連続作業時間が1時間を超えないようにし、次の連続作業までの間に10分~15分の作業休止時間を設け、かつ、一連続作業時間内において1回~2回程度の小休止を設けること。
(3)その他
換気、温度及び湿度の調整、空気調和、静電気除去、休憩等のための設備等について事務所
衛生基準規則に定める措置等を講じること。
(※一部引用:「VDT作業における労働衛生環境管理のためのガイドライン」厚生労働省HPより)
※注意:解説はすべてオリジナルのものとなっています。私的利用の個人研究・自己研鑽のため作成いたしました。間違いや分からない点があることをご了承ください。またコメントにて解き方等教えてくださると幸いです。
問題引用:第105回保健師国家試験、第102回助産師国家試験、第108回看護師国家試験の問題および正答について