6 市の保健センターの保健師が受け持ち地区の家庭訪問計画を立てる際に最も優先すべきケースはどれか。
1.出産病院が未定の妊娠36週の妊婦
2.経過の良好な出生時体重2,100gの生後3か月児
3.児の体重増加を心配している生後2か月児の母親
4.忙しいからと新生児訪問を断っている生後1か月児の母親
解答1
解説
優先順位対象者の抱える問題や緊急性などから訪問の優先順位をつける。
【家庭訪問の優先度の高い事例】
・生命に危険のある事例(児童虐待等)
・依頼者や相談者の不安が強い事例
・医療的ケアの必要な事例
・地域の健康課題に応じて実施する事例(調査・研究等)
(抜粋:「家庭訪問における地域保健活動技術マニュアル」長崎県福祉保健課より)
1.〇 正しい。出産病院が未定の妊娠36週の妊婦は、家庭訪問計画の作成に最も優先すべきケースである。なぜなら、36週で出産病院が未定なのは出産準備ができていない可能性が高いと考えられるため。妊娠36週の平均推定胎児体重は2500gを超え、いつ生まれても良い時期となる。出産の際は、飛び込み出産となりやすく妊婦・児とも生命に危険が伴う。
2.× 経過の良好な出生時体重2,100gの生後3か月児より、家庭訪問計画の作成の優先度が高いものが他にある。なぜなら、低出生体重児であるが経過良好であるため。乳幼児健康診査などで経過をみていく。
3.× 児の体重増加を心配している生後2か月児の母親より、家庭訪問計画の作成の優先度が高いものが他にある。なぜなら、まずは他の資料を確認したり経過を把握する必要があるため。母親の相談にのることは必要であるが、新生児訪問や出産した医療機関で行われる1か月健康診査の結果などの経過を把握することが重要である。ただし、依頼者や相談者の不安が強い事例の場合は、優先順位対象者の抱える問題や緊急性などから訪問をすることもある。
4.× 忙しいからと新生児訪問を断っている生後1か月児の母親より、家庭訪問計画の作成の優先度が高いものが他にある。なぜなら、母親とは「忙しいから」と連絡は取れており、仮に児に何か不調があればその時に伝えている可能性が高いため。そのため、母親のペースを守りつつ、繰り返し連絡を取り、家庭訪問の明確な目的を伝え、母親と信頼関係を築いていくことが重要である。選択肢2や3と比較すると家庭訪問の優先度は高いが、選択肢1と比べると時間をかけて、ほかの方法も検討しながら、継続した支援を行っていくケースである。
低出生体重児とは、2500g未満児のこと。1500g未満を「極低出生体重児」、1000g未満を「超低出生体重児」と呼ぶ。低体温、低血糖、貧血、黄疸(高ビリルビン血症)などが起こりやすく、感染への抵抗力も弱いため、外的ストレスをできる限り減らす。ポジショニングは、体内にいるときに近い姿勢を保つ。子宮内環境に近づける。
7 地域組織への保健師の支援で適切なのはどれか。
1.委員型の住民組織では仲間づくりを行う。
2.健康問題型の当事者組織では仲間づくりを行う。
3.ライフステージ型の当事者組織では研修計画を立てる。
4.地縁型の住民組織では活動があるときにメンバー募集をする。
解答2
解説
(※図引用:「住民組織活動を通じたソーシャル・キャピタル醸成・活用にかかる手引き」厚生労働省HPより)
1.× 委員型の住民組織は、「仲間づくりを行う」のではなく、行政などの依頼や委嘱を受けて活動する組織である。委員の役割が規定されている場合が多く、委員の役割を遂行することが重要である。ちなみに、住民組織とは、ある地域あるいは自治体の住民が、①特定の目的の達成、②生活過程の諸側面の相互関係を維持・強化するために生じる組織である。
2.〇 正しい。健康問題型の当事者組織では、仲間づくりを行う。当事者組織とは、同じような経験を持つ者どうしが集まって、課題を共有し、解決していくための活動である。 だれもが住みよいまちづくりを目指して関係機関、団体とも連携しながら、支援を行っている。健康問題の当事者組織には、①健康課題別の健康教室、②患者会・家族会などのセルフヘルプグループがある。特に、セルフヘルプグループは、同じ悩みをもつ者同士が相互に交流・サポートできるよう仲間づくりを行う。
3.× ライフステージ型の当事者組織では、「研修計画を立てる」のではなく、参加者同士が共通の課題に取り組むこと(育児サークルや高齢者のセルフヘルプグループなど)が目的である。ライフステージ型とは、年齢別や世代別での組織の方です。例として、育児サークルや老人クラブがあげられる。
4.× 地縁型の住民組織(町内会、子ども会、PTAなど)では、「活動があるときにメンバー募集をする」のではなく「全員参加」が原則である。常設的に委員や役員も設置していることが多い。課題として、加入せず参加そのものを拒否する人が増えることである。
8 A市は、10年前より各行政区で健康講座を開催し、受講者を健康推進員に任命して市の保健事業の支援を依頼している。
健康推進員の主体性を高めるための保健師の支援で優先度が高いのはどれか。
1.健康推進員による活動実践の報告会の実施
2.保健事業以外の市の事業での役割づくり
3.健康推進員の活動手引きの作成
4.新たな健康推進員の養成
解答1
解説
・10年前:健康講座を開催し、受講者を健康推進員に任命して市の保健事業の支援を依頼している。
・健康推進員の主体性を高めたい。
→健康推進員とは、地域の健康づくり(母子保健や高齢者保健、生活習慣病予防活動なども含む)を推進するボランティアである。各行政区のリーダーとして地域に根ざした活動を行うことで、住民相互の健康づくり活動が実現し、地域に波及する。
1.〇 正しい。健康推進員による活動実践の報告会の実施は、保健師の支援で優先度が高い。なぜなら、活動実践の報告会を行うことにより、自分達(健康推進員達)の活動を振り返り、成果の確証や見直しの機会となるため。また、ほかの健康推進員の活動を知り、情報や成果を共有することで、互いに刺激し、モチベーションを高め、主体的な活動へつながる可能性が高い。
2.× 保健事業以外の市の事業での役割づくりは、保健師の支援で優先度が低い。なぜなら、そもそも保健事業以外の市の事業での役割づくりは、健康推進員の本来の活動目的ではなく、健康推進員の主体性を高める可能性は低いため。健康推進員とは、地域の健康づくり(母子保健や高齢者保健、生活習慣病予防活動なども含む)を推進するボランティアである。各行政区のリーダーとして地域に根ざした活動を行うことで、住民相互の健康づくり活動が実現し、地域に波及する。
3.× 健康推進員の活動手引きの作成は、保健師の支援で優先度が低い。なぜなら、健康推進員が活動手引きの作成は、新人への教育や質の担保に効果的だが、主体性を高めることにはつながらないため。むしろ、健康推進員の自由な発想や責任感は失われやすい。ちなみに、主体性とは、自らの意志に基づいて、自らの責任のもとで行動しようとする態度や性質のことである。
4.× 新たな健康推進員の養成は、保健師の支援で優先度が低い。新たな健康推進員の養成は、活動の継続性に寄与するが、直接に主体性を高めることにつながらない。むしろ、健康推進員が多くなればなるほど、さぼる人も増えてくる可能性もある。
9 A市では高血圧予防を重点課題として取り組みを進めている。今回、食生活改善を希望している人に対して、減塩料理教室を開催することにした。
この教室のプロセス評価で適切なのはどれか。
1.減塩達成者の割合
2.参加者の募集方法
3.参加者の血圧の低下
4.参加者の食生活の変化
解答2
解説
・A市の重点課題:高血圧予防
・食生活改善を希望している人に、減塩料理教室を開催する。
→プロセス評価とは、人事考課の手法のひとつである。 仕事の遂行度や目標達成度など、課された業務の成果のみを評価要素として見る業績評価に対して、成果に至るまでの“過程”(プロセス)に着目し、そこにどのような価値が存在したかという視点から判断するのがプロセス評価の考え方である。
1.4.× 減塩達成者の割合/参加者の食生活の変化は、影響評価である。なぜなら、減塩料理教室への参加による変化であるため。影響評価は、プログラムによって得られた対象者の行動の変化や知識の向上などの影響を評価する。例:教育によってみられた対象者の行動の変化や知識の習得として、「適正な体重を保つための食事に関する知識が増えた」、「アルコールの適量が分かった」、「野菜を毎食食べるようになった」など。
2.〇 正しい。参加者の募集方法は、プロセス評価である。プロセス評価とは、事業の手順や実施過程、活動状況の妥当性を評価するものである。例:事業参加者の募集方法、健康診査の従事者数・受診者数、事業の実施内容など。
3.× 参加者の血圧の低下は、成果評価(アウトカム評価)である。なぜなら、減塩料理教室の効果を見る指標であるため。アウトカム評価(成果評価)とは、事業の目的を達成したかどうかの最終的な成果を判断するものである。例:参加者の6か月後のBMI値、糖尿病の治療継続者の割合、腹囲の減少率、参加者の運動回数など。
①ストラクチャー評価(企画評価):事業を実施するための仕組みや体制を評価するもの。
例:マンパワー、予算、会場の状況、関係機関との連携体制 等。
②プロセス評価(実施評価):事業の手順や実施過程、活動状況の妥当性を評価するもの。
例:事業参加者の募集方法、健康診査の従事者数・受診者数,事業の実施内容等。
③アウトプット評価:事業実施過程と参加状況などから直接生じた結果(数や量)を評価するもの。
④アウトカム評価(成果評価):事業の目的を達成したかどうかの最終的な成果を判断するもの。
例:参加者の6か月後のBMI値、糖尿病の治療継続者の割合、腹囲の減少率、参加者の運動回数 等。
①企画評価:教育プログラムの企画は、適切であったか。
②過程評価:教育プログラムは、企画通りに実施できているか。
③影響評価:教育プログラムによって、対象者にどのような良い影響を与えたか。
④結果評価:教育プログラムの目標は、どの程度達成されたか。
⑤経済評価:教育プログラムに要した費用と、その効果はどうだったか。
⑥総合評価:すべての評価を含めて総合的な評価する。
10 年代と母子保健施策の組合せで正しいのはどれか。
1.昭和17年(1942年):母子健康手帳の制度化
2.昭和36年(1961年):1歳6か月児健康診査開始
3.昭和52年(1977年):3歳児健康診査開始
4.平成9年(1997年):新生児訪問が市町村へ移管
解答4
解説
1.× 母子健康手帳の制度化は、「昭和17年(1942年)」ではなく、母子保健法:昭和41年(1966年)である。ちなみに、昭和17(1942)年は、妊産婦手帳制度が創設された年代である。ちなみに、母子健康手帳とは、母子保健法に定められた市町村が交付する、妊娠、出産、育児の一貫した母子の健康状態を記録する手帳のことである。
2.× 1歳6か月児健康診査開始は、「昭和36年(1961年)」ではなく昭和52(1977)年である。ちなみに、昭和36年(1961年)は、3歳児健康診査開始である。
3.× 3歳児健康診査開始は、「昭和52年(1977年)」ではなく、昭和36(1961)年である。ちなみに、昭和52年(1977年)は、1歳6か月児健康診査開始である。
4.〇 正しい。新生児訪問が市町村へ移管は、平成9年(1997年)である。平成6年の『母子保健法』改正を受け、基本的な母子保健サービスは、平成9年(1997年)から市町村により提供されることになった。