第105回(R4) 助産師国家試験 解説【午後1~5】

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1 保健師助産師看護師法の平成14年(2002年)の改正内容はどれか。

1.助産師に名称変更された。
2.助産師の名称独占が明確化された。
3.行政処分に免許の取り消しが追加された。
4.看護師国家試験合格が助産師免許取得の要件となった。

解答

解説

保健師助産師看護師法等の主な改正経緯

平成13年:保健婦助産婦看護婦法の一部改正 
①障害者等に係る欠格事由の見直し
②保健婦、看護婦、准看護婦の守秘義務の創設
③罰則規定の整備(①~③平成13年7月16日施行)
④資格の名称変更(平成14年 3月 1日施行)
保健婦 (士) → 保健師
助産婦 → 助産師(※助産師は女性のみ)
看護婦 (士) → 看護師
准看護婦 (士) → 准看護師

(※一部引用「保健師助産師看護師法等の主な改正経緯」厚生労働省HPより)

1.〇 正しい。助産師に名称変更された。「助産婦」から助産師へと変更となった。他にも、保健婦(士)から保健師に、看護婦(士)から看護師に、准看護婦(士)から准看護師となった。
2.× 助産師の名称独占が明確化されたのは、平成18年である。ちなみに、保健師助産師看護師法の42条3第2項「第四十二条の三 保健師でない者は、保健師又はこれに紛らわしい名称を使用してはならない。2 助産師でない者は、助産師又はこれに紛らわしい名称を使用してはならない。3 看護師でない者は、看護師又はこれに紛らわしい名称を使用してはならない。4 准看護師でない者は、准看護師又はこれに紛らわしい名称を使用してはならない。」と記載されている(※一部引用:「保健師助産師看護師法」e-GOV法令検索様HPより)。
3.× 行政処分に免許の取り消しが追加されたのは、平成13年である。他にも、障害者等に係る欠格事由の見直しや保健婦、看護婦、准看護婦の守秘義務の創設が改正された。ちなみに、免許取り消しは保健師助産師看護師法の9条「次の各号のいずれかに該当する者には、前二条の規定による免許(以下「免許」という。)を与えないことがある。①罰金以上の刑に処せられた者。②前号に該当する者を除くほか、保健師、助産師、看護師又は准看護師の業務に関し犯罪又は不正の行為があつた者。③心身の障害により保健師、助産師、看護師又は准看護師の業務を適正に行うことができない者として厚生労働省令で定めるもの。④麻薬、大麻又はあへんの中毒者」と記載されている(※一部引用:「保健師助産師看護師法」e-GOV法令検索様HPより)。
4.× 看護師国家試験合格が助産師免許取得の要件となったのは、平成18年である。下記参考。

平成18年以降の保健師助産師看護師法等の主な改正経緯

平成18年6月21日:①保健師・助産師・看護師および准看護師の名称独占、②保健師・助産師の免許登録要件に看護師国家試験合格を追加し、業務停止などの行政処分を受けた看護師等の再教育などを規定。

平成21年7月15日:①看護師の国家試験受験資格の 1番目に「大学」を明記、②保健師助産師の教育年限を「6カ月以上」から「1年以上」に変更、③卒後臨床研修の「努力義務」を規定した。

 

 

 

 

 

2 日常的な喫煙がリスク因子となるのはどれか。

1.子癇
2.早産
3.妊娠貧血
4.子宮復古不全

解答

解説

喫煙のリスク因子

たばこは、肺がんをはじめとして喉頭がん、口腔・咽頭がん、食道がん、胃がん、膀胱がん、腎盂・尿管がん、膵がんなど多くのがんや、虚血性心疾患、脳血管疾患、慢性閉塞性肺疾患、歯周疾患など多くの疾患、低出生体重児流・早産など妊娠に関連した異常の危険因子である。喫煙者の多くは、たばこの害を十分に認識しないまま、未成年のうちに喫煙を開始しているが、未成年期に喫煙を開始した者では、成人になってから喫煙を開始した者に比べて、これらの疾患の危険性はより大きい。さらに、本人の喫煙のみならず、周囲の喫煙者のたばこ煙による受動喫煙も、肺がんや虚血性心疾患、呼吸器疾患、乳幼児突然死症候群などの危険因子である。また、たばこに含まれるニコチンには依存性があり、自分の意志だけでは、やめたくてもやめられないことが多い。しかし、禁煙に成功すれば、喫煙を継続した場合に比べて、これらの疾患の危険性は減少する。

(※一部引用:「たばこ」厚生労働省HPより)

1.× 子癇とは、妊娠20週以降に初めて痙攣発作を起こし、痙攣発作の起こった時期により、妊娠子癇・分娩子癇・産褥子癇に分けられる。 子癇発作の発症頻度は、0.04%程度であり、妊娠中が19%、分娩時39%、産褥期42%との報告がある。てんかんや二次痙攣が否定されるものである。子癇の病態の詳細はまだ明らかになっていないが、高血圧に伴う一過性の脳浮腫が原因といわれている。(子癇のよみかた:しかん)
2.〇 正しい。早産は、日常的な喫煙がリスク因子となる。妊娠中の喫煙は、早産や流産・死産の危険性を高め、また、低体重児の出産の可能性を高める。これは、たばこに含まれるニコチンや一酸化炭素などによって、赤ちゃんに必要な栄養や酸素が十分に届かなくなるため、胎児の発育などに障害が生じてくる。
3.× 妊娠貧血とは、妊婦に認められる貧血の総称である。その診断基準はヘモグロビ ン(Hb)値 11.0 g/dL 未満、またはヘマトクリット(Ht)値 33 %未満である。妊婦貧血は全妊娠の20%に発症し、その大部分は妊娠に起因する鉄欠乏性貧血葉酸欠乏性貧血または両者を合併したものである。原因として、妊婦さんはヘモグロビンの生成に関わる鉄分の多くをお腹の赤ちゃんに吸収されてしまうからと考えられている。
4.× 子宮復古不全とは、妊娠によって大きくなった子宮が出産を終えて元に戻る過程である子宮復古に異常が起き、通常の子宮収縮が認められない病態である。 原因は、①子宮内に胎盤の一部が残っている場合(子宮内残留)や、②母体疲労によるもの、③胎盤や卵膜の子宮内感染など原因は多岐に渡る。

 

 

 

 

3 性器ヘルペスを合併した妊婦で初感染の場合、正しいのはどれか。

1.出生した新生児は結膜炎を発症する。
2.単純ヘルペスウイルスⅡ型(HSV-2)が多い。
3.発症後1か月以内の分娩では帝王切開術を選択する。
4.母子感染の感染経路は産道感染よりも経胎盤感染が多い。

解答

解説

性器ヘルペスウイルス感染症とは?

性器ヘルペスウイルス感染症は、5類感染症の定点把握対象疾患である。ヘルペスウィルスの感染により性器に水泡(水ぶくれ)、腫れ、痛み、かゆみなどの症状が起こる。初めての感染のときに症状が強く出て、全身倦怠感やリンパ節の腫れを起こす。発病後たいてい1~2週間で症状は治まる。

1.× 出生した新生児は結膜炎を発症しない。感染性の結膜炎は小児と高齢者に多い特徴がある。年齢によって原因菌が異なる。新生児ではクラミジア淋菌、乳幼児はインフルエンザ菌、学童期では肺炎球菌、ブドウ球菌などが原因となる。症状は、充血と黄色っぽい目やになどである。
2.× 単純ヘルペスウイルス「Ⅱ型(HSV-2)」ではなくⅠ型(HSV-1)が多い。病原体は、単純ヘルペスウイルス(Herpes Simplex Virus : HSV)で、単純ヘルペスウイルスⅠ型(HSV-1)と単純ヘルペスウイルスⅡ型(HSV-2)がある。単純ヘルペスウイルスⅠ型(HSV-1)は、主に口の周りに感染し口腔ヘルペスの原因となる。口と口との接触、唾液、感染した皮膚表面との接触により感染を引き起こすが、性器にも伝播し口と性器との接触を通して性器ヘルペスを引き起こす。一方、単純ヘルペスウイルスⅡ型(HSV-2)は、主に性交渉時に性器の表面、感染した皮膚、体液との接触によって伝播する。
3.〇 正しい。発症後1か月以内の分娩では帝王切開術を選択する。産道感染による新生児ヘルペスのリスクがある場合は、経腟分娩(自然分娩)ではなく帝王切開で出産することで、新生児ヘルペスの発症を回避することが可能である。家族や周囲に性器ヘルペスを発症している人がいる場合は、タオルや洋式便座の共有から感染することもあるので、自分専用のタオルや使い捨ての便座シートを利用するなどの対策を行い、感染予防に努める。
4.× 逆である。母子感染の感染経路は「経胎盤感染(子宮内感染)」よりも「産道感染」が多い。出産時に産道で感染し「新生児ヘルペス」を発症させる可能性があるが、胎児への影響(経胎盤感染)はほとんどない。

 

 

 

 

 

4 世界保健機関<WHO>の定める精子濃度の基準値は( )万/mL以上である。
( )に入るのはどれか。

1.1.5
2.15
3.150
4.1,500

解答

解説

世界保健機関<WHO>の基準値

・精液量:1.4cc
・精子濃度:1600万/ml
・総精子数:3900万
・運動率:42%
・全身運動率:30%
・生存率:54%
・正常形態率:4%

(※一部抜粋:WHO laboratory manual for the examination and processing of human semen, 6th ed第6版(2021年)より)

選択肢4.〇 正しい。世界保健機関<WHO>の定める精子濃度の基準値は、1,500万/mL以上である。ちなみに、第6版(2021年)には、1600万/ml以上と定めている。

 

 

 

 

5 抗インスリン作用を有するのはどれか。(※不適切問題)

1.エストロゲン
2.プロゲステロン
3.hCG<ヒト絨毛性ゴナドトロピン>
4.hPL<ヒト胎盤性ラクトゲン>

解答1・2・3・4(複数の選択肢を正解として採点する)
理由:設問が不明確で複数の選択肢が正解であるため。

解説
1.〇 正しい。エストロゲン(卵胞ホルモン)は抗インスリン作用を有する。このため、更年期に入ってエストロゲンの分泌が減少すると、インスリンが効きづらくなり(インスリン抵抗性という)、血糖値が上昇して、糖尿病のリスクが高まる。
2.〇 正しい。プロゲステロン(黄体ホルモン)//は抗インスリン作用を有する。妊娠糖尿病の原因として、妊娠中には胎盤からインスリンを効きにくくして血糖値を上昇させる作用を有するホルモン(ヒト胎盤性ラクトーゲン、プロゲステロン、プロラクチンなど)が大量に分泌されるために、妊婦は糖尿病になりやすい体質、すなわちインスリン抵抗性が高くなることが挙げられる。
3.〇 正しい。hCG<ヒト絨毛性ゴナドトロピン>は抗インスリン作用を有する。hCG<ヒト絨毛性ゴナドトロピン>は、主に絨毛組織において産生され、妊娠初期の卵巣黄体を刺激してプロゲステロン産生を高め、妊娠の維持に重要な働きをしているほか、胎児精巣に対する性分化作用や母体甲状腺刺激作用も報告されている。 
4.〇 正しい。hPL<ヒト胎盤性ラクトゲン>は抗インスリン作用を有する。hPL<ヒト胎盤性ラクトゲン>は、卵胞刺激ホルモンおよび黄体形成ホルモンと同様に、黄体を維持することにより排卵を抑制する。 卵巣はβ-hCGに刺激されることでエストロゲンおよびプロゲステロンを産生し続けるため、これらのホルモンの値は妊娠早期に上昇する。

 

 

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