第106回(R2) 保健師国家試験 解説【午後1~5】

 

※注意:解説はすべてオリジナルのものとなっています。私的利用の個人研究・自己研鑽のため作成いたしました。間違いや分からない点があることをご了承ください。またコメントにて解き方等教えてくださると幸いです。

 

問題引用:第106回保健師国家試験、第103回助産師国家試験、第109回看護師国家試験の問題および正答について

 

 

1 住民が主体となって設立する組織はどれか。

1.児童委員の連絡会
2.母子保健推進員会
3.公募委員による健康増進計画協議会
4.障害者支援のための特定非営利活動法人

解答

解説
1.× 児童委員の連絡会は、厚生労働大臣から委嘱された民生委員が児童委員を兼ねており、行政から委嘱された組織である。ちなみに、児童委員とは、地域の子どもたちが元気に安心して暮らせるように、子どもたちを見守り、子育ての不安や妊娠中の心配ごとなどの相談・支援等を行う。また、一部の児童委員は児童に関することを専門的に担当する「主任児童委員」の指名を受けている。
2.× 母子保健推進員会は、母子保健の推進と充実を図るために、市町村長から委嘱された母子保健推進員で構成される委貝会である。母子等保健推進員とは、お母さんとお子さんの健康や子育てを応援するために、市長から委嘱を受け、市と家庭を結ぶパイプ役として各町内を中心に活動している。
3.× 公募委員とは、地方自治体が住民の意見を計画策定に反映させるため、広く一般から公募され、地方自治体の委嘱により組織された委員である。
4.〇 正しい。障害者支援のための特定非営利活動法人(NPO)は、住民が主体となって設立する組織である。特定非営利活動法人(NPO)とは、益を分配することを目的とせず、保健福祉などの社会貢献活動、社会的使命の実現を目的として活動する。ボランティアなどの非営利の社会貢献活動を行う組織である。

民生委員とは?

民生委員は、日本独自の制度化されたボランティアである。地域社会の福祉の増進図っている。任期は3年で都道府県知事の推薦を受けて厚生労働大臣に委嘱されたものである。市町村の各地区に配置され、①住民の生活状況の把握、②関係機関との連携、③援助を要するものヘの相談援助を主な役割とする。根拠法令は「民生委員法」で給与の支給はない。

 

 

 

 

 

2 地域における関係機関の連携を促すために最も有効なアプローチはどれか。

1.患者会の設立支援
2.議会へのロビー活動
3.地域ケア会議の設定
4.ボランティアの育成

解答

解説

ポイント

目的:地域における関係機関の連携を促す
→関係機関の連携を促すには、担当者同士の情報共有が必須である。これを行えるアプローチを選択する。

1.× 患者会の設立支援の優先度は低い。なぜなら、患者会は、共通の目的をもつ当事者や家族によって自主的に形成されるグループであるため。
2.× 議会へのロビー活動の優先度は低い。なぜなら、ロビー活動(ロビイング、ロビーイングとも)とは、特定の主張を有する個人または団体が政府の政策に影響を及ぼすことを目的として行う私的な政治活動であるため。議会の議員、政府の構成員、公務員などが対象となる。 ロビー活動を行う私的人物・集団はロビイストと称される。
3.〇 正しい。地域ケア会議の設定は、地域における関係機関の連携を促すために最も有効なアプローチである。地域ケア会議とは、介護保険法第115条の48で定義され、地域包括支援センターまたは市町村が主催し、設置・運営する「行政職員をはじめ、地域の関係者から構成される会議」のことである。多職種の専門職の協働の下で、①高齢者個人に対する支援の充実と、②それを支える社会基盤の整備を同時に進めていく、地域包括ケアシステムの実現に向けた手法として市町村や地域包括支援センターが開催する会議体です。したがって、関係機関の担当者が集まる地域ケア会議は、担当者同士の情報共有により地域における関係機関の連携を促進することができる。
4.× ボランティアの育成の優先度は低い。なぜなら、関係機関の連携にはつながらないため。日本独自の制度化されたボランティアの一つに民生委員がある。地域社会の福祉の増進図っている民生委員の任期は3年で都道府県知事の推薦を受けて厚生労働大臣に委嘱されたものである。市町村の各地区に配置され、①住民の生活状況の把握、②関係機関との連携、③援助を要するものヘの相談援助を主な役割とする。根拠法令は「民生委員法」で給与の支給はない。

 

 

 

 

3 地域住民のエンパワメントのために行う保健師の活動はどれか。

1.健康格差に関する調査の実施
2.地区踏査による地域情報の収集
3.重度の障害児を対象とした家庭訪問の実施
4.住民による子育てに関する社会資源マップ作成の支援

解答

解説

エンパワメントとは?

エンパワメントとは、対象者が主体的に自身の状態を変えていく方法や自信を獲得できるよう、対象者が本来持っている力を引き出し、その自己決定能力を強化することである。対象は、個人、組織、コミユニテイの3段階がある。過程には、傾聴→対話→行動アプローチがある。

【コミュニティ・エンパワメントの成果】
①コミュニティ・メンバーは自身の問題解決に向かう意欲と自信がつく。
②コミュニティ・メンバーのコミュニティに対する関心が高まる。
③コミュニティでの相互支援が高まる。
④コミュニティでリーダーが育成される。
⑤コミュニティは政策改善の方向性を見いだす。

1.× 健康格差に関する調査の実施/地区踏査による地域情報の収集はエンパワメントにつながらない。なぜなら、調査・情報の収集は、地域のアセスメント(評価)の方法であるため。ちなみに、地区踏査とは、担当地区を実際に歩いて地域住民の様子や環境を観察し、地区の状況を把握する地域診断に用いられる方法である。エンパワメントとは、対象者が主体的に自身の状態を変えていく方法や自信を獲得できるよう、対象者が本来持っている力を引き出し、その自己決定能力を強化することである。対象は、個人、組織、コミユニテイの3段階がある。過程には、傾聴→対話→行動アプローチがある。
3.× 重度の障害児を対象とした家庭訪問の実施は地域住民のエンパワメントにつながらない。なぜなら、重度の障害児を対象とした家庭訪問の実施は、個人に対して行うため。したがって、「地域住民」ではなく個人のエンパワメントにつながる。
4.〇 正しい。住民による子育てに関する社会資源マップ作成の支援は、地域住民のエンパワメントのために行う保健師の活動として有効である。社会資源マップの作成を通じた支援は、地域住民が主体的に地域の問題を認識しながら、仲間づくりや地域づくりにつながる地区活動の方法である。ちなみに、社会資源マップとは、町内の地域の活動や民間サービスの情報を集め、1つにまとめたものである。

 

 

 

 

 

4 Aさん(42歳、初妊婦、会社員)。「最近、他市から引っ越してきた」と母子健康手帳を持って市保健センターに来所した。保健師が面接したところ、Aさんは妊娠8か月、夫と2人暮らし、出産する予定の病院の変更はなく、出産後は1年間育児休業を取得し、復職を希望しているとわかった。
 この時、保健師がAさんに確認する内容で優先度が高いのはどれか。

1.両親学級の受講状況
2.希望する保育所の有無
3.出産後の支援者の有無
4.出産する予定の病院の情報

解答

解説

本症例のポイント

・Aさん(42歳、初妊婦、会社員、妊娠8か月、夫と2人暮らし)。
・「最近、他市から引っ越してきた」と母子健康手帳を持って市保健センターに来所した。
・面接:①出産する予定の病院の変更はない。②出産後は1年間育児休業を取得する。③復職を希望している。
→Aさんは、「最近、他市から引っ越してきた」ばかりで、新しい環境で初めて育児を行う。Aさんの心理状態だけでなく、生まれてくる児の虐待担ってしまう可能性も踏まえながら支援していく必要がある。

(※「子どもの虐待はどうして起こるの?」京都HPより)

1.× 両親学級の受講状況の優先度は低い。なぜなら、設問文から両親学級の状態を確認することはできないため。両親学級とは、妊婦さんとパートナーが一緒に妊娠・出産・育児について学んだり、赤ちゃんのお世話を体験したりする場で、自治体、病院や産院、民間企業などが主催している。 医師、助産師、看護師、保健師、管理栄養士といった専門家から直接アドバイスを受けることができ、不安なことがあれば相談することもできる。
2.× 希望する保育所の有無の優先度は低い。なぜなら、Aさんは、出産後に1年間の育児休業を取得する予定であるため。ちなみに、保育園は小学校に就学する前までの0〜5歳児を保育する施設である。
3.〇 正しい。出産後の支援者の有無の優先度は最も高い。なぜなら、Aさんは、「最近、他市から引っ越してきた」ばかりで、新しい環境で初めて育児を行うため。何ごとでも初めてなことが多く、相談者や支援者がいると心強いだろう。また、虐待のリスク要因のひとつとして、「地域から孤立(近所の人との付き合いが薄い)」というものがある。転入してきたAさんの孤立を防止するため、出産後の支援者がいるかどうかを確認する優先度は高い。
4.× 出産する予定の病院の情報の優先度は低い。なぜなら、出産する病院は変更する予定がないため。

 

 

 

 

5 地域アセスメントを行う際、地域の健康に影響する背景や要因を把握するために、既存の統計資料よりも保健師の地域活動から得ることが適切な情報はどれか。

1.生活環境
2.主観的健康観
3.地域の主要疾病
4.年齢別人口構成

解答

解説

ポイント

目的:地域の健康に影響する背景や要因を把握する。
・既存の統計資料よりも保健師の地域活動から得ることが適切な情報は?
→既存の統計資料には、数値としてデータ化されているものを調べることに適している。一方、保健師の地域活動で得られる情報は、地域の生活状況など数値化しにくいものが多い。地域アセスメントの要素としては、既存の統計資料に加えて、保健師の地域活動から得る地域の実情に根ざしたきめ細かな情報が重要になる。

1.〇 正しい。生活環境は、地域アセスメントを行う際、地域の健康に影響する背景や要因を把握するために、既存の統計資料よりも保健師の地域活動から得ることが適切な情報である。生活環境は、人々の暮らしの様子を反映する情報が含まれるため、保健師の地域活動から、地域の健康に影響する背景や要因を把握できる。
2.× 主観的健康観は、統計資料から得られる情報である。主観的健康観は、一般的には質問紙調査の質問項目である。自らの健康状態を 主観的に評価する指標であり、死亡率や有病率等の客観的指標では表せない全体的な健康状態を 捉える健康指標といえる。
3.× 地域の主要疾病は、統計資料から得られる情報である。
4.× 年齢別人口構成は、統計資料から得られる情報である。

 

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