第106回(R2) 保健師国家試験 解説【午後11~15】

 

11 歯科口腔保健の推進に関する法律に基づく基本的事項の目標とライフステージの組合せで正しいのはどれか。

1.口腔状態の向上:乳幼児期
2.歯の喪失防止:学童期
3.健全な歯・口腔の育成:成人期
4.口腔機能の維持・向上:高齢期

解答

解説

(図参照:「歯科口腔保健の推進に関する法律と基本的事項について」厚生労働省HPより)

1.× 口腔状態の向上は、「乳幼児期」ではなく学童期の目標である。ちなみに、乳幼児期の目標は、選択肢3.健全な歯・口腔の育成である。
2.× 歯の喪失防止は、「学童期」ではなく高齢期の目標である。ちなみに、学童期の目標は、う蝕(虫歯)の予防である。
3.× 健全な歯・口腔の育成は、「成人期」ではなく乳幼児期の目標である。ちなみに、成人期の目標は、健全な口腔状態の維持である。
4.〇 正しい。口腔機能の維持・向上は、高齢期の生活の質の向上に向けた目標である。

ライフステージごとの歯科口腔の特徴

①乳幼児(6か月~):乳歯が生え始める。
②乳児期(2~3歳):乳歯列が完成する。
③学童期(6~7歳):永久歯が生え始める。
④思春期(12~18歳):①永久歯列が完成する。②第三歯列(親知らず)が生え始める。
⑤成人期:歯周組織が脆弱になり始める。
⑥妊産婦:妊娠に伴う生理的変化。
⑦40歳:歯の喪失が始まる。
⑧高齢期:歯の喪失が急増する。

 

 

 

 

 

12 大型の石材を建築材料に加工する工場で、設置されている石材加工用の機械に防振ゴムを取り付け、工場内の騒音の低減を図った。
 この対策に該当するのはどれか。

1.健康管理
2.作業環境管理
3.作業管理
4.総括管理

解答

解説

労働衛生の3管理

作業環境管理:作業環境中の有機溶剤や粉じんなど有害因子の状態を把握して、できる限り良好な状態で管理していくこと。

作業管理:作業時間・作業量・作業方法・作業姿勢などを適正化したり、保護具を着用して作業者への負荷を少なくすること。

健康管理:作業者の健康状態を健康診断で把握して、その結果に基づいて適切な措置や保健指導などを実施し、作業者の健康障害を未然に防ぐこと。

(※参考「労働衛生の3管理」厚生労働省HPより)

1.× 健康管理は、作業者の健康状態を健康診断で把握して、その結果に基づいて適切な措置や保健指導などを実施し、作業者の健康障害を未然に防ぐこと。定期健康診断の受診を促すほか、有機溶剤や鉛、粉じんを発生するおそれのある作業を発注している場合は、特殊健康診断の受診を促す。
2.〇 正しい。作業環境管理に該当する。作業環境管理とは、作業環境中の有機溶剤や粉じんなど有害因子の状態を把握して、できる限り良好な状態で管理していくことである。危険有害物を取り扱っている作業場があれば、その物質の有害性、取扱量、作業場所への発散状況などを調べ、必要な措置を講じる。本問では、石材加工用の機械に防振ゴムを取り付け、工場内の騒音の低減を図っているため、作業環境管理に該当する。
3.× 作業管理は、作業時間・作業量・作業方法・作業姿勢などを適正化したり、保護具を着用して作業者への負荷を少なくすること。定期的に作業現場を巡回して、作業をマニュアル通り行っているか、仕事量は適量かどうかなどをチェックする。
4.× 総括管理は、健康管理、作業管理、作業環境管理、労働衛生教育が、事業場で適切に展開されるために必要な、労働衛生管理体制の構築、労働衛生関係諸規程の整備、年間計画の策定など、労働衛生管理の基盤整備に関わる職務である。併せて、経営者層、管理者層、一般従業員などそれぞれの層が、労働衛生に関する認識と知識、技能を整えることによって、事業場における労働衛生管理の基礎が確立される。(※「産業医の職務」厚生労働省HPより)

 

 

 

 

13 腸管出血性大腸菌による食中毒で正しいのはどれか。

1.潜伏期は6〜24時間である。
2.加熱が不十分な牛肉が原因となることが多い。
3.合併症である溶血性尿毒症症候群(HUS)の発症は成人に多くみられる。
4.平成29年(2017年)の食中毒事件数はカンピロバクターが原因のものよりも多い。

解答

解説

腸管出血性大腸菌(ベロ毒素産生性大腸菌、志賀毒素産生性大腸菌)とは?

腸管出血性大腸菌(ベロ毒素産生性大腸菌、志賀毒素産生性大腸菌)は、赤痢菌が産生する志賀毒素類似のベロ毒素を産生し、激しい腹痛、水様性の下痢、血便を特徴とする。特に、小児や老人では、溶血性尿毒症症候群や脳症(けいれんや意識障害など)を引き起こしやすいので注意が必要である。原因食品は、ハンバーグ、生肉、生レバー、井戸水などである。

(※参考:「腸管出血性大腸菌感染症」厚生労働省HPより)

1.× 潜伏期は、「6〜24時間」ではなく3~5日である。
2.〇 正しい。加熱が不十分な牛肉が原因となることが多い。主な原因食品は生肉である。
3.× 合併症である溶血性尿毒症症候群(HUS)の発症は、「成人」ではなく小児や高齢者に多くみられる。溶血性尿毒症症候群(HUS)は、主にベロ毒素が原因となり、溶血性貧血、血小板減少、急性腎障害を特徴とする症候群であり、腸管出血性大腸菌感染症の重篤な合併症である。
4.× 平成29年(2017年)の食中毒事件数は、カンピロバクターが原因のものよりも少ない。平成30(2018)年の食中毒事件数は、腸管出血性大腸菌が32件、カンピロバクターが319件である。

(※図引用:「平成30年食中毒発生状況(概要版) 及び主な食中毒事案」厚生労働省HPより)

 

 

 

 

 

14 レジオネラ症患者発生の届出を受けた保健所が感染の原因を調査する際に、最も重要な情報はどれか。

1.入浴施設の利用歴
2.発症前の食事内容
3.蚊による刺咬の有無
4.レジオネラ症患者との接触歴の有無

解答

解説

レジオネラ症とは?

レジオネラ症は『感染症法』の4類感染症で、集団発生を引き起こすため、保健である所において注意すべき疾患である。レジオネラ症とは、レジオネラ属菌による感染症である。 病型は、劇症型のレジオネラ肺炎と一過性のポンティアック熱の二つに分類される。 流行は季節によらず、中高年に多く発生している。レジオネラ肺炎は、全身倦怠感、頭痛、食欲不振、筋肉痛などの症状に始まり、咳や38℃以上の高熱、寒気、胸痛、呼吸困難が見られる。主な感染源は、レジオネラ属菌に汚染された循環式浴槽水、シャワー、ジャグジー、冷却塔水、加湿器などの人口環境水の目に見えないほど細かい水滴(エアロゾル)が主な原因となる。

1.〇 正しい。入浴施設の利用歴は、最も重要な情報である。主な感染源は、レジオネラ属菌に汚染された循環式浴槽水、シャワー、ジャグジー、冷却塔水、加湿器などの人口環境水の目に見えないほど細かい水滴(エアロゾル)が主な原因となるため。
2~4.× 発症前の食事内容/蚊による刺咬の有無/レジオネラ症患者との接触歴の有無を調査する優先度は低い。なぜなら、レジオネラ症は、空気(飛沫核)感染であるため。

感染経路と感染症

感染には、①接触感染、②空気感染、③飛沫感染がある。

①接触感染(例:流行性角結膜炎、疥癬、ノロウイルス感染症など)
(1)直接接触感染:感染者の皮膚粘膜との直接接触による伝播・感染する。
(2)間接接触感染:感染者の微生物で汚染された衣類、周囲の器物、環境などとの接触による伝播・感染する。

②飛沫感染(例:風疹、流行性耳下腺炎、 インフルエンザ、マイコプラズマ、百日咳など)
咳やくしゃみなどに伴って発生する飛沫(粒径5μm以上の粒子)が経気道的にヒトの粘膜に付着し感染する。飛散する範囲は1m以内であることが特徴。

③空気感染(例:結核、水痘、麻疹など)
飛沫核 (粒径5μm未満の粒子に付着した微生物)が長期間空中を浮遊し、これを吸い込むことで感染が伝播・感染する。

(※参考:「医療施設等における感染対策ガイドライン」厚生労働省様HPより)

 

 

 

 

15 厚生労働省が定める過重労働による健康障害防止のための総合対策はどれか。

1.毎月の健康診断
2.運動指導プログラムの作成
3.健康増進サービス機関の活用
4.時間外・休日労働時間の削減

解答

解説

過重労働による健康障害防止のための総合対策

過重労働による労働者の健康障害を防止することを目的として、事業者が講ずべき措置を定めるとともに、当該措置が適切に講じられるよう国が行う周知徹底、指導者等の所要の措置を取りまとめたもの。

①時間外・休日労働時間の削減
②年次有給休暇の取得促進
③労働時間等の設定の改善
④労働者の健康管理に関わる措置の徹底

(※参考:「過重労働による健康障害を防ぐために」厚生労働省HPより)

1.× 毎月の健康診断は、総合対策に含まれていない。総合対策では健康診断について、『労働安全衛生法』に基づく健康診断を「確実に実施すること」が定められているが、毎月行うよう定められているものはない。ちなみに、「労働安全衛生法」とは、労働者の安全と衛生についての基準を定めた日本の法律である。事業者は安全衛生管理体制を整備することが義務づけられており、それぞれの事業規模に応じた①衛生管理者、②総括安全衛生管理者などを選任しなければならない。
2~3.× 運動指導プログラムの作成/健康増進サービス機関の活用は、総合対策に含まれていない。これらは、「事業場における労働者の健康保持増進のための指針」に基づき、健康保持増進のための措置として行われている。
4.〇 正しい。時間外・休日労働時間の削減は、過重労働による健康障害防止のための総合対策に含まれている。そのほか、年次有給休暇の取得促進、労働時間などの設定の改善、労働者の健康管理に係る措置の徹底が含まれる。時間外・休日労働時間の削減として、①時間外労働を月45時間以下とするよう努める。②労働時間の適正な把握を行う。③過重労働とならないよう、労働者に対し十分な注意喚起を行うよう努めるなど決められている。

 

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