16 陽性反応的中度が上昇する理由で適切なのはどれか。
1.疾患の治療法が進歩した。
2.疾患の有病率が上昇した。
3.検査を受けた人数が増加した。
4.検査の感度は変わらず特異度が低下した。
解答2
解説
・疾病を有するものを正しく疾病ありと診断する確率を「感度」という。
・疾病を有さないものを正しく疾病なしと診断する確率を「特異度」という。
・検査陽性者のうち実際に疾病を有する者の割合を「陽性反応的中度(陽性的中率)」という。
・検査陰性者のうち実際に疾病を有さない者の割合を「陰性反応的中度(陰性的中率)」という。
・疾病なしだが、検査結果は陽性と判定される割合を「偽陽性率」という。
・疾病ありだが、検査結果は陰性と判定される割合を「偽陰性率」という。
1.× 疾患の治療法が進歩しても、陽性反応的中度は変わらない。なぜなら、疾病を有した後のことであるため。「陽性反応的中度(陽性的中率)」とは、検査陽性者のうち実際に疾病を有する者の割合をいう。
2.〇 正しい。疾患の有病率が上昇した場合、陽性反応的中度が上昇する。なぜなら、陽性反応的中度の分母は検査陽性者(疾病を有するもの)であり、分子は「実際に疾病を有する者(疾患の有病率)」であるため。つまり、「陽性反応的中度(陽性的中率)」とは、検査陽性者のうち実際に疾病を有する者の割合をいう。
3.× 検査を受けた人数が増加しても、陽性反応的中度は変わらない。なぜなら、検査を受けて人数が増加しても、分母である検査陽性者と分子である疾患の有病率に影響を及ぼさないため。
4.× 検査の感度は変わらず特異度が低下した場合は、陽性反応的中度は低下する。疾病を有するものを正しく疾病ありと診断する確率を「感度」という。一方で、疾病を有さないものを正しく疾病なしと診断する確率を「特異度」という。つまり「検査の感度は変わらず特異度が低下した場合」=検査陽性者のうち「実に疾病を有する者(分子の人数)」は変わらないが、「検査で陽性となったが疾病がなかった者(分母に含まれる人数)」が増えることになる。
17 平成28年(2016年)の国民健康・栄養調査の糖尿病に関する統計で正しいのはどれか。
1.糖尿病が強く疑われる者は約1,000 万人である。
2.40歳以上で糖尿病が強く疑われる者の割合は、男性よりも女性が高い。
3.糖尿病が強く疑われる者のうち、糖尿病治療を受けている者の割合は40 %以下である。
4.30歳以上で糖尿病が強く疑われる者の割合は、女性では年齢に関係なく一定である。
解答1
解説
【調査結果のポイント】
①糖尿病有病者と糖尿病予備群はいずれも約1,000万人と推計
・糖尿病が強く疑われる者(糖尿病有病者)、糖尿病の可能性を否定できない者(糖尿病予備群)はいずれも約1,000万人と推計。(8頁:図2)
・糖尿病予備群は、平成9年以降増加していたが、平成19年以降減少。
②体格及び生活習慣に関する状況は、都道府県の上位群と下位群で有意な差
・体格(BMI)及び主な生活習慣の状況について、都道府県別に年齢調整を行い、高い方から低い方に4区分に分け、上位(上位25%)群と下位(下位25%)群の状況を比較した結果、BMI、野菜摂取量、食塩摂取量、歩数、現在習慣的に喫煙している者の割合(男性)で、それぞれ上位群と下位群の間に有意な差。(10頁:表3)
・平成24年調査と平成28年調査を比較したところ、都道府県の格差は、男性の野菜摂取量及び男女の食塩摂取量で縮小。
③受動喫煙の機会は「飲食店」が最も高く4割超
・受動喫煙の機会を有する者の割合について場所別にみると、「飲食店」では42.2%と最も高く、次いで「遊技場」では34.4%、「職場」では30.9%。 (30頁:図33)
④高齢者の女性における低栄養傾向の者の割合は、この10年間で有意に増加
・65歳以上の高齢者の低栄養傾向(BMI≦20 kg/m2 )の割合は、男性12.8%、女性22.0%であり、この10年間でみると、女性では有意に増加。(17頁:図8-1)
(※一部引用:「平成28年「国民健康・栄養調査」の結果」厚生労働省HPより)
1.〇 正しい。糖尿病が強く疑われる者は約1,000万人である。
2.× 逆である。40歳以上で糖尿病が強く疑われる者の割合は、女性よりも男性が高い。
3.× 糖尿病が強く疑われる者のうち、糖尿病治療を受けている者の割合は、40%以下ではなく、69.6%である。
4.× 30歳以上で糖尿病が強く疑われる者の割合は、女性では年齢が高くなるにつれて増加している。30~39歳:0.6%、40~49歳:3.1%、50~59歳:5.1%、60~69歳で10.8%、70歳以上で19.8%となっている。
(※データ引用:平成28(2016)年の国民健康・栄養調査)
18 結核の有病者数の年次推移を表す図表で適切なのはどれか。
1.散布図
2.円グラフ
3.帯グラフ
4.折れ線グラフ
解答4
解説
絵グラフ:同形の絵を並べ、量の大小を比較する。
棒グラフ:棒の高さで、量の大小を比較する。
折れ線グラフ:量が増えているか減っているか、変化の方向をみる。
円グラフ:全体の中での構成比をみる。
帯グラフ:構成比を比較する。
ヒストグラム:データの散らばり具合をみる。
箱ひげ図:データの散らばり具合をみる。
(一部引用:「グラフの種類(初級編)」総務省統計局HPより)
1.× 散布図は、2つの変数間の関連をみるために各変数を縦軸と横軸にとり図示したもので、2変数の関連の方向性や強さなどを把握するのには有効である。
2.× 円グラフは、円の全体を100%として、カテゴリーごとに円を分割する形で示したものであり、全体のなかの構成比を示す際に用いる。
3.× 帯グラフは、四角形(帯)の全体を100%とし、各カテゴリーの占める構成を示す主に複数の帯グラフを用いて、帯グラフ内の各カテゴリーの構成割合を比較する際に用いられる。
4.〇 正しい。折れ線グラフは、結核の有病者数の年次推移を表す図表で適切である。折れ線グラフは、縦軸に数値の量、横軸に時間などの変数をとり、時間的経過などによる量の変化の様子を表すものである。
肺結核とは、結核菌による感染症で、体の色々な臓器に起こることがあるが多くは肺のことである。結核菌は、喀痰の中に菌が出ている肺結核の患者と密閉空間で長時間(一般的には数週間以上)接触することにより空気感染でうつる。リンパ節結核や脊椎カリエス(骨の結核)など、肺に病気のない結核患者からはうつらない。また肺結核でも、治療がうまくいって喀痰の中に菌が出ていない患者さんからはうつることはない。また、たとえ感染しても、発病するのはそのうち1割ぐらいといわれており、残りの9割の人は生涯何ごともなく終わる。感染してからすぐに発病することもあるが、時には感染した後に体の免疫が働いていったん治癒し、その後数ヶ月から数十年を経て、免疫が弱ったときに再び結核菌が増えて発病することもある。結核の症状には、咳、痰、血痰、熱、息苦しさ、体のだるさなどがある。
19 学校保健行政に関する内容と法律の組合せで正しいのはどれか。
1.学校医の配置:労働安全衛生法
2.特別支援教育:障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(障害者総合支援法)
3.教職員の健康診断:学校保健安全法
4.不登校児童生徒の支援:教育基本法
解答3
解説
1.× 学校医の配置は、「労働安全衛生法」ではなく『学校保健安全法』に規定されている。学校保健安全法は、主に①学校保健、②学校安全の体制、③健康診断などを定めている。ちなみに、学校医の主な業務として、①学校保健計画・学校安全計画立案への参与。②必要に応じ、保健管理に関する専門的事項の指導。③健康相談。④保健指導。⑤健康診断(定期・臨時・就学時)、職員の健康診断。⑥疾病予防処置。⑦感染症の予防に関する指導・助言、感染症および食中毒予防処置。⑧救急処置。⑨学校の環境衛生の維持および改善の指導・助言があげられる。また、労働安全衛生法は、労働者の安全と衛生についての基準を定めた日本の法律である。
2.× 特別支援教育は、「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(障害者総合支援法)」ではなく『学校教育法』に規定されている。学校教育法は、学校教育制度の基本について定めた法律である。学校における保健学習や安全学習について、学校教育法の教育基準に基づき行われている。また、特別支援教育とは、障害のある子どもがその能力や可能性を最大限に伸ばし、自立し、社会参加するために必要な力を培うための教育である。 障害の状態に応じ、特別支援学校や小・中学校の特別支援学級、通級による指導が行われている。ちなみに、『障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(障害者総合支援法)』は、障害者に対するサービス・給付を定めるものである。
3.〇 正しい。教職員の健康診断は、学校保健安全法で適切である。学校教職員の健康診断は、『学校保健安全法』において学校の設置者は、学校教職員の健康診断を行わなければならないと定められている。学校保健安全法は、主に①学校保健、②学校安全の体制、③健康診断などを定めている。ちなみに、学校の設置者の主な業務として、①臨時休業の決定(感染症の予防上、必要なとき)、②職員の健康診断があげられる。
4.× 不登校児童生徒の支援は、「教育基本法」ではなく『義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律(教育機会確保法)』である。これは、主に不登校の子供に、学校外での多様な学びの場を提供することを目的とした法律である。 ちなみに、教育基本法は、教育についての原則を定めた日本の法律である。
障害者総合支援法は、2013年に障害者自立支援法から障害者総合支援法へと改正され、障害者と障害児を対象とした障害保健福祉施策についてまとめられた法律である。これにより障害者の範囲が拡大され、身体障害者、精神障害者、知的障害者、障害児の全てが対象とされている。そして、対象となっている者は、認定調査というものを受け「障害支援区分」という障害の重症度分類によって7区分(非該当、区分1~6)に分けられる。それにより受けられるサービス内容が変わってくる。
①障害者も難病患者も自立できる社会をめざす。
②応能負担(所得に応じて自己負担額が変わること)が原則。
③あらゆる障害(身体・知的・精神+難病)についてこの法律で対応する。
④市区町村が事業の母体である。
20 平成24年(2012年)に制定された子ども・子育て支援新制度に含まれるのはどれか。
1.子どもの事故予防強化
2.認定こども園制度の改善
3.マタニティマークの配布
4.妊娠期からの児童虐待防止
5.医療的ケアを必要とする子どもへの支援の向上
解答2
解説
子ども・子育て支援新制度は、幼児期の学校教育や保育、地域の子育て支援の量の拡充や質の向上を進めていくためにつくられた制度である。必要とするすべての家庭が利用でき、子どもたちがより豊かに育っていける支援を目指し、取組を進めている。そのなかで、①認定こども園、幼稚園、保育所を通じた共通の給付(施設型給付)・小規模保育などへの給付(地域型保育給付)の創設、②認定こども園制度の改善、③地域の実情に応じた子ども・子育て支援の充実などが図られている。
(※参考:「子ども・子育て支援新制度について」内閣府HPより)
(※図引用:「健やか親子21(第2次)」厚生労働省HPより)
1.3~4.× 子どもの事故予防強化/マタニティマークの配布/妊娠期からの児童虐待防止は、健やか親子21の取り組みの一つである。妊産に関する安全性と快適さの確保を目的として配布されている。
2.〇 正しい。認定こども園制度の改善は、平成24年(2012年)に制定された子ども・子育て支援新制度に含まれる。子ども・子育て支援新制度は、幼児期の学校教育や保育、地域の子育て支援の量の拡充や質の向上を進めていくためにつくられた制度である。必要とするすべての家庭が利用でき、子どもたちがより豊かに育っていける支援を目指し、取組を進めている。そのなかで、①認定こども園、幼稚園、保育所を通じた共通の給付(施設型給付)・小規模保育などへの給付(地域型保育給付)の創設、②認定こども園制度の改善、③地域の実情に応じた子ども・子育て支援の充実などが図られている。
5.× 医療的ケアを必要とする子どもへの支援の向上は、平成28(2016)年改正により『児童福祉法』に地方自治体の努力義務として規定された。児童福祉法とは、すべての児童の健全な育成・生活の保障・児童の福祉の推進を目的とする法律である。児童相談所の設置や小児慢性特定疾病医療費の支給などが規定されている。
健やか親子21は、平成25年の第1次計画の最終評価報告書を受け、平成27年度より第2次計画が開始されている。第1次計画では目標を設定した指標が多かったため、第2次計画では見直しを行い、目標を設けた52の指標と、目標を設けない「参考とする指標」として28の指標を設定した。第2次計画の中間評価は5年後、最終評価は10年後を予定している。
<目標>
1. 思春期の保健対策の強化と健康教育の推進(十代の自殺、人工妊娠中絶、性感染症罹患)
2. 妊娠・出産に関する安全性と快適さの確保と不妊への支援(妊産婦死亡、産後うつ病、産婦人科医・助産師数)
3. 小児保健医療水準を維持・向上させるための環境整備(低出生体重児、事故、妊娠・育児期間中の喫煙)
4. 子どものこころの安らかな発達の促進と育児不安の軽減(虐待死亡、母乳育児、心の問題に対応する小児科医)
(※参考:「健やか親子21(第2次)について」厚生労働省HPより)