26 健康増進法に基づきA市が策定した第2次健康増進計画の見直しを、住民と一緒に行うことにした。
計画の見直しを担当するA市の保健師が最初に行うのはどれか。
1.住民から要望を聞く。
2.長期的な目的と目標を考える。
3.他市の健康増進計画について情報収集する。
4.保健師や他の専門職を集めた会議を開催する。
5.現計画の実施で明らかになった健康課題をまとめる。
解答5
解説
・健康増進法に基づきA市が策定した第2次健康増進計画の見直しを住民と一緒に行う。
・計画の見直しを担当するA市の保健師が最初に行うのはどれか。
→健康増進法とは、国民の健康維持と現代病予防を目的として制定された日本の法律である。都道府県と市町村は、地域の実情に応じた健康づくりの促進のため、都道府県健康増進計画(義務)および市町村健康増進計画(努力義務)を策定する。
1~3.× 住民から要望を聞くこと/長期的な目的と目標を考えること/他市の健康増進計画について情報収集することは、計画を新規で策定する際の計画段階で行う。その際のプロセスでは、①優先順位、②達成可能な数値化した目標、③実現可能な段階的計画、③資源(ヒト・モノ・カネ)の確保などが大切である。
4.× 保健師や他の専門職を集めた会議を開催する優先度は低い。健康増進計画は、住民の主体的な健康増進の推進を目的とするものである。また、設問文からも「第2次健康増進計画の見直しを、住民と一緒に行うことにした」と記載されている。したがって、専門職のみで構成される会議ではなく、多様な人々が参加する場において、計画の見直しを検討することが望ましい。
5.〇 正しい。現計画の実施で明らかになった健康課題をまとめるのは、計画の見直しを担当するA市の保健師が最初に行うことで正しい。なぜなら、住民と一緒に現計画で明らかになった健康課題をまとめることで、住民の計画に対する理解が進み、計画の改善につながるため。また、この過程を通して住民が地域の健康課題を自分ごととして捉えることができ、主体的な健康行動の推進にもつながる。
健康増進法は、国民の健康維持と現代病予防を目的として制定された日本の法律である。都道府県と市町村は、地域の実情に応じた健康づくりの促進のため、都道府県健康増進計画(義務)および市町村健康増進計画(努力義務)を策定する。平成14(2002)年に制定された。
【市町村が行う健康増進事業】
①健康手帳、②健康教育、③健康相談、④訪問指導、⑤総合的な保健推進事業、⑥歯周疾患検診、⑦骨粗鬆症検診、⑧肝炎ウイルス検診、⑨がん検診、⑩健康検査、⑪保健指導などである。
【都道府県の役割】
都道府県は、都道府県健康増進計画において、管内市町村が実施する健康増進事業に対する支援を行うことを明記する。都道府県保健所は、市町村が地域特性等を踏まえて健康増進事業を円滑かつ効果的に実施できるよう、必要な助言、技術的支援、連絡調整及び健康指標その他の保健医療情報の収集及び提供を行い、必要に応じ健康増進事業についての評価を行うことが望ましい。都道府県は、保健・医療・福祉の連携を図るとともに、市町村による健康増進事業と医療保険者による保健事業との効果的な連携を図るために、地域・職域連携推進協議会を活性化していくことが望ましい。
27 疾病のスクリーニングの要件で正しいのはどれか。
1.疾病の自然史が不明でも対象になる。
2.無症状の期間が無い疾病が対象となる。
3.治療方法が確立していなくても対象となる。
4.検査方法が、対象者より検者に受け入れやすい。
5.スクリーニング陽性者の確定診断の手技が確立している。
解答5
解説
スクリーニングとは、無症状の集団を対象に検査を行い、目標とする疾病の罹患者や発症が予測される患者をふるい分けるものである。診断のために追加の精密検査を受けた方が良いかが分かり、早期治療や、根拠に基づく意思決定を行うための判断材料を提供することができる。
【スクリーニングの条件】
①罹患率が高い。または、発見・治療が遅れると重篤化する疾病であ
②疾患の自然史が判明していること(疾患の経過が判明していること
③最初の徴候が現れてから顕在化するまでの期間がある程度長いこ
④スクリーニング陽性者に対して、精密検査で確定診断できる疾患
⑤簡便で低侵襲で信頼性の高い。比較的安価な検査方法が存在するこ
⑥敏感度・特異度が高いこと。
⑦被検者に肉体的・精神的負担を与えないこと。
⑧疾患に対する治療法が確立されていること。
1.× スクリーニングでの対象者は、疾病の自然史が「不明」ではなく「明らかな(疾病の経過が判明していること)」ものである。
2.× スクリーニングでの対象者は、無症状の期間が「無い」のではなく、無症状の期間がある疾病が対象となる。スクリーニングは、無症状の期間に特定の疾病に罹患している可能性を判断し、早期発見につなげるものである。
3.× スクリーニングでの対象者は、治療方法が「確立していないもの」ではなく確立しているものである。スクリーニングとは、無症状の集団を対象に検査を行い、目標とする疾病の罹患者や発症が予測される患者をふるい分けるものである。診断のために追加の精密検査を受けた方が良いかが分かり、早期治療や、根拠に基づく意思決定を行うための判断材料を提供することができる。
4.× 逆である。検査方法が、検者より対象者に受け入れやすい。なぜなら、スクリーニングでは、身体的・精神的負担を与えず、対象者にとって受け入れやすい方法であることが要件となるため。
5.〇 正しい。スクリーニング陽性者の確定診断の手技が確立している。疾病の早期発見・早期治療を目的としているためスクリーニング陽性者に対して、精密検査で確定診断ができることが要件となる。
28 A市の2地区間で、喫煙率が異なると予想して両地区で喫煙状況に関する標本調査を行った。統計学的検定を行い「仮説B:2地区の母喫煙率は等しい」が棄却されたので、2地区の喫煙率には有意差があると判断した。
仮説Bはどれか。
1.閾値仮説
2.帰無仮説
3.研究仮説
4.対立仮説
5.直線仮説
解答2
解説
・A市の2地区間で、「喫煙率が異なる」と予想。
・両地区で喫煙状況に関する標本調査を行った。
・統計学的検定の結果「仮説B:2地区の母喫煙率は等しい」が棄却された。
・2地区の喫煙率には「有意差がある」と判断した。
1.閾値仮説:放射の被ばく線量に関する用語。
2.帰無仮説:ある一つの変数が他の一つの変数、もしくは一群の変数と関係がないとする仮説。
3.研究仮説:「ここをこうすればこんなふうに良くなるのではないか」「これを行うことでこんな効果が得られるのではないか」といった具体的なビジョンのこと。
4.対立仮説:その当否が検定される帰無仮説に対立する仮説。
5.直線仮説:放射の被ばく線量に関する用語。
統計学的検定では、研究仮説に対して①対立仮説と②帰無仮説を立て、②帰無仮説が成り立つと仮定した場合に、②帰無仮説が否定されることで①対立仮説を採用する考え方である。
本問では、研究で明らかにしたいことを指す研究仮説は「2地区で喫煙率が異なる」であり、対立仮説は「2地区で喫煙率が等しくない」、帰無仮説は「2地区の喫煙率は等しい」となる。したがって、選択肢2.帰無仮説が正しい。
29 人口動態統計で、人口1,000対で表すのはどれか。
1.出生率
2.純再生産率
3.総再生産率
4.周産期死亡率
5.合計特殊出生率
解答1
解説
1.〇 正しい。出生率とは、人口1,000対で表す。出生率は、1年間の出生数をその年の人口で除したものである。
2.× 純再生産率とは、総再生産率に母親の世代(15~49歳の女性)の死亡率を考慮に入れたときの平均女児数を表したものである。
3.× 総再生産率とは、15~49歳の女性が、それぞれの年齢別出生率に従って子どもを生むと仮定した場合、1人の女性が生むであろう平均女児数を表したものである。
4.× 周産期死亡率とは、妊娠満22週以後の死産数と早期新生児死亡数を合計したものを出生数と妊娠満22週以後の死産数を加えたもので除したものである。【求め方】周産期死亡率 = 年間周産期死亡数 ÷(年間出生数 + 年間の妊娠満22週以降の死産数)× 100
5.× 合計特殊出生率とは、15~49歳の女性の年齢別出生率を合計したものである。1人の女性が一生の間に生む平均子ども数を表したものである。
30 全国から無作為抽出された世帯及び世帯員を対象として行われる調査はどれか。
1.患者調査
2.人口動態調査
3.食中毒統計調査
4.学校保健統計調査
5.国民生活基礎調査
解答5
解説
目的:病院・診療所を利用する患者について、傷病状況の実態を明らかに
調査頻度:3年に1回、医療施設静態調査と同時
調査対象:標本調査(全国の病院、一般診療所、歯科診療所から層化無作為に
調査項目:患者の性別、出生年月日、住所、入院・外来の種別、受療の状況等。
調査方法:医療施設の管理者が記入。
(参考:「患者調査(基幹統計)」厚生労働省HPより)
1.× 患者調査は、入院や外来患者の傷病の状況などを明らかにする調査である。無作為に拍出された医療機関を対象にした標本調査である。
2.× 人口動態調査は、出生、死亡、婚姻、離婚および死産の全数を対象とした悉皆調査(しっかいちょうさ)、全数調査である。それらの事象(人口動態事象)を把握する調査である。毎年集計される。
3.× 食中毒統計調査は、食中毒の患者ならびに食中毒死者の発生状況の把握と、複雑な発生状況の解明を目的としている。全国の保健所を対象とした悉皆調査(全数調査)で調査である。食品衛生法に基づき都道府県知事等から厚生労働大臣に報告があったものを対象とする統計調査で、毎年実施されている。
4.× 学校保健統計調査は、学校を対象にした標本調査で、児童生徒の発育や健康の状態を明らかにすることを目的としている。幼稚園、幼保連携型認定こども園、小学校、中学校、義務教育学校、高等学校及び中等教育学校の幼児、児童及び生徒を対象に、毎年実施される。
5.〇 正しい。国民生活基礎調査は、無作為に抽出された世帯・世帯員を対象とした標本調査である。保健、医療、福祉、年金、所得など、国民生活の基礎的事項を調査している。基幹統計調査に対する正確な報告を法的に確保するため、基幹統計調査の報告(回答)を求められた者が、報告を拒んだり虚偽の報告をしたりすることを禁止しており(第13条)、これらに違反した者に対して、50万円以下の罰金が定められている(第61条)。
全数調査(悉皆調査)とは対象となるものを全て調べる調査の事である。 全数調査は、誤差なく正確な結果が得られる反面、膨大な費用や手間がかかるという欠点もある。