26 症例対照研究で正しいのはどれか。
1.寄与危険の近似値を推定できる。
2.研究対象とする疾病が治癒した者を対照群とする。
3.症例群と対照群の過去の要因曝露状況を比較する。
4.症例群と対照群を追跡調査して死亡率を比較する。
5.症例群に試験薬、対照群に偽薬(プラセボ)を投与する。
解答3
解説
コホート研究とは、時間軸:前向き研究で、観察期間は長期間行う。信頼性は高いが費用・労力が大きい。
症例対照研究とは、時間軸:後ろ向き研究で、観察期間はない。信頼性は低いが費用・労力が小さい。症例群と対照群に分け、両群の過去の曝露状況を比較する方法である。曝露と疾患発症の関連を明らかにする。
1.× 「寄与危険度(リスク差)」の近似値ではなく、相対危険度(リスク比)の近似値であるオッズ比を推定することができる。ちなみに、寄与危険度(リスク差)とは、曝露群と非曝露群の疾病発症リスクの差のこと。「曝露因子があるとどれだけ危険度が増すか」を示す。何らかの介入を行った場合にどれだけの人が疾病を予防できるかが予測できるため、健康政策を進めるうえで重要な指標となる。一方、相対危険度(リスク比)とは、相対危険度(リスク比)を用いて要因と疾病の関連の強さを表現する。関連の強さが大きいほどこの要因により疾病が起きやすいことを示す。
2.× 研究対象とする疾病が「治癒した者」ではなく、罹患していない人を対照群とする。ちなみに、症例群は、研究対象とする疾病に現在「罹患している人」とする。
3.〇 正しい。症例群と対照群の過去の要因曝露状況を比較する。症例対照研究は、研究対象とする疾病の有無(=結果)に対して、その疾病に影響する曝露要因(=原因)を過去にさかのぼって調査し症例群と対照群で要因の曝露状況を比較する方法である。
4.× 症例群と対照群を追跡調査して死亡率を比較する方法は、「コホート研究」などで用いられる。コホート研究とは、時間軸:前向き研究で、観察期間は長期間行う。信頼性は高いが費用・労力が大きい。ちなみに、追跡捜査とは、すでに登録されている患者の生存率計算のために確認するべき登録患者の生死状況の調査である。
5.× 症例群に試験薬、対照群に偽薬(プラセボ)を投与する方法は、介入研究である。介入研究とは、研究者が意図的に一部の対象者に何らかの働きかけ(介入)を実施して、介入を受けた人たち(介入群)と受けなかった人たち(非介入群)を比較し、その影響を検討する研究である。
寄与危険度(リスク差)とは、曝露群と非曝露群の疾病発症リスクの差のこと。「曝露因子があるとどれだけ危険度が増すか」を示す。何らかの介入を行った場合にどれだけの人が疾病を予防できるかが予測できるため、健康政策を進めるうえで重要な指標となる。
相対危険度(リスク比)とは、相対危険度(リスク比)を用いて要因と疾病の関連の強さを表現する。関連の強さが大きいほどこの要因により疾病が起きやすいことを示す。
27 割合の差の検定に用いるのはどれか。
1.t検定
2.回帰分析
3.一元配置分散分析
4.χ2(カイ2乗)検定
5.Wilcoxon(ウィルコクソン)の順位和検定
解答4
解説
検定とは、統計学的手法を用いて、帰無仮説が正しいか、正しくないかを判断することである。
「検定の方法」
①パラメトリック検定(母集団が正規分布をするという仮説のもとに行う)
例:パラメトリック検定には、①t検定(2群の平均値の差を検定する)、②分散分析(3群以上の平均値に差があるかどうかを検定する)などがある。
②ノンパラメトリック検定(母集団の分布にかかわらず用いることのできる)に大別される。
例:ノンパラメトリック検定には、①Mann-Whitney検定(2群の中央値の差を検定する)、②X2検定(割合の違いを求める)、③Wilcoxon符号付順位検定(一対の標本による中央値の差を検定する)などがある。
1.× t検定とは、2群の平均値に統計学的な有意差があるかを検定する方法である。
2.× 回帰分析とは、変数(xとy)の関係を式に当てはめ、1つ以上の説明変数(独立変数)xを用いて、結果変数(従属変数)yを予測する方法である。割合の差の検定に用いるものではない。
3.× 一元配置分散分析(F検定)とは、3群間以上の平均値の差の検定である。1つの因子からなるデータを分析する方法で、因子に含まれる水準間の平均値の差を見ることができる。 例えば、ある学校の1組、2組、3組の算数のテストのデータがある場合、一元配置分散分析を用いて、1組、2組、3組の算数のテストの平均点に差があるかどうかを検定できる。ちなみに、一元配置分散分析とは、分析に1つの要因(独立変数)を用いた分散分析を指す。要因が2つの場合は「二元配置分散分析」、3つ以上の場合は「多元配置分散分析」といわれる。
4.〇 正しい。χ2(カイ2乗)検定は、割合の差の検定に用いる。χ2(カイ2乗)検定とは2群の割合に統計学的な有意差があるかを検定する方法である。2つの変数のカテゴリー同士の観察された頻度に理論値との差(割合の差)があるかどうかを検定するものである。
5.× Wilcoxon(ウィルコクソン)の順位和検定とは、一対の標本による中央値の差を検定する。順序尺度のデータを対象に、2群をひとまとめにして順位をつけた順位の和を用いて、2群間に差があるかどうかを検定するものである。
28 標準化死亡比(SMR)で正しいのはどれか。
1.人口の大きな集団ほど高くなる。
2.高齢化率の高い集団ほど高くなる。
3.昭和60年モデル人口を基準人口として用いる。
4.計算には観察集団の年齢階級別人口が必要である。
5.直接法による年齢調整死亡率の計算過程で得られる。
解答4
解説
死亡率は、①加齢や高齢者の割合が高い集団に高くなる。したがって、集団間の死亡水準を比較する場合、年齢構成による影響を考慮する必要がある。
直接法:①観察集団の年齢別死亡率が、基準集団の人口構成で起きた場合、全体の死亡率がどうなるかを求める。②観察集団の年齢調整死亡率を用いて計算するため、都道府県等の
間接法:①標準化死亡比(SMR)を用いる。②市町村等の年齢階級別死亡率がわからない小規模な集団に適用される。標準化死亡比(SMR)とは、期待死亡数と実際の死亡数の比をいう。年齢(階級)別死亡率が基礎集団(通常は全国)と同じであると仮定したときに期待(予測)される死亡数であり、実際の死亡数をこれで除したものが標準化死亡比(SMR)である。
1~2.× 人口の大きな集団/高齢化率の高い集団でも「高くなることはなく」関係しない。標準化死亡比(SMR)とは、期待死亡数と実際の死亡数の比をいう。年齢(階級)別死亡率が基礎集団(通常は全国)と同じであると仮定したときに期待(予測)される死亡数であり、実際の死亡数をこれで除したものが標準化死亡比(SMR)である。したがって、年齢という交絡因子の影響は排除される。
3.× 昭和60年モデル人口を基準人口として用いるのは、直接法の年齢調整死亡率を算出する際である。直接法とは、①観察集団の年齢別死亡率が、基準集団の人口構成で起きた場合、全体の死亡率がどうなるかを求める。②観察集団の年齢調整死亡率を用いて計算するため、都道府県等の年齢階級別死亡率がわかる大規模な集団で適用される。
4.〇 正しい。計算には観察集団の年齢階級別人口が必要である。標準化死亡比(SMR)とは、期待死亡数と実際の死亡数の比をいう。年齢(階級)別死亡率が基礎集団(通常は全国)と同じであると仮定したときに期待(予測)される死亡数であり、実際の死亡数をこれで除したものが標準化死亡比(SMR)である。したがって、年齢という交絡因子の影響は排除される。
5.× 「直接法」ではなく間接法による年齢調整死亡率の計算過程で得られる。
交絡とは、ある危険因子の曝露と転帰結果の関連を考える際に、その危険因子に付随し表には現れていないその他の危険因子が直接転帰に関連し、観察している因子は直接的には関連していない場合があることをいう(例:喫煙と癌の関係を調べる時、実際には付随する他の因子が直接に癌の発生と関係あるような場合)。曝露と転帰に係わる因子を交絡因子という。曝露と転帰の因果関係の過程で生じるものではないこと、対象の選択や判定上で問題となるバイアスとも異なることに注意が必要である。観察的研究ではこの交絡が起こる可能性が常に存在するため、①研究デザインにおける交絡のコントロール、②データ分析における交絡のコントロールが必要になる。
①研究デザインにおける交絡のコントロール
限定:対象集団を制限すること。
マッチング:症例と対照の間で交絡因子となりそうな要因を一致させること。
無作為化:まったく交絡因子が不明の時に対象者を介入群、非介入群にランダムに割り付ける方法である。無作為化の目的は、比較する群の性別、年齢、重症度などの既知の交絡因子の分布を均等にするばかりでなく、未知の交絡因子の影響を低減させること。
②データ分析における交絡のコントロール
層化:対象者をひとまとめにして分析せずに、そのサブグループごとに分けて分析すること。
多変量解析:統計学的モデルを用いて交絡因子も変数として含めることで、それぞれの変数の影響を見ていく方法である。
29 平成28年(2016年)の日本の人口動態統計における自殺死亡で正しいのはどれか。2つ選べ。
1.男性の死亡率は女性よりも高い。
2.20〜24歳の死因の第1位である。
3.死因順位別死亡数は第5位である。
4.自殺死亡率は10年前よりも増加している。
5.男性の死亡率が最も高い年齢階級は40〜44歳である。
解答1・2
解説
(※参考:「平成28年中における自殺の状況」警察庁HPより)
1.〇 正しい。男性の死亡率は女性よりも高い。自殺の死亡数は、男性15121人で、女性6776人である。
2.〇 正しい。20〜24歳の死因の第1位である。第2位が脳血管疾患、第3位が心疾患である。
3.× 死因順位別死亡数は、「第5位」ではなく第9位である。死亡数は20984人、死亡率16.8である。(※データ引用:「平成 28 年人口動態統計月報年計(概数)の概況」厚生労働省HPより)
4.× 自殺死亡率は10年前よりも増加ではなく減少している。自殺の死亡率(人口10万対)は、平成20(2008)年においては24.0であったが、平成30(2018)年においては16.1である。(※データ引用:平成30(2018)年の人口動態統計(厚生労働省)より)
5.× 男性の死亡率が最も高い年齢階級は、「40〜44歳」ではなく70歳以上である。男性・女性とも死亡率は年齢とともに死亡率は高くなっていく。
(※図引用:「平成 28 年人口動態統計月報年計(概数)の概況」厚生労働省HPより)
30 児童に感染症の疑いがある場合の養護教諭の対応で適切なのはどれか。2つ選べ。
1.学級閉鎖の期間を決定する。
2.全学級に保健だよりを配布する。
3.保健所に出席停止の措置を連絡する。
4.当該児童の保護者に出席停止を指示する。
5.当該児童の保護者に医療機関受診を勧奨する。
解答2・5
解説
養護教諭とは主に、小・中・高校に配属されている「保健室の先生」のことである。 学校でケガをしたり体調を崩したりしたとき、保健室に行くと対応してくれるのが養護教諭である。養護教諭がいることで、生徒たちが安心して学校に通える環境が整えられている。
①保健管理:救急処置、健康診断(実施計画立案、準備、指導、評価)、感染症予防、経過観察・配慮を必要とする子どもの支援、環境管理。
②保健教育:授業への参画、保健指導(個別の児童・生徒と保護者への指導・助言、集団への指導)
③健康相談:心身の健康問題への対応・支援
④保健室経営:保健室経営計画の作成、備品の管理
⑤保健組織活動学校保健委員会 等
⑥学校保健計画・学校安全計画策定への参画
1.× 学級閉鎖の期間を決定するのは、「養護教諭」ではなく学校の設置者が行う。他にも、学校の設置者の主な職務として、職員の健康診断があげあれる。
2.〇 正しい。全学級に保健だよりを配布する/当該児童の保護者に医療機関受診を勧奨するのは、養護教諭の対応である。養護教諭とは主に、小・中・高校に配属されている「保健室の先生」のことである。 学校でケガをしたり体調を崩したりしたとき、保健室に行くと対応してくれるのが養護教諭である。養護教諭がいることで、生徒たちが安心して学校に通える環境が整えられている。ちなみに、保健だよりとは、保育園において園児の健やかな成長を守るために必要なおたよりである。感染症対策や園児の健康状態などを保護者に向けて発行・配信することで、現場の状況を把握しやすくなる。
3~4.× 保健所に出席停止の措置を連絡する/当該児童の保護者に出席停止を指示するのは、「養護教諭」ではなく学校長である。学校長が出席停止を指示したときは、その旨を学校の設置者に報告しなければならない。さらに、学校の設置者は保健所に出席停止の連絡をしなければならない。他にも、学校長の主な職務として、①学校保健計画および学校安全計画の指導、助言、決定。②定期・臨時健康診断の実施。③感染症、その疑いのある児童生徒等の出席停止があげられる。