31 Aさん(43歳、女性、公務員)。乳癌で手術を受け、手術後1か月で職場復帰となった。復帰後も仕事を継続しながら化学療法、放射線療法、ホルモン療法を行う予定である。
Aさんが利用できるのはどれか。2つ選べ。
1.医療扶助
2.傷病手当金
3.介護保険制度
4.高額療養費制度
5.確定申告による医療費控除
解答4・5
解説
・Aさん(43歳、女性、公務員、乳癌の手術後)。
・手術後1か月:職場復帰。
・予定:化学療法、放射線療法、ホルモン療法を行う。
→本症例の今後の課題は、仕事と治療の両立が課題となる。金銭面の支援や軽減が適応となるものを選択する。
1.× 医療扶助は利用できない。医療扶助とは、生活保護の8つの扶助のひとつである。原則現金給付であるが、医療扶助と介護扶助は現物給付である。Aさんは、公務員として就業している。
2.× 傷病手当金は利用できない。傷病手当金とは、業務外の疾病等で引き続き勤務に服することができなくなった日以後3日を経過した日(4日目)から、勤務に服することができない期間(最長で1年6か月)支給される休業給付のことである。これは、Aさんは仕事と治療を両立させながら利用できる給付ではない。
3.× 介護保険制度は利用できない。なぜなら、Aさんは仕事と治療を両立させることが目標で、日常生活には支障をきたしていない可能性が高いため。ちなみに、介護保険制度とは、寝たきりや認知症等で常時介護を必要とする状態(要介護状態)になった場合や、家事や身支度等の日常生活に支援が必要であり、特に介護予防サービスが効果的な状態(要支援状態)になった場合に、介護の必要度合いに応じた介護サービスを受けることができる。また、Aさんは、介護保険の第2号被保険者である。したがって、16の特定疾病に該当すれば介護保険も使用できるが、Aさんの乳癌が特定疾病の「末期がん」に該当するという情報はなく、現時点では利用できない可能性が高い。
4.〇 正しい。高額療養費制度は利用できる。高額療養費制度とは、医療機関や薬局の窓口で支払った額が、ひと月(月の初め から終わりまで)で上限額を超えた場合に、その超えた金額を支給する制度である。ちなみに、入院時の食費負担や差額ベッド代等は含まない。Aさんは乳癌の手術に加え、化学療法、放射線療法、ホルモン療法を受ける予定であり、医療費が高額となる可能性が高い。
5.〇 正しい。確定申告による医療費控除は利用できる。医療費控除とは、所得税及び個人住民税において、自分自身や家族のために医療費を支払った場合に適用となる控除である。Aさんの医療費は高額になる可能性があるため、確定申告による医療費控除を利用し、税負担の軽減を図ることができる。
生活保護制度は、『日本国憲法』25条の理念に基づき、生活困窮者
生活扶助:日常生活に必要な費用
住宅扶助:アパート等の家賃
教育扶助:義務教育を受けるために必要な学用品費
医療扶助:医療サービスの費用
介護扶助:介護サービスの費用
出産扶助:出産費用
生業扶助:就労に必要な技能の修得等にかかる費用
葬祭扶助:葬祭費用
【生活保護法の4つの基本原理】
①国家責任の原理:法の目的を定めた最も根本的原理で、憲法第25条の生存権を実現する為、国がその責任を持って生活に困窮する国民の保護を行う。
②無差別平等の原理:全ての国民は、この法に定める要件を満たす限り、生活困窮に陥った理由や社会的身分等に関わらず無差別平等に保護を受給できる。また、現時点の経済的状態に着目して保護が実施される。
③最低生活の原理:法で保障する最低生活水準について、健康で文化的な最低限度の生活を維持できるものを保障する。
④保護の補足性の原理:保護を受ける側、つまり国民に要請される原理で、各自が持てる能力や資産、他法や他施策といったあらゆるものを活用し、最善の努力をしても最低生活が維持できない場合に初めて生活保護制度を活用できる。
【4つの原則】
①申請保護の原則:保護を受けるためには必ず申請手続きを要し、本人や扶養義務者、親族等による申請に基づいて保護が開始。
②基準及び程度の原則:保護は最低限度の生活基準を超えない枠で行われ、厚生労働大臣の定める保護基準により測定した要保護者の需要を基とし、その不足分を補う程度の保護が行われる。
③必要即応の原則:要保護者の年齢や性別、健康状態等その個人又は世帯の実際の必要の相違を考慮して、有効且つ適切に行われる。
④世帯単位の原則:世帯を単位として保護の要否及び程度が定められる。また、特別な事情がある場合は世帯分離を行い個人を世帯の単位として定めることもできる。
(※参考:「生活保護制度」厚生労働省HPより)
(※参考:「生活保護法の基本原理と基本原則」室蘭市HPより)
介護保険制度とは、寝たきりや認知症等で常時介護を必要とする状態(要介護状態)になった場合や、家事や身支度等の日常生活に支援が必要であり、特に介護予防サービスが効果的な状態(要支援状態)になった場合に、介護の必要度合いに応じた介護サービスを受けることができる。
【目標】
予防とリハビリテーションの重視
高齢者による選択
在宅ケアの推進
利用者本位のサービスの提供
社会連帯による支え合い
介護基盤の整備
重層的で効率的なシステム
【基本理念】
自己決定の尊重
生活の継続
自己支援(残存能力の活用)
32 介護老人福祉施設から保健所に、インフルエンザを発症する入所者が増加しており集団感染が懸念されるので、どのように対応したらよいかとの相談があった。
感染拡大防止のために保健所が施設に行う指導として適切なのはどれか。2つ選べ。
1.未発症の入所者にN95マスクを着用させる。
2.発症した職員の復帰は解熱の翌日からとする。
3.インフルエンザワクチン未接種の職員は自宅待機させる。
4.多数の入所者が集まって実施しているレクリエーション活動を休止する。
5.職員および面会者が入所者の部屋へ入退室する時にアルコールで手指消毒を行う。
解答4・5
解説
・介護老人福祉施設から保健所に相談。
・インフルエンザを発症する入所者が増加しており集団感染が懸念される。
・「どのように対応したらよいか」との相談があった。
→インフルエンザの感染経路は主に①飛沫感染と②接触感染である。(新型インフルエンザ対策ガイドラインにおいては、新型インフルエンザの空気感染について「空気感染の可能性は否定できないが、一般的に起きるとする科学的根拠がない」とされている)。ちなみに、インフルエンザとは、インフルエンザウイルスへの感染を原因に発症する。A型、B型、C型の3種類があり、このうち冬季に流行する「季節性インフルエンザ」はA型とB型によるものである。症状として、38度以上の発熱や寒気、関節痛、全身のだるさなどの全身症状と、喉の痛みや咳などの風邪のような症状が現れる。
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1.× 未発症の入所者にN95マスクを着用させる必要はない。なぜなら、N95マスクは、空気(飛沫核)感染予防策として医療者が着用するものであるため。インフルエンザの感染経路は主に①飛沫感染と②接触感染である。(新型インフルエンザ対策ガイドラインにおいては、新型インフルエンザの空気感染について「空気感染の可能性は否定できないが、一般的に起きるとする科学的根拠がない」とされている)。
2.× 発症した職員の復帰は、「解熱の翌日から」ではなく、解熱後2日(幼児は3日)経過するまで様子を見たほうが良い。なぜなら、インフルエンザは、発症前日から発症後3~7日間はウイルスを排出するとされており、解熱の翌日ではウイルスを排出している可能性があるため。ちなみに、『学校保健法』では、出席停止基準として発症後5日かつ解熱後2日(幼児は3日)経過するまでと規定されている。
3.× インフルエンザワクチン未接種の職員は、自宅待機させる必要はない。ただし、かぜと比較すると子どもや妊婦、高齢者などは重症化しやすいため感染防止に努める必要がある。インフルエンザの症状として、38度以上の発熱や寒気、関節痛、全身のだるさなどの全身症状と、喉の痛みや咳などの風邪のような症状が現れる。
4.〇 正しい。多数の入所者が集まって実施しているレクリエーション活動を休止する。インフルエンザの感染経路は主に①飛沫感染と②接触感染である。感染拡大防止対策としては、①手洗い、②速乾性擦式消毒薬を用いた手指消毒、③人ごみを避ける、④インフルエンザ発症者の空間的な隔離が有効である。
5.〇 正しい。職員および面会者が入所者の部屋へ入退室する時にアルコールで手指消毒を行う。インフルエンザの感染経路は主に①飛沫感染と②接触感染である。感染拡大防止対策としては、①手洗い、②速乾性擦式消毒薬を用いた手指消毒、③人ごみを避ける、④インフルエンザ発症者の空間的な隔離が有効である。
(※参考:「インフルエンザワクチンリーフ」厚生労働省HPより)
33 自治体の保健師が行う業務管理はどれか。2つ選べ。
1.地域活動計画と他部門の計画との整合性を判断する。
2.活動の評価結果を翌年度の計画に反映させる。
3.専門性を向上させるための研修を実施する。
4.地域のニーズを踏まえた地域診断を行う。
5.相談や訪問などの記録を管理する。
解答1・2
解説
1~2.〇 正しい。地域活動計画と他部門の計画との整合性を判断すること/活動の評価結果を翌年度の計画に反映させることは、事業・業務管理にあたる。事業・業務管理とは、地方自治体の上位計画や組織目標に基づく、事業計画策定や進行管理を行い、評価結果を次年度の計画等へ反映させる。
3.× 専門性を向上させるための研修を実施することは、人材育成にあたる。人材育成とは、保健師の育成過程に応じて、中・長期的な研修計画および生涯学習企画と実施を行い、実践報告を評価する。
4.× 地域のニーズを踏まえた地域診断を行うことは、地区管理にあたる。地区管理とは、地域のニーズや課題から地域診断を行い、住民と協働した施策化を行う。
5.× 相談や訪問などの記録を管理することは、事例管理にあたる。事例管理とは、個々の事例のケアから始まり、それを地域の問題としてとらえ、ダイナミックな活動を展開する。
保健師が担う管理機能には、キャリア発達の段階に沿って、新任期1年目から担うものと、中堅や管理者になってから担うものに分けられる。保健師が行う地域看護管理の機能として、①初任期にも事例管理、事業管理、地区管理等管理的な機能を果たす。②、①の延長線上に管理者の組織運営管理や人材育成管理そして地域管理等の機能がある。③管理的な機能は初任期から発揮されていることから、保健師の専門性の中核を成すものといえる。④地区管理も行うため、所属組織内の管理にとどまるものではない。
①事例管理:個々の事例のケアから始まり、それを地域の問題としてとらえ、ダイナミックな活動を展開する。
②地区管理:地域のニーズや課題から地域診断を行い、住民と協働した施策化を行う。
③事業・業務管理:地方自治体の上位計画や組織目標に基づく、事業計画策定や進行管理を行い、評価結果を次年度の計画等へ反映させる。
④組織運営管理:組織理念・目標や地域の課題を共有して組織としての方針を決定し、業務の効率化を高めながら組織体制を機能させる。
⑤予算編成:予算の仕組みを把握し、事業企画に伴う予算編成を行う。
⑥予算管理:新たな政策や人材確保等のための予算獲得および適切な執行と評価を行い、予算面から公衆衛生看護活動を担保する。
⑦人材育成:保健師の育成過程に応じて、中・長期的な研修計画および生涯学習企画と実施を行い、実践報告を評価する。
⑧人事管理:組織の目標を達成するため、組織に必要な保健師人員数を確保し、職員を計画的に適材適所へ配置するとともに、人事評価を行う。
⑨情報管理:地域の実態を把握するための情報収集・分析や正確な情報伝達のための体制整備、マスコミ対応、個人情報への配慮を行う。
⑩健康危機管理:危機発生を予測し,住民と協働する健康危機管理の体制づくり全般を行う。
(参考:「保健師に求められる看護管理のあり方」社団法人日本看護協会より)
34 平成27年度(2015年度)の社会保障給付費で正しいのはどれか。2つ選べ。
1.医療給付費が最も多くを占める。
2.雇用保険の失業給付が含まれる。
3.給付総額は年間300兆円を超える。
4.給付総額は前年度よりも減少している。
5.国民1人あたりの給付費は約90万円である。
解答2・5
解説
(表引用:平成28(2016)年度の部門別社会保障給付費より)
1.× 最も多くを占めるのは、医療給付費ではなく「年金給付」である。社会保障給付費を「医療」、「年金」、「福祉その他」に分類して部門別にみると、「医療」が38兆3,965億円で総額に占める割合は32.8%、「年金」が54兆3,770億円で46.5%、「福祉その他」が24兆1,291億円で20.6%である。(一部引用:平成28(2016)年度の部門別社会保障給付費より)
2.〇 正しい。雇用保険の失業給付が含まれる。そのほか、社会福祉サービスや介護対策にかかる費用、生活保護の医療扶助以外の各種扶助、児童手当などの各種手当、医療保険の傷病手当金、労災保険の休業補償給付、雇用保険の求職者給付などが「福祉その他の給付」に含まれる。
3.× 給付総額は、「年間300兆円」を超えるのではなく、約117兆円である。2016 年度の社会保障給付費の総額は116兆9,027億円であり、対前年度増加額は1兆5,020億円、伸び率は1.3%、対GDP比は21.68%であり対前年比で
0.06%ポイント増加した。
4.× 給付総額は前年度よりも「減少」ではなく、増加している。平成28(2016)年度の社会保障給付費の総額は約117兆円であり、平成27(2015)年度の総額は約115兆円である。
5.〇 正しい。国民1人あたりの給付費は約90万円である。 1人当たりの社会支出は94万2,500円であり、1 人当たりの社会保障給付費は92万1,000円である。(※データ引用:平成28(2016)年度の部門別社会保障給付費より)
「医療」:医療保険、老人保健の医療給付、生活保護の医療扶助、労災保険の医療給付、結核、精神その他の公費負担医療、保健所等が行う公衆衛生サービスに係る費用等が含まれる。
「年金」:厚生年金、国民年金等の公的年金、恩給及び労災保険の年金給付等が含まれる。
「福祉その他」:社会福祉サービスや介護対策に係る費用、生活保護の医療扶助以外の各種扶助、児童手当等の各種手当、医療保険の傷病手当金、労災保険の休業補償給付、雇用保険の失業給付が含まれる。なお、再掲した介護対策には、介護保険給付と生活保護の介護扶助、原爆被爆者介護保険法一部負担金及び介護休業給付が含まれる。
35 医療法に基づき都道府県が定める医療計画における5疾病に含まれるのはどれか。2つ選べ。
1.がん
2.結核
3.脳卒中
4.慢性肝炎
5.気管支喘息
解答1・3
解説
都道府県が定める医療計画における5疾病とは、生活習慣病、その他の国民の健康の保持を図るために特に広範かつ継続的な医療の提供が必要と認められる疾病のことで、①がん、②脳卒中、③心筋梗塞などの心血管疾患、④糖尿病、⑤精神疾患が含まれる。したがって、選択肢1.3.がん/脳卒中が医療法に基づき都道府県が定める医療計画における5疾病に含まれる。
【5疾病】
①がん、②脳卒中、③心筋梗塞などの心血管疾患、④糖尿病、⑤精神疾患
【5事業】
①救急医療、②災害医療、③へき地医療、④周産期医療、⑤ 小児医療(小児救急を含む)
【記載事項】
①5疾病の治療または予防に係る事業、5事業の医療の確保に必要
②5疾病5事業に関する目標、医療連携体制(施設間の機能分担・
③居宅等における医療の確保。
④地域医療構想に関する事項。
⑤地域医療構想の達成に向けた病床の機能の分化及び連携の推進。
⑥病床の機能に関する情報提供の推進。
⑦外来医療の確保。
⑧医師の確保。
⑨医療従事者(医師を除く)の確保
⑩医療の安全の確保
⑪医療圏の設定(二次、三次医療圏を定める)
⑫医師少数区域等の設定
⑬基準病床数(一般病床、療養病床、結核病床、精神病床、感染症病
⑭地域医療支援病院等の整備目標。
⑮その他医療提供体制の確保に関する必要事項。
(※参考:「医療計画について」厚生労働省HPより)