次の文を読み41〜43の問いに答えよ。
Aさん(44歳、女性)。特定健康診査の結果は、身長156cm、体重72kg。BMI29.6。腹囲93cm。血圧135/85mmHg。空腹時血糖95mg/dL、HDLコレステロール38mg/dL、中性脂肪160mg/dL。喫煙歴はない。特定健康診査の結果、特定保健指導の対象であると説明したところ「運動は嫌いだし、保健指導は必要ない」と言っていたが、保健師の働きかけで初回面接を行うことができた。初回面接では、保健師はAさんの行動変容ステージを無関心期であると判断し、Aさんの思いを受け止めながら、検査結果の示す意味を説明した。
41 Aさんから得る情報で優先度が高いのはどれか。
1.食事の好み
2.1日の運動量
3.過去10年間の体重
4.将来の自分の健康についての考え
解答4
解説
・Aさん(44歳、女性)
・【特定健康診査の結果】身長156cm、体重72kg、BMI29.6、腹囲93cm、血圧135/85mmHg、空腹時血糖95mg/dL、HDLコレステロール38mg/dL、中性脂肪160mg/dL。喫煙歴はない。
・特定健康診査の結果:特定保健指導の対象である。
・初回面接:Aさんの行動変容ステージを無関心期であった。
→Aさんは、BMI29.6(25以上が肥満)、腹囲93cm(90cm以上肥満)である。特定保健指導とは、予備群や軽症でまだお薬を必要としない人に対してもしっかり働きかけ、生活習慣病にならないようなしくみである。無関心期とは、行動変容を考えていない時期である。したがって、本症例は、次のステージでもある「関心期:行動変容を考えているが実行していない時期」への移行の手助けをしていく。
1~3.× 食事の好み/1日の運動量/過去10年間の体重は、優先度は低い。なぜなら、Aさんは、運動が嫌いで、保健指導の必要性を感じていない無関心期にあたるため。むしろ、食事の好みや1日の運動量、過去10年間の体重を確認することで、Aさんに運動に対する抵抗感をさらに与える可能性がある。
4.〇 正しい。将来の自分の健康についての考えは、最も優先度が高い。なぜなら、無関心期において、そもそも関心がないため、保健指導には参加しないことが多いため。本人が現在の状況をどのように理解しているか把握し、本人に問題の気づきを促す必要がある。Aさんの価値観や考えを受け止めながら行動変容の動機づけに促していく。無関心期の人が行動変容へ至るには、自らが行動変容の必要性を認識できるよう現在の問題について気づきを促す支援を行う。
BMI(Body Mass Index)とは、ボディマス指数と呼ばれ、体重と身長から算出される肥満度を表す体格指数である。
体重(kg)÷[身長(m)]2で算出される。
18.5未満が低体重(やせ)、18.5以上25未満が普通、25以上が肥満と判定される。
変化ステージ理論(行動変容ステージモデル)とは、人の健康行動の変容や維持について示された理論である。1980年代前半に禁煙の研究から導かれたモデルであり、いろいろな健康(食事や運動、禁煙)に関する行動について幅広く研究と実践が進められた。行動変容ステージモデルでは、人が行動(生活習慣)を変える場合は、「無関心期」→「関心期」→「準備期」→「実行期」→「維持期」の5つのステージを通ると考えられている。
無関心期:行動変容を考えていない時期である。
関心期:行動変容を考えているが実行していない時期である。
準備期:すぐ始める意思がある時期もしくは独自の方法でも何かしら行っている時期である。
実行期:望ましい行動を起こした時期である。
維持期:6か月以上行動を継続している時期である。
次の文を読み41〜43の問いに答えよ。
Aさん(44歳、女性)。特定健康診査の結果は、身長156cm、体重72kg。BMI29.6。腹囲93cm。血圧135/85mmHg。空腹時血糖95mg/dL、HDLコレステロール38mg/dL、中性脂肪160mg/dL。喫煙歴はない。特定健康診査の結果、特定保健指導の対象であると説明したところ「運動は嫌いだし、保健指導は必要ない」と言っていたが、保健師の働きかけで初回面接を行うことができた。初回面接では、保健師はAさんの行動変容ステージを無関心期であると判断し、Aさんの思いを受け止めながら、検査結果の示す意味を説明した。
42 初回面接で、Aさんから「1か月に1kgの体重減少を目標に、食事と運動の改善に取り組んでみたい」という発言が聞かれ、間食を減らして毎日8,000歩を目標に歩くこととした。初回面接から2週後に電話連絡したところ、Aさんは「間食はしていないし、ご飯は小さなお茶碗に変えて1杯だけに減らしている。なかなか毎日8,000歩は歩けない。体重はあまり変わらない。こんな自分はだめだ」と話した。
この時の保健師の対応で最も適切なのはどれか。
1.急に体重は減らないと話す。
2.スポーツジムに通うことを提案する。
3.食事と運動を併せて取り組む必要性を話す。
4.自主的にご飯の量を減らしている努力を認める。
解答4
解説
・初回面接:Aさんの目標「1か月に1kgの体重減少と、食事・運動の改善」
・間食を減らすこと、毎日8,000歩歩く。
・2週後:Aさん「間食はしていない、ご飯は1杯だけ。毎日8,000歩は歩けない。体重はあまり変わらない。こんな自分はだめだ」
→Aさんは自主的に行動目標を設定し実行していることから、準備期から実行期に移行した段階にある。準備期とは、すぐ始める意思がある時期もしくは独自の方法でも何かしら行っている時期である。この時期は、目標設定と行動計画のための自己決定を支援することや具体的な方法などについて情報提供する。
1.× 急に体重は減らないと話す必要ない。なぜなら、Aさんは「こんな自分はだめだ」と言っており、さらに自尊心を傷つけることにつながりかねないため。Aさんの行動変容への意欲が消失する可能性がある。
2.× スポーツジムに通うことを提案する必要ない。なぜなら、新たな方法を提案する前に、Aさんの取り組みについて一緒に振り返ることが必要であるため。「毎日8,000歩は歩けない」理由を一緒に考える。
3.× 食事と運動を併せて取り組む必要性を話す必要ない。なぜなら、Aさんは「こんな自分はだめだ」と言っており、さらに自尊心を傷つけることにつながりかねないため。Aさんの努力を認めていないと受け取られ、さらに自信を低下させることにつながりかねない。Aさんは、食事と運動の目標を設定し、自分なりに努力しているが成果が出ないことで自信を喪失している状態にある。
4.〇 正しい。自主的にご飯の量を減らしている努力を認める。Aさんは自主的に行動目標を設定し実行していることから、準備期から実行期に移行した段階にある。実行期を継続するためには、称賛や自己効力感を高める支援が有効であるとされる。また、この時期は、目標設定と行動計画のための自己決定を支援することや具体的な方法などについて情報提供する。
変化ステージ理論(行動変容ステージモデル)とは、人の健康行動の変容や維持について示された理論である。1980年代前半に禁煙の研究から導かれたモデルであり、いろいろな健康(食事や運動、筋炎)に関する行動について幅広く研究と実践が進められた。行動変容ステージモデルでは、人が行動(生活習慣)を変える場合は、「無関心期」→「関心期」→「準備期」→「実行期」→「維持期」の5つのステージを通ると考えられている。
無関心期:行動変容を考えていない時期である。
関心期:行動変容を考えているが実行していない時期である。
準備期:すぐ始める意思がある時期もしくは独自の方法でも何かしら行っている時期である。
実行期:望ましい行動を起こした時期である。
維持期:6か月以上行動を継続している時期である。
次の文を読み41〜43の問いに答えよ。
Aさん(44歳、女性)。特定健康診査の結果は、身長156cm、体重72kg。BMI29.6。腹囲93cm。血圧135/85mmHg。空腹時血糖95mg/dL、HDLコレステロール38mg/dL、中性脂肪160mg/dL。喫煙歴はない。特定健康診査の結果、特定保健指導の対象であると説明したところ「運動は嫌いだし、保健指導は必要ない」と言っていたが、保健師の働きかけで初回面接を行うことができた。初回面接では、保健師はAさんの行動変容ステージを無関心期であると判断し、Aさんの思いを受け止めながら、検査結果の示す意味を説明した。
43 6か月後の最終評価面接では、体重66kg、腹囲85cmであり、Aさんは「何度もやめたくなったが、なんとか続けられた」と話した。Aさんは、翌年の特定健康診査を受診し、身長156cm、体重67kg。BMI27.9。腹囲86cm。血圧130/80mmHg。空腹時血糖90mg/dL、HDLコレステロール45mg/dL、中性脂肪142mg/dLという結果であった。
この時のAさんの状態はどれか。
1.情報提供レベル
2.動機づけ支援レベル
3.積極的支援レベル
4.医療機関への受診勧奨レベル
解答2
解説
・6か月後の最終評価面接:体重66kg、腹囲85cm
・翌年の特定健康診査(以前):身長156cm、体重67kg(72kg)。BMI27.9(29.6)。腹囲86cm(93cm)。血圧130/80mmHg(135/85mmHg)。空腹時血糖90mg/dL(95mg/dL)、HDLコレステロール45mg/dL(38mg/dL)、中性脂肪142mg/dL(160mg/dL)
→本症例の体重やBMI、腹囲は改善が見られている。ただ血圧やHDLコレステロールが依然として高い。
Aさんの結果は、特定保健指導対象者の選定と階層化の基準によると、女性で腹囲90cm未満、BMI25以上に該当し、収縮期血圧130mmHg以上、服薬歴・喫煙歴なし、ということから、動機づけ支援の対象となる。したがって、選択肢2.動機づけ支援レベルが正しい。
4.× 医療機関への受診勧奨レベルは該当しない。なぜなら、厚生労働省の「標準的な健診・保健指導プログラム【平成30年度版】」に示されている医療機関への受診勧奨レベルは、血圧140/90mrnHg以上、中性脂肪300mg/dL以上、HDLコレステロール34mg/dL以下、空腹時血糖126mg/dL以上であるため。
ステップ1
○ 腹囲とBMI で内臓脂肪蓄積のリスクを判定する
・腹囲 M≧85cm、F≧90cm →(1)
・腹囲 M<85cm、F<90cm かつ BMI≧25 →(2)
ステップ2
○ 検査結果、質問票より追加リスクをカウントする。
○ ①~③は内臓脂肪症候群(メタボリックシンドローム)の判定項目、④はその他の関連リスクとし、④喫煙歴については①から③のリスクが1つ以上場合にのみをカウントする。
①血糖
a 空腹時血糖 100mg/dl 以上 又は
b HbA1cの場合 5.2% 以上 又は
c 薬剤治療を受けている場合(質問票より)
②脂質
a 中性脂肪 150mg/dl 以上 又は
b HDL コレステロール 40mg/dl 未満 又は
c 薬剤治療を受けている場合(質問票より)
③血圧 a 収縮期 130mmHg 以上 又は
b 拡張期 85mmHg 以上 又は
c 薬剤治療を受けている場合(質問票より)
④質問票 喫煙歴あり
ステップ3
ステップ1、2から保健指導レベルをグループ分け
(1)の場合
①~④のリスクのうち
追加リスクが
2以上の対象者は 【積極的支援レベル】
1の対象者は 【動機づけ支援レベル】
0の対象者は 【情報提供レベル】 とする。
(2)の場合
①~④のリスクのうち
追加リスクが
3以上の対象者は 【積極的支援レベル】
1又は2の対象者は 【動機づけ支援レベル】
0の対象者は 【情報提供レベル】 とする。
次の文を読み44〜46の問いに答えよ。
人口12万人のA市のB地区。1980 年代に開発された新興住宅地で、市全体の出生は緩やかに減少し、高齢化が進行している。B地区では月2回、民生委員3名と地区内のボランティア7名をスタッフとして、地区の乳幼児とその保護者を対象とした育児サロンが10年ほど前から開催されている。地区担当保健師は2〜3か月ごとにサロンに参加し、参加者やスタッフの相談に応じている。
44 ある日、民生委員のCさんから「最近加わったスタッフから、保護者にどう声かけして良いか自信がなくて不安だという声を聞いた。民生委員としてどうしたら良いだろうか」と保健師に相談があった。
保健師がCさんに提案する内容で最も適切なのはどれか。
1.「慣れるまで見守りましょう」
2.「個別にCさんの経験を伝えてください」
3.「スタッフ間で保護者への関わり方を振り返る機会を設けましょう」
4.「自信のないスタッフは無理に出席しなくて良いことを伝えてください」
解答3
解説
・人口12万人のA市のB地区。
・市全体で少子高齢化が進む。
・B地区:地区の乳幼児とその保護者を対象とした育児サロンが開催されている。
・地区担当保健師は2〜3か月ごとにサロンに参加している。
・民生委員「最近加わったスタッフから、保護者にどう声かけして良いか自信がなくて不安だという声を聞いた。民生委員としてどうしたら良いだろうか」と保健師に相談があった。
→子育てサロンとは、子育てをしている保護者やそのお子さまが同じような仲間と交流できる憩いの場である。子育ての悩みを相談できる保護者どうしの仲間づくりとお子さまの遊び場づくりを目的としている。地域の社会福祉協議会や民生委員、主任児童委員、ボランティアなどが地域の集会所を借りて運営している点が特徴である。
1.× 慣れるまで見守る必要はない。なぜなら、スタッフが慣れるまで見守りが必ずしも「保護者への声かけの自信」がつくと断定できないため。最近加わったスタッフへの教育環境が整っているか大切であるが、まずはスタッフ全体の教育の機会を作る。
2.× 個別にCさんの経験を伝える優先度は低い。なぜなら、先輩委員としてのCさんの経験が必ずしも「保護者への声かけの自信」がつくと断定できないため。また、個別指導はスタッフ全体の対人スキルを向上させるだけの波及効果は少ない。まずはスタッフ全体の教育の機会を作る。
3.〇 正しい。スタッフ間で保護者への関わり方を振り返る機会を設ける。地域の社会資源を支える新人スタッフを育成するのも保健師の役割である。先輩委員としてのCさんの相談を個人の課題としてではなく、スタッフ全員の教育の機会として捉えることもできる。
4.× 自信のないスタッフは、無理に出席しなくて良いことを伝える必要はない。なぜなら、自信のないスタッフが出席しないだけでは課題解決にはつながらないため。またさらなる先輩スタッフに負担を強いることにつながり、新しいスタッフの自信喪失につながりかねない。なぜ自信がないのかをスタッフとともに掘り下げて考える。
民生委員は、日本独自の制度化されたボランティアである。地域社会の福祉の増進図っている。任期は3年で都道府県知事の推薦を受けて厚生労働大臣に委嘱されたものである。市町村の各地区に配置され、①住民の生活状況の把握、②関係機関との連携、③援助を要するものヘの相談援助を主な役割とする。根拠法令は「民生委員法」で給与の支給はない。
次の文を読み44〜46の問いに答えよ。
人口12万人のA市のB地区。1980 年代に開発された新興住宅地で、市全体の出生は緩やかに減少し、高齢化が進行している。B地区では月2回、民生委員3名と地区内のボランティア7名をスタッフとして、地区の乳幼児とその保護者を対象とした育児サロンが10 年ほど前から開催されている。地区担当保健師は2〜3か月ごとにサロンに参加し、参加者やスタッフの相談に応じている。
45 地区担当保健師が参加した日のサロンで、参加していた保護者から災害時の不安に関する訴えが聞かれたことが発端で、B地区でも防災に向けた対策をみんなで考えていくことが必要ではないかという声が多く聞かれた。保健師は、この機会をB地区の防災対策の促進につなげようと考えた。
地区担当保健師がB地区に対して行う支援で適切なのはどれか。
1.B地区の要配慮者の確認を提案する。
2.B地区の防災リーダーを担う。
3.消防団への加入を勧める。
4.地区防災計画を作成する。
解答1
解説
・保護者から「災害時の不安」
・B地区でも防災に向けた対策をみんなで考えることに。
・保健師「B地区の防災対策の促進につなげよう」
→地区担当保健師がB地区に対して行う支援は、まず「災害時の不安」と「B地区の防災対策」である。B地区の住民は、みんなで防災対策を考えることが必要だと認識している。住民同士でB地区の要配慮者の確認を行うことで、地域の防災上の課題が明らかになり、みんなで地域に必要な防災対策を話し合うきっかけにつながる。
1.〇 正しい。B地区の要配慮者の確認を提案する。B地区の住民は、みんなで防災対策を考えることが必要だと認識している。住民同士でB地区の要配慮者の確認を行うことで、地域の防災上の課題が明らかになり、みんなで地域に必要な防災対策を話し合うきっかけにつながる。
2.× B地区の防災リーダーを担うのは、「保健師の役割」ではなく地域住民が担うものである。防災リーダーとは、地域防災活動の促進を目的に、自主防災組織の一員として、平常時には防災訓練の企画への参画、地域住民への防災技術の指導、防災知識の普及・啓発等を行う。
3.× 消防団への加入は、「保健師が防災対策の促進のためのもの」ではなく、住民自身の意思で決めるものである。ちなみに、消防団は、市町村ごとの条例に基づき組織され、消防や防災、災害時の対処などの活動を担っている。消防団の入団資格は、市区町村ごとに条例で定められているが、一般的に18歳以上で、その市区町村に居住(または勤務・通学)している人なら男性でも女性でも入団できる。
4.× 地区防災計画を作成するのは、「保健師」ではなく「地区居住者等」である。地区防災計画とは、災害対策基本法に基づき、市町村内の一定の地区の居住者及び事業者が共同して行う当該地区における自発的な防災活動に関する計画である。ただ、住民の地区防災計画の作成を保健師が支援することはある。