第106回(R2) 保健師国家試験 解説【午後51~55】

 

次の文を読み50、51の問いに答えよ。
 Aさん(32歳、男性)。父親は死去し、母親は隣の市で生活している。Aさんは26歳の頃に会社で「自分は何でもできる」と言い、話がすぐに飛躍し強引な契約やミスが続き、27歳で退職となった。翌年、無理な自動車運転による交通事故を起こし、入院先の病院で双極性障害と診断された。1か月の入院ののち退院したが、その後はアルバイトを転々としながら1人で暮らしていた。

51 Aさんは3か月間、精神科に医療保護入院した。退院後は地区担当保健師が、月1回程度訪問をしている。退院3か月が経過したある日、Aさん宅を訪問するとAさんは笑顔で覇気があり「薬に頼らなくても、よく眠れるようになりました。体調も良いし、先生も次回受診のことは言ってなかったので通院はもう終わりです。これからアルバイトを探す予定です」と話した。
 Aさんへの地区担当保健師の支援で最も優先度が高いのはどれか。

1.患者会への参加を勧める。
2.就労移行支援の利用を勧める。
3.保健師同伴での受診を勧める。
4.民生委員に見守りを依頼することの了解を得る。

解答

解説

本症例のポイント

・3か月間、精神科に医療保護入院した。
・退院後:地区担当保健師が月1回程度訪問をしている。
・退院3か月経過:Aさん「薬に頼らなくても、よく眠れるようになりました。体調も良いし、先生も次回受診のことは言ってなかったので通院はもう終わりです。これからアルバイトを探す予定です」と話した。
→本症例は、双極性障害の躁状態と考えられる。Aさん自身の判断で服薬の中断や受診の中断が起きる可能性がある。症状悪化の可能性があるため避ける必要がある。双極性障害(繰うつ病)では、繰状態うつ状態が現れるのが特徴である。繰状態が生活の破綻につながり、社会生活に支障が生じるおそれがあるため、注意が必要である。躁病の特徴として、①異常に高揚した、開放的な、または怒りっぽい気分の持続、②過度の自尊心・誇大的思考、③睡眠欲求の減少、④多弁、⑤観念奔逸(考えが次から次へとほとばしり出ること)、⑥注意散漫、⑦目標指向性の異常亢進、⑧快楽的活動への没頭がみられる。

1.× 患者会への参加を勧めることは優先度が低い病状が安定した後に患者会に参加する。患者会は、共通の目的をもつ当事者や家族によって自主的に形成されるグループである。
2.× 就労移行支援の利用を勧めることは優先度が低い病状が安定した後に利用する。ちなみに、就労移行支援とは『障害者自立支援法』に基づく支援である。具体的には、就職に必要な能力向上のための訓練や求職活動にかかわる支援、職場定着のための相談支援などである。
3.〇 正しい。保健師同伴での受診を勧めることは優先度が最も高い。そうすることで、通院・治療の必要性や今後の方向性について改めて確認できるため。また、主治医や支援者の助言を患者本人の都合の良いように解釈する傾向を防ぐこともできる。
4.× 民生委員に見守りを依頼することの了解を得ることは優先度が低い。なぜなら、現在のAさんは、「病識が薄い」ため。民生委員への見守り依頼の理解が得られるとは考えにくい。民生委員は、日本独自の制度化されたボランティアである。地域社会の福祉の増進図っている。任期は3年で都道府県知事の推薦を受けて厚生労働大臣に委嘱されたものである。市町村の各地区に配置され、①住民の生活状況の把握、②関係機関との連携、③援助を要するものヘの相談援助を主な役割とする。根拠法令は「民生委員法」で給与の支給はない。

入院の形態

①任意入院:患者本人の同意:必要。精神保健指定医の診察:必要なし。そのほか:書面による本人意思の確認。備考:本人の申し出があれば退院可能。精神保健指定医が必要と認めれば、72時間以内の退院制限が可能。入院権限:精神科病院管理者。

②医療保護入院:患者本人の同意:必ずしも必要としない。精神保健指定医の診察:1人の診察。そのほか:家族等のうち、いずれかの者の同意。備考:入院後、退院後ともに10日以内に知事に届け出る。入院権限:精神科病院管理者

③応急入院:患者本人の同意:必ずしも必要としない。精神保健指定医の診察:1人の診察。そのほか:医療および保護の依頼があるが、家族等の同意が得られない。備考:入院期間は72時間以内。入院後直ちに知事に届け出る。知事指定の病院に限る。入院権限:精神科病院管理者

④措置入院:患者本人の同意:必ずしも必要としない。精神保健指定医の診察:2人以上の診察そのほか:自傷・他害のおそれがある。備考:国立・都道府県立精神科病院または指定病院に限る。入院権限:都道府県知事

⑤緊急措置入院:患者本人の同意:必ずしも必要としない。精神保健指定医の診察:1人の診察そのほか:自傷・他害のおそれが著しく、急を要する。備考:入院期間は72時間以内。指定医が1人しか確保できず時間的余裕がない場合、暫定的に適用される。入院権限:都道府県知事

 

 

 

 

次の文を読み52、53の問いに答えよ。
 Aさん(19歳、男性)。大学生。1人暮らし。発熱および全身に発疹が出現したため、5月20日に大学の近くの診療所を受診した。麻疹の疑いがあるため血液検査を実施し、血清IgM抗体陽性のため、5月22日に診療所の医師から保健所に届出があった。Aさんは5月上旬に海外旅行に出かけ、不特定多数の人と接触があった。

52 保健所の保健師が発生届を受理した際に診療所の医師へ確認することで優先度が高いのはどれか。

1.海外旅行先
2.現在の療養場所
3.診断結果の本人への説明
4.PCR法による病原体遺伝子の検出
5.海外旅行以外での感染の機会の有無

解答

解説

本症例のポイント

・Aさん(19歳、男性、大学生、1人暮らし、麻疹の疑い
・5月20日:診療所を受診(発熱および全身に発疹が出現)。
・5月22日:麻疹の疑いにより、診療所の医師から保健所に届出。
・Aさん:5月上旬に海外旅行に出かけ、不特定多数の人と接触。
→麻疹(はしか)は、麻疹ウイルスの①空気(飛沫核)感染、②飛沫感染、③接触感染により生じ疾患である。発熱や咳、鼻水といった風邪のような症状と発しんが現れる。肺炎、脳炎といった重い合併症を発症することもある。保健所の保健師が発生届を受理し、次に起こす行動としては、本人や家族などに積極的疫学調査(症例行動調査、接触者調査など)を実施することである。そのために、「診療所の医師」へ確認することを選択する。

1.× 海外旅行先は優先度が低い。なぜなら、すでにAさんは麻疹の疑いにより、診療所の医師から保健所に届出済みであるため。さらなる感染拡大を阻止するため、Aさんの現在の居場所を特定し、本人や家族などに積極的疫学調査(症例行動調査、接触者調査など)を実施する必要がある。
2.〇 正しい。現在の療養場所は優先度が最も高い。なぜなら、さらなる感染拡大を阻止するため。Aさんの現在の居場所を特定し、本人や家族などに積極的疫学調査(症例行動調査、接触者調査など)を実施する必要がある。
3.× 診断結果の本人への説明は優先度が低い。なぜなら、診断結果の本人への説明は診療所の医師が行うため。あえて、診療所の医師へ確認する必要はない。
4.× PCR法による病原体遺伝子の検出は優先度が低い。なぜなら、PCR法による病原体遺伝子の検出は臨床検査技師が行うため。あえて、診療所の医師へ確認する必要はない。ちなみに、PCR法による麻疹ウイルスの検出は、原則として全例に行う。
5.× 海外旅行以外での感染の機会の有無は優先度が低い。なぜなら、海外旅行以外での感染の機会の有無は、保健師の聞き取り調査麻疹ウイルスの遺伝子分析などにより判定するため。あえて、診療所の医師へ確認する必要はない。

 

 

 

 

 

次の文を読み52、53の問いに答えよ。
 Aさん(19歳、男性)。大学生。1人暮らし。発熱および全身に発疹が出現したため、5月20日に大学の近くの診療所を受診した。麻疹の疑いがあるため血液検査を実施し、血清IgM抗体陽性のため、5月22日に診療所の医師から保健所に届出があった。Aさんは5月上旬に海外旅行に出かけ、不特定多数の人と接触があった。

53 Aさんへの行動調査の結果を表に示す。帰国後、大学以外の場で接触した者は(a)〜(d)であった。
 (a)〜(d)のうち、麻疹発症のリスクがある接触者はどれか。

1.(a)(b)(c)(d)
2.(a)(b)(c)
3.(b)(c)(d)
4.(c)(d)

解答

解説

(※参考:「学校における麻しん対策ガイドライン」厚生労働省HPより)

麻疹の症状

麻疹の潜伏期間は約10日である。
三大症状:①カタル症状(上気道炎症や結膜炎症状)、②発疹、③二峰性発熱(カタル期の終わりに一時的に熱が降下する)である。
カタル期(1回目の発熱)、発疹期(2回目の発熱)、回復期と経過し、感染力が最も強いのはカタル期である。
感染の可能性があるのは、発熱、カタル症状、発疹などの症状が出現する1日前から解熱後3日を経過するまでである。

本問では、Aさんの行動調査の結果より、5月16日(木)の発熱から19日(日)の解熱までが初めの発熱期であり、カタル期に該当すると考えられる。

カタル期の1日前の5月15日(水)から解熱後3日の5月22日(水)までにAさんと接触した人である(c)高校時代の友人(d)医療機関の従事者および待合室に居たものが発症リスクのある接触者といえる。

したがって、選択肢4.(c)高校時代の友人、(d)医療機関の従事者および待合室に居たものである。

 

 

 

 

次の文を読み54、55の問いに答えよ。
 A君(8歳、男児)は、これまで学習面では支障をきたすことはなかったが、こだわりが強いところがあり、友達とのトラブルが起きることもあった。小学校3年生になってクラス替えがあり、図画工作の授業になると落ち着かない状態になり、教室を抜け出すことが多くなった。校舎内を歩き回ることも多く、養護教諭が落ち着くまで付き添い、どうしてもA君が教室に戻らないときには、母親に迎えに来てもらうようになった。A君は母親とともに医療機関を受診した結果、自閉症スペクトラム障害と診断された。

54 校内では学級担任と養護教諭、管理職で対応が話し合われた。その結果、学校と家庭が連携してA君に必要な支援を進めるために、母親が地域の関係機関にA君のことを相談するよう養護教諭から母親に話をすることになった。
 A君の母親に提案する地域の関係機関で、最も適切なのはどれか。

1.子育て世代包括支援センター
2.発達障害者支援センター
3.社会福祉協議会
4.児童養護施設
5.児童館

解答

解説

ポイント

・A君(8歳、男児、自閉症スペクトラム障害
・学習面支障なし、こだわりが強く、友達とのトラブルあり。
・小学校3年生:授業では落ち着かない状態、教室を抜け出すことが多くなった。

・校内:学級担任と養護教諭、管理職で対応が話し合われた。
・結果:母親が地域の関係機関にA君のことを相談するよう養護教諭から母親に話をすることになった。
→本症例は、自閉症スペクトラム障害である。自閉症スペクトラム障害とは、正常な社会的関係を構築することができず、言葉の使い方に異常がみられるか、まったく言葉を使おうとせず、強迫的な行動や儀式的な行動がみられる病気である。 自閉スペクトラム症の患者は、他者とコミュニケーションをとったり関係をもったりすることが苦手である特徴を持つ。

1.× 子育て世代包括支援センター(母子健康包括支援センター)は、主に乳幼児を中心とした母子保健に関する相談への対応を行っている。子育て世代包括支援センターとは、母子保健法に基づき市町村が設置するもので、保健師等の専門スタッフが妊娠・出産・育児に関する様々な相談に対応し、必要に応じて支援プランの策定や地域の保健医療福祉の関係機関との連絡調整を行うなど、妊娠期から子育て期にわたる切れ目のない支援を一体的に提供している。
2.〇 正しい。発達障害者支援センターは、発達障害者とその家族からの相談に応じ、医療・保健・福祉・教育・労働などについて総合的な支援を行う専門機関である。発達障害者支援センターの設置について規定されているのは、「発達障害者支援法」である。『発達障害者支援法』は、自閉症、アスペルガー症候群などの発達障害者に対する支援を規定したもので、①発達障害の早期発見、②発達支援を行うことについて、国・地方公共団体の責務等を定めている。
3.× 社会福祉協議会は、社会福祉関係者および住民が参加している民間の非営利組織であり、地域福祉の推進を図ることを目的としている。地域の実情に応じた住民の福祉の増進を目的とする民間の自主的団体である。高齢者を対象にすることが多い。
4.× 児童養護施設は、保護者のいない児童・被虐待児などが入所し、養施設である。児童福祉法に基づき設置される施設は、乳児院や保育所・児童養護施設等の児童福祉施設である。
5.× 児童館(児童厚生施設である児童館)は、子どもに健全な遊びを提供して、その心健康を増進し、情操を豊かにすることを目的とした施設である。児童館は、発達障害に関する専門的な機関ではない。

子育て世代包括支援センターとは

子育て世代包括支援センターとは、母子保健法に基づき市町村が設置するもので、保健師等の専門スタッフが妊娠・出産・育児に関する様々な相談に対応し、必要に応じて支援プランの策定や地域の保健医療福祉の関係機関との連絡調整を行うなど、妊娠期から子育て期にわたる切れ目のない支援を一体的に提供している。

【主な5つの事業】
①母性・乳幼児の健康の保持増進に関する実情の把握
②母子保健に関する相談への対応
③母性・乳幼児に対する保健指導
④母子保健に関する機関との連絡調整等、健康の保持・増進に関する支援
⑤健康診査、助産その他の母子保健に関する事業

(※「子育て世代包括支援センター業務ガイドライン 」厚生労働省HPより)

 

 

 

 

 

次の文を読み54、55の問いに答えよ。
 A君(8歳、男児)は、これまで学習面では支障をきたすことはなかったが、こだわりが強いところがあり、友達とのトラブルが起きることもあった。小学校3年生になってクラス替えがあり、図画工作の授業になると落ち着かない状態になり、教室を抜け出すことが多くなった。校舎内を歩き回ることも多く、養護教諭が落ち着くまで付き添い、どうしてもA君が教室に戻らないときには、母親に迎えに来てもらうようになった。A君は母親とともに医療機関を受診した結果、自閉症スペクトラム障害と診断された。

55 A君と母親が地域の関係機関を訪れて相談し、A君の得意なことと苦手なことが明らかとなり、学校は必要な支援の方針を確認することができた。母親からも「Aの状況が分かって良かった。Aにあった支援をお願いしたい」という言葉が聞かれた。支援の結果、A君は、徐々に、授業を抜け出したくなると保健室に来るようになってきた。一方で、教室には落ち着いていられない状況は続いている。そこで特別支援コーディネーター、スクールカウンセラーも交えた校内委員会を開催して、A君への今後の対応について検討した。
 A君への対応で最も適切なのはどれか。

1.保健室内での養護教諭による学習の支援
2.スクールカウンセラーとの面談
3.特別支援学級への通級の検討
4.学校行事への参加の促進

解答

解説

本症例のポイント

・学校:必要な支援の方針を確認することができた。
・母親「Aの状況が分かって良かった。Aにあった支援をお願いしたい」。
・A君:徐々に、授業を抜け出したくなると保健室に来るようになってきた。
・一方で、教室には落ち着いていられない状況は続いている。
・特別支援コーディネーター、スクールカウンセラーも交えた校内委員会を開催して、A君への今後の対応について検討した。
→特別支援(教育)コーディネーターは、学校長によって指名された教員が、その役割を担う。各学校における特別支援教育の推進のため校内委員会・校内研修の養護する企画・運営や、地域の関係機関・他の学校との連絡・調整、保護者からの相談窓口などの役割を担う。

1.× 保健室内での養護教諭による学習の支援は必要ない。なぜなら、A君個人に対して、保健室内で養護教諭が学習支援するのは現実的ではなく、A君に対する継続的な支援にはならないため。養護教諭とは主に、小・中・高校に配属されている「保健室の先生」のことである。 学校でケガをしたり体調を崩したりしたとき、保健室に行くと対応してくれるのが養護教諭である。養護教諭がいることで、生徒たちが安心して学校に通える環境が整えられている。
2.× スクールカウンセラーとの面談は必要ない。なぜなら、すでに地域の関係機関(発達障害者支援センター)に相談しており、A君の行動の特徴がみえてきた現状であるため。面談ではなく、具体的な方針・対応が必要である。
3.〇 正しい。特別支援学級への通級の検討は、A君への対応で最も適切である。通級とは、通常学級に在籍しながら一部の指導を通級指導教室で行うことである。特別支援学級(公立小・中学校)は、上限8人・平均3人(1学級当たり)で編成される。
4.× 学校行事への参加の促進は必要ない。なぜなら、集団行動を苦手とするA君の混乱を助長する可能性があるため。本症例は、自閉症スペクトラム障害である。自閉症スペクトラム障害とは、正常な社会的関係を構築することができず、言葉の使い方に異常がみられるか、まったく言葉を使おうとせず、強迫的な行動や儀式的な行動がみられる病気である。 自閉スペクトラム症の患者は、他者とコミュニケーションをとったり関係をもったりすることが苦手である特徴を持つ。

特別支援教育とは?

障害のある子供については、障害の状態に応じて、その可能性を最大限に伸ばし、自立と社会参加に必要な力を培うため、一人一人の教育的ニーズを把握し、適切な指導及び必要な支援を行う必要がある。このため、障害の状態等に応じ、特別支援学校や小・中学校の特別支援学級 、通級による指導等において、特別の教育課程、少人数の学級編制、特別な配慮の下に作成された教科書、専門的な知識・経験のある教職員、障害に配慮した施設・設備などを活用した指導や支援が行われている。特別支援教育は、発達障害のある子供も含めて、障害により特別な支援を必要とする子供が在籍する全ての学校において実施されるものである。

(引用:「日本の特別支援教育の状況について」文部科学省様HPより)

 

 

※注意:解説はすべてオリジナルのものとなっています。私的利用の個人研究・自己研鑽のため作成いたしました。間違いや分からない点があることをご了承ください。またコメントにて解き方等教えてくださると幸いです。

 

問題引用:第106回保健師国家試験、第103回助産師国家試験、第109回看護師国家試験の問題および正答について

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