第106回(R2) 保健師国家試験 解説【午後6~10】

 

6 市の保健師は、10名参加の6か月コースの糖尿病予防事業を開始した。グループ面接で参加者から「みんなで参加したから継続できた。あと1か月で事業が終了するが、今後1人で生活改善が維持できるか不安だ」という声が聞かれた。
 参加者が事業終了後も改善した生活習慣が維持できるようにするための保健師の対応で最も適切なのはどれか。

1.参加者の家庭訪問
2.次年度の健康診査の受診勧奨
3.糖尿病予防食のレシピ集の配布
4.参加者同士のセルフヘルプグループの立ち上げへの支援

解答

解説

ポイント

・10名の6か月コースの糖尿病予防事業を開始。
・参加者から「みんなで参加したから継続できた。あと1か月で事業が終了するが、今後1人で生活改善が維持できるか不安だ」と。
・課題:参加者が事業終了後も改善した生活習慣が維持できるようにする。
→集団(グループ)で行うメリットとして、モチベーションの維持・向上という効果がある。一方、デメリットとして教室終了後の行動変容の維持が課題となる。今回も参加者から「今後1人で生活改善が維持できるか不安だ」という声が聞かれている。生活習慣が維持できるよう支援する。

1.× 参加者の家庭訪問は優先度が低い。なぜなら、参加者から「今後1人で生活改善が維持できるか不安だ」という声が聞かれているため。家庭訪問による保健師との1対1の関係では、「一人で頑張る」環境は変わらず、参加者の思いに対応できていない。
2.× 次年度の健康診査の受診勧奨は優先度が低い。なぜなら、次年度の健康診査の受診勧奨では、教室終了から期間が空きすぎ、生活習慣改善行動のモチベーションの維持は困難であるため。また、「一人で頑張る」環境は変わらず、参加者の思いに対応できていない。
3.× 糖尿病予防食のレシピ集の配布は優先度が低い。なぜなら、参加者から「今後1人で生活改善が維持できるか不安だ」という声が聞かれているため。「一人で頑張る」環境は変わらず、参加者の思いに対応できていない。また、参加者全員が調理に携わるとは限らない。
4.〇 正しい。参加者同士のセルフヘルプグループの立ち上げへの支援は優先度が最も優先度が高い。なぜなら、参加者の「みんなで参加できたから継続できた」や「1人で生活改善が維持できるか不安だ」という声から、参加者同士の交流を継続できるようにするため。保健師は参加者の意向を確認しながら、参加者が主体となってセルフヘルプグループを立ち上げられるよう支援する。ちなみに、セルフヘルプグループとは、同じ悩みや問題をもつ者同士が集まり語り合い、問題解決を目指す団体である。依存症や障害などの同じ課題をもつ当事者が課題を解決していく組織である。

 

 

 

 

 

7  在胎35週、体重2,000gで出生した児。生後4か月1日で4か月児健康診査を受診した。
 この時の状況で経過観察が必要なのはどれか。

1.指しゃぶりをする。
2.あやしても笑わない。
3.体重が5,300gである。
4.おもちゃに手を伸ばさない。

解答

解説

本症例のポイント

・出生時:在胎35週、体重2,000g。
・生後4か月1日で4か月児健康診査を受診。
→4か月児健康診査のポイントとして、①体重が増えているか?、②首が座っているか?、③目を合わせることができるか?、④目で物を追うことができるか?、⑤先天性股関節脱臼がないかなどがあげられる。デンバー発達判定法には、4ヶ月の項目で、①手をみつめる、②ガラガラを握る、180°追視、両手を合わす、③キャアキャア喜ぶ 90°頭を上げる、両足で体を支えるなどがあげられる。 

1.× 指しゃぶりをするのは問題ない3歳頃までは生理的な行動であるが、4歳以降は歯や顎の発達が著しい時期であり、歯並びに悪影響を及ぼす可能性がある。
2.〇 正しい。あやしても笑わない場合は、経過観察となる。3~4か月児の乳児健康診査の問診項目には「あやすとよく笑いますか」という項目がある。笑わない場合には、ネグレクトや発達遅滞などの可能性を考慮し、経過観察となる。
3.× 体重が5,300gであるのは問題ない。出産時は早期産(37週未満)で低出生体重児(2.500g未満)であったが、4か月1日で体重が5.300gである。したがって、出生時からの1日体重増加量は27.3gとなる。0~3か月児の1日体重増加量は25~30g、3~6か月児の1日体重増加量は20~25gである。
4.× おもちゃに手を伸ばさないのは問題ない。物に手をのばしてつかもうとするのは6~7か月頃である。

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正常乳児の一日体重増加量の目安

・0~3か月:25~30g
・3~6か月:20~25g
・6~9か月:15~20g
・9~12か月:7~10g

 

 




 

 

8 Aさん(17歳、女子)。保健センターにAさんの母親が来所し「Aが『学校でみんなが私の噂をしている』と言い、3か月前から不登校になっている。最近は自室から独り言が聞こえ、昼夜逆転の生活で部屋から出てこない。このままでは引きこもりになってしまう」と保健師に話した。
 母親への保健師の支援で適切なのはどれか。

1.精神障害者の家族会の参加を勧める。
2.保健所の精神保健福祉相談を勧める。
3.Aさんと日中に少しずつ外出することを勧める。
4.不登校になる前の学校での様子を確認するよう勧める。

解答

解説

本症例のポイント

・Aさん(17歳、女子)。
・母親「Aが『学校でみんなが私の噂をしている』と言い、3か月前から不登校になっている。最近は自室から独り言が聞こえ、昼夜逆転の生活で部屋から出てこない。このままでは引きこもりになってしまう」と。
→本症例は、いじめ?もしくは妄想?によって不登校傾向になっている。いじめより独り言や昼夜逆転がみられていることから、なんらかの精神疾患を患っている可能性のほうが高い。専門的なところに受診ができるよう支援していく必要がある。

1.× 精神障害者の家族会の参加を勧める優先度は低い。なぜなら、現時点のAさんは精神疾患と診断・断定されているわけではないため。家族会とは、精神障害者(例えば、アルコール依存症など)を家族にもつ人たちが、お互いに悩みを分かちあい、共有し、連携することでお互いに支えあう会である。 支えあいを通して、地域で安心して生活できるための活動を行っている。一方的に講談するのではなく、それぞれが相互的に話し合う会である。
2.〇 正しい。保健所の精神保健福祉相談を勧めるのが最も優先度が高い。なぜなら、保健所で行われる精神保健福祉相談では、精神科の医師に相談することができるため。精神保健福祉相談とは、精神保健センターで行う相談のことを指す。センターでは、①こころの健康についての相談、②精神科医療についての相談、③社会復帰についての相談、④アルコール・薬物依存症の家族の相談、⑤ひきこもりなど思春期・青年期問題の相談、⑥認知症高齢者相談など精神保健福祉全般にわたる相談をおこなっている。電話や面接でも相談でき、センターの規模によって異なるが、医師、看護師、保健師、精神保健福祉士、公認心理師、作業療法士などの専門職がいる。(※参考「保健所、保健センター、精神保健福祉センター」厚生労働省HPより)
3~4.× Aさんと日中に少しずつ外出することを勧める/不登校になる前の学校での様子を確認するよう勧めるのは優先度は低い。なぜなら、Aさんの症状への対応が優先されるため。Aさんの精神疾患が疑われている状況であり、母親・保健師でも外出を勧めたところで直接的解決は見込めない可能性が高い。

 

 

 

 

 

9  Aさん(19歳、女性)。発達障害と軽度知的障害があり、精神障害者保健福祉手帳を取得している。特別支援学校を卒業後、Aさんは「行くところがない」と言い、終日自宅で過ごしている。母親が「このままで良いのだろうか」と市の保健師に相談した。
 Aさんに社会参加を促すため、保健師が勧める障害福祉サービスで適切なのはどれか。

1.自立訓練
2.就労移行支援
3.地域移行支援
4.地域活動支援センター

解答

解説

本症例のポイント

・Aさん(19歳、女性、発達障害、軽度知的障害)
・精神障害者保健福祉手帳を取得している。
・特別支援学校を卒業後:終日自宅で過ごす
・母親「このままで良いのだろうか」
→本症例は終日自宅で過ごし、母親は現状に悩んでいるように感じられる。Aさんに社会参加を促すため相談できるところを選択する。

1.× 自立訓練(生活訓練)は必要ない。生活訓練(自立訓練)は、知的障害者・精神障害者に対して、自立した日常生活ができるように訓練や助言をするものである。障害者総合支援法5条14項で就労継続支援は「通常の事業所に雇用されることが困難な障害者につき、就労の機会を提供するとともに、生産活動その他の活動の機会の提供を通じて、その知識及び能力の向上のために必要な訓練その他の厚生労働省令で定める便宜を供与することをいう」と定められている。
2.× 就労移行支援は必要ない。就労移行支援は、一般就労等を目指す65歳未満の障害者を対象とするものであるため。ちなみに、期間は2年間である。障害者総合支援法5条13項で就労移行支援は「就労を希望する障害者につき、厚生労働省令で定める期間にわたり、生産活動その他の活動の機会の提供を通じて、就労に必要な知識及び能力の向上のために必要な訓練その他の厚生労働省令で定める便宜を供与することをいう」と定められている。
3.× 地域移行支援は必要ない。地域移行支援とは、障害者支援施設や精神科病院にいる障害者に対して、住居の確保や障害福祉サービスを実際に体験ができるサポートなど地域生活へ移行するための支援である。具体的には、①住居の確保や②障害福祉サービスの体験利用・体験宿泊の支援などを行う。
4.〇 正しい。地域活動支援センターは、Aさんに社会参加を促すため、保健師が勧める障害福祉サービスで適切である。地域活動支援センターとは、『障害者総合支援法』によって定められた障害によって働くことが困難な障害者の日中の活動をサポートする福祉施設である。地域で生活している身体障害者、精神障害者、知的障害者などが利用できる通所施設で、社会適応訓練も行っている。創作的活動または生産活動の機会の提供および社会との交流などの支援を行う施設である。

 

 




 

 

10 難病の患者に対する医療等に関する法律(難病法)に定める難病対策地域協議会で正しいのはどれか。

1.構成員に患者の家族が含まれる。
2.医療費助成の支給認定を行っている。
3.患者や家族への医療情報の提供を目的とする。
4.都道府県、保健所を設置する市及び特別区に設置の義務がある。

解答

解説

難病対策地域協議会とは?

難病対策地域協議会は「難病法」に目的や協議の内容が定められている。

定義:難病法上、関係機関等が相互の連絡を図ることにより、地域における難病の患者への支援体制に関する課題について情報を共有し、関係機関等の連携の緊密化を図るとともに、地域の実情に応じた体制の整備について協議を行う組織として規定されている。その設置については、都道府県、保健所を設置する市及び特別区に対し、努力義務が課されている。

(※参考:「難病対策地域協議会について」難病情報センター様HPより)

(※図引用:「指定難病患者への医療費助成制度のご案内」難病情報センター様HPより)

1.〇 正しい。構成員に患者の家族が含まれる。関係機関等が相互の連絡を図ることにより、地域における難病の患者への支援体制に関する課題について情報を共有し、関係機関等の連携の緊密化を図るとともに、地域の実情に応じた体制の整備について協議を行う組織として規定されている。
2.× 医療費助成の支給認定は行っていない。医療費助成の支給認定は、指定難病審査会の審査などにより都道府県が行う。「難病法」による医療費助成の対象となるのは、原則として「指定難病」と診断され、「重症度分類等」に照らして病状の程度が一定程度以上の場合である。都道府県から、医療受給者証が交付される。
3.× 患者や家族への医療情報の提供を目的とするのは、難病情報センターである、難病対策地域協議会は、難病患者への支援体制の整備を図ることを目的としている。ちなみに、難病情報センター事業とは、難病患者や家族の療養上の悩みや不安を解消し、療養生活の一層の支援を図るため、厚生省の補助事業として平成8年度から財団法人難病医学研究財団が実施している。特定疾患調査研究事業に対する成果等の最新の医学情報、医療機関や相談機関等に関する情報を収集・整理し、難病患者様をはじめ、関係者に分かりやすく情報提供している。(※参考:「難病情報センター事業」兵庫県難病情報センター様HPより)
4.× 都道府県、保健所を設置する市及び特別区に設置の「義務」ではなく、努力義務(努めなければならない)である。

『難病法』とは?

『難病法』とは、難病の患者に対する医療などに関する施策を定め、良質・適切な医療の確保、療養生活の質の維持向上を図ることを目的としている。この目的に沿って定められている8つの基本方針は以下のとおりである。

【難病の患者に対する医療等の総合的な推進を図るための基本的な方針】
①医療等の推進の基本的な方向
②医療を提供する体制の確保に関する事項
③医療に関する人材の養成に関する事項
④調査及び研究に関する事項
⑤医療のための医薬品及び医療機器に関する研究開発の推進に関する事項
⑥療養生活の環境整備に関する事項
⑦医療等と福祉サービスに関する施策、就労の支援に関する施策その他の関連する施策との連携に関する事項
⑧その他、医療等の推進に関する重要事項

【難病と指定難病の定義】
・発病の機構が明らかでない。
・治療方法が確立していない。
・希少な疾病である。
・長期の療養を必要する。
【指定難病】
・患者数が一定の人数に達しない。
・客観的な診断基準が確立してない。

【医療費助成制度について】
①都道府県・指定都市の窓口に申請する。
②医療費助成の対象者:指定難病に罹患し、重症度分類等による病状の程度が一定以上であるとして認定を受けた者。
③患者の自己負担は2割で、自己負担上限額(月額)が設定されている。
④自己負担上限額は、応能負担(世帯の所得に応じて設定)されている。
⑤医療費助成は、都道府県・指定都市が指定する指定医療機関が行う特定医療に対して行われる。
⑥特定医療費の支給に要する費用は、都道府県と国が50%ずつ負担している。
(※参考「指定難病の要件について」厚生労働省HPより)

 

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