問題の引用:第107回保健師国家試験、第104回助産師国家試験及び第110回看護師国家試験の合格発表
※注意:解説はすべてオリジナルのものとなっています。私的利用の個人研究のため作成いたしました。間違いや分からない点があることをご了承ください。コメント欄にて誤字・脱字等、ご指摘お待ちしています。よろしくお願いいたします。
1 保健師の業務従事者届について正しいのはどれか。
1.医療法で規定されている。
2.届出の間隔は一年ごとである。
3.居住地の都道府県知事に届け出る。
4.届出は業務に従事する保健師の義務である。
解答4
解説
①保健師助産師看護師法第33条に基づき、業務に従事する看護職員は2年毎にその就業状況について、就業地の都道府県知事に届け出ることが義務づけられている。②その趣旨は、就業者の実態を把握し、就業者に対する指導監督や需給バランス等看護行政の推進に資するためとされる。③様式は「業務従事者届」として同法施行規則で定められており、氏名、免許の種別とその登録番号、就業場所等について記載することとなっている。 届出違反には、罰則が課せられている。④届出違反には、50万円以下の罰金が課せられることとなっている。
(※一部抜粋:「免許保持者の届出義務について」厚生労働省HPより)
1.× 「医療法」ではなく、「保健師助産師看護師法」に規定されている。
2.× 届出の間隔は、「一年ごと」ではなく、「2年ごと」である。
3.× 「居住地」ではなく、「就業地」の都道府県知事に届け出る。翌年の1月15日までに届け出す。
4.〇 正しい。届出は業務に従事する保健師の義務である。
2 地域包括ケアシステムにおける相互援助の概念と具体的な取り組みとの組合せで適切なのはどれか。
1.自助:民間サービスの購入
2.互助:医療保険
3.共助:生活保護
4.公助:ボランティア
解答1
解説
地域包括ケアシステムでは、高齢者の尊厳の保持と自立生活の支援の目的のもとで、可能な限り住み慣れた地域で生活を継続することができるような包括的な支援・サービス提供体制の構築を目指している。
「自助・互助・共助・公助」を重視している。
「公助」は税による公の負担。
「共助」は介護保険などリスクを共有する仲間(被保険者)の負担。
「自助」には「自分のことを自分でする」ことに加え、市場サービスの購入も含まれる。
「互助」は相互に支え合い、費用負担が制度的に裏づけられていない自発的なものである。
1.〇 正しい。自助民間サービスの購入は、自助に該当する。なぜなら、自助は国民一人ひとりが自らの責任と努力によって生活を営むことであるため。「自助」には「自分のことを自分でする」ことに加え、市場サービスの購入も含まれる。
2.× 医療保険は、「互助」ではなく共助に該当する。なぜなら、互助はインフォーマルな相互扶助(ボランティアなど)のことであるため。「共助」は介護保険などリスクを共有する仲間(被保険者)の負担。
3.× 生活保護は、「共助」ではなく公助に該当する。なぜなら、共助は制度化された相互扶助(医療保険、年金保険などの社会保険)のことであるため。「公助」は税による公の負担。
4.× ボランティアは、「公助」ではなく互助に該当する。公助は、自助・互助・共助で対応できない場合に、所得や生活水準・家庭状況などの受給要件を定めたうえで、公費により必要な社会保障を行うことある。したがって、公的扶助(生活保護)や社会福祉が該当する。「互助」は相互に支え合い、費用負担が制度的に裏づけられていない自発的なものである。
生活保護制度は、『日本国憲法』25条の理念に基づき、生活困窮者
生活扶助:日常生活に必要な費用
住宅扶助:アパート等の家賃
教育扶助:義務教育を受けるために必要な学用品費
医療扶助:医療サービスの費用
介護扶助:介護サービスの費用
出産扶助:出産費用
生業扶助:就労に必要な技能の修得等にかかる費用
葬祭扶助:葬祭費用
【生活保護法の4つの基本原理】
①国家責任の原理:法の目的を定めた最も根本的原理で、憲法第25条の生存権を実現する為、国がその責任を持って生活に困窮する国民の保護を行う。
②無差別平等の原理:全ての国民は、この法に定める要件を満たす限り、生活困窮に陥った理由や社会的身分等に関わらず無差別平等に保護を受給できる。また、現時点の経済的状態に着目して保護が実施される。
③最低生活の原理:法で保障する最低生活水準について、健康で文化的な最低限度の生活を維持できるものを保障する。
④保護の補足性の原理:保護を受ける側、つまり国民に要請される原理で、各自が持てる能力や資産、他法や他施策といったあらゆるものを活用し、最善の努力をしても最低生活が維持できない場合に初めて生活保護制度を活用できる。
【4つの原則】
①申請保護の原則:保護を受けるためには必ず申請手続きを要し、本人や扶養義務者、親族等による申請に基づいて保護が開始。
②基準及び程度の原則:保護は最低限度の生活基準を超えない枠で行われ、厚生労働大臣の定める保護基準により測定した要保護者の需要を基とし、その不足分を補う程度の保護が行われる。
③必要即応の原則:要保護者の年齢や性別、健康状態等その個人又は世帯の実際の必要の相違を考慮して、有効且つ適切に行われる。
④世帯単位の原則:世帯を単位として保護の要否及び程度が定められる。また、特別な事情がある場合は世帯分離を行い個人を世帯の単位として定めることもできる。
(※参考:「生活保護制度」厚生労働省HPより)
(※参考:「生活保護法の基本原理と基本原則」室蘭市HPより)
3 市町村保健師の家庭訪問対象として優先度が高いのはどれか。
1.切迫早産で主治医から自宅安静を指示された妊婦
2.特定健康診査で血圧150/90 mmHg の未治療者
3.訪問看護サービスを開始した難病患者
4.1歳6か月児健康診査で虐待の可能性がある児
解答4
解説
優先順位対象者の抱える問題や緊急性などから訪問の優先順位をつける。
【家庭訪問の優先度の高い事例】
・生命に危険のある事例(児童虐待等)
・依頼者や相談者の不安が強い事例
・医療的ケアの必要な事例
・地域の健康課題に応じて実施する事例(調査・研究等)
(抜粋:「家庭訪問における地域保健活動技術マニュアル」長崎県福祉保健課より)
1.× 切迫早産で主治医から自宅安静を指示された妊婦より優先度の高いものが選択肢の中にある。なぜなら、主治医から「自宅安静」を指示されていることからも容態は安定していると考えられるため。ただし、妊産婦の訪問指導は『母子保健法』に規定されており、必要に応じて家庭訪問が行われる必要がある。
2.× 特定健康診査で血圧150/90mmHg の未治療者より優先度の高いものが選択肢の中にある。なぜなら、本症例にあえて家庭訪問を行う必要性は低いため。家庭訪問以外の方法(例えば、薬物・運動・食事療法など)での支援が可能であるため。
3.× 訪問看護サービスを開始した難病患者より優先度の高いものが選択肢の中にある。なぜなら、本症例は、社会資源(訪問看護サービス)を利用しており、医療的ケアにより健康問題に対応できていると判断できるため。
4.〇 正しい。1歳6か月児健康診査で「虐待」の可能性がある児が最も優先度の高い。児童虐待は生命に関わる緊急性の高い対象者である。家庭訪問で育児状況や養育環境を把握し、必要に応じて早期に介入する必要がある。
4 地域包括支援センターに、住民Aさんから「近所に住む1人暮らしのBさん(85歳、男性)が、自宅の庭にごみを山のように置いている。一人ではごみを片付けられない様子なので、何とかしてほしい。年齢のこともあるので火の始末も気になる」と、電話相談があった。
地域包括支援センターの保健師の最初の対応として適切なのはどれか。
1.消防署にBさん宅の訪問を依頼する。
2.Aさんに自治会で話し合うよう助言する。
3.市のごみ収集担当部署に対応を依頼する。
4.地域包括支援センターの職員とBさん宅を訪問する。
解答4
解説
・地域包括支援センターに住民Aさんから電話相談があった。
・「1人暮らしのBさん(85歳、男性)が、自宅の庭にごみを山のように置いている。一人ではごみを片付けられない様子なので、何とかしてほしい。年齢のこともあるので火の始末も気になる」
→Aさんは、Bさんの自宅の状況から、Bさん個人への支援の必要性とともに、火事による周辺への影響に不安を覚え、相談を寄せている。まずは、相談を受けた地域包括支援センターの保健師が、Bさんの家庭訪問を行い、Bさんの状況や本人の考えを確認する必要がある。したがって選択肢4.地域包括支援センターの職員とBさん宅を訪問する。このときの個人情報の管理も大切になってくる。
1.× 消防署にBさん宅の訪問を依頼する必要はない。なぜなら、消防署は主に火事になった際に消火する機関であるため。
2.× Aさんに自治会で話し合うよう助言する必要はない。なぜなら、Bさんの個人情報が漏洩したり自尊心を損ねる恐れが大きいため。また、Aさんへの負担が大きいと考えられる。
3.× 市のごみ収集担当部署に対応を依頼する必要はない。なぜなら、Aさんから見たゴミでも、Bさんからするとゴミとして認識していない可能性もあるため。Bさんの所有物(ゴミと思われるもの)を一方的に市のごみ収集担当部署が対応することができない。
5 職場の特定健康診査の結果、血圧が高い者の割合が多かった。血圧が高い者の食事摂取内容を確認すると、味の濃い食事や麺類を好んで食べていることが分かったため、事業所の保健師は、血圧が高かった者を対象に月2回の6か月コースで減塩教室を実施することにした。
減塩教室実施後のアウトカム評価で最も適切なのはどれか。
1.血圧値
2.1日の食塩摂取量
3.減塩教室の参加率
4.産業医との面談回数
解答1
解説
・職場の特定健康診査の結果、血圧が高い者の割合が多かった。
・事業所の保健師:血圧が高かった者を対象に月2回の6か月コースで減塩教室を実施することにした。
→減塩教室実施後のアウトカム評価(事業の目的を達成したかどうかを判断する評価)を選択するが、減塩教室を実施する目的(血圧が高い者の割合が多かったこと)を考える。
1.〇 正しい。血圧値は、減塩教室実施後のアウトカム評価で最も適切である。なぜなら、減塩教室を実施する目的は参加者の血圧値低下であるため。
2~3.× 1日の食塩摂取量/減塩教室の参加率は、アウトプット評価である。なぜなら、これらは事業実施過程と参加状況などから直接生じた結果(数や量)を評価するものであるため。
4.× 産業医との面談回数を増やすことや減らすことが目的でないため不適切である。
①ストラクチャー評価(企画評価):事業を実施するための仕組みや体制を評価するもの。
例:マンパワー、予算、会場の状況、関係機関との連携体制 等。
②プロセス評価(実施評価):事業の手順や実施過程、活動状況の妥当性を評価するもの。
例:事業参加者の募集方法、健康診査の従事者数・受診者数,事業の実施内容等。
③アウトプット評価:事業実施過程と参加状況などから直接生じた結果(数や量)を評価するもの。
④アウトカム評価(成果評価):事業の目的を達成したかどうかの最終的な成果を判断するもの。
例:参加者の6か月後のBMI値、糖尿病の治療継続者の割合、腹囲の減少率、参加者の運動回数 等。