第107回(R3) 保健師国家試験 解説【午後11~15】

 

11 難病相談・支援センターの説明で正しいのはどれか。

1.設置主体は市町村である。
2.難病医療提供体制の整備を図る。
3.難病患者の交流活動を支援する。
4.難病医療費助成制度の申請窓口である。

解答

解説

難病相談・支援センターとは?

難病相談・支援センターとは、『難病法』に基づき、難病の患者の療養生活に関する各般の問題について難病の患者及びその家族その他の関係者からの相談に応じ、必要な情報の提供及び助言等を行い、難病の患者の療養生活の質の維持向上を支援することを目的とする施設で、都道府県及び指定都市に設置されています。都道府県及び指令都市が実施主体である。

①電話、面談等により療養生活上、日常生活上の相談や各種公的手続等の相談支援。
②難病の患者等の自主的な活動等に対する支援。
③医療従事者等を講師とした難病の患者等に対する講演会の開催や、保健・医療・福祉サービスの実施機関等の職員に対する各種研修会の実施。
④難病の患者が適切な就労支援サービスが受けられるよう就労支援等関係機関(ハローワーク、障害者職業センター、就業・生活支援センター等)と連携して就労・相談支援を実施。等

(※参考:「都道府県・指定都市難病相談支援センター一覧」難病情報センターHPより)

1.× 設置主体は、「市町村」ではなく「都道府県および指定都市」である。

2.× 難病医療提供体制の整備を図るのは、「難病相談・支援センター」ではなく都道府県である。都道府県が地域の実情に応じて、難病医療連絡協議会を設置し、拠点病院などを整備するものである。(※参考:「難病の医療提供体制」難病情報センターHPより)

3.〇 正しい。難病患者の交流活動を支援する。難病相談・支援センターとは、『難病法』に基づき①難病患者の療養生活の質の維持・向上を図る、②患者会・地域交流活動の促進、③就労支援などを目的に行われる療養生活環境整備事業のひとつである。
4.× 難病医療費助成制度の申請窓口は、「難病相談・支援センター」ではなく「都道府県、指定都市が定める窓口」である。

(※図引用:「指定難病患者への医療費助成制度のご案内」難病情報センター様HPより)

 

 

 

 

 

12 Aさん(21歳、女性)の腸管出血性大腸菌感染症の発生届が病院から保健所に提出された。Aさんは食品調理に従事しており、保健所は就業制限を行った。
 感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(感染症法)に基づき、保健所による就業制限で適切なのはどれか。

1.Aさんは自宅からの外出が制限される。
2.Aさんは食品に触れない業務には従事できる。
3.症状消失後、直ちにAさんは調理業務に復帰できる。
4.就業制限は、Aさんの勤務先の事業主に対して発せられる。

解答

解説

ポイント

・Aさん(21歳、女性、腸管出血性大腸菌感染症
・発生届が病院から保健所に提出された。
・Aさんは食品調理に従事しており、保健所は就業制限を行った。
→腸管出血性大腸菌感染症は3類感染症に位置づけられている。三類感染症には腸管出血性大腸菌感染症のほか、二類感染症から移行したコレラ、細菌性赤痢、腸チフス、パラチフスが指定されている。 感染症例への入院勧告規定はないが、飲食物にかかわる就業が制限される。 三類感染症では糞便由来の接触伝播に対する対策が重要である。3類感染症の患者に対しては、就業制限は課せられるが、外出制限は課せられない。

腸管出血性大腸菌(ベロ毒素産生性大腸菌、志賀毒素産生性大腸菌)とは?

腸管出血性大腸菌(ベロ毒素産生性大腸菌、志賀毒素産生性大腸菌)は、赤痢菌が産生する志賀毒素類似のベロ毒素を産生し、激しい腹痛、水様性の下痢、血便を特徴とする。特に、小児や老人では、溶血性尿毒症症候群や脳症(けいれんや意識障害など)を引き起こしやすいので注意が必要である。原因食品は、ハンバーグ、生肉、生レバー、井戸水などである。

(※参考:「腸管出血性大腸菌感染症」厚生労働省HPより)

1.× Aさんは自宅からの外出は制限されない。3類感染症の患者に対しては、就業制限(飲食物の製造販売調製または取扱いの際に飲食物に直接接触する業務)は課せられる。
2.〇 正しい。Aさんは食品に触れない業務には従事できる。3類感染症で就業制限がかかるのは、飲食物の製造販売調製または取扱いの際に飲食物に直接接触する業務である。
3.× Aさんは症状消失後でも直ちに調理業務に復帰できない。なぜなら、3類感染症で就業制限がかかる期間は「病原体を保有しなくなるまでの期間」であるため。症状が消失しても便に病原体が排出されている期間は、就業制限が継続する。
4.× 就業制限は、「Aさんの勤務先の事業主」ではなく「当該患者またはその保護者」に対して発せられる。感染症法の第十八条 都道府県知事は、一類感染症の患者及び二類感染症、三類感染症又は新型インフルエンザ等感染症の患者又は無症状病原体保有者に係る第十二条第一項の規定による届出を受けた場合において、当該感染症のまん延を防止するため必要があると認めるときは、当該者又はその保護者に対し、当該届出の内容その他の厚生労働省令で定める事項を書面により通知することができる。(引用先:「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」e-GOV法令検索様HPより)

(※参考:「【資料3】感染症の範囲及び類型について」厚生労働省HPより)

感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律とは?

感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(感染症予防法、感染症法、感染症新法)は、感染症の予防および感染症患者に対する医療に関する措置について定めた日本の法律である。平成10年(1998年)に制定された。主な内容は、①1~5類感染症の分類と定義、②情報の収集・公表、③感染症(結核を含む)への対応や処置。

【「感染症法」の対象となる感染症】
①1類感染症(7疾患:エボラ出血熱 ・クリミア・コンゴ出血熱・痘そう(天然痘) ・南米出血熱・ペスト・マールブルグ病・ラッサ熱)
対応:原則入院・消毒等の対物措置(例外的に建物への措置,通行制限の措置も適用対象とする)

②2類感染症(6疾患:・急性灰白髄炎(ポリオ)・結核 ・ジフテリア ・重症急性呼吸器症候群(SARS)・特定鳥インフルエンザ(H5N1, H7N9) ・中東呼吸器症候群(MERS))
対応:状況に応じて入院・消毒等の対物措置

③3類感染症(5疾患:・コレラ・細菌性赤痢・品管出血性大腸菌感染症(0157等)・腸チフス ・パラチフス)
対応:・特定職種への就業制限・消毒等の対物措置

④4類感染症(44疾患:※一部抜粋。・E型肝炎・A型肝炎 ・黄熱・Q熱・狂犬病・チクングニア熱・鳥インフルエンザ(特定鳥インフルエンザを除く)・炭疽 ・ボツリヌス症 ・マラリア ・野兎病・重症熱性血小板減少症候群(SFTS)・デング熱・ジカウイルス感染症・日本脳炎・その他感染症(政令で指定))
対応:・感染症発生状況の情報収集、分析とその結果の公開,提供・媒介動物の輸入規制・消毒等の対物措置

⑤5類感染症(46疾患:※一部抜粋。・インフルエンザ(鳥インフルエンザ・新型インフルエンザ等感染症を除く)・ウイルス性肝炎(E型・A型を除く)・クリプトスポリジウム症・後天性免疫不全症候群(AIDS)・性器クラミジア感染症 ・梅毒・麻疹・百日咳・メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)感染症・その他感染症(省令で指定))
対応:・感染症発生状況の情報収集、分析とその結果の公開情報提供

 

 

 

 

13 Aさん(22歳、女性)。会社員の夫と長女の3人家族。長女の3歳児健康診査のために来所した。受付の職員がAさんの顔と腕にうっすらと出血斑があり、うつむいて、髪の毛で出血斑を隠しているのに気付いた。長女が話しかけてもAさんに笑顔は見られなかった。連絡を受けた問診担当の保健師はドメスティックバイオレンス(DV)を疑った。長女は、身体計測では問題となる所見はなかった。
 このときの保健師の対応で適切なのはどれか。

1.警察に通報する。
2.民生委員にAさん家族の様子を尋ねる。
3.長女の心理発達状況を個別相談で確認する。
4.DVスクリーニングの自記式調査票を郵送する。

解答

解説

本症例のポイント

・Aさん(22歳、女性)。
・3人家族:会社員の夫と長女。
・長女の3歳児健康診査のために来所。
・受付の職員がAさんの顔と腕にうっすらと出血斑があり、うつむいて、髪の毛で出血斑を隠しているのに気付いた。
・長女が話しかけてもAさんに笑顔は見られなかった
・連絡を受けた問診担当の保健師はドメスティックバイオレンス(DV)を疑った。
・長女は、身体計測では問題となる所見はなかった。
→Aさんは夫から身体的虐待が疑える。長女は、身体計測では問題となる所見はなかったが、Aさんの笑顔が見られなかったり、Aさんは夫から身体的虐待が疑え、その場を見ているとした場合、心理的虐待に該当する。児童虐待には4つの種類がある。①身体的虐待、②性的虐待、③保護の怠慢・拒否(ネグレクト)、④心理的虐待である。どの種類に当てはまるかということよりも、子どもに対する養育者の不適切な対応は虐待ととらえ早期に対応することが必要である。

1.× 警察に通報する優先度は低い。なぜなら、警察に連絡したことが夫の耳に入れば、さらなる関係の悪化を招く可能性が高いため。緊急の場合を除き、Aさんの意思を確認せず警察に通報する対応は適切でない。ただし、医師その他の医療関係者は、配偶者からの暴力によって負傷または疾病にかかったと認められる者を発見したときは、その旨を配偶者暴力相談支援センターまたは警察官に通報することができる。
2.× 民生委員にAさん家族の様子を尋ねる優先度は低い。なぜなら、健診の場にAさん親子が来ており、直接情報収集できる状況であるため。あえて、民生委員に頼む必要はない。ちなみに、民生委員は、日本独自の制度化されたボランティアである。地域社会の福祉の増進図っている。任期は3年で都道府県知事の推薦を受けて厚生労働大臣に委嘱されたものである。市町村の各地区に配置され、①住民の生活状況の把握、②関係機関との連携、③援助を要するものヘの相談援助を主な役割とする。根拠法令は「民生委員法」で給与の支給はない。
3.〇 正しい。長女の心理発達状況を個別相談で確認する。Aさんは夫から身体的虐待が疑える。長女は、身体計測では問題となる所見はなかったが、Aさんの笑顔が見られなかったり、Aさんは夫から身体的虐待が疑え、その場を見ているとした場合、心理的虐待に該当する。児童虐待には4つの種類がある。①身体的虐待、②性的虐待、③保護の怠慢・拒否(ネグレクト)、④心理的虐待である。どの種類に当てはまるかということよりも、子どもに対する養育者の不適切な対応は虐待ととらえ早期に対応することが必要である。また、個別相談は、Aさんと直接話す機会となり、Aさんの状況や長女の心理発達状況を確認することができる。
4.× DVスクリーニングの自記式調査票を郵送する優先度は低い。なぜなら、郵便物をDV加害者(夫)が開封した場合、関係の悪化を招く可能性が高いため。さらに、DVスクリーニングの自記式調査票を郵送することは、保健師がDVを疑っていることを対面ではなく郵便物のみで伝えることになり、保健師とAさんとの信頼関係の構築は難しくなる。

民生委員とは?

民生委員は、日本独自の制度化されたボランティアである。地域社会の福祉の増進図っている。任期は3年で都道府県知事の推薦を受けて厚生労働大臣に委嘱されたものである。市町村の各地区に配置され、①住民の生活状況の把握、②関係機関との連携、③援助を要するものヘの相談援助を主な役割とする。根拠法令は「民生委員法」で給与の支給はない。

 

 

 

 

 

14 事業継続計画(Business Continuity Plan:BCP)について適切なのはどれか。

1.労働者災害補償保険の記載が必須である。
2.災害対策基本法に策定義務が明記されている。
3.策定した計画は5年ごとに改定しなければならない。
4.緊急事態発生時に、社会機能をできる限り維持するための業務続行の計画である。

解答

解説

事業継続計画(Business Continuity Plan:BCP)とは?

事業継続計画(Business Continuity Plan:BCP)とは、企業が自然災害、大火災、テロ攻撃などの緊急事態に遭遇した場合において、事業資産の損害を最小限にとどめつつ、中核となる事業の継続あるいは早期復旧を可能とするために、平常時に行うべき活動や緊急時における事業継続のための方法、手段などを取り決めておく計画のことである。

(※参考:「業務継続計画(BCP)について」厚生労働省HPより)

1.× 労働者災害補償保険の記載が必須でない。労働者災害補償保険は、労働者災害補償保険法に基づき、業務災害及び通勤災害に遭った労働者又はその遺族に給付を行う。略称は労災保険と呼ばれる。保険料は全額事業主の負担で、労災保険の対象となる労働者は、使用されて賃金を支給される人すべてをいうため雇用形態には関係ない。
2.× 災害対策基本法に策定義務が明記されてない内閣府より手引きガイドが示されている。ちなみに、災害対策基本法とは、①防災計画の作成、②災害予防、③災害応急対策、④災害復旧および防災に関する財政金融措置など、災害対策の基本を定めている。
3.× 策定した計画は、5年ごとに改定しなければならないといった法的な策定義務はない。計画の見直しは、訓練や教育を通して実効性を高めながら必要に応じて行う
4.〇 正しい。緊急事態発生時に、社会機能をできる限り維持するための業務続行の計画である。大地震等の自然災害、感染症のまん延、テロ等の事件、大事故、サプライチェーン(供給網)の途絶、突発的な経営環境の変化など不測の事態が発生しても、重要な事業を中断させない、または中断しても可能な限り短い時間で復旧させるための方針、体制、手順等を示した計画のことを業務継続計画(BCP)と呼ぶ。

 

 

 

 

15 常時1,000人以上の労働者を使用する事業場で、労働安全衛生法に基づき、事業場における安全衛生管理体制の責任者として安全衛生にかかわる業務を管理・指揮する者はどれか。(※不適切問題:解答なし)

1.作業主任者
2.産業歯科医
3.安全衛生推進者
4.統括安全衛生管理者

解答 なし
理由:選択肢に正解がないため。

解説

労働安全衛生法とは?

「労働安全衛生法」とは、労働者の安全と衛生についての基準を定めた日本の法律である。事業者は安全衛生管理体制を整備することが義務づけられており、それぞれの事業規模に応じた①衛生管理者、②総括安全衛生管理者などを選任しなければならない。

①衛生管理者
職場の衛生にかかわる技術的事項の管理を行う。少なくとも毎週1回作業場の巡視を行い、設備、作業方法または衛生状態に有害のおそれがあるときは、直ちに健康障害防止措置を講じなければならない。

②総括安全衛生管理者
安全管理者、衛生管理者を指揮し、安全・衛生・健康・事故防止などの統括管理を行う。その事業場で統括管理する者(工場長、支店長 等)を充てなければならない。

1.× 作業主任者は、作業者の健康障害を防止するための管理・指揮を行う。労働災害を防止するための管理を必要とする一定の作業について、その作業区分に応じて選任が義務づけられている。作業主任者の職務は安衛則等の厚生労働省令に示されている主な業務は、①作業の直接指揮、②使用する機械等の点検、③機械等に異常を認めたときの必要な措置、④安全装置等の使用状況の監視等である。
2.× 産業歯科医とは、法律上、一定の有害な業務(塩酸、硝酸、硫酸、亜硫酸、弗(ふつ)化水素、黄りんその他歯又はその支持組織に有害な物のガス、蒸気又は粉じんを発散する場所における業務)に従事する者に対して健康診断を行う歯科医師のことである。
3.× 安全衛生推進者は、常時10人以上50人未満の労働者を使用する中小規模事業場において選任することが義務づけられており、労働者の安全や健康確保などに関する業務を担当する。
4.× 『括安全衛生管理者』といったものはない。正しくは、括安全衛生管理者である。括安全衛生管理者は、安全管理者・衛生管理者等を指揮し、安全衛生管理体制に関するすべてを統括する。常時1,000人以上の労働者を使用する事業場で、労働安全衛生法に基づき、事業場における安全衛生管理体制の責任者として安全衛生にかかわる業務を管理・指揮する者に該当する。

 

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