第107回(R3) 保健師国家試験 解説【午前16~20】

 

16 患者調査で正しいのはどれか。

1.5年に1回実施される。
2.推計患者数には調査日に受療した患者数が含まれる。
3.調査日に入院している患者の平均在院日数が把握される。
4.総患者数には医療を受けたことのない有病者数も含まれる。

解答

解説

患者調査とは?

目的:病院・診療所を利用する患者について、傷病状況の実態を明らかにする。
調査頻度3年に1回、医療施設静態調査と同時期に実施している。
調査対象:標本調査(全国の病院、一般診療所、歯科診療所から層化無作為により抽出した医療施設の患者)
調査項目:患者の性別、出生年月日、住所、入院・外来の種別、受療の状況等。
調査方法:医療施設の管理者が記入。

(参考:「患者調査(基幹統計)」厚生労働省HPより)

1.× 「5年」ではなく3年に1回実施される。患者調査の目的は、病院・診療所を利用する患者について、傷病状況の実態を明らかにするため行われる。
2.〇 正しい。推計患者数には調査日に受療した患者数が含まれる。推計患者数は、調査日当日に、「病院・一般診療所・歯科診療所で受療した患者の推計数」であり、実際に受療した患者数も含まれる。
3.× 「調査日に入院している患者の平均在院日数」ではなく、「退院した患者の在院日数の平均(平均在院日数)」が把握される。
4.× 総患者数には医療を受けたことのない有病者数は含まれない。なぜなら、総患者数は、調査日現在において、継続的に医療を受けている者の数を算出したものであるため。入院患者や初診外来患者数、再来外来患者数が含まれる。

 

 

 

 

 

17 国際疾病分類(ICD)について正しいのはどれか。

1.第9回改訂(ICD-9)が最新である。
2.各種疾病の治療指針が示されている。
3.世界保健機関(WHO)が改訂を行っている。
4.国際生活機能分類(ICF)の上位概念である。

解答

解説

国際疾病分類(ICD)とは?

国際疾病分類(ICD)は、世界保健機関(WHO)が国際的に用いることを目的として開発した、疾病・傷害および死因の統計分類の体系である。死因や疾病の統計などに関する情報の国際的な比較や、医療機関における診療記録の管理などに活用されて、日本では、人口動態統計・患者調査などに利用されている。

1.× 「第9回改訂(ICD-9)」ではなく、第10回改訂ICD-10(2013年版)が最新である。ただし、最新版は2019年に改訂された第11回改訂版(ICD-11)で、日本でも適用に向け準備中である。
2.× 「各種疾病の治療指針」ではなく、「国際疾病分類は疾病の分類」が示されている。
3.〇 正しい。世界保健機関(WHO)が改訂を行っている国際統計分類のひとつである。国際疾病分類は、世界保健機関(WHO)が国際的に比較できるよう疾病分類の基準を定めている。
4.× 国際生活機能分類(ICF)と全くの別である。国際生活機能分類(ICF)は、健康状態を「生活機能と障害」と「背景因子」から評価する分類で、障害を有する人の支援を総合的に評価検討する分類として使用されている。

国際生活機能分類(ICF)

国際生活機能分類(ICF)は、障害者のみならず、すべての人を対象として、障害を「生活機能」というプラス面からみるように視点を転換した分類法である。この「生活機能」は、「心身機能・身体構造」「活動」「参加」の3レベルに分類されたうえで、さらに「個人因子」「環境因子」の観点が加えられる。

世界保健機関(WHO:World Health Organization)とは?

世界保健機関とは、「全ての人々が可能な最高の健康水準に到達すること」を目的として設立された国連の専門機関である。

設置年:昭和23(1948)年
本部:ジュネーブ(スイス)
協力形態:多国間交流
事業内容:発展途上国への国際保健協力、感染症およびその他の疾病(エイズ・結核・マラリア等)の撲滅事業、国際疾病分類(ICD)の作成
備考:①WHOの構成組織である地域的機関は、6つ(アフリカ、アメリカ、東南アジア、ヨーロッパ、東地中海、西太平洋)あり、日本は西太平洋に所属している。②194か国加盟 (2018年4月時点)、③たばこ規制枠組み条約:たばこの消費等が健康に及ぼす悪影響から現在および将来の世代を保護することを目的とし、たばこに関する広告、包装上の表示等の規制及びたばこの規制に関する国際協力について規定。

(※参考:「日本とWHO」厚生労働省HPより)

 

 




 

 

18 国保データベース(KDB)システムが扱う対象はどれか。

1.健康保険組合
2.国民健康保険組合
3.全国健康保険協会
4.国家公務員共済組合

解答

解説

国保データベース(KDB)システムとは?

国保データベース(KDB)システムには、国民健康保険加入者ならびに後期高齢者医療制度対象者のレセプト情報、特定健診・特定保健指導データ、介護保険レセプトデータ、要介護認定データが集約されており、市町村や後高齢者医療広域連合の保健事業実施計画(データヘルス計画)の作成など活用される。

1.× 健康保険組合は、国保データベース(KDB)システムが扱う対象ではない。健康保険組合とは、健康保険法に基づき国が行う被用者医療保険事業を代行する公法人である。
2.〇 正しい。国民健康保険組合は、国保データベース(KDB)システムが扱う対象である。国保データベース(KDB)システムには、国民健康保険加入者ならびに後期高齢者医療制度対象者のレセプト情報、特定健診・特定保健指導データ、介護保険レセプトデータ、要介護認定データが集約されており、市町村や後高齢者医療広域連合の保健事業実施計画(データヘルス計画)の作成など活用される。ちなみに、国民健康保険組合とは、主に市町村が運営し、被用者保険などとともに、日本におけるユニバーサルヘルスケア制度の中核をなすものである。
3.× 全国健康保険協会は、国保データベース(KDB)システムが扱う対象ではない。全国健康保険協会とは、被用者保険者のひとつで、健康保険法等に基づき2008年10月1日に設立された、厚生労働省所管の特別の法律により設立される法人である。保険者として健康保険事業及び船員保険事業を行い、加入者の皆様の健康増進を図るとともに、良質かつ効率的な医療が享受できるようにし、もって加入者及び事業主の皆様の利益の実現を図る。
4.× 国家公務員共済組合は、国保データベース(KDB)システムが扱う対象ではない。国家公務員共済組合とは、公務員および私立学校教職員を対象とした公的社会保障を運営する社会保険組合である。組合は医療保険、年金保険の役割を担っており、組合員は健康保険法に基づく保険料の徴収・各種給付が行なわれない。

 

 

 

 

 

19 食品に係る事項と法令との組合せで正しいのはどれか。

1.食中毒の届出:食品安全基本法
2.栄養機能食品の表示:食育基本法
3.特定保健用食品の許可:健康増進法
4.アレルゲンを含む食品であることの表示:食品衛生法

解答

解説

健康増進法とは?

健康増進法は、国民の健康維持と現代病予防を目的として制定された日本の法律である。都道府県と市町村は、地域の実情に応じた健康づくりの促進のため、都道府県健康増進計画(義務)および市町村健康増進計画(努力義務)を策定する。平成14(2002)年に制定された。

【市町村が行う健康増進事業】
①健康手帳、②健康教育、③健康相談、④訪問指導、⑤総合的な保健推進事業、⑥歯周疾患検診、⑦骨粗鬆症検診、⑧肝炎ウイルス検診、⑨がん検診、⑩健康検査、⑪保健指導などである。

【都道府県の役割】
都道府県は、都道府県健康増進計画において、管内市町村が実施する健康増進事業に対する支援を行うことを明記する。都道府県保健所は、市町村が地域特性等を踏まえて健康増進事業を円滑かつ効果的に実施できるよう、必要な助言、技術的支援、連絡調整及び健康指標その他の保健医療情報の収集及び提供を行い、必要に応じ健康増進事業についての評価を行うことが望ましい。都道府県は、保健・医療・福祉の連携を図るとともに、市町村による健康増進事業と医療保険者による保健事業との効果的な連携を図るために、地域・職域連携推進協議会を活性化していくことが望ましい。

1.× 食中毒の届出は、「食品安全基本法」ではなく『食品衛生法』に定められている。『食品衛生法』は、飲食に関連する衛生上の危害発生の防止を目的としており、食品の安全性確保のために、食品、添加物、容器包装、表示および広告、食中毒患者の届け出などについて規定している。その58条に「食中毒患者を診断し、またはその死体を検案した医師は、直ちに最寄りの保健所長にその旨を届け出なければならない」とされている。ちなみに、『食品安全基本法』は、食生活を取り巻く環境変化に対応し、食品の安全性を確保することにより国民の健康を保護することを目的としている。
2.× 栄養機能食品の表示は、「食育基本法」ではなく『食品表示法』に定められている。ちなみに、『食育基本法』は、食育についての基本理念や食育の施策の基本、食育の実施が定められている。
3.〇 正しい。特定保健用食品の許可は、健康増進法に定められている。『健康増進法』は、健康日本21を推進し、国民の健康増進・国民保健の向上を図ることを目的としている。特定保健用食品の許可は、『健康増進法』に基づく「健康増進法に規規定する特別用途表示の許可等に関する内閣府令」に定められ、消費者庁長官が許可をする。保健機能食品制度は、消費者が安心して食生活の状況に応じた食品の選択ができるよう、適切な情報提供をすることを目的とした制度である。 国が安全性や有効性等を考慮して設定した基準等を満たしている場合、『保健機能食品』と称することができる。保健機能食品には3種類あり、①特定保健用食品(身体の生理学的機能に影響を与える成分を含むもの)、②栄養機能食品(栄養素の補給のために利用される食品で、栄養素の機能を表示するもの)、③機能性表示食品(品事業者の責任において、科学的根拠に基づいた機能性を表示したもの)からなる。摂取上の注意事項、1日当たりの摂取目安量などの表示が必要となる。
4.× アレルゲンを含む食品であることの表示は、「食品衛生法」ではなく『食品表示法』に基づく「食品表示基準(4条)」に定められている。ちなみに、食品衛生法とは、日本において飲食によって生ずる危害の発生を防止するための日本の法律である。所管官庁は、厚生労働省と消費者庁である。食品と添加物などの基準、表示、検査などの原則を定めている。

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20 学校保健について正しいのはどれか。

1.保育所は学校教育法に規定されている。
2.学校保健行政は厚生労働省が所管している。
3.教職員の健康診断の実施主体は労働基準監督署である。
4.学校の設置者は感染症の予防のための臨時休業を行うことができる。

解答

解説
1.× 保育所は、「学校教育法」ではなく『児童福祉法』に規定されている。なぜなら、保育所は児童福祉施設であるため。児童福祉施設とは、児童福祉法をはじめとする法令に基づいて、児童福祉に関する事業を行う施設総称である。ちなみに、学校教育法とは、学校教育制度の根幹を定める日本の法律で、教育の目的は、「人格の完成を目指し、平和で民主的な国家及び社会の形成者として必要な資質を備えた心身ともに健康な国民の育成」と定められている(第1条)。 また、教育の目標について、公共の精神や伝統と文化の尊重など、今日重要と考えられる事柄が新たに規定されている(第2条)。所管官庁は、文部科学省である。つまり、学校は幼稚園小学校などである。
2.× 学校保健行政は、「厚生労働省」ではなく文部科学省が所管している。学校保健とは、学校において、①児童生徒等の健康の保持増進を図ること、②集団教育としての学校教育活動に必要な健康や安全への配慮を行うこと、③自己や他者の健康の保持増進を図ることができるような能力を育成することなど学校における保健管理と保健教育であり、文部科学省においては、これらの充実のために様々な施策を推進している(※参考「学校保健の推進」文部科学省HPより)。文部科学省は、大臣官房、総合教育政策局、初等中等教育局、高等教育局、科学技術・学術政策局、研究振興局、研究開発局から成る組織である。ちなみに、厚生労働省は、大臣官房、医政局、健康局、医薬・生活衛生局、労働基準局、職業安定局、雇用環境・均等局といった機関から成る組織で、子供からお年寄りまで幅広く対応している。医療や健康増進、食品の安全管理など国民生活向上の役割を担っており、雇用対策推進や、安心して子育てができる社会作り、介護福祉なども担当している。
3.× 教職員の健康診断の実施主体は、「労働基準監督署」ではなく学校の設置者である。労働基準監督署は、労働条件の確保や改善についての指導などを行う機関である。学校の設置者の主な業務は、①臨時休業の決定(感染症の予防上、必要なとき)、②職員の健康診断である。
4.〇 正しい。学校の設置者は、感染症の予防のための臨時休業を行うことができる。ちなみに、学校の設置者とは、国・地方自治体(都道府県、市町村)・学校法人等をいう。

 

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