16 公衆衛生看護管理で人材管理に当てはまるのはどれか。
1.報道機関への対応は事業担当者が行う。
2.地域住民に必要なサービスの開発を行う。
3.保健師のキャリアに応じた研修を計画的に実施する。
4.地域診断に基づいた地区活動計画を立案する。
解答3
解説
1.× 報道機関への対応は事業担当者が行うことは、情報管理である。情報管理とは、地域の実態を把握するための情報収集・分析や正確な情報伝達のための体制整備、マスコミ対応、個人情報への配慮を行う。
2.× 地域住民に必要なサービスの開発を行うことは、地区管理である。地区管理とは、地域のニーズや課題から地域診断を行い、住民と協働した施策化を行う。
3.〇 正しい。保健師のキャリアに応じた研修を計画的に実施することは、人材管理である。保健師に求められる能力開発を計画的に継続して実施することである。人材育成とは、保健師の育成過程に応じて、中・長期的な研修計画および生涯学習企画と実施を行い、実践報告を評価する。
4.× 地域診断に基づいた地区活動計画を立案することは、地区管理である。地区管理とは、地域のニーズや課題から地域診断を行い、住民と協働した施策化を行う。
保健師が担う管理機能には、キャリア発達の段階に沿って、新任期1年目から担うものと、中堅や管理者になってから担うものに分けられる。保健師が行う地域看護管理の機能として、①初任期にも事例管理、事業管理、地区管理等管理的な機能を果たす。②、①の延長線上に管理者の組織運営管理や人材育成管理そして地域管理等の機能がある。③管理的な機能は初任期から発揮されていることから、保健師の専門性の中核を成すものといえる。④地区管理も行うため、所属組織内の管理にとどまるものではない。
①事例管理:個々の事例のケアから始まり、それを地域の問題としてとらえ、ダイナミックな活動を展開する。
②地区管理:地域のニーズや課題から地域診断を行い、住民と協働した施策化を行う。
③事業・業務管理:地方自治体の上位計画や組織目標に基づく、事業計画策定や進行管理を行い、評価結果を次年度の計画等へ反映させる。
④組織運営管理:組織理念・目標や地域の課題を共有して組織としての方針を決定し、業務の効率化を高めながら組織体制を機能させる。
⑤予算編成:予算の仕組みを把握し、事業企画に伴う予算編成を行う。
⑥予算管理:新たな政策や人材確保等のための予算獲得および適切な執行と評価を行い、予算面から公衆衛生看護活動を担保する。
⑦人材育成:保健師の育成過程に応じて、中・長期的な研修計画および生涯学習企画と実施を行い、実践報告を評価する。
⑧人事管理:組織の目標を達成するため、組織に必要な保健師人員数を確保し、職員を計画的に適材適所へ配置するとともに、人事評価を行う。
⑨情報管理:地域の実態を把握するための情報収集・分析や正確な情報伝達のための体制整備、マスコミ対応、個人情報への配慮を行う。
⑩健康危機管理:危機発生を予測し,住民と協働する健康危機管理の体制づくり全般を行う。
(参考:「保健師に求められる看護管理のあり方」社団法人日本看護協会より)
17 「地域における保健師の保健活動に関する指針」に基づく保健師の保健活動の基本的な方向性の10項目に該当するのはどれか。
1.業務分担制の推進
2.予算の適切な執行管理
3.顕在化している課題への介入重視
4.部署横断的な保健活動の連携・協働
解答4
解説
1.× 業務分担制(業務の内容で担当を分けること)の推進は該当しない。業務分担制ではなく地区担当制が推進される。地区担当制とは、市町村をいくつかの地区に分け、各担当地区内の業務全般を行うことである。
2.× 予算の適切な執行管理は該当しない。予算の適切な執行管理は、地域における保健師の保健活動に限らず基本的な事項である。
3.× 顕在化している課題への介入重視は該当しない。「顕在化している課題」だけでなく、潜在化している課題を予見して早期に介入することも重要である。顕在化(けんざいか)とは、隠れていたものが明らかになること、はっきりすることである。潜在化(せんざいか)とは、表面上は分からないような状態になる、の意味で使われる表現である。 「顕在化」と対比的に用いられる。
4.〇 正しい。部署横断的な保健活動の連携・協働は、保健師の保健活動の基本的な方向性の10 項目に該当する。地域における保健師の保健活動に関する指針の⑦に該当する。保健師は、多職種・多機関、住民とも連携・協働し、健康課題の解決に取り組む。
【地域における保健師の保健活動に関する指針】
①地域診断に基づくPDCAサイクルの実施
②個別課題から地域課題への視点及び活動の展開
③予防的介入の重視
④地区活動に立脚した活動の強化
⑤地区担当制の推進
⑥地域特性に応じた健康なまちづくりの推進
⑦部署横断的な保健活動の連携及び協働
⑧地域のケアシステムの構築
⑨各種保健医療福祉計画の策定及び実施
⑩人材育成
【活動領域に応じた保健活動の推進】
~都道府県保健所等~
都道府県保健所等に所属する保健師は、所属内の他職種と協働し、管内市町村及び医療機関等の協力を得て広域的に健康課題を把握し、その解決に取り組むこと。また、生活習慣病対策、精神保健福祉対策、自殺予防対策、難病対策、結核・感染症対策、エイズ対策、肝炎対策、母子保健対策、虐待防止対策等において広域的、専門的な保健サービス等を提供するほか、災害を含めた健康危機への迅速かつ的確な対応が可能になるような体制づくりを行い、新たな健康課題に対して、先駆的な保健活動を実施し、その事業化及び普及を図ること。加えて、生活衛生及び食品衛生対策についても、関連する健康課題の解決を図り、医療施設等に対する指導等を行うこと。さらに、地域の健康情報の収集、分析及び提供を行うとともに調査研究を実施して、各種保健医療福祉計画の策定に参画し、広域的に関係機関との調整を図りながら、管内市町村と重層的な連携体制を構築しつつ、保健、医療、福祉、介護等の包括的なシステムの構築に努め、ソーシャルキャピタルを活用した健康づくりの推進を図ること。市町村に対しては、広域的及び専門的な立場から、技術的な助言、支援及び連絡調整を積極的に行うよう努めること。
~市町村~
市町村に所属する保健師は、市町村が住民の健康の保持増進を目的とする基礎的な役割を果たす地方公共団体と位置づけられ、住民の身近な健康問題に取り組むこととされていることから、健康増進、高齢者医療福祉、母子保健、児童福祉、精神保健福祉、障害福祉、女性保護等の各分野に係る保健サービス等を関係者と協働して企画及び立案し、提供するとともに、その評価を行うこと。その際、管内をいくつかの地区に分けて担当し、担当地区に責任を持って活動する地区担当制の推進に努めること。また、市町村が保険者として行う特定健康診査、特定保健指導、介護保険事業等に取り組むこと。併せて、住民の参画及び関係機関等との連携の下に、地域特性を反映した各種保健医療福祉計画を策定し、当該計画に基づいた保健事業等を実施すること。さらに、各種保健医療福祉計画の策定にとどまらず、防災計画、障害者プラン及びまちづくり計画等の策定に参画し、施策に結びつく活動を行うとともに、保健、医療、福祉、介護等と連携及び調整し、地域のケアシステムの構築を図ること。
(一部抜粋:「地域における保健師の保健活動に関する指針」厚生労働省HPより)」
18 A市の保健師が現在担当している子育て支援事業の次年度予算を作成することになった。
この保健師が行う予算管理として適切なのはどれか。
1.予算要求には市の基本計画との整合性を重視する。
2.1月1日から12 月31 日までの予算を作成する。
3.予算の執行権は予算案を作成した保健師にある。
4.補正予算で作成する。
解答1
解説
予算管理は、保健師に求められる看護管理機能のひとつである。新たな政策や人材確保のための予算獲得と適切な執行・評価を行い、予算面から公衆衛生看護活動を担保することである。
1.〇 正しい。予算要求には市の基本計画との整合性を重視する。整合性とは、矛盾がなく整っていること、つじつまが合っていることを指す。予算管理は、保健師に求められる看護管理機能のひとつである。新たな政策や人材確保のための予算獲得と適切な執行・評価を行い、予算面から公衆衛生看護活動を担保することである。
2.× 「1月1日から12 月31 日まで」ではなく、「4月1日から翌年3月31日まで」の予算を作成する。一般会計(予算)は、地方自治体の4月1日~翌年3月31日(一会計年度)の歳入・歳出を包括的に経理する会計を指す。特別会計に属さない地方自治体の基本的な行政活動を行うための会計を指す。単一予算主義の原則に基づく。
3.× 予算の執行権は、「予算案を作成した保健師」ではなく、市長にある。執行権(行政権)とは、立法権・司法権に対して法律を執行する国家統治権の権能のことをさす。地方自治法の第二百十一条には「(予算の調製及び議決)普通地方公共団体の長は、毎会計年度予算を調製し、年度開始前に、議会の議決を経なければならない。この場合において、普通地方公共団体の長は、遅くとも年度開始前、都道府県及び第二百五十二条の十九第一項に規定する指定都市にあつては三十日、その他の市及び町村にあつては二十日までに当該予算を議会に提出するようにしなければならない。」と規定されている。(※一部引用:「地方自治法」※e-GOV法令検索様HPより)
4.× 予算の作成は、「補正予算で作成する」のではなく、「年度開始前に年間予算として編成・成立した当初予算」で作成する。補正予算とは、予算製後の事由(災害対応等)によって、一般会計で予算化した事業に修正が見要になった場合に設定する。
地方自治体の会計区分は、一般会計と特別会計に分けられる。
一般会計:地方自治体の4月1日~翌年3月31日(一会計年度)の歳入・歳出を包括的に経理する会計を指す。特別会計に属さない地方自治体の基本的な行政活動を行うための会計を指す。単一予算主義の原則に基づく。
特別会計:地方自治体の特定の事業(介護保険、国民健康保険、水道事業 等)を行うための会計を指す。一般会計のように単一の会計では適切な処理が難しい事業について、効率性や運用の観点から一般会計とは別に扱う特別会計が設置される。
補正予算:予算製後の事由(災害対応等)によって、一般会計で予算化した事業に修正が見要になった場合に設定する。
暫定予算:予算が会計年度の開始前(3月31日)までに成立しない場合に、短期的に組まれる予算である。本予算が成立した後は、本予算に組み込まれる。
(※参考「用語の解説」財務省HPより)
19 同じ集団における同一のスクリーニング検査で、基準値を変えて敏感度を上げた場合に上昇するのはどれか。
1.特異度
2.偽陽性率
3.偽陰性率
4.陰性者数
解答2
解説
敏感度(sensitivity):実際に疾病にかかっている者が検査で陽性となる割合で、検査による疾病発見の能力を表す。値が高いほど良いものと考える。同一集団に対するスクリーニング検査にて、敏感度が上がると、検査結果は①陽性・陰性と判定される人数(割合)は変わる。しかし、②本当に疾病を有しているかどうかの事実は変わらない。
敏感度=検査で正しく発見された罹患者/全罹患者
=a/(a+c)×100(%)
(参考:「スクリーニング検査の効果指標」神谷町駅前クリニック様HPより)
1.× 特異度は下がる。なぜなら、敏感度が上がると、検査の陰性者数が減るため。ちなみに、「特異度」とは、疾病を有さないものを正しく疾病なしと診断する確率である。
2.〇 正しい。偽陽性率は上昇する。なぜなら、敏感度が上がると、疾病がある人を陽性と判定する割合も増えるが、同時に、疾病がない人を陽性と判定する割合も増えるため。偽陰性率とは、疾病ありだが、検査結果は陰性と判定される割合のことである。同一集団に対するスクリーニング検査で敏感度が上がると、検査で陽性・陰性と判定される人数(割合)は変わるが、本当に疾病を有しているかどうか(疾病あり・なし)の事実は変わらない。
3.× 偽陰性率は下がる。なぜなら、敏感度が上がると、疾病がある人を陽性と判定する割合が増えるため。偽陰性率とは、疾病ありだが、検査結果は陰性と判定される割合のことである。
4.× 陰性者数は減少する。なぜなら、敏感度が上がると、検査の陽性者数が増えるため。敏感度(sensitivity)とは、実際に疾病にかかっている者が検査で陽性となる割合で、検査による疾病発見の能力を表す。値が高いほど良いものと考える。
・疾病を有するものを正しく疾病ありと診断する確率を「感度」という。
・疾病を有さないものを正しく疾病なしと診断する確率を「特異度」という。
・検査陽性者のうち実際に疾病を有する者の割合を「陽性反応的中度(陽性的中率)」という。
・検査陰性者のうち実際に疾病を有さない者の割合を「陰性反応的中度(陰性的中率)」という。
・疾病なしだが、検査結果は陽性と判定される割合を「偽陽性率」という。
・疾病ありだが、検査結果は陰性と判定される割合を「偽陰性率」という。
20 国民健康・栄養調査について正しいのはどれか。
1.血圧値は調査項目である。
2.3日間の食事調査が行われる。
3.調査日の食費は調査項目である。
4.栄養素等摂取量が市区町村別に比較される。
解答1
解説
国民健康・栄養調査とは、国民の健康状態、生活習慣や栄養素摂取量を把握するための調査である。 毎年、食生活状況、各種身体・血液検査や飲酒、喫煙、運動習慣などを調べており、国における健康増進対策や生活習慣病対策に不可欠な調査となっている。国民健康・栄養調査は、『健康増進法』に基づき、国民の身体の状況、栄養素等摂取状況および生活習慣の状況についての調査で、標本調査により実施される。
【国民健康・栄養調査の調査項目】
1)身体状況調査票
ア.身長、体重(満1歳以上)
イ.腹囲(満6歳以上)
ウ.血圧測定(満20歳以上)
エ.血液検査(満20歳以上)
オ.問診<服薬状況、糖尿病の治療の有無、運動>(満20歳以上)
2)栄養摂取状況調査票
満1歳以上の世帯員の食品摂取量、栄養素等摂取量、食事状況(欠食・外食等)、1日の身体活動量(歩数:満20歳以上)
3)生活習慣調査票
満20歳以上が対象。食生活、身体活動・運動、休養(睡眠)、飲酒、喫煙、歯の健康等に関する生活習慣全般を把握。
(※参考「国民健康・栄養調査」厚生労働省HPより)
1.〇 正しい。血圧値は調査項目である。1)身体状況調査票に含まれ、他にも、身長、体重、腹囲、血圧血液検査、問診がある。
2.× 食事調査(栄養摂取状況調査)は、「3日間」ではなく「調査時期(毎年11月)の任意の1日」に行われる。
3.× 調査日の食費は、調査項目に含まれない。2)栄養摂取状況調査票には、満1歳以上の世帯員の食品摂取量、栄養素等摂取量、食事状況(欠食・外食等)、1日の身体活動量(歩数:満20歳以上)が調査される。また、3)生活習慣調査票には、満20歳以上が対象で、食生活、身体活動・運動、休養(睡眠)、飲酒、喫煙、歯の健康等に関する生活習慣全般を把握する。
4.× 栄養素等摂取量(国民健康・栄養調査)は、「市区町村別」ではなく、都道府県別に比較される。層化無作為抽出による標本調査で実施される。