26 人から人への直接の伝播がない感染症はどれか。
1.痘そう
2.ペスト
3.腸チフス
4.デング熱
5.腸管出血性大腸菌感染症
解答4
解説
1.〇 痘そう(天然痘)の感染経路は、唾液や喀痰の飛沫による飛沫感染である。つまり、人から人へ直接伝播する。痘そう(天然痘)とは、天然痘ウイルスによる感染症である。急激な発熱や頭痛、悪寒で発症し、 一時的に解熱するが、口腔や咽頭粘膜に発疹が出現し、顔面や四肢、そして全身に発疹がひろがる。
2.〇 ペストの感染経路は、ノミを介する媒介動物感染、飛沫感染である。つまり、人から人へ直接伝播する。ペストとは、ペスト菌による感染症である。症状としては、通例3~7日の潜伏期の後、リンパ節の腫脹に加え、発熱・頭痛・悪寒・倦怠感などの全身性の症状が現れる。
3.〇 腸チフスの感染経路は、患者の糞便で汚染された食物や水を摂取することによる経口感染である。チフス菌は、全身性疾患で潜伏期間は7~14日で発熱を伴って発症する。患者、保菌者の便と尿が感染源となる。つまり、人から人へ直接伝播する。39℃を超える高熱が1週間以上も続き、比較的徐脈、バラ疹、脾腫、下痢などの症状を呈し、腸出血、腸穿孔を起こすこともある。
4.× デング熱は、人から人への直接の伝播がない感染症である。蚊による媒介動物感染のみである。急激な発熱で発症し、発疹、頭痛、骨関節痛、嘔気・嘔吐などの症状が見られる。通常、発症後2~7日で解熱し、発疹は解熱時期に出現する。
5.〇 腸管出血性大腸菌感染症の感染経路は、水系感染や食物感染などの経口感染である。経口摂取物が患者の微量の糞便で汚染されている場合でも感染が成立し得る。つまり、人から人へ直接伝播する。症状は、下痢(頻回な水様便または血便)、激しい腹痛、発熱、嘔吐、吐き気などである。 感染した患者の6~7%では、下痢、腹痛の初期症状の後、数日から2週間後(多くは5日から7日後)に溶血性尿毒症症候群や脳症(けいれんや意識障害等)など重症な合併症を発症するといわれている。
腸管出血性大腸菌(ベロ毒素産生性大腸菌、志賀毒素産生性大腸菌)は、赤痢菌が産生する志賀毒素類似のベロ毒素を産生し、激しい腹痛、水様性の下痢、血便を特徴とする。特に、小児や老人では、溶血性尿毒症症候群や脳症(けいれんや意識障害など)を引き起こしやすいので注意が必要である。原因食品は、ハンバーグ、生肉、生レバー、井戸水などである。
(※参考:「腸管出血性大腸菌感染症」厚生労働省HPより)
27 予防接種法に基づく定期予防接種の対象疾病のうち、目的として個人の発病または重症化を防止し、併せてこれによりそのまん延の予防に資するために定期的に行う必要があるのはどれか。
1.結核
2.麻しん
3.破傷風
4.B 型肝炎
5.インフルエンザ
解答5
解説
予防接種法とは、公衆衛生の観点から伝染のおそれがある疾病の発生・まん延を予防するためにワクチンの予防接種を行うとともに、予防接種による健康被害の迅速な救済を図ることを目的として制定された日本の法律である。予防接種法に基づく予防接種には、①定期予防接種と②臨時予防接種があり、定期予防接種の対象疾患には、①A類疾病と②B類疾病がある。さらに同法に基づかない任意接種もある。
A類疾病:主に集団予防、重篤な疾患の予防に重点を置き、国の積極的な勧奨があり、本人(保護者)に努力義務がある。
疾患:結核、ジフテリア、破傷風、百日咳、ポリオ、麻疹、風疹、日本脳炎、ヒブ(インフルエンザ菌b型)感染症、小児の肺炎球菌感染症、水痘、ヒトパピローマウイルス感染症、B型肝炎(平成29年3月時点では、小児を対象とする予防接種は、すべてA類疾病である。)
B類疾病:主に個人予防に重点を置き、国の積極的な勧奨なく、本人(保護者)に努力義務はない。
疾患:季節性インフルエンザと高齢者の肺炎球菌感染症
(参考:「予防接種とは?」東京都医師会HPより)
1~4.× 結核/麻しん/破傷風/B型肝炎は、定期予防接種のA類疾病である。A類疾病:主に集団予防、重篤な疾患の予防に重点を置き、国の積極的な勧奨があり、本人(保護者)に努力義務がある。予防接種対象者およびその保護者は、接種を受けるよう努めなければならない。平成29年3月時点では、小児を対象とする予防接種は、すべてA類疾病である。
5.〇 正しい。インフルエンザは、予防接種法に基づく定期予防接種の対象疾病のうち、目的として個人の発病または重症化を防止し、併せてこれによりそのまん延の予防に資するために定期的に行う必要がある。インフルエンザは、定期予防接種のB類疾病である。B類疾病では、個人の発病または重症化の防止(個人予防)を第一の目的としている。B類疾病では対象者が接種を希望する場合に実施しており、努力義務ではない。
28 A化学工場で、トルエンを取り扱っている複数の社員が急に頭痛やめまいを訴えたため、臨時職場巡視を実施した。その結果、トルエンによる中毒症状が出現していたことが判明し、原因は防護具の着用が不適切なことだった。
健康障害の再発防止策で最も効果的なのはどれか。
1.救急用具の変更
2.職場環境測定回数の増加
3.社内広報を活用した情報発信
4.特殊健康診断実施回数の増加
5.有機溶剤を取り扱う社員に対する研修
解答5
解説
・トルエンを取り扱っている複数の社員が急に頭痛やめまいを訴えた。
・臨時職場巡視:トルエンによる中毒症状が出現していた。
・原因:防護具の着用が不適切なこと。
→原因が「防護具の着用」と断定されているため、それを徹底する必要がある。徹底・周知するためには、どのように行えばよいか考える。
→トルエンは、塗料や接着剤の溶剤(有機溶剤)などに広く用いられている。気化したものを吸い込むと中枢神経に強く作用して急激な酩酊状態(酔っ払った状態)となる。 不安や緊張感が弱まり、興奮状態の中で、幻覚、知覚異常をおこす。
→職場巡視とは、作業環境を実際に見て、安全衛生上の問題点を見出し改善していくことを目的としている。事業者は産業医に対して、職場巡視を実施する機会と情報を提供しなければならない。
1.× 救急用具の変更より優先度が高いものが選択肢の中にある。なぜなら、救急用具を変更しても、救急用具は事案後に装着するものであるため。再発防止策としては、保護具の正しい使用方法の指導が正しい。
2.× 職場環境測定回数の増加より優先度が高いものが選択肢の中にある。なぜなら、仕事上、職場環境測定回数の増加は仕事の妨げになりかねず、また健康障害の有害要因を完全に使用しないことは難しいと考えられるため。職場環境測定回数を増加するよりも、暴露からの隔離(防護着の正しい着用)を行う。
3.× 社内広報を活用した情報発信より優先度が高いものが選択肢の中にある。なぜなら、社内広報は見る人は限定的になるため。社内広報とは、社内広報を行うためのツールとして制作された冊子やWeb、映像などの媒体のことである。 ただし、情報発信により、全社員に対して有機溶剤の有害性や取り扱いに関する注意点を周知することはできる。
4.× 特殊健康診断実施回数の増加より優先度が高いものが選択肢の中にある。なぜなら、特殊健康診断は、健康障害を予防する早期発見に位置づけられるため。特殊健康診断とは、労働衛生対策上特に有害であるといわれている業務に従事する労働者等を対象として実施する健康診断である。
5.〇 正しい。有機溶剤を取り扱う社員に対する研修(教育)は、健康障害の再発防止策で最も効果的である。再発防止策としては、①局所換気装置の設置、②保護具の使用、③健康診断の実施、④有害性の表示などを定めることが有効である。
29 A市のある一時点におけるC型肝炎を有している人の割合を示す指標はどれか。
1.罹患率
2.被患率
3.有病率
4.寄与危険
5.相対頻度
解答3
解説
1.× 罹患率とは、一定の観察期間において、観察集団のなかで新たに疾病を有した人の率である。疾病や死亡が生じることを事象の発生という。事象の発生は、ある一定期間を設定し、その期間内で新規に発生した頻度により把握できる。また、発生頻度の表現は、率(rate)の形で示される。
2.× 被患率とは、ある疾病・異常のある者が集団全体に占める割合を示すものである。国・地方自治体の学校保健統計で使用されることが多い。その場合、分母には在学者数がおかれる。ある一時点において、健康診断等を受けた人(受検者数)のうち、疾病や異常ありに該当した人(疾病・異常該当者数)の割合のことをいう。
3.〇 正しい。有病率とは、ある一時点における観察集団での疾病保有者(C型感染)の割合を意味する。生涯有病率とは、一生のうちに一度はその病気にかかる人の割合をいう。
4.× 寄与危険(リスク差)とは、曝露群と非曝露群での一定期間においての発生率(罹患率)の差をみる指標である。「曝露因子があるとどれだけ危険度が増すか」を示す。
5.× 相対頻度とは、いくつかのカテゴリーにおけるそれぞれの度数(データ数)が全体に占める割合の大きさを示すものである。
30 平成30年(2018 年)の人口動態統計月報年計における性・年齢階級別にみた主な死因の構成割合を下図に示す。
自殺はどれか。
1.A
2.B
3.C
4.D
5.E
解答5
解説
1.× Aは老衰である。高齢になるにつれて男女とも死亡割合が増大し、100歳以上では死亡割合が最も大きい疾患である。
2.× Bは脳血管疾患である。男女とも全年齢階級で死亡が観察されるが、0~4歳の年齢階級で死亡がごくわずかである。
3.× Cは肺炎である。男女とも全年齢階級で死亡が観察され、高齢者で死亡割合が増加する特徴を持つ。
4.× Dは不慮の事故である。男女とも全年齢階級で死亡が観察されるが、5~9歳の年齢階級おいて、悪性新生物と並んで多くの死亡が観察される特徴を持つ。
5.〇 正しい。Eは自殺である男女とも10歳以上の年齢階級で死亡が観察され、特に男性では15~44歳の年齢階級で、また女性では15~29歳の年齢階級で死亡が最も多くなる特徴を持つ。
(※参考資料:人口動態統計月報年計 – 厚生労働省)