26 A市では、避難行動要支援者名簿の見直しをすることになった。まず、医療依存度の高い難病患者の現在の状況を確認することにした。
協力を求めるのに最も適切なのはどれか。
1.消防機関
2.自主防災組織
3.地域包括支援センター
4.訪問看護ステーション
5.民生委員・児童委員協議会
解答4
解説
避難行動要支援者とは、災害が発生し、または災害が発生するおそれがある場合、高齢者や障がいのある人など配慮が必要な人を「要配慮者」と言い、要配慮者のうち、自ら避難することが困難な人で、その円滑かつ迅速な避難の確保を図るために特に支援が必要な人を「避難行動要支援者」という。避難行動要支援者名簿に登録する際に必要な情報には、名前や住所などの基本情報や病名だけでなく、要介護度、移動能力、医療機器の使用、治療薬などがある。
例えば…
①要介護認定3~5を受けている者
②身体障害者手帳1・2級(総合等級)の第1種を所持する身体障害
者(心臓、じん臓機能障害のみで該当するものは除く)
③療育手帳Aを所持する知的障害者
④精神障害者保健福祉手帳1・2級を所持する者で単身世帯の者
⑤市の生活支援を受けている難病患者
⑥上記以外で自治会が支援の必要を認めた者
(参考:「避難行動要支援者の避難行動支援に関する取組指針」内閣府HPより)
1~2.× 消防機関/自主防災組織の優先度は低い。なぜなら、消防機関・自主防災組織は、医療依存度の高い難病患者の現在の状況を随時把握していないため。ちなみに、自主防災組織とは、防災に関する住民の責務を果たすため、地域住民が「自分たちの地域は自分たちで守る」という自覚、連帯感に基づいて自主的に結成する組織である。市町村は、避難行動要支援者本人からの同意を得て、平常時から消防機関や自主防災組織、民生委員などの避難支援者等関係者に情報提供を行う。
3.× 地域包括支援センターは、介護保険法で定められた、地域住民の保健・福祉・医療の向上、虐待防止、介護予防マネジメントなどを総合的に行う機関である。地域包括支援センターは、介護予防対象者(介護保険の要支援者)に対し、支援が必要な人の名前や住所は把握しているが、医療依存度の高い難病患者の現在の状況を随時把握していないため優先度は低い。
4.〇 正しい。訪問看護ステーションは、医療依存度の高い難病患者の現在の状況を確認することへの協力を求めることに最も優先度が高い。訪問看護ステーション(訪問看護)とは、在宅医療の一つで、看護師などが療養を必要とする者の自宅や老人ホームなどの施設を訪問し、訪問時に行われるサービスのことである。つまり、医療依存度の高い難病患者が安心して療養するために、訪問看護ステーション(訪問看護)を利用する方が多い。
5.× 民生委員児・童委員協議会とは、地域で平時の見守りや災害発生時の安否確認を担う。避難行動要支援者名簿に登録する際に必要な情報には、名前や住所などの基本情報や病名だけでなく、要介護度、移動能力、医療機器の使用、治療薬などがある。民生委員は、日本独自の制度化されたボランティアである。より専門的知識を避難行動要支援者名簿に登録する必要があるため、訪問看護ステーションのほうが優先度が高いといえる。民生委員とは、地域社会の福祉の増進を図り、任期は3年で都道府県知事の推薦を受けて厚生労働大臣に委嘱されたものである。市町村の各地区に配置され、①住民の生活状況の把握、②関係機関との連携、③援助を要するものヘの相談援助を主な役割とする。根拠法令は「民生委員法」で給与の支給はない。
27 健康日本21(第二次)で生活習慣病のリスクを高める1日の飲酒量の定義はどれか。
ただし、日本酒換算で、日本酒1合は純エタノール20g相当とする。
1.男性1合以上、女性0.5 合以上
2.男性2合以上、女性1合以上
3.男性2合以上、女性1.5 合以上
4.男性3合以上、女性1.5 合以上
5.男性3合以上、女性2合以上
解答2
解説
(※図引用:「お酒と健康の関係」アサヒビール様HPより)
健康日本21(第二次)では、飲酒における生活習慣の改善のひとつに「生活習慣病のリスクを高める量を飲酒している者の割合の減少」が掲げられている。がんや高血圧などの飲酒に関連する健康問題は1日平均飲酒量が多いほどリスクが高まる。健康日本21(第二次)では、「生活習慣病のリスクを高める飲酒量を、1日の平均純アルコール摂取量が男性で40g以上、女性で20g以上」と定義している。エタノールもアルコールも同じものと考える。
1合=180ml=150gである。
「日本酒換算で日本酒1合は、純エタノール20g相当」とされていることから、男性では2合以上、女性では1合以上が生活習慣病のリスクを高める飲酒量となる。したがって、選択肢2.男性2合以上、女性1合以上が正しい。
日本における健康対策の現状や第三次国民健康づくり対策(健康日
(※参考:「健康日本21(第二次)」厚生労働省HPより)
28 従属人口指数はどれか。
1.老年人口÷総人口×100
2.老年人口÷生産年齢人口×100
3.(年少人口+老年人口)÷総人口×100
4.(年少人口+老年人口)÷生産年齢人口×100
5.老年人口÷(年少人口+生産年齢人口)×100
解答4
解説
1.「老年人口÷総人口×100」は高齢化率を示している。老年人口が総人口に占める割合である。日本の総人口は、令和元年(2019年10月1日現在)、1億2,617万人。 65歳以上人口は、3,589万人。 総人口に占める65歳以上人口の割合(高齢化率)は28.4%である。
2.「老年人口÷生産年齢人口×100」は老年人口指数を示している。生産年齢人口100人が何人の老年人口を支えているかを示している。
3.「(年少人口+老年人口)÷総人口×100」は、総人口における従属人口の割合を示している。年少人口と老年人口の和は従属人口と呼ばれる。すなわち全人口から生産年齢人口を除いた人口である。
4.〇 正しい。「(年少人口+老年人口)÷生産年齢人口×100」は、従属人口指数である。従属人口指数とは、生産年齢人口における従属人口の割合のことであり、生産年齢人口100人が何人の従属人口を支えているかを示す。
5.「老年人口÷(年少人口+生産年齢人口)×100」は、年少人口と生産年齢人口の和における老年人口の割合を示している。特に、使用されることは少ない。
29 子育て世代包括支援センターで正しいのはどれか。
1.要保護児童対策地域協議会を設置する。
2.母子保健推進員の配置が定められている。
3.児童福祉法において設置が定められている。
4.妊娠期から子育て期にわたるまでの切れ目のない支援を行う。
5.市町村は子育て世代包括支援センターを設置しなければならない。
解答4
解説
子育て世代包括支援センターとは、母子保健法に基づき市町村が設置するもので、保健師等の専門スタッフが妊娠・出産・育児に関する様々な相談に対応し、必要に応じて支援プランの策定や地域の保健医療福祉の関係機関との連絡調整を行うなど、妊娠期から子育て期にわたる切れ目のない支援を一体的に提供している。
【主な5つの事業】
①母性・乳幼児の健康の保持増進に関する実情の把握
②母子保健に関する相談への対応
③母性・乳幼児に対する保健指導
④母子保健に関する機関との連絡調整等、健康の保持・増進に関する支援
⑤健康診査、助産その他の母子保健に関する事業
(※「子育て世代包括支援センター業務ガイドライン 」厚生労働省HPより)
1.× 要保護児童対策地域協議会を設置するのは、『児童福祉法』である。要保護児童の保護要支援児童や特定妊婦への適切な支援を目的としている。児童福祉法とは、すべての児童の健全な育成・生活の保障・児童の福祉の推進を目的とする法律である。児童相談所の設置や小児慢性特定疾病医療費の支給などが規定されている。ちなみに、子育て世代包括支援センターは平成28(2016)年の『母子保健法』改正により設置された。母子保健法とは、母性並びに乳児及び幼児の健康の保持及び増進を図るため、母子保健に関する原理を明らかにするとともに、母性並びに乳児及び幼児に対する保健指導、健康診査、医療その他の措置を講じ、もって国民保健の向上に寄与することを目的として制定された法律である。
2.× 母子保健推進員の配置は定められていない。子育て世代包括支援センターは、保健師等を1名以上配置することとしている。母子保健推進員とは、お母さんとお子さんの健康や子育てを応援するために、市長から委嘱を受け、市と家庭を結ぶパイプ役として各町内を中心に活動している。
3.× 「児童福祉法」ではなく『母子保健法』において設置が定められている。母子保健法とは、母性並びに乳児及び幼児の健康の保持及び増進を図るため、母子保健に関する原理を明らかにするとともに、母性並びに乳児及び幼児に対する保健指導、健康診査、医療その他の措置を講じ、もって国民保健の向上に寄与することを目的として制定された法律である。
4.〇 正しい。妊娠期から子育て期にわたるまでの切れ目のない支援を行う。子育て世代包括支援センターとは、母子保健法に基づき市町村が設置するもので、保健師等の専門スタッフが妊娠・出産・育児に関する様々な相談に対応し、必要に応じて支援プランの策定や地域の保健医療福祉の関係機関との連絡調整を行うなど、妊娠期から子育て期にわたる切れ目のない支援を一体的に提供している。
5.× 市町村は、子育て世代包括支援センターを設置しなければならない(義務)というわけではなく、「必要に応じ、設置に努めなければならない(努力義務)」である。
要保護児童対策地域協議会(子どもを守る地域ネットワーク)は、虐待予防対策のなかで、重要な役割を担う。要保護児童等への適切な支援を図ることを目的に地方公共団体が設置・運営する組織である。『児童福祉法』で設置が規定されている。
【要保護児童対策地域協議会の業務内容】
①代表者会議:年1~2回程度の開催で、各関係機関の責任者(管理職)レベルで連携を深め、実務者会議の円滑な運営の環境整備を行う。
②実務者会議:3か月に1回程度の開催で、実務者により、すべてのケースの定期的な状況確認、主担当機関の確認、支援方針の見直し等を行う。
③個別ケース検討会議:適時開催され、個別のケースについて、直接かかわっている担当者や今後かかわる可能性のある関係機関の担当者が、危険度や緊急度の判断、具体的な支援の内容を検討する。
(※参考:「要保護児童対策地域協議会設置・運営指針」厚生労働省HPより)
30 特定保健指導の事業評価に用いる項目で正しいのはどれか。2つ選べ。
1.動機づけ支援の対象者数
2.特定保健指導の中断者数
3.特定健康診査の未受診者数
4.特定保健指導対象者の指導への満足度
5.特定健康診査結果における要医療者の割合
解答2・4
解説
特定保健指導の事業評価に用いる項目について。
→特定保健指導とは、予備群や軽症でまだお薬を必要としない人に対してもしっかり働きかけ、生活習慣病にならないようなしくみである。個人の生活習慣病予防への評価項目は、効率的・効果的な事業が行われていたか判断できるものを選択する。
1.× 動機づけ支援の対象者数は優先度が低い。動機づけとは、行動を始発させ、目標に向かって維持・調整する過程・機能。 動機づけは人間を含めた動物の行動の原因である。「動機づけ支援」ではなく、生活習慣病の予防支援を実施する。
2.〇 正しい。特定保健指導の中断者数(継続性)は、特定保健指導の事業評価に用いる項目で優先度が高い。なぜなら、特定保健指導が効率的・効果的な事業が実施されていることを評価するプロセス評価に含まれるため。生活習慣病の予防は継続して行うことが大切である。
3.5.× 特定健康診査の未受診者数/特定健康診査結果における要医療者の割合は優先度が低い。特定健康診査とは、40~74歳までの医療保険加入者を対象に実施されるものである。特定健診で行う検査は、主に①身体計測(身長・体重・BMI・腹囲)、②血中脂質検査(中性脂肪・HDLコレステロール・LDLコレステロール)、③肝機能検査(GOT・GPT・γ-GTP)、④血糖検査(空腹時血糖・HbA1c)、⑤尿検査(尿糖・尿蛋白)などである。特定健康診査を経て、特定保健指導を実施する流れとなる。
4.〇 正しい。特定保健指導対象者の指導への満足度は、特定保健指導の事業評価に用いる項目で優先度が高い。なぜなら、特定保健指導対象者の指導への満足度は、効率的・効果的な事業が行われていたか判断できるものであるため。
①ストラクチャー評価(企画評価):事業を実施するための仕組みや体制を評価するもの。
例:マンパワー、予算、会場の状況、関係機関との連携体制 等。
②プロセス評価(実施評価):事業の手順や実施過程、活動状況の妥当性を評価するもの。
例:事業参加者の募集方法、健康診査の従事者数・受診者数,事業の実施内容等。
③アウトプット評価:事業実施過程と参加状況などから直接生じた結果(数や量)を評価するもの。
④アウトカム評価(成果評価):事業の目的を達成したかどうかの最終的な成果を判断するもの。
例:参加者の6か月後のBMI値、糖尿病の治療継続者の割合、腹囲の減少率、参加者の運動回数 等。