第107回(R3) 保健師国家試験 解説【午後31~35】

 

31 学校保健安全法に基づく児童生徒の定期健康診断で正しいのはどれか。2つ選べ。

1.学校行事に位置づく教育活動として行われる。
2.毎学年5月末日までの間に実施する。
3.座高は小学校低学年で測定する。
4.実施主体は教育委員会である。
5.結果に基づき事後措置を行う。

解答1・5

解説

学校保健安全法とは?

学校保健安全法は、主に①学校保健、②学校安全の体制、③健康診断などを定めている。

1.〇 正しい。学校行事に位置づく教育活動として行われる。定期健康診断は、児童生徒の健康の保持増進を目的とするほか、学習指導要領の特別活動として学校行事に位置づけられ、教育活動の一環として行われる。これは、学校保健安全法の第13条に規定されており、「学校においては、毎学年定期に、児童生徒等(通信による教育を受ける学生を除く。)の健康診断を行わなければならない」と記載されている。(※一部引用:「学校保健安全法」e-GOV法令検索様HPより)
2.× 毎学年5月末日までの間ではなく、「毎学年6月30日までを期日」に実施する。これは、学校保健安全法施行規則の第5条に規定されており、「法第十三条第一項の健康診断は、毎学年、六月三十日までに行うものとする。ただし、疾病その他やむを得ない事由によつて当該期日に健康診断を受けることのできなかつた者に対しては、その事由のなくなつた後すみやかに健康診断を行うものとする。」と記載されている。(※一部引用:「学校保健安全法施行規則」e-GOV法令検索様HPより)
3.× 座高は、健康診断の必須項目から削除されている。平成26(2014)年に『学校保健安全法施行規則』が一部改正されている。検査の項目は、学校保健安全法施行規則の第6条に規定されており、①身長及び体重、②栄養状態、③脊柱及び胸郭の疾病及び異常の有無並びに四肢の状態、④視力及び聴力、⑤眼の疾病及び異常の有無、⑥耳鼻頭疾患及び皮膚疾患の有無、⑦歯及び口の疾病及び異常の有無、⑧結核の有無、⑨心臓の疾病及び異常の有無、⑩尿、⑪その他の疾病及び異常の有無があげられる。(※一部引用:「学校保健安全法施行規則」e-GOV法令検索様HPより)
4.× 実施主体は、「教育委員会」ではなく各学校である。一方、就学時の健康診断は、市町村の教育委員会が実施する。教育委員会は、教育行政における重要事項や基本方針を決定し、それに基づいて教育長が具体の事務を執行する役割を持つ。地域の学校教育、社会教育、文化、スポーツ等に関する事務を担当する機関として、全ての都道府県及び市町村等に設置している。首長から独立した行政委員会としての位置付けになっている。
5.〇 正しい。結果に基づき事後措置を行う。事後措置とは、健康診断を実施した後、異常所見があった者の健康診断結果をもとに、就業制限や休業(ドクターストップ)等の措置が必要かどうか医者に意見を仰ぐことである。学校は21日以内に本人・保護者に結果を通知する。また、健康診断票を作成し、本人卒業後5年間保存する。

 

 

 

 

 

32 学校における保健教育で適切なのはどれか。2つ選べ。

1.小学校の保健の授業は5年生から行う。
2.教育基本法に指導内容が規定されている。
3.保健指導は養護教諭が中心となって行う。
4.生涯にわたって健康に生きるための能力の育成を目標にする。
5.養護教諭は1年以上勤務する場合に保健の授業を担当できる。

解答3・4

解説

(※図引用:「生きる力を育む小学校保健教育の手引」文部科学省HPより)

1.× 小学校の保健の授業は、「5年生」ではなく3年生から行う。3年生から歯磨きや食事の大切さなど、日常生活に即した題材を取り上げて健康や食習慣についての授業が行なわれる。
2.× 指導内容が規定されているのは、「教育基本法」ではなく、学習指導要領である。ちなみに、教育基本法とは、教育についての原則を定めた日本の法律である。①日本の教育の目的及び理念、②義務教育や学校教育といった教育の実施に関する基本、③教育行政について定められている。また、学習指導要領とは、全国のどの地域で教育を受けても、一定の水準の教育を受けられるようにするため、文部科学省では、学校教育法等に基づき、各学校で教育課程(カリキュラム)を編成する際の基準を定めているものをさす。学習指導要領では、小学校、中学校、高等学校等ごとに、それぞれの教科等の目標や大まかな教育内容を定めている。
3.〇 正しい。保健指導(児童生徒および保護者への保健指導)は養護教諭が中心となって行う。養護教諭の主な職務として、①保健管理、②保健教育、③健康相談、④保健室経営、⑤保健組織活動学校保健委員会 等、⑥学校保健計画・学校安全計画策定への参画があげられる。ちなみに、養護教諭とは主に、小・中・高校に配属されている「保健室の先生」のことである。 学校でケガをしたり体調を崩したりしたとき、保健室に行くと対応してくれるのが養護教諭である。養護教諭がいることで、生徒たちが安心して学校に通える環境が整えられている。
4.〇 正しい。生涯にわたって健康に生きるための能力の育成を目標にする。これは、文部科学省の「生きる力」を育む小学校保健教育の手引きに書かれている。(※上図参照)
5.× 養護教諭は、「1年以上」ではなく3年以上勤務する場合に保健の授業を担当できる。附則14にて、「養護教諭の免許状を有する者(三年以上養護をつかさどる主幹教諭又は養護教諭として勤務したことがある者に限る。)で養護をつかさどる主幹教諭又は養護教諭として勤務しているものは、当分の間、第三条の規定にかかわらず、その勤務する学校(幼稚園及び幼保連携型認定こども園を除く。)において、保健の教科の領域に係る事項(小学校、義務教育学校の前期課程又は特別支援学校の小学部にあつては、体育の教科の領域の一部に係る事項で文部科学省令で定めるもの)の教授を担任する教諭又は講師となることができる。」(※一部引用:「教育職員免許法」e-GOV法令検索様HPより)

養護教諭の主な職務

①保健管理:救急処置、健康診断(実施計画立案、準備、指導、評価)、感染症予防、経過観察・配慮を必要とする子どもの支援、環境管理。
②保健教育:授業への参画、保健指導(個別の児童・生徒と保護者への指導・助言、集団への指導)
③健康相談:心身の健康問題への対応・支援
④保健室経営:保健室経営計画の作成、備品の管理
⑤保健組織活動学校保健委員会 等
⑥学校保健計画・学校安全計画策定への参画

 

 




 

 

33 事業者が実施する一般健康診断の定期健康診断で正しいのはどれか。2つ選べ。

1.基本検査項目に検便を含める。
2.6か月以内ごとに1回実施する。
3.一般健康診断の結果は5年間保存する。
4.異常所見のある場合は必要に応じて就業上の措置を講ずる。
5.常時20人以上の労働者を使用する事業者は所管労働基準監督署長に結果を報告する。

解答3・4

解説

一般健康診断とは?

一般健康診断とは、事業主が労働者に対して実施することが法律(労働安全衛生規則)により義務づけられている健康診断のことである。主なものとして、「雇い入れ時の健康診断」「定期健康診断」「特定業務従事者の健康診断」「海外派遣労働者の健康診断」などがある。定期健康診断とは、事業者に対し、事業者が雇用したパートを含む週30時間以上(正規従業員の労働時間4分の3以上)働く労働者に対し医師による健康診断を義務づけている制度である。定期健康診断は1年以内ごとに1回、定期に実施することが、労働安全衛生規則にて定められている。

(※図引用:「一般健康診断の項目一覧表」厚生労働省HPより)

1.× 基本検査項目に「検便」は含めない。含まれるのは⑩尿検査である。ちなみに、給食の業務に従事する労働者については、事業者は雇入れ時または配置替え時に検便による健康診断を行なわなければならない。
2.× 「6か月以内ごと」ではなく、1年以内ごとに1回実施する。これは労働安全衛生規則にて定められている。ちなみに、6か月以内ごとに実施されるのは、①特定業務従事者の健康診断や②特殊健康診断である。
3.〇 正しい。一般健康診断の結果は5年間保存する。他には、その結果に基づく健康診断個人票の作成の義務がある。保存にあたっては、労働者の同意が必要である。方法としては、書面か電磁データによる保存になる。また、二次健康診断(いわゆる再検査)の結果については、事業者に保存は義務付けられていないが、継続的に健康管理を行うことができるよう、「保存することが望ましい」とされている。
4.〇 正しい。異常所見のある場合は必要に応じて就業上の措置を講ずる。事業者は、健康診断の結果に基づき、労働者の健康を保持するために必要な措置について、医師または歯科医師の意見を聞かなければならない。意見内容を踏まえ、必要があると認める場合に就業上の措置を講ずる。就業制限とは、労働者に有害な影響の及ぶことを防ぐため、一定の労働者の一定の業務への就業を制限もしくは禁止することをいう。禁止の場合は特に就業禁止ともいう。
5.× 「常時20人以上」ではなく、常時50人以上の労働者を使用する事業者は、所管労働基準監督署長に結果を報告する。労働基準監督署長は、都道府県労働局長の指揮監督を受けて、所属する職員を指揮監督し、労働基準法の実施に関する業務を担当する。

労働安全衛生規則とは?

労働安全衛生規則は、労働の安全衛生についての基準を定めた厚生労働省の省令である。 労働安全衛生法及び労働安全衛生法施行令に基づき定められたものである。

「労働安全衛生法」とは、労働者の安全と衛生についての基準を定めた日本の法律である。事業者は安全衛生管理体制を整備することが義務づけられており、それぞれの事業規模に応じた①衛生管理者、②総括安全衛生管理者などを選任しなければならない。

①衛生管理者
職場の衛生にかかわる技術的事項の管理を行う。少なくとも毎週1回作業場の巡視を行い、設備、作業方法または衛生状態に有害のおそれがあるときは、直ちに健康障害防止措置を講じなければならない。

②総括安全衛生管理者
安全管理者、衛生管理者を指揮し、安全・衛生・健康・事故防止などの統括管理を行う。その事業場で統括管理する者(工場長、支店長 等)を充てなければならない。

 

 

 

 

 

34 平成29年(2017年)における精神疾患の患者に関する動向について適切なのはどれか。2つ選べ。

1.入院患者は外来患者より少ない。
2.措置入院患者は、入院患者の0.6% である。
3.精神病床における平均在院日数は300日以上である。
4.平成20年(2008年)と比較して患者数は減少している。
5.入院患者の5割以上がAlzheimer(アルツハイマー)病である。

解答1・2

解説

(※図引用:「最近の精神保健医療福祉施策の動向について」厚生労働省HPより)

1.〇 正しい。入院患者は外来患者より少ない。平成29年の精神障害者の入院患者数は30万2千人であるのに対し、外来患者数は389万2千人である。
2.〇 正しい。措置入院患者は、入院患者の0.6% である。『精神保健福祉法』に規定された入院患者数は28万4172人であり、そのうち措置入院の患者数は1621人(0.6%)である。年々減少傾向にある。原因として、短期間で退院させて地域でケアするという国の精神医療の方針があると言われており、このこと自体は国は好ましい方向だと受け止めている。ちなみに、措置入院とは、自傷他害のおそれのある患者に対して、患者本人の同意が必ずしも必要せず、2名の精神保健指定医が入院の必要性を認めた場合に入院させることができる入院形態をいう。都道府県知事または政令指定都市の市長の命令による。
3.× 精神病床における平均在院日数は「300日以上」ではなく300日よりも短い。精神病床の平均在院日数は267.7日である。日本の精神科入院は、治療の他に、社会との隔離のための「社会的入院」が行われている。 このため、病床数、入院日数も異常に多い。 その結果、日本の精神医療予算の76%以上が精神病院のために使われている。
4.× 平成20年(2008 年)と比較して患者数は、「減少」ではなく増加している。精神疾患を有する総患者数は、平成20(2008)年:323万3千人から、平成29(2017)年:419万3千人である。入院患者数は過去15年間で減少傾向である一方、外来患者数は増加傾向である。
5.× 入院患者の5割以上が「Alzheimer(アルツハイマー)病」ではなく統合失調症である。精神疾患を有する入院患者数は30万2千人であり、そのうち統合失調症による者が15万4千人で約5割を占める。ちなみに、アルツハイマー病による者は4万9千人で2割弱である。

(※データ引用:厚生労働省HPより「平成29年(2017年)における精神疾患の患者に関する動向について」)

精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(精神保健福祉法)とは?

①精神障害者の医療及び保護を行うこと、②障害者総合支援法とともに、精神障害者の社会復帰の促進、自立と社会経済活動への参加の促進のために必要な援助を行うこと、③精神疾患の発生の予防や、国民の精神的健康の保持及び増進に努めることによって、精神障害者の福祉の増進及び国民の精神保健の向上を図ることを目的とした法律である。(参考:「精神保健福祉法について」厚生労働省HPより)

 

 




 

 

35 計算するときに人年法を用いるのはどれか。2つ選べ。

1.死亡率
2.有病率
3.被患率
4.有訴率
5.罹患率比

解答1・5

解説

人年法とは?

人年法とは、一人ひとりの観察総和の総和である。追跡期間中に対象者が転出、死亡、拒否などで観察集団から脱落したりすることで追跡バイアスが生じるため、人年法が用いられる。つまり、観察期間をそろえる目的で、便宜上1人1年間の観察を1単位(= 1人年)として分母を設定して頻度をみる方法のことである。対象の個人によって観察開始時が異なる場合や、観察の途中で出入りがあり観察期間が異なる場合に有効な調査法である。

例:2人を4年間観察し、別の3人を5年間観察した場合
(2×4)+(3×5) = 23人年

1.〇 正しい。死亡率は、計算するときに人年法を用いる。死亡率とは、一定の観察期間(通常1年)において、観察集団のなかで死亡した人の割合である。観察期間が人によって異なる場合、分母は人年法によって、一人ひとりの観察期間の総和を用いる。
2.× 有病率とは、ある一時点において、観察集団のなかで疾病を有している人の割合のことをいう。ちなみに、生涯有病率とは、一生のうちに一度はその病気にかかる人の割合をいう。
3.× 被患率とは、ある一時点において、健康診断等を受けた人(受検者数)のうち、疾病や異常ありに該当した人(疾病・異常該当者数)の割合のことをいう。ある疾病・異常のある者が集団全体に占める割合を示すものである。国・地方自治体の学校保健統計で使用されることが多い。その場合、分母には在学者数がおかれる。
4.× 有訴率とは、ある一時点において、観察集団のなかで病気やけが等で自覚症状のある人(有訴者)の割合のことをいう。
5.〇 正しい。罹患率比は、計算するときに人年法を用いる。罹患率比とは、2つの群の罹患率の比のことである。罹患率は、一定の観察期間において観察集団のなかで新たに疾病を有した人の率で、分母は人年法による観察人年を用いる。

計算式

【有病率:ある一時点の有病者の割合】
観察時点における有病者数÷観察時点における観察集団の人数

【罹患率:一定期間内の患者発生の率】
観察期間内に新発生した患者数÷観察集団全員の観察期間の合計

【累積罹患率:一定期間内の患者発生の割合】
観察期間内に新発生した患者数/観察集団の観察開始時点の人数

【死亡率:一定期間内の死亡発生の率】
観察期間内の死亡者数÷観察集団に対する観察期間の合計

【致命率:一定期間内の死亡発生の割合】
観察期間内のある疾病の死亡者数÷観察期間内のある疾病の罹患者数

 

 

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