次の文を読み41〜43の問いに答えよ。
Aさん(32歳、女性、会社員)。夫と長男のBちゃん(3歳、男児)との3人暮らし。Bちゃんは保育所に通っている。Aさんから「Bは保育所でたびたび他の子どもたちが遊んでいるおもちゃを取り上げ泣かせてしまい、保育士が止めに入ると、Bはキーと奇声をあげ走り回っていたり、遊びの時間が終わっても1人でミニカーを並べることにこだわっているようです。保育士から保健師に相談してみてはどうかと言われました」と市保健センターの地区担当保健師へ電話相談があった。
41 Aさんへの保健師の対応で適切なのはどれか。
1.公園で遊ばせることを勧める。
2.保育所を休ませるよう勧める。
3.家での様子をみるために家庭訪問をする。
4.ファミリーサポートセンター事業を紹介する。
解答3
解説
・Aさん(32歳、女性、会社員)。
・3人暮らし:夫、長男のBちゃん(3歳、男児)。
・Bちゃんは保育所に通っている。
・保育所の様子:たびたび他の子どもたちが遊んでいるおもちゃを取り上げ泣かせてしまい、保育士が止めに入ると、Bはキーと奇声をあげ走り回っていたり、遊びの時間が終わっても1人でミニカーを並べることにこだわっている。
→本症例は、「問43」の問題文にも記載されている通り、「自閉症スペクトラム障害」が疑われる。自閉症スペクトラム障害とは、正常な社会的関係を構築することができず、言葉の使い方に異常がみられるか、まったく言葉を使おうとせず、強迫的な行動や儀式的な行動がみられる病気である。 自閉スペクトラム症の患者は、他者とコミュニケーションをとったり関係をもったりすることが苦手である特徴を持つ。
1~2.× 公園で遊ばせることを勧める/保育所を休ませるよう勧める優先度は低い。なぜなら、Aさんの相談ニーズに合致していないため。Aさんの相談内容は、「Bちゃんの保育所での行動について」であるため、話だけではなくBちゃんの様子を評価する必要がある。また、Bちゃんを保育所を休ませても、行動に関する根本的な解決とはならない。
3.〇 正しい。家での様子をみるために家庭訪問をする。なぜなら、保育所での行動に関する情報をふまえ、Bちゃんの家での様子をみることで、発達に問題がある可能性についてアセスメントすることができるため。
4.× ファミリーサポートセンター事業を紹介する優先度は低い。なぜなら、Aさんの相談ニーズに合致していないため。子育て援助活動支援事業(ファミリー・サポート・センター事業)は、乳幼児や小学生等の児童を有する子育て中の保護者を会員として、児童の預かり等の援助を受けることを希望する者と援助を行うことを希望する者との相互援助活動である。
次の文を読み41〜43の問いに答えよ。
Aさん(32 歳、女性、会社員)。夫と長男のB ちゃん(3歳、男児)との3人暮らし。B ちゃんは保育所に通っている。Aさんから「Bは保育所でたびたび他の子どもたちが遊んでいるおもちゃを取り上げ泣かせてしまい、保育士が止めに入ると、B はキーと奇声をあげ走り回っていたり、遊びの時間が終わっても1人でミニカーを並べることにこだわっているようです。保育士から保健師に相談してみてはどうかと言われました」と市保健センターの地区担当保健師へ電話相談があった。
42 1か月後。Bちゃんは、3歳児健康診査のために市保健センターに来所した。健康診査の医師は、Bちゃんは発達に問題がある可能性があると話した。Aさんは「Bは発達障害なのでしょうか。どうしたらいいのでしょうか」と保健師に話した。
Aさんへの保健師の対応で優先度が高いのはどれか。
1.児童館の利用を促す。
2.保健師による継続訪問をする。
3.心理相談を受けることを勧める。
4.地域の育児サークルを紹介する。
解答3
解説
・1か月後:3歳児健康診査のために市保健センターに来所。
・健康診査の医師「Bちゃんは発達に問題がある可能性がある」と話した。
・Aさんは「Bは発達障害なのでしょうか。どうしたらいいのでしょうか」と保健師に話した。
→Aさんは、医師から「問題がある可能性」を指摘され不安な発言が聞かれる。傾聴・共感しながら不安を軽減できる支援を選択する。
1.× 児童館の利用を促す優先度は低い。児童館は、地域において児童に健全な遊びを与えて、その健康を増進し、情操を豊かにすることを目的とする児童福祉施設である。本症例の保育所の様子(たびたび他の子どもたちが遊んでいるおもちゃを取り上げ泣かせてしまい、保育士が止めに入ると、Bはキーと奇声をあげ走り回っていたり、遊びの時間が終わっても1人でミニカーを並べることにこだわっている)や健康診査の医師「Bちゃんは発達に問題がある可能性がある」と話したことからも児童館の利用を優先する理由はない。
2.× 保健師による継続訪問をする優先度は低い。なぜなら、Bちゃんは、3歳児健康診査で医師から発達に問題がある可能性を指摘されていることから、より専門的な支援が必要であるため。保健師による継続訪問(保健師による経過観察)は、根本的な解決とならない。現在のAさんは、Bちゃんが発達障害なのかどうかまたその対応について知りたいと思って不安に陥っている可能性が高いため、より専門的な知識を持つ人との接触を促すことが望ましい。
3.〇 正しい。心理相談を受けることを勧める。なぜなら、Aさんは、医師から「問題がある可能性」を指摘され不安な発言が聞かれるため。心理相談とは、心理の専門職が児の全般的な発達、行動や社会性の評価を行い、日頃の関わり方に関する助言などを行うものである。
4.× 地域の育児サークルを紹介する優先度は低い。なぜなら、現在のAさんは、Bちゃんが発達障害なのかどうかまたその対応について知りたいと思っているため。子育てサークル(育児サークル)は、親同士が子育てに関する情報交換や相互協力を、また子どもにとっては友達作りなどを行うサークルのことである。他児の保護者と気持ちを共有したり情報交換できる場であるが、専門的な情報は得られにくい。医師から「問題がある可能性」を指摘されていることからも、今後は専門的な知識を持つ人との接触が望ましい。
次の文を読み41〜43の問いに答えよ。
Aさん(32 歳、女性、会社員)。夫と長男のB ちゃん(3歳、男児)との3人暮らし。B ちゃんは保育所に通っている。Aさんから「Bは保育所でたびたび他の子どもたちが遊んでいるおもちゃを取り上げ泣かせてしまい、保育士が止めに入ると、B はキーと奇声をあげ走り回っていたり、遊びの時間が終わっても1人でミニカーを並べることにこだわっているようです。保育士から保健師に相談してみてはどうかと言われました」と市保健センターの地区担当保健師へ電話相談があった。
43 Bちゃんは、その後自閉症スペクトラム障害であると診断を受けた。保健師は、Aさんの承諾を得てBちゃんが通っている保育所にBちゃんの3歳児健康診査の結果を情報提供した。その際に、保育所の所長からBちゃんへの関わり方について相談があった。
保健師から所長への助言で適切なのはどれか。
1.保育室の出入口を施錠する。
2.毎日新しい遊びを取り入れる。
3.Bちゃんに一人で食事をさせる。
4.Bちゃんへの説明は絵も活用する。
解答4
解説
・自閉症スペクトラム障害。
・保健師は、Aさんの承諾を得てBちゃんが通っている保育所にBちゃんの3歳児健康診査の結果を情報提供した。
・保育所の所長からBちゃんへの関わり方について相談があった。
→自閉症スペクトラム障害とは、正常な社会的関係を構築することができず、言葉の使い方に異常がみられるか、まったく言葉を使おうとせず、強迫的な行動や儀式的な行動がみられる病気である。 自閉スペクトラム症の患者は、他者とコミュニケーションをとったり関係をもったりすることが苦手である特徴を持つ。
広汎性発達障害(自閉スペクトラム障害)とは、相互的な社会関係とコミュニケーションのパターンの障害、および限局・常同・反復的な行動パターンがあげられる。生後5年以内に明らかとなる一群の障害である。通常は精神遅滞を伴う。広汎性発達障害、およびその下位分類である自閉症、アスペルガー症候群、高機能自閉症は、「自閉スペクトラム症」とまとめられた。
【診断基準の要点】
①「社会及び感情の相互性の障害」「社会的相互作用で用いられる非言語的コミュニケーションの障害」「発達レベル相応の関係を築き維持することの障害」の3つがすべて込められること。
②行動、興味活動の、限局的で反復的な様式が認められること。
1.× 保育室の出入口を施錠する優先度は低い。なぜなら、保育室から飛び出す可能性は低いため。ちなみに、保育室から飛び出してしまう危険性がある疾患として考えられるのは、注意欠陥多動性障害(ADHD)の傾向がある児の場合である。児が外に出られないようにする工夫として出入口を施錠することもある。
2.× 毎日新しい遊びを取り入れる優先度は低い。なぜなら、自閉症スペクトラム障害の特徴として「行動、興味活動の、限局的で反復的な様式」が認められる。本症例の様子にも「遊びの時間が終わっても1人でミニカーを並べることにこだわって」いる様子が見られる。これをあえて、毎日新しい遊びを取り入れると、思い通りとならず「B はキーと奇声をあげ走り回る」可能性が高い。
3.× Bちゃんに一人で食事をさせる優先度は低い。なぜなら、保育者がBちゃんの食事の様子を見ることは重要であるため。自閉症スペクトラム障害の児は、感覚の過敏性やこだわりから偏食を示すことがある、児の好みを把握したり、どこで食事を終わらせるかなど、様子を観察する必要がある。また、他の児の食事の様子を見ることで食べられなかったものが食べられるようになることもある。
4.〇 正しい。Bちゃんへの説明は絵も活用する。なぜなら、自閉症スペクトラム障害の児は、言語指示よりも視覚的な指示のほうが現解しやすいことが多いため。
注意欠陥多動性障害(ADHD)とは、発達障害の一つであり、脳の発達に偏りが生じ年齢に見合わない①注意欠如、②多動性、③衝動性が見られ、その状態が6ヵ月以上持続したものを指す。その行動によって生活や学業に支障が生じるケースが多い。
①まず、行動療法を行う。
②改善しない場合は、中枢神経刺激薬による薬物療法を用いる。中枢を刺激して、注意力・集中力を上げる。
※依存・乱用防止のため、徐放薬が用いられる。
次の文を読み44〜46の問いに答えよ。
人口70万人のA市。8月のある日、深夜から早朝にかけ大規模災害が発生し、市内で家屋の倒壊、道路の陥没・停電・断水等の被害があり、特にB地区で甚大な被害が出た。
B地区を管轄する保健センターの職員は全員A市に住んでいる。
44 発災当日の朝、B地区を管轄する保健センターに出勤できた保健師は16名中3名だった。
発災当日、出勤した保健師の行動で適切なのはどれか。
1.福祉避難所の開設
2.市災害対策本部の立ち上げ
3.管内医療機関の位置図の作成
4.医療機器を使用する難病患者の安否確認
解答4
解説
・8月深夜~早朝:大規模災害発生、道路の陥没・停電・断水等の被害があり、特にB地区で甚大な被害が出た。
・B地区を管轄する保健センターの職員は全員A市に住んでいる。
・発災当日の朝、B地区を管轄する保健センターに出勤できた保健師は16名中3名だった。
→発災当日は、超急性期(~24時間)に該当する。災害状況として、①野外への避難、②通信・交通・ライフラインの途絶、③避難所生活開始があげられる。したがって、保健活動として、①救急対応(救護所の開設、必要な医療物品の準備)、②地域の被害状況・ライフライン・衛生状態の把握、③住民の安否確認と身元確認、④避難行動要支援者の安否確認と移動、⑤健康危機管理、⑥避難所準備と周知、⑦救護所や避難所の巡回健康相談と衛生管理および環境整備、⑧職員の健康管理(急性期)があげられる。
1.× 福祉避難所の開設の優先度は低い。なぜなら、福祉避難所の開設する場合は、市町村からの要請があるため。福祉避難所とは、避難所生活において何らかの特別な配慮を必要とする要配慮者のための施設であり、状況に応じて必要時、開設される市町村が、福祉避難所の施設管理者に対して開設を要請するものである。
2.× 市災害対策本部の立ち上げの優先度は低い。なぜなら、災害対策本部の立ち上げは、市役所の危機管理部門の役割であるため。市町村災害対策本部とは、市町村の地域内に相当規模の災害が発生したときに防災活動を強力に推 進するための組織として設けられるものである。市町村災害対策本部の事務は、災害対策基本法第 23 条の 2 第 4 項において、① 当該市町村の地域に係る災害に関する情報を収集すること、② 当該市町村の地域に係る災害予防及び災害応急対策を的確かつ迅速に実施するための方針を作成し、並びに当該方針に沿って災害予防及び災害応急対策を実施することの2点とされる。
3.× 管内医療機関の位置図の作成の優先度は低い。なぜなら、管内医療機関の位置図作成は、平常時に作成しておくものであるため。他にも、平常時(災害静穏期・準備期)においての保健活動は、①災害時地域応急体制の樹立、②避難行動要支援者のリスト化、③災害対策マニュアル作成、④生活用品・防災用品の備蓄、⑤避難場所、災害時の連絡方法の確認、⑥住民の自助・共助の支援、⑦近隣ボランティアの育成、⑧防災訓練、⑨災害時対応のための研修、⑩関係機関との定期的な連絡会議があげあれる。
4.〇 正しい。医療機器を使用する難病患者の安否確認は、発災当日、出勤した保健師の行動で適切である。災害当日は、被害状況の確認が優先される。発災当日は、超急性期(~24時間)に該当する。災害状況として、①野外への避難、②通信・交通・ライフラインの途絶、③避難所生活開始があげられる。したがって、保健活動として、①救急対応(救護所の開設、必要な医療物品の準備)、②地域の被害状況・ライフライン・衛生状態の把握、③住民の安否確認と身元確認、④避難行動要支援者の安否確認と移動、⑤健康危機管理、⑥避難所準備と周知、⑦救護所や避難所の巡回健康相談と衛生管理および環境整備、⑧職員の健康管理(急性期)があげられる。
次の文を読み44〜46の問いに答えよ。
人口70万人のA市。8月のある日、深夜から早朝にかけ大規模災害が発生し、市内で家屋の倒壊、道路の陥没・停電・断水等の被害があり、特にB地区で甚大な被害が出た。
B地区を管轄する保健センターの職員は全員A市に住んでいる。
45 発災後2日、B保健センターの保健師が避難所の一つである市民センターを初めて訪問した。避難所の管理者より、避難所の建物に入らず市民センターの駐車場に車中泊をしている世帯が多数あり、炊き出しやトイレ以外は終日車の中で過ごし、あまり外に出てこないようだとの声が聞かれた。そのため、保健師は車中泊の避難者も巡回することにした。
巡回時の確認事項で最も優先度が高いのはどれか。
1.食事内容
2.水分摂取量
3.車内換気の頻度
4.他者との交流の頻度
解答2
解説
・発災後2日:避難所の市民センターを初めて訪問。
・避難所の管理者より、「避難所の建物に入らず市民センターの駐車場に車中泊をしている世帯が多数あり、炊き出しやトイレ以外は終日車の中で過ごし、あまり外に出てこないようだ」
・保健師は車中泊の避難者も巡回することにした。
→今回の大規模災害は「8月」に起こっている。災害応急対応期(急性期:~2,3日)の対応の他にも、真夏における熱中症や社内での運動不足によるエコノミークラス症候群の予防が大切となる。
1.× 食事内容より優先度が高いものが選択肢の中にある。なぜなら、避難所では炊き出しが行われており食事に関してはある程度適切に対応されていると考えられるため。
2.〇 正しい。水分摂取量は、巡回時の確認事項で最も優先度が高い。今回の大規模災害は「8月」に起こっている。災害応急対応期(急性期:~2,3日)の対応の他にも、真夏における熱中症や社内での運動不足によるエコノミークラス症候群の予防が大切となる。夏季の車中泊では、エアコン使用による温度管理が適切に行われず、脱水の危険がある。ちなみに、熱中症対策として、①規則正しい食生活をするとともに、こまめな水分補給をすることが大切である。②適切な環境とそれに照らした行動変容に加え、暑さに備えた事前の体づくりが大切である。
3.× 車内換気の頻度より優先度が高いものが選択肢の中にある。冬季は感染症予防のために配慮が必要である。ただし、就寝時にエンジンやエアコンをつけたままにすると、一酸化炭素中毒となる危険性があるため注意喚起が必要となる。
4.× 他者との交流の頻度より優先度が高いものが選択肢の中にある。なぜなら、生命の危機には直接関係しないため。ただし、被災者のメンタルヘルスや情報交換において重要である。