次の文を読み44〜46の問いに答えよ。
人口70万人のA市。8月のある日、深夜から早朝にかけ大規模災害が発生し、市内で家屋の倒壊、道路の陥没・停電・断水等の被害があり、特にB地区で甚大な被害が出た。
B地区を管轄する保健センターの職員は全員A市に住んでいる。
46 発災後2か月、仮設住宅の入居が始まっている。B保健センターには、県外の保健師による派遣チームが入り、協働で災害支援活動を行っている。派遣チームの保健師は、B保健センターの職員から「被災した住民の話を聞いていると自分も気持ちが落ち込む」「仮設住宅に入居できない住民の苦情を聞くのがつらい」「住民のために活動したいが、自分は無力だと感じる」等の声を多く聞いた。
派遣チームの保健師が、B保健センターの職員への支援についてB保健センターの管理者に提案する内容で最も適切なのはどれか。
1.健康診断の実施
2.人事異動の提案
3.精神科の受診勧奨
4.職員同士で語り合う場の用意
解答4
解説
・発災後2か月:仮設住宅の入居開始。
・B保健センター:県外の保健師による派遣チームが入り、協働で災害支援活動中。
・B保健センターの職員から「被災した住民の話を聞いていると自分も気持ちが落ち込む」「仮設住宅に入居できない住民の苦情を聞くのがつらい」「住民のために活動したいが、自分は無力だと感じる」等の声を多く聞いた。
→B保健センターの職員自身のメンタルケアも重要である。
1.× 健康診断の実施は優先度が低い。なぜなら、メンタル面でのストレス対応に特化したものではないため。
2.× 人事異動の提案は優先度が低い。なぜなら、人事異動が必ずしも好転するとは限らないため。むしろ人事異動は、環境を変えることで負担が増す場合もある。
3.× 精神科の受診勧奨は時期尚早である。B保健センターの職員から聞かれた「落ち込みや無力感」は、災害支援活動に携わる者が多く感じられる感情である。早期発見・早期治療は大切なことではあるが、精神科を受診する目安としては、①幻聴・幻覚や強迫的な行為が続くような場合、②その他症状(よく眠れない、食欲がでない、外に出るのが怖いなどの症状や、大きなストレスが思い当たらないのに、以前好きだったことがやりたくない、何をやるにも億劫になった、何をするにも意欲がなくなったという)が続く場合が相談のタイミングである。
4.〇 正しい。職員同士で語り合う場の用意は、派遣チームの保健師が、B保健センターの職員への支援についてB保健センターの管理者に提案する内容で最も適切である。なぜなら、語り合う場でお互いの活動をねぎらいやがんばりを認め合い、ストレス発散につながる可能性が高いため。また、災害対応時のメンタルヘルス対策としても有効である。
次の文を読み47〜49の問いに答えよ。
Aさん(55 歳、男性)は1人暮らし。10 年前に振戦を主症状としてParkinsons(パーキンソン)病と診断されたが、これまでは自立した日常生活を送っていた。最近、身体の両側の振戦に加えて、動作が徐々に遅くなりはじめ、歩行にも不安を感じる時があり外出や受診に介助が必要になった。現在の症状を主治医は、Hoehn-Yahrs(ホーエン・ヤール)重症度分類でステージⅡ、生活機能障害度2度と診断しており、2か月に1度の定期受診で経過をみている。
47 現在のAさんが対象となるのはどれか。
1.後期高齢者医療制度
2.特定疾病療養費制度
3.身体障害者手帳の交付
4.重度障害者等包括支援サービス
解答3
解説
・Aさん(55 歳、男性、1人暮らし、パーキンソン病)
・10年前に診断されたが、これまでは自立した日常生活を送っていた。
・最近:①両側振戦、②動作緩慢、③歩行不安、④外出や受診に介助が必要。
・Hoehn-Yahrs(ホーエン・ヤール)重症度分類でステージⅡ、生活機能障害度2度:両側の症状がみられるが、バランス障害はない。また日常生活・通院にほとんど介助を要さない。
・2か月に1度の定期受診で経過をみている。
→パーキンソン病とは、黒質のドパミン神経細胞の変性を主体とする進行性変成疾患である。4大症状として①安静時振戦、②筋強剛(筋固縮)、③無動・寡動、④姿勢反射障害を特徴とする。また、自律神経障害による便秘や起立性低血圧、排尿障害、レム睡眠行動障害などが起こる。レム睡眠行動障害とは、レム睡眠の時期に体が動き出してしまう睡眠障害の1つである。 睡眠時随伴症に分類される。
1.× 後期高齢者医療制度は、①75歳以上または②65~74歳で一定の障害があると認定された人である。本症例は55歳である。ちなみに、後期高齢者医療制度とは、2008年施行の高齢者の医療の確保に関する法律を根拠法とする日本の医療保険制度である。
2.× 特定疾病療養費制度は、一定の治療を要する血友病、慢性腎不全(人工透析)、後天性免疫不全症候群が対象とされている。パーキンソン病は含まれていない。ちなみに、特定疾病療養費制度は、厚生労働大臣が定める特定疾病で長期にわたり高額な医療費がかかる場合に自己負担額を軽減する制度である。
3.〇 正しい。身体障害者手帳の交付は、現在のAさんが対象である。Aさんは、パーキンソン病により歩行に不安を感じ介助を要する状態である。『身体障害者福祉法』で定める身体上の障害(肢体不自由)の状態にあると認められれば、身体障害者手帳の交付を受けることができる。ちなみに、身体障害者手帳とは、身体障害者がそれを対象とする各種制度を利用する際に提示する手帳で、身体障害者が健常者と同等の生活を送るために最低限必要な援助を受けるための証明書にあたる。障害者手帳を提示することで、障害者雇用枠での就労が可能になるほか、医療費の負担減や税金の控除、割引等のサービスが受けることができる。
4.× 重度障害者等包括支援サービスの対象は、常時介護を要し、意思疎通を図ることに著しく支障があり四肢の麻痺や寝たきりの状態にある人である。Aさんの日常生活機能障害度では、通院に部分的な介助をする状態であるが、寝たきりの状態とは言えない。
ステージⅠ:片側のみの症状がみられる。軽症で機能障害はない。
ステージⅡ:両側の症状がみられるが、バランス障害はない。また日常生活・通院にほとんど介助を要さない。
ステージⅢ:歩行障害、姿勢保持反射障害が出現し、ADLの一部に介助が必要になる。
ステージⅣ:日常生活・通院に介助を必要とする。立位・歩行はどうにか可能。
ステージⅤ:寝たきりあるいは車いすで、全面的に介助を要する。歩行・起立は不能。
次の文を読み47〜49の問いに答えよ。
Aさん(55 歳、男性)は1人暮らし。10 年前に振戦を主症状としてParkinsons(パーキンソン)病と診断されたが、これまでは自立した日常生活を送っていた。最近、身体の両側の振戦に加えて、動作が徐々に遅くなりはじめ、歩行にも不安を感じる時があり外出や受診に介助が必要になった。現在の症状を主治医は、Hoehn-Yahrs(ホーエン・ヤール)重症度分類でステージⅡ、生活機能障害度2度と診断しており、2か月に1度の定期受診で経過をみている。
48 Aさんは運動障害に加えて非運動症状が出現するようになり、治療薬の副作用も出たことから薬剤調整のために入院した。入院中に自ら外出する必要があり、転倒の危険性から付き添いの援助を希望した。現在の症状を主治医は、Hoehn-Yahr(ホーエン・ヤール)重症度分類でステージⅢ、生活機能障害度2度と診断している。
Aさんが付き添いを依頼できる障害福祉サービスはどれか。
1.移動支援
2.行動援護
3.生活介護
4.同行援護
解答1
解説
・非運動症状が出現、治療薬の副作用も出た。
・薬剤調整のために入院。
・入院中に自ら外出する必要があり、転倒の危険性から付き添いの援助を希望した。
・Hoehn-Yahr重症度分類でステージⅢ:歩行障害、姿勢保持反射障害が出現、生活機能障害度2度。
→本症例に適応となる付き添い援助を選択する必要がある。パーキンソン病とは、黒質のドパミン神経細胞の変性を主体とする進行性変成疾患である。4大症状として①安静時振戦、②筋強剛(筋固縮)、③無動・寡動、④姿勢反射障害を特徴とする。また、自律神経障害による便秘や起立性低血圧、排尿障害、レム睡眠行動障害などが起こる。レム睡眠行動障害とは、レム睡眠の時期に体が動き出してしまう睡眠障害の1つである。 睡眠時随伴症に分類される。
1.〇 正しい。移動支援は、Aさんが付き添いを依頼できる障害福祉サービスである。移動支援は、社会生活において必要不可欠な外出や社会参加のための外出の際の移動を支援する地域生活支援事業のサービスである。
2.× 行動援護とは、知的障害または精神障害により行動上かなりの介助を要し、常時介護が必要なものに対して、外出時に同行し援護するサービスである。例えば、外出時の食事や排泄などである。対象は、障害支援区分が区分3以上である。
3.× 生活介護とは、障害者支援施設等において、入浴・排泄・食事等の介護・創作的活動または生産活動の機会の提供などを行うものである。
4.× 同行援護とは、視覚障害により、移動に著しい困難を有する障害者等が外出時において、当該障害者等に同行し、移動に必要な情報の提供や、移動の援護等、外出時に必要な援助を行うものである。
ステージⅠ:片側のみの症状がみられる。軽症で機能障害はない。
ステージⅡ:両側の症状がみられるが、バランス障害はない。また日常生活・通院にほとんど介助を要さない。
ステージⅢ:歩行障害、姿勢保持反射障害が出現し、ADLに一部介助に一部介助が必要になる。
ステージⅣ:日常生活・通院に介助を必要とする。立位・歩行はどうにか可能。
ステージⅤ:寝たきりあるいは車いすで、全面的に介助を要する。歩行・起立は不能。
次の文を読み47〜49の問いに答えよ。
Aさん(55 歳、男性)は1人暮らし。10 年前に振戦を主症状としてParkinsons(パーキンソン)病と診断されたが、これまでは自立した日常生活を送っていた。最近、身体の両側の振戦に加えて、動作が徐々に遅くなりはじめ、歩行にも不安を感じる時があり外出や受診に介助が必要になった。現在の症状を主治医は、Hoehn-Yahrs(ホーエン・ヤール)重症度分類でステージⅡ、生活機能障害度2度と診断しており、2か月に1度の定期受診で経過をみている。
49 退院後、Aさんは自宅で療養することになった。今後もParkinsons(パーキンソン)病の症状の進行が予想される。
Aさんに対して、身体機能の維持のための日常生活上の指導で適切なのはどれか。
1.食事介助を受ける。
2.移動時は電動車椅子を利用する。
3.訪問入浴介護サービスを利用する。
4.ストレッチ等で体を動かす習慣を作る。
解答4
解説
・退院後:自宅療養。
・今後:パーキンソン病の症状の進行が予想される。
→身体機能の維持のための日常生活上の指導としては、①自主トレーニングの定着、②転倒予防などがあげられる。パーキンソン病の歩行障害(すくみ足や突進現象)の誘発因子は、①狭路、②障害物、③精神的緊張などであるため、対応方法として、①視覚(障害物を跨ぐ、床に目印をつける)、②聴覚(メトロノームなどのリズムや歩行に合わせてのかけ声)③逆説的運動(階段昇降)などがあげられる。ちなみに、矛盾性運動(逆説的運動)とは、歩行障害(すくみ足などの)症状があっても、床の上の横棒をまたぐことができることをいう。リズムをとったり、視覚的な目標物を踏み越えさせたりすると、本来難易度が高いはずであるが、スムーズに足が出るといった現象である。階段昇降もこれに含まれ、平地歩行に比べて障害されにくい。
1.× 食事介助を受ける優先度は低い。なぜなら、本症例はHoehn-Yahrs重症度分類でステージⅡ、生活機能障害度2度であるため。両側の振戦や動作緩慢により食事がしにくくなった場合でも、まずは姿勢の保持や食べ方、器具の工夫などで対応し、なるべく現在の状態でも安全に自分でできる方法を検討する。
2.× 移動時は電動車椅子を利用する優先度は低い。なぜなら、本症例はHoehn-Yahrs重症度分類でステージⅡ、生活機能障害度2度であるため。歩行障害が著明に進行した場合でも、まずは環境調整(手すりの設置や絨毯の撤去など)をする。現在のAさんの状態は、姿勢の保持が難しくなっているが、立位は可能であり、電動車椅子の使用によって、筋力を使わないことにより筋カの低下や筋固縮を悪化させない工夫が必要である。
3.× 訪問入浴介護サービスを利用する優先度は低い。なぜなら、本症例はHoehn-Yahrs重症度分類でステージⅡ、生活機能障害度2度であるため。現在の状態でも安全に自分でできる方法を検討する。たとえば、座位の保持や入浴の動作の見守りおよび必要な介助を受けながら安全な入浴方法を行う。過介助は依存傾向を引き起こしたり、さらなる身体機能の低下をきたす。
4.〇 正しい。ストレッチ等で体を動かす習慣を作る。パーキンソン病の特徴的な症状である筋固縮・無動・姿勢反射障害・安静時振戦では、筋肉が固くなり動きにくくなるため、日頃から適度なストレッチなどで体を動かして身体機能の維持をはかることが重要である。
ステージⅠ:片側のみの症状がみられる。軽症で機能障害はない。
ステージⅡ:両側の症状がみられるが、バランス障害はない。また日常生活・通院にほとんど介助を要さない。
ステージⅢ:歩行障害、姿勢保持反射障害が出現し、ADLに一部介助に一部介助が必要になる。
ステージⅣ:日常生活・通院に介助を必要とする。立位・歩行はどうにか可能。
ステージⅤ:寝たきりあるいは車いすで、全面的に介助を要する。歩行・起立は不能。
パーキンソン病とは、黒質のドパミン神経細胞の変性を主体とする進行性変成疾患である。4大症状として①安静時振戦、②筋強剛(筋固縮)、③無動・寡動、④姿勢反射障害を特徴とする。また、自律神経障害による便秘や起立性低血圧、排尿障害、レム睡眠行動障害などが起こる。レム睡眠行動障害とは、レム睡眠の時期に体が動き出してしまう睡眠障害の1つである。 睡眠時随伴症に分類される。
次の文を読み50、51の問いに答えよ。
Aさん(52歳、女性)。1人暮らし。5年前に仕事を解雇されて以降、自宅に引きこもっている。母親は2年前に他界し、その頃より「外出するとストーカーに追われる」「赤外線で狙われて怖い」と他県に住む姉に訴えるようになった。姉が受診を勧めたが「私は病気じゃない」と言う。
Aさんは、3日前に隣人宅に来た郵便配達員を見て「お前がストーカーだな」と隣人宅に怒鳴り込み、警察に通報された。
50 警察から連絡を受けた姉が保健所へ相談に来た。翌日、姉と保健師でAさん宅を訪問すると、Aさんは「買い物や仕事を探しに行きたいが、ストーカーのせいで外出できない」「ストレスで眠れない」と話した。
Aさんへの保健師の声かけで、最も適切なのはどれか。
1.「ストーカーは存在しないので安心してください」
2.「眠れないことについて医師に相談しましょう」
3.「解雇された理由を振り返りましょう」
4.「一緒にハローワークへ行きましょう」
5.「お姉さんと一緒に暮らしましょう」
解答2
解説
・Aさん(52歳、女性、1人暮らし)
・5年前:解雇以降、引きこもり。
・母親:2年前他界
・「ストーカーに追われる」「赤外線で狙われて怖い」と他県に住む姉に訴える。
・姉が受診を勧めたが「私は病気じゃない」と言う。
・3日前:警察にお世話になっている。
・姉と保健師でAさん宅を訪問:Aさん「買い物や仕事を探しに行きたいが、ストーカーのせいで外出できない」「ストレスで眠れない」と話した。
→本症例は、幻覚や妄想が認められることからも統合失調症が疑われる。統合失調症とは、幻覚・妄想・まとまりのない発語および行動・感情の平板化・認知障害ならびに職業的および社会的機能障害を特徴とする。原因は不明であるが、遺伝的および環境的要因を示唆する強固なエビデンスがある。好発年齢は、青年期に始まる。治療は薬物療法・認知療法・心理社会的リハビリテーションを行う。早期発見および早期治療が長期的機能の改善につながる。統合失調症患者の約80%は、生涯のある時点で、1回以上うつ病のエピソードを経験する。統合失調症患者の約5~6%が自殺し,約20%で自殺企図がみられる。したがって、うつ症状にも配慮して、工程がはっきりしたものや安全で受け身的で非競争的なものであるリハビリを提供する必要がある。
(※参考:「統合失調症」MSDマニュアル様HPより)
1.× ストーカーは存在しないと伝えたところで効果は薄い。なぜなら、ストーカー発言の妄想と思われる症状は、統合失調症のために起こっていると考えられるため。いくら存在しないと否定してもAさんは「私は病気じゃない(病識の欠如)」と言っているため、保健師との関係作りに支障をきたす可能性がある。本人の辛い気持ちに焦点を当てて共感的態度で接する必要がある。
2.〇 正しい。眠れないことについて医師に相談するよう勧める。Aさんの主訴「ストレスで眠れない」に対応した声かけである。姉が受診を勧めても、Aさんは「私は病気じゃない(病識の欠如)」と言っていることからも、幻覚や妄想に関して病院へ受診するのは困難である。したがって、まずは不眠症状から病院へ行くことを促していくことが望ましい。
3.× 解雇された理由を振り返る優先度は低い。なぜなら、本症例は現在統合失調症の急性期であるため。この時期は、十分な睡眠や休養、安心感の確保が大切である。本症例から復職の希望が聞かれた場合は、回復期~維持期にかけゆっくり社会に戻るように支援していく。
4.× 一緒にハローワークへ行くことを勧める優先度は低い。なぜなら、本症例は現在統合失調症の急性期であるため。この時期は、十分な睡眠や休養、安心感の確保が大切である。そもそも「外出できない」「ストレスで眠れない」と訴えているため、それら発言に焦点を当てて対応する必要がある。ちなみに、ハローワーク(公共職業安定所)の主な業務は、①職業相談、②職業紹介、③求人確保、④事業主に対する助言・窓口業務、⑤就職後の障害者に対する助言・指導 などである。
5.× お姉さんと一緒に暮らすよう勧める優先度は低い。なぜなら、姉の意向や希望を聞かないでの提案となるため。また、姉との同居の可否についての評価もできていない。姉やAさんの住居が2人暮らしできるのか?姉には家族がいないのか?姉の家族の意向も含め検討する必要がある。