6 市では母子保健推進員が未就学児を対象とした遊びの会を実施している。参加している数名の母親から「自主グループとして活動したいがどうすればよいのか」と相談があった。
母親への保健師の助言で適切なのはどれか。
1.「最初に会則を決定してください」
2.「自主グループ参加希望者の名簿を提出してください」
3.「自主グループの代表者は母子保健推進員にしてください」
4.「自主グループ参加希望者でグループの目標を話し合ってください」
解答4
解説
・市:母子保健推進員が未就学児を対象とした遊びの会を実施。
・数名の母親「自主グループとして活動したい」
→現在、グループの発達段階の準備期に該当する。この段階は、グループの目的や計画を立て、グループに参加するメンバーを募集する必要がある。この時期の支援者の役割として、①グループづくりの計画を立てる。②メンバーを募集し準備する。③参加予定のメンバーと予備的な接触を行い、考えや思いを理解する。
1~2.× 会則の決定/自主グループ参加希望者の名簿の提出は、開始期の支援である。参加希望者が活動目標を検討したあとに行う。開始期の段階は、グループでルールが共有されるとともに、さまざまな不安や疑問が出てくる。支援者の役割として、①グループの目的をメンバー間で共有するのを支援する。②メンバーが活動計画を作成するのを支援する。③メンバーが主体的に意思決定に参加するように支援する。④信頼関係の確立に向けて、メンバー同士のかかわりを促す。
3.× 自主グループの代表者は、「母子保健推進員」ではなくグループメンバーが主体的に選出するのが望ましい。なぜなら、メンバーの自主性・主体性を大切にするため。母子保健推進員とは、地域の妊産婦さんやお子さんの健康を見守るサポーター役として、市長より委嘱をうけて活動しているいわゆるボランティアである。①母子保健に関する知識の普及、②母性および乳幼児の保険に関する問題の把握および情報提供、③健康診査、保健指導等の勧奨などの役割を持つ。つまり、住民と行政をつなぐパイプの役割が大きい。
4.〇 正しい。「自主グループ参加希望者でグループの目標を話し合ってください」と伝えることは、母親への保健師の助言で適切である。現在、グループの発達段階の準備期に該当する。この段階は、グループの目的や計画を立て、グループに参加するメンバーを募集する必要がある。この時期の支援者の役割として、①グループづくりの計画を立てる。②メンバーを募集し準備する。③参加予定のメンバーと予備的な接触を行い、考えや思いを理解する。
7 生活習慣病予防の栄養教室の運営方法で適切なのはどれか。
1.グループワークを用いて運営する。
2.参加者がお互い競争するよう促す。
3.参加者に連絡先の交換をするように促す。
4.発言の多い参加者をリーダーに指名する。
解答1
解説
生活習慣病は、「食習慣、運動習慣、休養の取り方、喫煙、飲酒などの生活習慣が、その発症・伸展に関与する疾患群」と定義されている。生活習慣病の背景因子として、①遺伝性因子、②環境因子、③生活習慣因子が考えらえているが、「生活習慣因子」は生活習慣病の積極的予防に最も重要な要素とされている。
1.〇 正しい。グループワークを用いて運営する。生活習慣病予防の栄養教室の目的は、参加者のセルフケア能力の向上である。そのためには、参加者が生活習慣病予防のための食生活に関する知識や技術を習得でき主体的に健康行動を実践できる健康教室の運営方法が望ましい。グループワークを通じて参加者同士が話し合いや共同作業を行うことにより、学びが促進されるとともに行動への欲が高められる一方、グループワークのデメリットとして、①グループでの決断に過剰な自信を持つ、②グループとの同調に圧力がかかる、③怠惰を助長することがあげられる。
2.× 参加者がお互い競争するよう促す必要はない。なぜなら、お互い競争するよう促すと「他の参加者に勝つこと」が教室参加の目的に変わってしまう可能性があるため。今回、生活習慣病予防が目的で、人それぞれ身体機能、身体状態が異なるため競争する必要はない。
3.× 参加者に連絡先の交換をするように促す必要はない。なぜなら、連絡先は参加者の個人情報にあたるため。個人情報保護法とは、個人情報の保護に関する法律の略称である。個人情報の有用性に配慮しつつ、個人の権利利益を保護することを目的とした個人情報の取扱いに関連する日本の法律である。定義(第2条)には、「この法律において『個人情報』とは、生存する個人に関する情報であって、当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述などにより特定の個人を識別できるもの(他の情報と容易に照合することができ、それにより特定の個人を識別することができることとなるものを含む)をいう」とされている。
4.× 発言の多い参加者をリーダーに指名する必要はない。なぜなら、「発言が多い参加者」=「リーダーに適している」とは限らないため。むしろ、リーダーばかりが発言することによりメンバー同士のコミュニケーションが減少する可能性もある。一般的に、リーダーに適した特徴とは、①明確なビジョンを提示し、チーム全員のモチベーションを高める。②コミュニケーション手段を意識して使い分ける。③信頼を得るためのブレないポジショニング、④リーダー自身が創造的・挑戦的であること、⑤部下の長所を伸ばす育て方を意識するなどがあげられている。
8 A地区の人口静態をアセスメントする方法で、適切なのはどれか。
1.統計資料の二次活用
2.社会調査
3.地区踏査
4.分析疫学
解答1
解説
人口静態とは、特定の時点(瞬間的断面)における人口や世帯の状態を指す。日本における人口静態統計は5年ごとに行われる国勢調査によって得られる。これに対し、人口動態とは、ある二時点間における人口の変化(フロー)のことをいい、この二時点の期末人口と期首人口の差を人口増加数という。
1.〇 正しい。統計資料の二次活用することは、A地区の人口静態をアセスメントする方法として適切である。二次活用とは、原作品・原論文・原資料などを引用・転載・コピーするなどして利用することである。
2.× 社会調査とは、社会や集団における事象(人々の意識や行動などの実態)を、データの収集・集計・分析のプロセスを経て明らかにするものである。
3.× 地区踏査とは、担当地区を実際に歩いて地域住民の様子や環境を観察し、地区の状況を把握する地域診断に用いられる方法である。踏査(読み:とうさ)は、出かけて行って調べることをさす。
4.× 分析疫学とは、記述疫学などで立てた仮説を検証する方法で、コホート研究や症例対象研究などがある。研究の種類には、研究者が調査対象集団に対して何らかの働きかけ(介入)を行うか否かで、介入を行う「介入研究」と、介入を行わない「観察研究」とに大きく分類される。介入研究には、「臨床試験・地域研究」などがある。一方、観察研究には、大きく「①記述疫学・②分析疫学」に大別され、①記述疫学には、横断研究・時系列研究などがある。②分析疫学には、生態学的研究・横断研究・症例対照研究・コホート研究などがある。
9 地域保健活動におけるソーシャルキャピタルの説明で正しいのはどれか。
1.集団全体の広いリスクを対象とした支援対策である。
2.住民が主体的に活動できるよう支援することである。
3.地域の人々の社会的な結びつきに関する資本である。
4.個人の認識に働きかけて行動変容を促すモデルである。
解答3
解説
ソーシャルキャピタルとは、地域の健康課題解決のための資源のことである。ソーシャルキャピタルが醸成されることで高まる地域の力を考えることが重要である。人々の協調行動が活発化することにより社会の効率性を高めることができるという考え方のもとで、社会の信頼関係、規範、ネットワークといった社会組織の重要性を説く概念である。
1.× 集団全体の広いリスクを対象とした支援対策は、ポピュレーションアプローチである。
2.× 住民が主体的に活動できるよう支援する概念は、ヘルスプロモーションもしくはコミュニティ・エンパワメントである。
3.〇 正しい。地域の人々の社会的な結びつきに関する資本であることは、地域保健活動におけるソーシャルキャピタルの説明で正しい。ソーシャルキャピタル(社会関係資本)とは、醸成されると地域の人々の結び付きが強まり、健康課題を解決するための効果的な地域づくつりにつながるとされている。
4.× 個人の認識に働きかけて行動変容を促すモデルは、ヘルス・ビリーフ・モデルである。
ヘルスプロモーション(健康教育)は、「人々が自らの健康とその決定要因をコントロールし、改善することができるようにするプロセス」と定義される。①健康な公共政策づくり、②健康を支援する環境づくり、③地域活動の強化、④個人技術の開発、⑤ヘルスサービスの方向転換などが挙げられる。保健部門だけの責任にとどまらず、人々のライフスタイルや生活の質(QOL)にかかわるものであり、個人の能力だけでなく環境の整備も含まれる。オタワ憲章(1986年)で提唱され、日本では、健康日本21(2000年)で基本理念に取り入れられている。
①健康的な公共政策づくり:健康は、人々の暮らしを支えている公共政策(道や諸施設、衛生上欠かせない上下水道の整備など)によって保証されるため、公共政策そのものを健康的なものにする必要がある。
②健康を支援する環境づくり:環境(ハード・ソフト面)を整備することで、住民一人ひとり健康づくりを支援する。
③地域活動の強化:住民組織を活性化することで健康づくりを地域での住民活動を強化するような働きかけを行う。
④個人技術の開発:住民一人ひとり、そして専門家が、健康づくりに取り組むために必要な技術を身につけられるような働きかけや取り組みを行う。
⑤ヘルスサービスの方向転換:これまで疾病対策として実施されてきた事業(ヘルスサービス)を、より積極的に健康づくりの場としてとらえ見直しを行う。
エンパワメントとは、対象者が主体的に自身の状態を変えていく方法や自信を獲得できるよう、対象者が本来持っている力を引き出し、その自己決定能力を強化することである。対象は、個人、組織、コミユニテイの3段階がある。過程には、傾聴→対話→行動アプローチがある。
【コミュニティ・エンパワメントの成果】
①コミュニティ・メンバーは自身の問題解決に向かう意欲と自信がつ
②コミュニティ・メンバーのコミュニティに対する関心が高まる。
③コミュニティでの相互支援が高まる。
④コミュニティでリーダーが育成される。
⑤コミュニティは政策改善の方向性を見いだす。
10 A市の介護保険計画は、現在3年計画のうち2年目に入ったところである。
今年度担当になった保健師が最初に行う活動として適切なのはどれか。
1.A 市の高齢者にニーズ調査を行う。
2.前年度の活動の評価結果を確認する。
3.実施する事業のマニュアルを作成する。
4.介護保険計画のパブリックコメントを募集する。
解答2
解説
・介護保険計画:現在3年計画のうち2年目に入った。
→今年度担当になったからといって、「介護保険計画」を推進することが基本である。前年度の活動結果を参照しながら、2年目、3年目の介護保険計画を立案できるよう行う。
1.× A 市の高齢者にニーズ調査を行うのは、3年計画の初年度に実施する活動である。現在、3年計画のうち2年目に入っている。
2.〇 正しい。前年度の活動の評価結果を確認するのは、今年度担当になった保健師が最初に行う活動として適切である。なぜなら、今年度担当になったからといって、「介護保険計画」を推進することが基本であるため。前年度の活動の評価結果から現状分析を行ったうえで、2年目、3年目の介護保険計画を立案できるよう行う。
3.× 実施する事業のマニュアルを作成するのは、最初に行う活動ではない。なぜなら、今年度担当になった保健師は、実施する事業の細かな仕事内容まで把握しているとは考えにくいため。マニュアルの作成は、その仕事や事業を熟知している経験者が、初任者研修のために作成することが多い。
4.× 介護保険計画のパブリックコメントを募集するのは、最初に行う活動ではない。パブリックコメントとは、公的な機関が規則あるいは命令などの類のものを制定しようとするときに、広く公に、意見・情報・改善案などを求める手続きをいう。パブリックコメントは、前年度の活動の評価結果および2年目の計画素案をあらかじめ提示し、市民の意見を広く募集することで有効となる。