第107回(H30) 看護師国家試験 解説【午前11~15】

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11 肝臓の機能で正しいのはどれか。(※不適切問題:採点除外)

1.胆汁の貯蔵
2.脂肪の吸収
3.ホルモンの代謝
4.血漿蛋白質の分解

解答3(採点除外)
理由:(※問題として適切であるが、必修問題としては妥当でないため)

解説

MEMO

肝臓の機能として、①胆汁の生成とビリルビンの代謝、②血漿蛋白質と尿素の合成、③脂質代謝、④糖の貯蔵と放出、⑤ビタミンDの代謝、⑥ホルモンの代謝、⑦解毒・薬物の代謝である。ちなみに、グルコースとは、果物や穀類などに多く含まれ、自然界に最も多く存在する単糖類である。

1.× 胆汁の貯蔵は、胆嚢の機能である。胆汁は、腸内での消化吸収の促進や毒素の排除などに重要な役割を果たす。
2.× 脂肪の吸収は、小腸の機能である。中性脂肪の場合は、十二指腸で、肝臓でつくられた胆汁酸と一緒になり、さらに、リパーゼという酵素によって遊離脂肪酸とモノグリセリドに分解されたあと、吸収されやすい形(ミセル)になって、小腸から吸収されます。
3.〇 正しい。ホルモンの代謝は、肝臓の機能である。例えば、肝臓が障害を受けると、エストロゲンの排出が障害される。したがって、エストロゲンが過剰になり、エストロゲンの作用で毛細血管が拡張し、くも状血管腫や手掌紅班が見られるようになる。他には、女性化乳房や睾丸萎縮などが見られるようになる。
4.× 血漿蛋白質の分解は、複数の消化酵素により胃から小腸を通過しながら分解される。血漿蛋白質とは、血液から血球を除いた体液部分に含まれるタンパク質のことである。アルブミン、抗体、血液凝固因子など、多数のタンパク質が含まれる。

 

 

 

 

 

12 頻回の嘔吐で生じやすいのはどれか。

1.血尿
2.低体温
3.体重増加
4.アルカローシス

解答4

解説

MEMO

脱水症状とは、体内の水分が2%失われると、のどの渇きを感じ、運動能力が低下しはじめる。3%失われると、強いのどの渇き、ぼんやり、食欲不振などの症状がおこり、4~5%になると、疲労感や頭痛、めまいなどの脱水症状が現れる。10%以上になると、死にいたることもある。

1.× 血尿とは、尿に血液が混ざっている状態を指す。主な原因として、悪性腫瘍や結石、膀胱炎などの炎症、腎臓の内科的な病気などが考えられる。脱水状態では、尿量の減少(乏尿)は起こりえるが、血尿は見られない。
2.× 低体温とは、平熱が35℃台の人を指す。低体温症とは違い、低体温症とは深部体温が35℃未満となることで、症状は、シバリングおよび嗜眠から錯乱、昏睡および死亡へと進行する。脱水状態では、汗が出にくくなり、室温が高い場合には体温上昇を伴う。
3.× 体重は、「増加」ではなく減少する。なぜなら、体内の水分が失われるため。体重増加は、過量の摂取カロリーや不適切なライフスタイル、浮腫などで生じる。
4.〇 正しい。アルカローシスは、頻回の嘔吐で生じやすい。頻回の嘔吐では、体内の水分や電解質が失われ脱水状態となり、また、胃液に含まれる胃酸(酸性)も失われる。胃酸が失われるので、血中pHがアルカリ性に傾き、代謝性アルカローシスとなる。ちなみに、アルカローシス(アルカリ性)とは、pHが上昇している状態である。一方、アシドーシス(酸性)とは、pHが低下している状態である。

 

 

 

 

13 関節や神経叢の周辺に限局して起こる感覚障害の原因はどれか。

1.脊髄障害
2.物理的圧迫
3.脳血管障害
4.糖尿病の合併症

解答2

解説

(※図引用:「看護roo!看護師イラスト集」より)

1.× 脊髄障害は、障害部位により、障害された髄節以下にわたる感覚領域に障害が生じる。例えば、対麻痺(両足の麻痺)四肢麻痺(両手足の麻痺)がみられる。
2.〇 正しい。物理的圧迫は、関節や神経叢の周辺に限局して起こる感覚障害の原因となる。なぜなら、圧迫された神経のみが影響を受けるため。例えば、正中神経麻痺による猿手変形に、尺骨神経麻痺による鷲手変形などがある。
3.× 脳血管障害による感覚障害は、障害された部位により、広範囲な感覚領域に障害が生じる。例えば、片麻痺(右上下肢)がみられる。
4.× 糖尿病の合併症(糖尿病性末梢神経障害)は、いわゆる手袋靴下型の感覚障害を引き起こす。左右対称に手袋・靴下型に異常感覚をきたしやすく、糖尿病足病変にも注意が必要である。振動覚の低下やアキレス腱反射の消失も糖尿病性末梢神経障害の特徴である。

 

 

 

 

 

14 良性腫瘍と比較して悪性腫瘍でみられる特徴はどれか。

1.被膜がある。
2.遠隔転移する。
3.周囲組織に浸潤しない。
4.増殖速度が緩やかである。

解答2

解説

腫瘍とは?

腫瘍とは、体の中にできた細胞のかたまりのことである。悪性腫瘍とは、このような腫瘍のうち、無秩序に増殖しながら周囲にしみ出るように広がったり(浸潤)、体のあちこちに飛び火して新しいかたまりを作ったり(転移)するもののことをいう。一方、良性腫瘍とは、浸潤や転移をせず、周りの組織を押しのけるようにしてゆっくりと増える腫瘍のことをいう。

1.× 被膜があるのは、良性腫瘍の特徴である。被膜とは、表層を覆う膜のことである。なぜなら、良性腫瘍の構造は、成熟しているため。一方、悪性腫瘍は、被膜を持たないため周囲に浸潤し増殖しやすい特徴を持つ。
2.〇 正しい。遠隔転移する。遠隔転移とは、がん細胞が最初に発生した場所(原発巣)から、血管やリンパ管に入り込み、血液やリンパの流れに乗って別の臓器や器官に移動し、そこで増殖することである。肺や肝臓、脳、骨など血液の流れが豊富な場所や、リンパの流れが集まる場所であるリンパ節に遠隔転移することが多い。
3.× 周囲組織に浸潤しないのは、良性腫瘍の特徴である。良性腫瘍は、遠隔転移をすることはなく局所での増殖にとどまる。
4.× 増殖速度が緩やかであるのは、良性腫瘍の特徴である。悪性腫瘍とは、このような腫瘍のうち、無秩序に増殖しながら周囲にしみ出るように広がったり(浸潤)、体のあちこちに飛び火して新しいかたまりを作ったり(転移)するもののことをいう。

 

 

 

 

15 肝障害の指標となる血液生化学検査の項目はどれか。

1.CRP
2.尿素窒素
3.アミラーゼ
4.ALT(GPT)

解答4

解説

1.× CRPとは、体内に炎症が起きたり、組織の一部が壊れたりした場合、血液中に蛋白質の一種であるC-リアクディブ・プロテイン(CRP)をさす。 正常な血液のなかにはごく微量にしか見られないため、炎症の有無を診断するのにこの検査が行われる。
2.× 尿素窒素とは、血液のなかの尿素に含まれる窒素成分のことで、蛋白質が利用された後にできる残りかすである。通常は、腎臓で濾過されて尿中へ排出されるが、腎臓の機能低下で、ろ過しきれない分が血液のなかに残る。つまり、尿素窒素の数値が高くなるほど、腎臓の機能が低下していることを表している。腎臓の機能を見る場合には、この尿素窒素の値だけでなく、尿に蛋白が出ているかどうかの検査の結果も合わせて判断する。両方に異常が見られる場合は要注意である。
3.× アミラーゼとは、でんぷんを分解して糖にする酵素である。体内では主に、膵臓、耳下腺(唾液腺)から分泌される。膵細胞が破壊されると、アミラーゼが高値となる。したがって、高値の場合、急性膵炎、慢性膵炎、膵がん、膵嚢胞等の膵疾患のほか、イレウス(腸閉塞)、卵巣腫瘍、肝炎、腎不全等が疑われる。
4.〇 正しい。ALT(GPT)は、肝障害の指標となる血液生化学検査の項目である。ALTとは、肝臓の細胞で作られる酵素である。肝臓に障害が起こって細胞が壊れると血液に流れ出るため、血液中の濃度が上昇する。したがって、肝障害の指標となる。

GPT:アラニンアミノトランスフエラーゼとは?

GPTとは、肝臓の細胞で作られる酵素である。基準値は検査機関によって異なるが、日本人間ドック学会によると、30IU/L以下が正常値とされている。正常値を大きく上回る場合、急性肝炎や慢性肝炎、アルコール性肝炎、脂肪肝、肝臓がんなどの病気が疑われる。

 

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