第107回(H30) 看護師国家試験 解説【午後11~15】

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11 死の三徴候に基づいて観察するのはどれか。

1.腹壁反射
2.輻輳反射
3.対光反射
4.深部腱反射

解答3

解説

死の三徴候とは?

死の三徴候とは、①自発呼吸の停止、②心臓の停止、③瞳孔散大(対光反射の消失)である。

1.× 腹壁反射とは、検者を背臥位にして両膝を軽く屈曲し膝を立て、腹筋を弛緩させる。先の鈍い針で肋骨縁①にそって上から下に向けてこする。また、腹壁を②、③、④の3つに分けて、腹壁皮膚を外側より内側に向けてこすり、刺激側の腹筋が収縮し、臍が刺激側へ動けば陽性である。陽性の場合、錐体外路系の障害により消失する。
2.× 輻輳反射とは、瞳孔反射の一つで、近くの物を見る時に両眼が内転(輻輳運動)し、あわせて瞳孔が収縮する反射のことをいう。【求心路】視神経、【遠心路】動眼神経である。患者の正面、約50cmのところに示指を立てて見つめてもらい、その指を15cmくらいまで近づけると両方の目が寄り目になる(左右の目がそれぞれ内転する)反射のことであり、動眼神経の障害を検査する(※読み:ふくそうはんしゃ)。
3.〇 正しい。対光反射の消失(瞳孔の散大)は、死の三徴候に基づいて観察する。瞳孔反射(対光反射)は、ペンライトを用い、瞳孔に光を入れ、縮瞳を観察する。対光反射は、中枢神経機能の指標として、意識障害や心肺停止を起こしたときに確認される。 瞳孔散大、対光反射の消失は死亡判定の条件である。
4.× 深部腱反射とは、骨格筋につながる腱をハンマーなどでたたいた時、筋が不随意に収縮する反射である。筋紡錘が腱の伸びを筋の伸びとして感知したことにより、筋の収縮(緊張)を生み出すことが原因である。単収縮は単一の刺激によって引き起こされる筋収縮である。

 

 

 

 

 

12 潰瘍性大腸炎によって生じるのはどれか(※採点除外)。

1.滲出性下痢
2.分泌性下痢
3.脂肪性下痢
4.浸透圧性下痢

解答1(※採点除外)
理由:問題として適切であるが,必修問題としては妥当でないため。

解説

潰瘍性大腸炎とは?

潰瘍性大腸炎とは、主に大腸の粘膜を侵し、再燃と寛解を繰り返す慢性のびまん性炎症性腸疾患である。症状として、繰り返す粘血便・下痢(滲出性下痢)・腹痛・発熱・体重減少などがみられる。したがって、潰瘍性大腸炎の食事は、易消化性で高エネルギー、高タンパク、低脂肪、低残渣食を基本とする。原因不明であるが、遺伝的因子と環境因子が複雑に絡み合って発症に関与していると考えられている。

1.〇 正しい。滲出性下痢は、潰瘍性大腸炎によって生じる。滲出性下痢とは、腸粘膜が炎症を起こしたり腸粘膜を傷つけるような病原体に感染したりすると、腸液の分泌が増え、水分の吸収が低下するために生じる下痢である。潰瘍性大腸炎のほかにも、クローン病などが原因で起こる。ちなみに、クローン病とは、炎症性腸疾患のひとつで、主に小腸や大腸などの消化管に炎症が起きることによりびらんや潰瘍ができる原因不明の慢性の病気である。
2.× 分泌性下痢とは、食あたりなどで細菌に感染したときや、小麦、魚介などによる食物アレルギー、薬(解熱鎮痛薬など)の影響で腸粘膜に障害を起こしたときなど、腸管内の分泌液が過剰となり下痢を起こすものをいう。
3.× 脂肪性下痢とは、脂肪の吸収が低下したり高脂肪の食事を摂取することにより生じる消化不良が原因で発生する下痢である。したがって、膵臓の機能が低下する慢性膵炎肝硬変短腸症候群などが原因としてあげられる。
4.× 浸透圧性下痢とは、腸からの水分吸収が妨げられるためにおこる下痢のことである。食べたものの浸透圧(水分を引きつける力)が高く、腸で水分が吸収されにくい人工甘味料の取り過ぎや乳糖不耐症などで起こりやすい。また、そのほかにもアルコールの多飲下剤の乱用などもある。

 

 

 

 

13 典型的なうつ病の症状はどれか。

1.幻聴
2.感情失禁
3.理由のない爽快感
4.興味と喜びの喪失

解答4

解説

うつ病の症状について

感情面:抑うつ、不安、焦燥。
意欲面:意欲低下(日内変動があり特に朝が悪い)、自殺念慮。
思考面:微小妄想(罪業、貧困、心気)、思考抑止、離人。
身体面:不眠(早期覚醒が多い)、頭重感、めまい、倦怠感。

1.× 幻聴が典型的な症状であるのは、統合失調症である。統合失調症とは、幻覚・妄想・まとまりのない発語および行動・感情の平板化・認知障害ならびに職業的および社会的機能障害を特徴とする。原因は不明であるが、遺伝的および環境的要因を示唆する強固なエビデンスがある。好発年齢は、青年期に始まる。治療は薬物療法・認知療法・心理社会的リハビリテーションを行う。早期発見および早期治療が長期的機能の改善につながる。統合失調症患者の約80%は、生涯のある時点で、1回以上うつ病のエピソードを経験する。統合失調症患者の約5~6%が自殺し,約20%で自殺企図がみられる。したがって、うつ症状にも配慮して、工程がはっきりしたものや安全で受け身的で非競争的なものであるリハビリを提供する必要がある(※参考:「統合失調症」MSDマニュアル様HPより)。
2.× 感情失禁が典型的な症状であるのは、脳血管性認知症である。感情失禁とは、軽度の情動的刺激で笑ったり、泣いたりする現象で、感情の調節がうまくいかない状態である。前頭葉障害に認められる。
3.× 理由のない爽快感が典型的な症状であるのは、双極性障害(特に繰状態)である。双極性障害とは、気分が高まったり(躁状態)、落ち込んだり(うつ状態)を繰り返す脳の病気である。激しい躁状態とうつ状態のある双極I型と、軽い躁的な状態(軽躁状態)とうつ状態のある双極Ⅱ型がある。躁状態では、気分が高ぶって誰かれかまわず話しかけたり、まったく眠らずに動き回ったりと、過活動的になる。ほかにも、ギャンブルに全財産をつぎ込んだり、高額のローンを組んで買い物をしたり、上司と大ゲンカして辞表を叩きつけたりするような社会的信用や財産、職を失ったりする激しい状態になることもある。
4.〇 正しい。興味と喜びの喪失は、典型的なうつ病の症状である。感情面に関して、抑うつ、不安、焦燥などがみられる。

うつ病の対応

かかりやすい:几帳面で完璧主義、責任感が強い人が多い。

うつ病の特徴:意欲低下、精神運動抑制などの症状のため、自己評価が低く、疲労感が強い。

①調子が悪いのは病気のせいであり、治療を行えば必ず改善すること。
②重要事項の判断・決定は先延ばしにする。
③自殺しないように約束してもらうことなど。

【作業基準】
①工程がはっきりしている。
②短期間で完成できる。
③安全で受身的で非競争的である。
④軽い運動(いつでも休憩できる)

【対応】
①気持ちを受け入れる。
②共感的な態度を示す。
③心理的な負担となるため、激励はしない。
④無理をしなくてよいことを伝える。
⑤必ず回復することを繰り返し伝えていく。
⑥静かな場所を提供する。

 

 

 

 

 

14 母体から胎児への感染はどれか。

1.水平感染
2.垂直感染
3.接触感染
4.飛沫感染

解答2

解説

1.× 水平感染とは、感染源から周囲に伝播する様式であり、①接触感染、②飛沫感染、③空気感染などがある。
2.〇 正しい。垂直感染は、母体から胎児への感染である。垂直感染とは、一般的に母子感染とも呼び、何らかの微生物(細菌、ウイルスなど)がお母さんから赤ちゃんに感染することである。妊娠前から元々その微生物を持っているお母さん(キャリアと言います)もいれば、妊娠中に感染するお母さんもいます。「母子感染」には、赤ちゃんがお腹の中で感染する胎内感染、分娩が始まって産道を通る時に感染する産道感染、母乳感染の3つがあります。赤ちゃんへの感染を防ぐとともにお母さん自身の健康管理に役立てるために、妊娠中に感染の有無を知るための感染症検査(抗体検査という場合もあります。)をします。妊婦健診を受診して、感染症検査を受けましょう。もし、検査で感染症が見つかった場合には、赤ちゃんへの感染や将来の発症を防ぐための治療や保健指導が行われます。(※引用:「母子感染を知っていますか?」厚生労働省HPより)
3.× 接触感染は、①直接接触感染:感染者の皮膚粘膜との直接接触による伝播・感染する、②間接接触感染:感染者の微生物で汚染された衣類、周囲の器物、環境などとの接触による伝播・感染するものに分けられる。例えば、流行性角結膜炎、疥癬、ノロウイルス感染症などがあげられる。
4.× 飛沫感染は、咳やくしゃみなどに伴って発生する飛沫(粒径5μm以上の粒子)が経気道的にヒトの粘膜に付着し感染するものをいう。特徴として、飛散する範囲は1m以内である。例えば、風疹、流行性耳下腺炎、 インフルエンザ、マイコプラズマ、百日咳などがあげられる。

感染経路と感染症

感染には、①接触感染、②空気感染、③飛沫感染がある。

①接触感染(例:流行性角結膜炎、疥癬、ノロウイルス感染症など)
(1)直接接触感染:感染者の皮膚粘膜との直接接触による伝播・感染する。
(2)間接接触感染:感染者の微生物で汚染された衣類、周囲の器物、環境などとの接触による伝播・感染する。

②飛沫感染(例:風疹、流行性耳下腺炎、 インフルエンザ、マイコプラズマ、百日咳など)
咳やくしゃみなどに伴って発生する飛沫(粒径5μm以上の粒子)が経気道的にヒトの粘膜に付着し感染する。飛散する範囲は1m以内であることが特徴。

③空気感染(例:結核、水痘、麻疹など)
飛沫核 (粒径5μm未満の粒子に付着した微生物)が長期間空中を浮遊し、これを吸い込むことで感染が伝播・感染する。

(※参考:「医療施設等における感染対策ガイドライン」厚生労働省様HPより)

 

 

 

 

15 出血傾向を考慮し手術前に投与の中止を検討するのはどれか。

1.アドレナリン
2.テオフィリン
3.ワルファリン
4.バンコマイシン

解答3

解説

1.× アドレナリンとは、【対象】血圧低下心肺蘇生、アナフィラキシーショック、【作用】血圧上昇作用や心拍数増加作用、【副作用】過量投与で血圧の過剰な上昇、動悸など。
2.× テオフィリンとは、【対象】喘息、閉塞性換気障害、【作用】気管支拡張、抗炎症、【副作用】過量投与で悪心、嘔吐、動悸など。
3.〇 正しい。ワルファリンは、出血傾向を考慮し手術前に投与の中止を検討する。なぜなら、副作用に出血傾向がみられるため。ワルファリンとは、【対象】血栓を生じる疾患、【作用】抗血栓作用、【副作用】出血傾向がある。
4.× バンコマイシンとは、【対象】メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)感染症、【作用】抗菌薬、【副作用】腎障害などがある。

 

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