21 人口3万人の町の保健師は地区によって高脂血症の罹患率が大きく異なっていることに気付いた。
罹患率に関連する要因について仮説を立てて検証するために行う調査方法で適切なのはどれか。
1.フォーカス・グループインタビュー
2.半構造化面接法
3.質問紙調査
4.事例分析
解答3
解説
1.× フォーカス・グループインタビューは、少人数(5~6名程度)のグループを対象として座談会形式でインタビューを行い、幅広い情報を引き出そうとするグループ・ダイナミクスを利用した質的な情報把握の方法である。長所として、①潜在的・顕在的な情報把握や新しい考えを引き出すことができる。②参加者の自由な意見交換により共通のニーズを質的に把握できる。一方、短所として①参加者や司会者の選定により、バイアスが生じる可能性がある。②人前で話しにくいテーマ(性感染症など)では本音を引き出しにくい。本問題に関して、参加者が少人数でバイアスがかかりやすいため優先度は低い。
2.× 半構造化面接法は、調査的面接手法のひとつで、通常は1対1で行う面接である。あらかじめ作成した質問内容に従い面接を進めるが、対象者の状況や回答に応じて、追加の質問をしさり、説明を求めたり、面接中に浮かんできた新たな疑問などを投げかけたりする方法である。本問題に関して、1対1の面接であるため、時間がかかりすぎてしまうため優先度は低い。
3.〇 正しい。質問紙調査は、罹患率に関連する要因について仮説を立てて検証するために行う調査方法で適切である。質問紙調査は、調査目的に応じて一定の質問項目を作成し、それを対象者に示して回答を求め、必要な情報を収集する方法である。数多くの対象者に質問紙を配布し、回答を求めることができる。数多くの対象者に質問紙を配布し、回答を求めることができる。
4.× 事例分析は、さまざまな社会現象の個別事象を事実に即して記述し、その内容を分析的に検討し、事例のなかの特徴や法則性を見いだそうとする手法である。文献調査やインタビュー、フィールドワークなどによる研究手法のことを言うことが多い。
22 大きな集団から無作為に1,000人選び出したとき、その中の高血圧者数が従う分布はどれか。
1.t分布
2.正規分布
3.二項分布
4.χ2<カイ乗>分布
解答3
解説
1.× t分布は、t検定を行うときに用いられる確率分布である。検定とは、統計学的手法を用いて、帰無仮説が正しいか、正しくないかを判断することである。検定の一つとして、①パラメトリック検定(母集団が正規分布をするという仮説のもとに行う)がある。例:パラメトリック検定には、①t検定(2群の平均値の差を検定する)、②分散分析(3群以上の平均値に差があるかどうかを検定する)などがある。
2.× 正規分布は、連続データとなる変数に関する確率分布のひとつである。データが平均値の付近に集積するような分布を表す。主な特徴としては平均値と最頻値、中央値が一致する事や平均値を中心にして左右対称である事などが挙げられる。
3.〇 正しい。二項分布は、大きな集団から無作為に1,000人選び出したとき、その中の高血圧者数が従う分布である。二項分布とは、互いに独立したベルヌーイ試行をn回行ったときに、ある事象が何回起こるかの確率分布です。例えば、「コインを5回投げた時に表2回出る確率」「対戦ゲームで90%の確率で当たる技を10回中8回当てる確率」などを表した確率分布である。本問題では、「高血圧である」、「高血圧ではない」という2つの事象があげられる。
4.× χ2<カイ乗>分布は、χ2(カイ乗)検定を行うときに用いられる確率分布である。χ2(カイ乗)検定は、2つの変数カテゴリー同士の観察された頻度に、理論値との差(割合の差)があるかどうかを検定する。
検定とは、統計学的手法を用いて、帰無仮説が正しいか、正しくないかを判断することである。
「検定の方法」
①パラメトリック検定(母集団が正規分布をするという仮説のもとに行う)
例:パラメトリック検定には、①t検定(2群の平均値の差を検定する)、②分散分析(3群以上の平均値に差があるかどうかを検定する)などがある。
②ノンパラメトリック検定(母集団の分布にかかわらず用いることのできる)に大別される。
例:ノンパラメトリック検定には、①Mann-Whitney検定(2群の中央値の差を検定する)、②X2検定(割合の違いを求める)、③Wilcoxon符号付順位検定(一対の標本による中央値の差を検定する)などがある。
23 保健機能食品制度の説明で正しいのはどれか。
1.特定保健用食品の許可は厚生労働大臣が行う。
2.機能性表示食品は妊産婦に適する旨の表示ができる。
3.栄養機能食品は健康増進法に基づく一定の要件を満たしている。
4.保健機能食品は1日当たりの摂取目安を表示しなければならない。
解答4
解説
保健機能食品制度は、消費者が安心して食生活の状況に応じた食品の選択ができるよう、適切な情報提供をすることを目的とした制度である。 国が安全性や有効性等を考慮して設定した基準等を満たしている場合、『保健機能食品』と称することができる。
保健機能食品には3種類あり、①特定保健用食品(身体の生理学的機能に影響を与える成分を含むもの)、②栄養機能食品(栄養素の補給のために利用される食品で、栄養素の機能を表示するもの)、③機能性表示食品(品事業者の責任において、科学的根拠に基づいた機能性を表示したもの)からなる。摂取上の注意事項、1日当たりの摂取目安量などの表示が必要となる。
1.× 特定保健用食品の許可は、「厚生労働大臣」ではなく「消費者庁長官」が行う。これは、健康増進法に規定されている。
2.妊産婦に適する旨の表示ができるのは、「機能性表示食品」ではなく「特別用途食品」である。妊産婦用、乳幼児用、病者用などの特別な用途に適する旨の表示ができる。特別用途食品とは、妊産婦用、乳幼児用、病者用、嚥下困難者用など特別な用途(医学・栄養学的な配慮が必要な対象者の発育や健康の保持・回復)に適することを明できる食品のことである。
3.× 健康増進法に基づく一定の要件を満たしているのは、「栄養機能食品」ではなく「特定保健用食品」である。特定保健用食品とは、身体の生理学的機能に影響を与える成分を含むものである。一方で、栄養機能食品とは、栄養素の補給のために利用される食品で、栄養素の機能を表示するものである。栄養機能食品は、「食品衛生法」や「食品表示基準」に従っている。
4.〇 正しい。保健機能食品は1日当たりの摂取目安を表示しなければならない。なぜなら、保健機能食品の表示の基本的な考えとして、過剰摂取や禁忌による健康危害を防止するため。
24 医療計画において定めることとされている事項はどれか。
1.診療報酬の点数
2.市町村の介護医療院の設置数
3.居宅等における医療の確保に関する事項
4.市町村の地域支援事業利用者数の見込み
解答3
解説
医療計画とは、地域における体系的な医療の提供を実現することを目的として、都道府県が策定する計画である。医療計画は6年ごと(平成29年度までは5年ごと)に見直される。
1.× 診療報酬の点数は、全国一律である。健康保険法に定められ、厚生労働大臣の告示により、点数で定められている。これを診療報酬点数表といい、原則として2年ごとに改定される。
2.× 市町村の介護医療院の設置数を明確に定めているものはないが、都道府県介護保険事業支援計画に介護医療院を含む介護保険施設の種類ごとの必要入所定員総数が定められている。ちなみに、介護医療院とは、介護保険法等を根拠に、長期的な医療と介護のニーズを併せ持つ高齢者を対象とする、医療機能と生活施設としての機能とを兼ね備えた施設である。 要介護者に対し、同一施設内で医療と介護を一体的に提供する点に特徴がある。
3.〇 正しい。居宅等における医療の確保に関する事項は、医療計画において定めることである。③居宅等における医療の確保に当てはまる。
4.× 市町村の地域支援事業利用者数の見込みは、市町村介護保険事業計画に定められている。市町村介護保険事業計画とは、市町村は、基本指針に即して、三年を一期とする当該市町村が行う介護保険事業に係る保険給付の円滑な実施に関する計画のことである。
【5疾病】
①がん、②脳卒中、③心筋梗塞などの心血管疾患、④糖尿病、⑤精神疾患
【5事業】
①救急医療、②災害医療、③へき地医療、④周産期医療、⑤ 小児医療(小児救急を含む)
【記載事項】
①5疾病の治療または予防に係る事業、5事業の医療の確保に必要な事業。
②5疾病5事業に関する目標、医療連携体制(施設間の機能分担・業務連携の確保)、情報提供の推進。
③居宅等における医療の確保。
④地域医療構想に関する事項。
⑤地域医療構想の達成に向けた病床の機能の分化及び連携の推進。
⑥病床の機能に関する情報提供の推進。
⑦外来医療の確保。
⑧医師の確保。
⑨医療従事者(医師を除く)の確保
⑩医療の安全の確保
⑪医療圏の設定(二次、三次医療圏を定める)
⑫医師少数区域等の設定
⑬基準病床数(一般病床、療養病床、結核病床、精神病床、感染症病床)
⑭地域医療支援病院等の整備目標。
⑮その他医療提供体制の確保に関する必要事項。
(※参考:「医療計画について」厚生労働省HPより)
25 社会保障の枠組みで互助に当てはまるのはどれか。
1.医療保険を使って手術を受ける。
2.夫婦共働きで家族の生活費を得る。
3.健康維持のために健康診断を受ける。
4.自治会が健康に関する学習会を開催する。
5.病気によって働くことができないため生活保護を受給する。
解答4
解説
地域包括ケアシステムでは、高齢者の尊厳の保持と自立生活の支援の目的のもとで、可能な限り住み慣れた地域で生活を継続することができるような包括的な支援・サービス提供体制の構築を目指している。
「自助・互助・共助・公助」を重視している。
「公助」は税による公の負担。
「共助」は介護保険などリスクを共有する仲間(被保険者)の負担。
「自助」には「自分のことを自分でする」ことに加え、市場サービスの購入も含まれる。
「互助」は相互に支え合い、費用負担が制度的に裏づけられていない自発的なものである。
1.× 医療保険を使って手術を受けるのは、共助である。なぜなら、医療保険は互いに保険料を出し合う社会保険制度であるため。
2~3.× 夫婦共働きで家族の生活費を得る/健康維持のために健康診断を受けるのは、自助である。「自助」には「自分のことを自分でする」ことに加え、市場サービスの購入も含まれる。
4.〇 正しい。自治会が健康に関する学習会を開催するのは、互助である。「互助」は相互に支え合い、費用負担が制度的に裏づけられていない自発的なものである。
5.× 病気によって働くことができないため生活保護を受給するのは、公助である。「公助」は税による公の負担である。生活保護制度は、『日本国憲法』25条の理念に基づき、生活困窮者を対象に、国の責任において、健康で文化的な最低限度の生活を保障し、その自立を助長することを目的としている。8つの扶助があり、原則現金給付であるが、医療扶助と介護扶助は現物給付である。被保護人員は約216.4万人(平成27年度,1か月平均)で過去最高となっている。
生活保護制度は、『日本国憲法』25条の理念に基づき、生活困窮者
生活扶助:日常生活に必要な費用
住宅扶助:アパート等の家賃
教育扶助:義務教育を受けるために必要な学用品費
医療扶助:医療サービスの費用
介護扶助:介護サービスの費用
出産扶助:出産費用
生業扶助:就労に必要な技能の修得等にかかる費用
葬祭扶助:葬祭費用
【生活保護法の4つの基本原理】
①国家責任の原理:法の目的を定めた最も根本的原理で、憲法第25条の生存権を実現する為、国がその責任を持って生活に困窮する国民の保護を行う。
②無差別平等の原理:全ての国民は、この法に定める要件を満たす限り、生活困窮に陥った理由や社会的身分等に関わらず無差別平等に保護を受給できる。また、現時点の経済的状態に着目して保護が実施される。
③最低生活の原理:法で保障する最低生活水準について、健康で文化的な最低限度の生活を維持できるものを保障する。
④保護の補足性の原理:保護を受ける側、つまり国民に要請される原理で、各自が持てる能力や資産、他法や他施策といったあらゆるものを活用し、最善の努力をしても最低生活が維持できない場合に初めて生活保護制度を活用できる。
【4つの原則】
①申請保護の原則:保護を受けるためには必ず申請手続きを要し、本人や扶養義務者、親族等による申請に基づいて保護が開始。
②基準及び程度の原則:保護は最低限度の生活基準を超えない枠で行われ、厚生労働大臣の定める保護基準により測定した要保護者の需要を基とし、その不足分を補う程度の保護が行われる。
③必要即応の原則:要保護者の年齢や性別、健康状態等その個人又は世帯の実際の必要の相違を考慮して、有効且つ適切に行われる。
④世帯単位の原則:世帯を単位として保護の要否及び程度が定められる。また、特別な事情がある場合は世帯分離を行い個人を世帯の単位として定めることもできる。
(※参考:「生活保護制度」厚生労働省HPより)
(※参考:「生活保護法の基本原理と基本原則」室蘭市HPより)