第108回(R4)保健師国家試験 解説【午前41~45】

 

次の文を読み41〜43の問いに答えよ。
 市の高齢福祉課で運営していた認知症サポーター養成講座の受講者が年々減っていた。講師を担当するキャラバン・メイトで家庭の事情等で活動できない人が増え、講座開催回数が減っていたことが原因として考えられた。そこで、各地域の実情に応じた認知症サポーター養成事業を展開するために、認知症サポーター養成講座を市内の各地域包括支援センターによる運営とし、保健師が担当することになった。

41 各地域包括支援センターでキャラバン・メイトとして活動できる人を確保するために、キャラバン・メイトになるための研修を受けるよう声をかけるのに最も適切なのはどれか。

1.一般市民
2.民生委員
3.健康推進委員
4.高齢福祉課の職員

解答

解説

キャラバン・メイトとは?

キャラバン:(直訳)調査・販売・宣伝などのために、一団を組んで、遠征・巡行すること。また、その一団。メイト:(直訳)仲間、友達、連れ合いなど。

キャラバン・メイトとは、「認知症サポーター養成講座」を企画・開催し、講師を務めるもののことをいう。講師開催をきっかけに、住民から相談を受けたり関係機関との連携を図ったりすることを通し、地域のリーダー役となる役割が期待されている。

【受講対象者(引用:地域共生政策自治体連携機構様HPより)】
次の要件を満たす者で、年間10回程度を目安に(最低実施数3回)、「認知症サポーター養成講座」を原則としてボランティアの立場で行える者。
①認知症介護指導者養成研修修了者
②認知症介護実践リーダー研修(認知症介護実務者研修専門課程)修了者
③介護相談員
④認知症の人を対象とする家族の会
⑤上記に準ずると自治体等が認めた者
5-1 行政職員(保健師、一般職等)
5-2 地域包括支援センター職員
5-3 介護従事者(ケアマネジャー、施設職員、在宅介護支援センター職員等)
5-4 医療従事者(医師、看護師等)
5-5 民生児童委員
5-6 その他(ボランティア等)

ポイント

・認知症サポーター養成講座の受講者が減少。
・原因:講師の家庭の事情等で、講座開催回数が減少。
・認知症サポーター養成講座を市内の各地域包括支援センターによる運営した。
キャラバン・メイトになるための研修を受けるよう声をかける。どこが一番よいか?キャラバン・メイトの前提条件として、ボランティアの立場で行える者があげられる。

1.× 一般市民は優先度が低い。なぜなら、キャラバン・メイトの養成研修は、受講者の要件が定められているため。受講対象者の5-6その他(ボランティア等)に当てはまる可能性も考えられるが、選択肢の中に優先度が高いものが他にある。
2.〇 正しい。民生委員が選択肢の中で最も優先度が高い。民生委員とは、『民生委員法』に基づく、日本独自の制度化されたボランティアである。担当地域において、認知症高齢者や独居高齢者などの相談に応じて必要な援助を行い、地域福祉の推進を図っている。
3.× 健康推進委員は優先度が低い。なぜなら、健康推進委員は、地域住民の健康を保持・増進することを目的とし、市の委嘱を受け、市や関係機関・団体、各自治会と連携し活動しているものをいうため。つまり、地域における生活習慣病予防を中心とした健康づくりを行う者である。
4.× 高齢福祉課の職員は優先度が低い。高齢福祉課の職員は、市役所の職員であり、高齢者の健康を増進し相互の交流を促進する各種公営高齢者施設を整備するとともに、高齢者が生きがいを持って安心して暮らせるよう各種サービス事業を実施しているものをいう。

民生委員とは?

民生委員は、日本独自の制度化されたボランティアである。地域社会の福祉の増進図っている。任期は3年で都道府県知事の推薦を受けて厚生労働大臣に委嘱されたものである。市町村の各地区に配置され、①住民の生活状況の把握、②関係機関との連携、③援助を要するものヘの相談援助を主な役割とする。根拠法令は「民生委員法」で給与の支給はない。

 

 

 

 

 

 

次の文を読み41〜43の問いに答えよ。
 市の高齢福祉課で運営していた認知症サポーター養成講座の受講者が年々減っていた。講師を担当するキャラバン・メイトで家庭の事情等で活動できない人が増え、講座開催回数が減っていたことが原因として考えられた。そこで、各地域の実情に応じた認知症サポーター養成事業を展開するために、認知症サポーター養成講座を市内の各地域包括支援センターによる運営とし、保健師が担当することになった。

42 認知症サポーター養成講座を受講した住民から、「何か自分達の学んだことを生かした活動ができないか」と地域包括支援センターの保健師は相談を受けた。
 保健師からの最も適切な提案はどれか。

1.「地域を巡回しませんか」
2.「グループホームで働いてみませんか」
3.「認知症の理解を広める講座を開いてみませんか」
4.「ステップアップ講座を受けて地域課題を踏まえた活動をしてみませんか」

解答

解説

認知症サポーター等養成事業

①キャラバン・メイト養成研修事業:認知症サポーター養成講座の講師で、講座の企画・立案および実施を行うキャラバン・メイトを養成することを目的とする。

②認知症サポーター養成講座:地域や職域において認知症の人と家族を支える認知症サポーターを養成することを目的とする。

③ステップアップ講座の実施:認知症サポーター養成講座修了者の認知症に関する基礎知識・理解を深めるための講義等を通じて、チームオレンジの活動に参画するなど,より実際の支援活動に繋げることを目的とする。

(引用:「認知症サポーター等養成事業実施要網」厚生労働省HPより)

ポイント

認知症サポーター養成講座を受講した住民からの相談であること。
・「何か自分達の学んだことを生かした活動ができないか」と。
→認知症サポーター養成講座の目的は、「地域や職域において認知症の人と家族を支える認知症サポーターを養成すること」である。

1.× 「地域を巡回しませんか」と伝えるのは優先度が低い。なぜなら、設問から、認知症サポーター養成講座を受講した住民から、「何か自分達の学んだことを生かした活動ができないか」と相談されているため。学習内容と地域の巡回の関連性は低い。
2.× 「グループホームで働いてみませんか」と伝えるのは優先度が低い。なぜなら、地域包括支援センターは就労支援を行っていないため。就労と活動は異なり、また就労に関してはハローワークが主に行う。ハローワークは、就職に関する相談指導や職業紹介、雇用保険に関する窓口業務などを担う機関である。
3.× 「認知症の理解を広める講座を開いてみませんか」と伝えるのは優先度が低い。なぜなら、これらはキャラバン・メイトが行うことであるため。キャラバン・メイトとは、「認知症サポーター養成講座」を企画・開催し、講師を務めるもののことをいう。講師開催をきっかけに、住民から相談を受認知症サポーター養成講座の目的は、「地域や職域において認知症の人と家族を支える認知症サポーターを養成すること」である。けたり関係機関との連携を図ったりすることを通し、地域のリーダー役となる役割が期待されている。
4.〇 正しい。「ステップアップ講座を受けて地域課題を踏まえた活動をしてみませんか」と伝えるのが最も優先度が高い。ステップアップ講座の実施は、認知症サポーター養成講座修了者の認知症に関する基礎知識・理解を深めるための講義等を通じて、チームオレンジの活動に参画するなど,より実際の支援活動に繋げることを目的とする。

 

 




 

 

 

次の文を読み41〜43の問いに答えよ。
 市の高齢福祉課で運営していた認知症サポーター養成講座の受講者が年々減っていた。講師を担当するキャラバン・メイトで家庭の事情等で活動できない人が増え、講座開催回数が減っていたことが原因として考えられた。そこで、各地域の実情に応じた認知症サポーター養成事業を展開するために、認知症サポーター養成講座を市内の各地域包括支援センターによる運営とし、保健師が担当することになった。

43 地域包括支援センターが運営する認知症サポーター養成講座を修了した人は徐々に増えていった。担当保健師は、地域における日常生活での見守りの体制をさらに構築するために、一層の普及啓発活動を推し進める必要があると考えた。
 今後の活動として適切なのはどれか。

1.認知症対応型グループホームの誘致を高齢福祉課に打診する。
2.ピア活動が行えるように認知症患者に養成講座の受講を呼びかける。
3.認知症の家族と暮らす人を対象とする活動を認知症サポーターに促す。
4.地域の交通機関の職員に認知症サポーター養成講座への受講を呼びかける。

解答

解説

本問題のポイント

今後:地域における日常生活での見守りの体制をさらに構築する。
やること:一層の普及啓発活動を推し進める。

1.× 認知症対応型グループホームの誘致を高齢福祉課に打診する優先度は低い。認知症対応型共同生活介護(グループホーム)とは、認知症の人だけのケア付き住宅である。1つの共同生活住居に5~9人の少人数の利用者が、介護スタッフとともに共同生活を送る。24時間の専門的援助体制のもと、料理や買い物などの家事に参加する。設問には、「地域における日常生活での見守りの体制をさらに構築する」と記載があるため、認知症対応型グループホームの誘致はその活動の効果を下げる可能性が高い。
2.× ピア活動が行えるように認知症患者に養成講座の受講を呼びかける優先度は低い。なぜなら、認知症患者に養成講座を受けても、記憶の定着は難しく効果が薄いと考えられるため。認知症サポーター養成講座の対象者は、地域、職域、学校などにおいて、知症の人と家族を支える意欲をもつ者が対象となる。ちなみに、ピア活動とは、同じ立場にある当事者同士(同じ悩みや症状などの問題を抱えている方々)が、互いの経験・体験を基に語り合い共感し、サポートを行う相互支援の取り組みのことである。その活動を実践している当事者をピアサポーターと呼ぶ。
3.× 認知症の家族と暮らす人を対象とする活動を認知症サポーターに促す優先度は低い。「認知症の家族と暮らす人を対象とする活動」という文章に関して、認知症の家族と「暮らす人」は家族ではないのだろうか。認知症サポーターとは、認知症を正しく理解し、認知症の人や、その人を取り巻く家族の良き理解者となり、地域の高齢者や認知症(予備群を含む)の人々を見守るボランティア活動である。設問文から、「地域包括支援センターが運営する認知症サポーター養成講座を修了した人は徐々に増えている」状態で、あえて保健師から促す優先度は低い。
4.〇 正しい。地域の交通機関の職員に認知症サポーター養成講座への受講を呼びかける。担当保健師は、地域における日常生活での見守りの体制をさらに構築するために、一層の普及啓発活動を推し進める必要があると考えている。地域の交通機関の職員が、認知症の知識に詳しくなることで、一層見守りの体制を構築できる。

 

 

 

 

 

 

次の文を読み44〜46の問いに答えよ。
 Aさん(35歳、会社員、初産婦)は妊娠8週で母子健康手帳の交付を受けるために市役所を訪れた。地区担当保健師が面接したところ、Aさんは5年前にうつ病で通院していたが、その後症状が軽快し、現在は通院していないことがわかった。
Aさんは「実家から引っ越してきたばかりで近所に知り合いがいないため不安です。夫は仕事が忙しく、家事や育児への協力は期待できません」と話した。

44 現時点での保健師からAさんへの提案として、最も適切なのはどれか。

1.「市の母親学級に参加してみませんか」
2.「実家のご両親に相談されてはどうですか」
3.「家事援助サービスを使ってみてはどうですか」
4.「住み慣れると不安も軽くなりますので待ちましょう」

解答

解説

本問題のポイント

Aさんは「実家から引っ越してきたばかりで近所に知り合いがいないため不安です。夫は仕事が忙しく、家事や育児への協力は期待できません」と話した。

1.〇 正しい。「市の母親学級に参加してみませんか」と伝えるのが最も優先度が高い。母親学級は、専門家などから、「妊娠から出産にかけて気をつけること」、「赤ちゃんのお世話などの基本的な知識」を教えてもらうことができる。 また、妊娠や出産の不安を解消してくれたり、他の妊婦さんと情報交換を行ったりできる。Aさんは「実家から引っ越してきたばかりで近所に知り合いがいないため不安」と話していることからも勧めるに値すると考えられる。
2.× 「実家のご両親に相談されてはどうですか」と伝える優先度は低い。Aさんは「実家から引っ越してきたばかりで近所に知り合いがいないため不安」と話している。したがって、近所の付き合いやつながりをとれるよう関わる。
3.× 「家事援助サービスを使ってみてはどうですか」と伝える優先度は低い。なぜなら、Aさんは「夫は仕事が忙しく、家事や育児への協力は期待できません」と話しているものの「家事ができず困っている」などの訴えは聞かれていないため。
4.× 「住み慣れると不安も軽くなりますので待ちましょう」と伝える優先度は低い。なぜなら、住み慣れれば不安が軽くなる保証はないため。また、住み慣れるのにどれぐらいの期間を要するかも分からない。Aさんからすると、否定された気持ちになりかねない。

 

 

 




 

 

 

次の文を読み44〜46の問いに答えよ。
 Aさん(35歳、会社員、初産婦)は妊娠8週で母子健康手帳の交付を受けるために市役所を訪れた。地区担当保健師が面接したところ、Aさんは5年前にうつ病で通院していたが、その後症状が軽快し、現在は通院していないことがわかった。
 Aさんは「実家から引っ越してきたばかりで近所に知り合いがいないため不安です。夫は仕事が忙しく、家事や育児への協力は期待できません」と話した。

45 妊娠10週にAさんから地区担当保健師に電話があり、「産科の先生や助産師さんには次の健診で相談してみようと思いますが、残業があり、仕事中の休憩や休暇も取りにくく、つわりもあるので仕事が負担になってきました。何か使える制度はないでしょうか」と相談があった。
 現時点でAさんが会社に制度の利用を請求した場合、法律に基づき会社が対応する必要があるのはどれか。

1.時間外勤務をなくす。
2.休憩時間の回数を増やす。
3.妊産婦健康診査の費用を助成する。
4.勤務時間中に2週間に1回の妊婦健康診査の時間を確保する。

解答

解説
1.〇 正しい。時間外勤務をなくすことは、法律に基づき会社が対応する必要がある。『労働基準法』に規定されている。使用者(会社)は、妊産婦が請求した場合には時間外労働、休日労働、深夜業をさせてはならないと定められている。
2.× 休憩時間の回数を増やす必要はない。ただし、『男女雇用機会均等法』において、勤務時間の変更勤務軽減などの必要な措置を講じなければならないと定められている。
3.× 妊産婦健康診査の費用を助成する必要はない。なぜなら、妊産婦健康診査の費用を助成するのは市町村が行っているため。
4.× 勤務時間中に2週間に1回の妊婦健康診査の時間を確保する必要はない。『男女雇用機会均等法』に基づき、事業主は妊婦健康診査を受診する時間を確保しなければならないと規定されている。ただし。Aさんは妊娠10週なので妊婦健康診査は4週間に1回である。妊婦健診の受診間隔は、妊娠23週までは4週間に1回だが、24週から35週は2週間に1回に変わる。

妊婦健康診査の望ましい基準

①妊娠23週まで:4週間に1回
②24週~35週:2週間に1回
③36週~出産まで:1週間に1回

 

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