次の文を読み45〜47の問いに答えよ。
Aさん(58歳、男性、独居)は1年前に失業した。その後、就職先が決まらず、預貯金が底をついたが、身寄りがなく身近な相談者もいなかった。経済苦により3か月前に自殺を図って病院に搬送された。日常生活動作<ADL>は問題なく回復したが、頭を打ったことによる外傷性脳損傷によって軽度の記憶障害が残り、特に数の計算が難しくなった。また、入院中に生活保護を受給することになった。
46 生活保護担当の保健師は、その後もAさんのような失業やそれに伴う経済的困窮を契機とした自殺未遂事例と関わることがあり、B市の自殺対策計画の担当保健師と協働して市全体の自殺の現状を改めて調査・評価することにした。その結果、壮年期の男性が失業をきっかけとして自殺に至る事例や、自殺未遂後に後遺症や障害が残った事例が近年増加していることが明らかになり、新たな自殺予防対策の啓発活動を進めていくことにした。
この啓発活動への協力を依頼する関係機関として、最も適切なのはどれか。
1.民生委員・児童委員協議会
2.精神科医療機関
3.ハローワーク
4.警察
解答3
解説
・「市全体の自殺の現状」を改めて調査・評価することにした。
・結果:壮年期の男性が失業をきっかけとして自殺に至る事例や、自殺未遂後に後遺症や障害が残った事例が近年増加。
→新たな自殺予防対策の啓発活動を進めていくにあたって、失業や後遺症・障害に関しての関係性が高い機関を選択する。
1.× 民生委員・児童委員協議会の優先度は低い。民生委員・児童委員協議会は、市町村の一定区域ごとに編成される民生委員の組織である。
2.× 精神科医療機関の優先度は低い。精神医療機関とは、精神科病院や精神科の外来などを指す。精神障害者に対し、集中的な治療や看護、保護を行い、その社会復帰を促進する一方、精神疾患の発生の防止と国民の精神的な健康の保持、およびその増進に努めることにより、福祉の増進と国民の精神保健の向上を図ることを目的とする医療施設である。
3.〇 正しい。ハローワークがこの啓発活動への協力を依頼する関係機関といえる。ハローワーク(公共職業安定所)の主な業務として、①職業相談、②職業紹介、③求人確保、④事業主に対する助言・窓口業務、⑤就職後の障害者に対する助言・指導などがあげられる。設問文から「壮年期の男性が失業をきっかけとして自殺に至る事例」に対し、職業相談時や職業紹介時に啓発活動が行える。
4.× 警察の優先度は低い。警察は国家の治安を維持する組織である。自殺後に関与することが多い。
民生委員は、日本独自の制度化されたボランティアである。地域社会の福祉の増進図っている。任期は3年で都道府県知事の推薦を受けて厚生労働大臣に委嘱されたものである。市町村の各地区に配置され、①住民の生活状況の把握、②関係機関との連携、③援助を要するものヘの相談援助を主な役割とする。根拠法令は「民生委員法」で給与の支給はない。
次の文を読み45〜47の問いに答えよ。
Aさん(58歳、男性、独居)は1年前に失業した。その後、就職先が決まらず、預貯金が底をついたが、身寄りがなく身近な相談者もいなかった。経済苦により3か月前に自殺を図って病院に搬送された。日常生活動作<ADL>は問題なく回復したが、頭を打ったことによる外傷性脳損傷によって軽度の記憶障害が残り、特に数の計算が難しくなった。また、入院中に生活保護を受給することになった。
47 その後、B市の自殺対策計画を担当している保健師は、関係機関との連携強化だけでなく、住民が自殺予防のゲートキーパーとなれるよう、ゲートキーパー養成事業を新たに計画した。予算案作成にあたりこの事業について住民から幅広く意見を得ることとした。
意見を得るのに適切な方法はどれか。
1.フォーラムの開催
2.市議会における審議
3.自殺対策審議会の開催
4.パブリックコメントの実施
解答4
解説
ゲートキーパーとは、自殺の危険を示すサインに気づき、適切な対応(悩んでいる人に気づき、声をかけ、話を聞いて、必要な支援につなげ、見守る)を図ることができる人のことをいう。つまり、「命の門番」とも位置付けられる人のことである。 自殺対策では、悩んでいる人に寄り添い、関わりを通して「孤立・孤独」を防ぎ、支援することが重要である。
1.× フォーラムの開催の優先度は低い。なぜなら、住民から幅広く意見を得ることが困難であるため。フォーラムとは、集団での討論を行うことや討論の場を指す言葉として用いられる。一つのテーマについて発表者と聴衆の参加者すべてが討論を行い、結論を出すことを目的として開催される。
2.× 市議会における審議の優先度は低い。なぜなら、住民から幅広く意見を得ることが困難であるため。市議会とは、市に住んでいる人の中から「選挙」で選ばれた代表者(市議会議員)が話し合いをする会のことである。
3.× 自殺対策審議会の開催の優先度は低い。なぜなら、住民から幅広く意見を得ることが困難であるため。自殺対策審議会とは、自殺対策の総合的な推進を図るために地方自治体が主体となり、有識者や関係機関・代表住民などが参加する会のことである。
4.〇 正しい。パブリックコメントの実施は住民から幅広く意見を得ることができる。パブリックコメント(意見公募手続)とは、公的な機関が規則あるいは命令などの類のものを制定しようとするときに、広く公に、意見・情報・改善案などを求める手続きをいう。行政機関が命令(政令、省令、条例など)を制定するにあたり、事前に案を示し、その案について広く市民から意見を募集すること。
次の文を読み48、49の問いに答えよ。
Aさん(30歳、女性)はBちゃん(1歳7か月、男児)を連れ、市が実施する1歳6か月児健康診査に来所した。問診でAさんは、「1年前に隣の県から引っ越してきた。人づきあいが苦手で家でBちゃんと2人きりでいることが多い」と話した。
Bちゃんの1歳6か月児健康診査の記録から、一部抜粋したものを以下に示す。
48 Bちゃんの発達について、保健師のアセスメントで適切なのはどれか。
1.言語は年齢相応の発達である。
2.微細運動は年齢相応の発達である。
3.社会性の発達が遅れている可能性がある。
4.粗大運動の発達が遅れている可能性がある。
解答2
解説
・Bちゃん(1歳7か月、男児):1歳6か月児健康診査に来所。
・母Aさん:「1年前に隣の県から引っ越してきた。人づきあいが苦手で家でBちゃんと2人きりでいることが多い」。
1.× 言語は、「年齢相応の発達」とはいえず「遅滞」である。なぜなら、①有意語の発語がなく、②簡単な指示に従ないため。
2.〇 正しい。微細運動は年齢相応の発達である。なぜなら、①積み木を3個積める、親指を使ってつかめるため。
3.× 社会性の発達は「遅れている」とはいえず「年齢相応の発達」といえる。なぜなら、①周囲の人の身振りをまねたり、②周囲の人やほかの子どもへの関心を示したり、③ままごとなど見立て遊びができるため。
4.× 粗大運動の発達は「遅れている」とはいえず「年齢相応の発達」といえる。なぜなら、①独歩開始時期は1歳3か月で、手を引くと階段を上がれるため。
次の文を読み48、49の問いに答えよ。
Aさん(30歳、女性)はBちゃん(1歳7か月、男児)を連れ、市が実施する1歳6か月児健康診査に来所した。問診でAさんは、「1年前に隣の県から引っ越してきた。人づきあいが苦手で家でBちゃんと2人きりでいることが多い」と話した。
Bちゃんの1歳6か月児健康診査の記録から、一部抜粋したものを以下に示す。
49 1歳6か月児健康診査の終了後、カンファレンスでBちゃんの状況を検討した。
今後、Aさんに提案するBちゃんの子育て支援の場として最も適切なのはどれか。
1.療育相談
2.子育ての自主グループ
3.発達のフォローアップ教室
4.子育て世代包括支援センター
解答3
解説
・Bちゃん(1歳7か月、男児):1歳6か月児健康診査に来所。
・母Aさん:「1年前に隣の県から引っ越してきた。人づきあいが苦手で家でBちゃんと2人きりでいることが多い」。
・1歳6か月児健康診査は、「言語の遅滞」がみられる程度である。
→Aさんに提案するBちゃんの子育て支援の場は、母Aさんは子育てに関しての困りごとは聞かれておらず、「1年前に隣の県から引っ越し、人づきあいが苦手で家でBちゃんと2人きりでいることが多い」。
1.× 療育相談の優先度は低い。なぜなら、母Aさんは子育てに関しての困りごとは聞かれておらず、1歳6か月児健康診査は、「言語の遅滞」がみられる程度であるため。療育相談とは、発達に心配のあるお子さん、自閉スペクトラム症を中心とした発達に障害のあるお子さんとそのご家族に対する相談、療育を行なうものである。
2.× 子育ての自主グループの優先度は低い。なぜなら、乳幼児(生後0日から満1歳未満までの子)が対象になることが多いため。子育ての自主グループとは、乳幼児(生後0日から満1歳未満までの子)を持つ親同士が集まり、育児に対する不安や悩みを話しあったり、情報交換や仲間づくりなどの活動をするものである。
3.〇 正しい。発達のフォローアップ教室が今後、Aさんに提案するBちゃんの子育て支援の場である。フォローアップ(follow-up)とは、すでに行ったことに対して、時間をおき再度その事柄を強化、また効果を確認するための行動を指す。フォローアップ教室とは、簡単な集団遊びや親子でのふれあい遊びを通して、子どもたちのよりよい発達や成長を促し、親子で楽しく過ごすことを目的とした教室である。これまで母Aさんは、「Bちゃんと2人きりでいることが多い」状態であったが、発達のフォローアップ教室を通して、Bちゃんが、集団のなかでのふれあえることで、「言語の遅滞」にもアプローチできる。
4.× 子育て世代包括支援センターの優先度は低い。子育て世代包括支援センターは、妊娠から出産・育児までの切れ目のない包括的な支援を目的に、平成28(2016)年の『母子保健法』改正により設置された。主な事業は、①健康診査や家庭訪問などによる相談や保健指導であり、②保健師が母子保健コーディネーターとして継続支援の必要な妊産婦や家族をケアすることも多い。特段、母Aさんから子育てに関しての困りごとは聞かれていないため、1歳6か月児健康診査で、「言語の遅滞」がみられたことに着目する。
次の文を読み50、51の問いに答えよ。
Aさん(85歳、女性)は息子のBさん(50歳、無職)と2人暮らし。Bさんは大学卒業後に就職したが、1年前に失職して以来、自宅で過ごしている。Aさんは2週前に自宅で転倒し腰椎圧迫骨折で入院した。入院を機に要介護認定申請を行ったところ、認定結果は要介護1であった。Aさんは自宅への退院を希望しており、Aさんが入院している病院のソーシャルワーカーから、退院に向けた話し合いをしたいと地域包括支援センターの保健師に連絡があった。Aさんの入院前は、家事はAさんが行っていた。
50 翌週、病院でソーシャルワーカー、保健師、AさんとBさんで退院に向けた話し合いが行われることになった。
自宅への退院を検討するにあたり最も優先度が高い情報はどれか。
1.自宅の間取り
2.Aさんの家事能力
3.Bさんの睡眠時間
4.Bさんの介護に対する意向
解答4
解説
・2人暮らし:Aさん(85歳、女性、要介護1)、息子Bさん(50歳、無職:1年前から)。
・Aさん:2週前腰椎圧迫骨折で入院。
・Aさんの希望:自宅への退院。
・入院前:家事はAさんが行っていた。
→自宅への退院を希望されており、Aさんの身体機能にもよるが要支援1であるため、なにかしら息子Bさんには負担をかけることになる。息子Bさんは無職であることから、自宅で過ごしている時間も多いと考えられるが、どこまで介護に協力的か?、介護の協力を得られない場合は介護サービスで代用できるかがポイントとなる。
1.× 自宅の間取りの優先度は低い。なぜなら、退院先が「自宅」と確定したわけではないため。まずは家族である息子の意向を聞き、自宅で調整できそうであれば自宅の間取りを調べ手すりなど設置する必要がある。
2.× Aさんの家事能力の優先度は低い。なぜなら、まず「自宅での日常生活」が行えるかが争点となるため。入院前の家事はAさんが行っていたが、現在は要支援1で日常生活にも支障をきたしていると考えられる。Aさんの家事能力より「身体機能や日常生活動作」の評価のほうが優先度は高い。
3.× Bさんの睡眠時間の優先度は低い。なぜなら、Bさんの睡眠時間によって、Aさんの希望する自宅退院が可能か不可能かの差にはならないため。それ以上に選択肢の中に自宅への退院を検討するにあたり優先度が高い項目が他にある。
4.〇 正しい。Bさんの介護に対する意向は自宅への退院を検討するにあたり最も優先される。宅への退院を希望されており、Aさんの身体機能にもよるが要支援1であるため、なにかしら息子Bさんには負担をかけることになる。息子Bさんは無職であることから、自宅で過ごしている時間も多いと考えられるが、どこまで介護に協力的か?、介護の協力を得られない場合は介護サービスで代用できるかがポイントとなる。